オバマ大統領の日本での評価(あるのかないのか、私は詳しくは知りませんが)、とグーグルで検索したところ、こんなサイトが引っかかってきました。
オバマ大統領と日本共産党 経済政策の共通性
(7月29日 土佐のまつりごと)
サイトの著者は、日本共産党高知県委員会のメンバーで、政策を担当している方だそうです。ブログのポストの書き出しは、
『国民の暮らしや実態経済を無視し、金融中心に「金儲けできればなんでもよい」という新自由主義が破綻した。あらたな経済・財政の方向をどうするか・・・
共産、財源論示す マニフェスト発表 朝日
共産党:「働く貧困層なくす」…マニフェストを発表 毎日7/28
勤労者減税、富裕層増税。大企業の課税強化、軍事費の削減・・・ 資本主義の総本山のアメリカの不況脱出策と日本共産党の政策が共通している。日本共産党の主張は、当たり前の話をしているだけである。』
普通のアメリカ人が読んだら仰天するだろうなあと思いますが(試しに英語のブログに記事を載せてみました)、実際のところ、オバマ大統領は社会主義者、あるいはもっと進めて共産主義者ではないか、と疑うアメリカ人が増えています。
それはさておき、この著者の言うことは当たっているのでしょうか?
まず勤労者減税。確かにオバマ大統領は事あるごとに Tax cut for the working class といっています。ところが、アメリカでは、個人所得税収の97パーセントを負担しているのは上位50パーセントの所得層。大統領の言う『勤労者』層は下位の50パーセント、元からほとんど所得税を払っていないのです。この層に対する「減税」はつまるところ富の再分布、持てる層から取り上げて、持たざる層へ分配する、まさに共産党にぴったりの政策ではありませんか。
次に富裕層増税。アメリカのトップ1パーセントの年収所得者(年収38万8千ドル以上)はすでに所得税総額の40パーセントを負担しています。トップ10パーセントの所得者(年収10万9千ドル以上)まで下げると、この10パーセントが所得税の70パーセントを負担しています。この層に更なる所得税負担をかける。ずいぶん不公平な話だと私は思いますが、金持ちからふんだくってどこが悪い、とお思いになる方も多いのでしょう。ここで問題なのは、経済を支えているのはいわゆるこの富裕層、ここからDisposable incomeをさらに取り上げて、それで景気が回復すると考えるのはどうしたものでしょうか。
大企業の課税強化。たしかにこれもオバマ大統領がやろうとしていることですね。この共産党の方は、「税率をあげたら海外に出ていくという根拠はない」とおっしゃっていますが、アメリカの実例を見る限り、間違いなく出て行きますね。
ここまでのところ、日本共産党とオバマ大統領はほぼ完璧な政策一致を見ています。
さて問題はこの先。軍事費の削減。ブログの著者はアメリカがオバマ大統領の下で軍事費を削減する、と思っておられるようですが、多分これは予算内の金額だけを見た発言だと思われます。アメリカの軍事費は、予算外予算の金額が非常に大きいのです。ついこの6月にも、2009年軍事補正予算が議会を通過して成立しましたが、これは正規予算外の予算で、1060億ドル、日本円で10兆円を超す大規模な予算です。また、現実的に考えて、イラクからも撤退しない、アフガン・パキスタンにさらに大規模に軍事介入、おまけにイランとの戦端を開くかもしれない、といった状況で、軍事費が削減されるとはまず考えられません。
さらに、共産党のマニフェストは大型公共事業削減を謳っているようですが、オバマ大統領は多分考えもしないでしょう。大統領の考えはまったくその反対で、大型公共事業の拡大が唯一不況から脱出する手段だ、と公言しています。アメリカの借金は増えるばかり。7月ひと月の債券の発行高は、7000億ドルを超えました。日本円で、70兆円です。短期(一年以内)の債券が50兆円強、中長期の債券が残りを占めます。(自転車操業ですね。)
どうもこの高知県の共産党委員の方は、都合のよい点だけを見ているようですが、共産党がオバマ大統領と共通点を感じていること自体、私には興味深いものがあります。
ただし、ひとつ、決定的に違う点があります。多分日本共産党の方々と違って、オバマ大統領は資産が日本円にして8億円以上。金持ちです。資産の多くは著書(代筆のうわさあり)の印税です。日本共産党のメンバーの方々で億万長者がいらしたらごめんなさい。8月の夏休みに大統領が借りる予定の別荘は、一週あたりの貸し賃が約500万円だそうです。勤労者の年間所得を一週間で使うんですねえ。いいですねえ、金持ちは。(おっといけない、またひがんでしまった。)ちなみに、米国大統領の給料は、年間約4000万円です。
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