Saturday, January 30, 2010

オバマ大統領の癇癪(かんしゃく)で市場が下落

マサチューセッツの特別選挙は確かにMarket Moverでしたね。もっとも、予想しなかった形でしたが。

マサチューセッツの選挙が共和党候補の圧勝(何しろ過去40年以上、ケネディ上院議員が独占していた議席ですから)に終わって、さて民主党ならびに大統領がどう出るか。大方の評論家は、敗戦をきっかけに大統領は協調路線を取らざるを得ないだろう、という意見でした。

とんでもない誤解でした。

協調どころか、選挙の翌日の一般教書演説では、野党共和党が協力的でないと言って叱り、大統領のヘルスケア改革に反対する国民を叱り、挙句の果てには正面に座っている最高裁の判事たちに向かって、政治資金改革に関する最新の最高裁の判断を満場の議会で批判する、といった始末。大統領と言うよりは、シカゴのマフィアといった口吻でした。

幼稚園の砂場で砂をかけられて腹を立て、大声で騒ぎまくっている、といった感がありますね。

その翌日の木曜日には、新たに金融機関を規制する試案を発表、これを嫌った株式市場は2日連続の続落。翌日の金曜日も大統領の強気な発言は止まず、市場はまたも下落。今週に入っても、先行き不透明で市場は膠着状態、金曜日の第4四半期GDPの5.7%の伸びのニュースに接しても、市場は午前中の上昇をキープすることが出来ず、結局大幅下落に終わりました。オバマ大統領は大統領選挙戦をまだやっているつもりなのか、全米各地を毎日のように国民の税金で飛び回って、自分の政策を売り込もうとしています。

先行き不透明なのは、政府の介入がいつどんな形でどんな理由で入ってくるかが分からない、という不安があるためです。レーガン大統領時代に連邦準備銀行総裁だったPaul Volcker氏を突然起用してまとめさせた金融機関規制案などはいい例です。2008年の秋のような金融危機が二度と起こらないようにするため、金融機関が自分の資金で各種金融市場でトレードするのを禁止し、またヘッジファンド、プライベートエクイティファンドに投資するのを禁止する、というものですが、2008年の金融危機の最大原因には一切触れず。

2008年の全世界を巻き込んだ金融危機の最大原因は、1)連邦準備銀行の長年にわたる低金利政策の弊害(資源のMisallocation)によって発生した不動産バブル、2)住宅ローン、クレジットカードローンなどの各種負債の証券化(MBS、ABSなど)とその証券のデリバティブ(Credit Default SwapsCDOなど)による、レバレッジの増加です。これを無視して自己資金のトレード、ヘッジファンドの規制などをやっても、効果が無いどころか、市場の流動性が減少し、より不安定で危険な市場になりかねません。

マサチューセッツ選挙の敗戦のダメージを気取られないようにするにはどうするのが一番か。これは、いわゆるギャンブルで言うDouble-downなのでしょう。この1年で失速した政策の数々(ヘルスケア改革、地球温暖化防止のためのキャップ・アンド・トレード、金融改革、経済活性化政策、要するに軍事政策以外のすべてですね)を、見直すどころか今までにもまして推し進める姿勢を見せる。株式市場はこれを嫌って急降下、国民の間に、これは2008年秋の再来か、と、危機感が広がり、金融機関への怒りと不満が倍増。そこへオバマ大統領が颯爽と登場して悪いゴールドマンサックスを懲らしめる。まるで桃太郎のお伽話のようですが、この1年、この大統領と彼の取り巻きのアドバイザーの面々を見ていると、せいぜいその程度なのでは、と思わせます。(ちなみに、大統領のChief of Staffは元バレーダンサーです。どうでもいいことですが。熱狂的なイスラエル支持者でもあります。)

この1年で増えたのは失業者と国の借金だけ。もし今年大統領選があったら、まず再選は無いでしょう。次の大統領選までアメリカが国として持つかどうか、疑問視する人も増えています。

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