これを見ると、福島第1原発事故での政府の対応のまずさは、政府が自分で作り上げた計画に自分で絡め取られてしまって動きが取れない、といった状態であろうことは、容易に想像できます。さらに驚くべきことは、格納施設から放射能が漏れ出す、といた状況を想定してはいるものの、どのような災害、事故がまず発生してそのような状況になるのか、といった考慮がまるでない、ということです。この図を見る限り、「東北、関東を襲った、津波を伴った大地震」などはまるで想定しておらず、何らかの原因で放射能が漏れ出した場合でも政府機関、国、自治体政府、事業者、公的研究機関などが全て通常に機能していることを前提にして、原子力災害対応、対策を立てていた、というのが実情のようです。
驚く限りです。
更に驚くのは、このフローチャート。原子力災害時の防災活動の流れとして、東京(政府)での動きと現場での動きをまとめていますが、これで防災が出来たらそれこそ奇跡でしょう。対策本部、警戒本部、連絡会議、協議会、本部名称変更の手続き...。
東京での対応 | 現地(オフサイトセンター)での対応 |
原子力施設において、原災法第10条の通報基準に定める異常事象が発生 原子力事業者が原子力保安検査官事務所長に通報 | |
原子力保安検査官は原子力事業所に行き、現場を確認し、原子力防災専門官と原子力安全・保安院に通報。 | |
緊急時対応センターに経済産業省原子力災害警戒本部設置。 | 原子力防災専門官によるオフサイトセンターを立ち上げ、活動開始。 |
経済産業省原子力災害現地警戒本部及び現地事故対策連絡会議を設置 | |
原災法15条に相当する原子力緊急事態に該当する事態に進展すると・・・ | |
経済産業省原子力災害警戒本部に、発電所から原子力緊急事態に進展したとの通報が入り、経済産業大臣は、内閣総理大臣に原子力緊急事態の上申を決定。 | |
原子力緊急事態宣言の発出 | |
内閣総理大臣を本部長とする政府の原子力災害対策本部を設置 | 経済産業省原子力災害現地警戒本部は経済産業省原子力災害現地対策本部に名称を変更 |
現地事故対策連絡会議は原子力災害現地対策本部に名称変更 | |
原子力災害合同対策協議会が組織される。 | |
防護対策地域を検討 | |
住民避難・退避措置が決定され、東京の経済産業大臣に上申 | |
経済産業大臣から、住民の避難・屋内退避の判断について、原子力災害対策本部として了承したことを伝達 | |
避難手段を検討 | |
プレスルームで決定事項のプレス発表 | プレスルームで原子力災害対策合同協議会の決定事項のプレス発表 |
避難措置、コンクリート屋内退避措置、屋内退避措置の範囲の決定 | |
住民が避難を開始 | |
衣服についた放射性物質 の測定や医師による診察、健康相談実施 | |
放射性物質の放出開始 | |
土、植物、海草の試料採取を行って環境への影響を調査 | |
放射性物質の放出が停止 | |
事態の終息を受け、緊急事態の解除を検討するための原子力安全委員からの助言 | |
緊急時対応センター、防災センター、原子力安全委員会を結ぶテレビ会議で、原子力災害現地対策本部長は原子力災害拡大防止の応急対策を実施する必要がなくなったと考え、原子力緊急事態解除宣言を上申 | |
原子力災害対策本部長が原子力緊急事態解除を宣言 | |
原子力災害対策本部を廃止 | 原子力災害現地対策本部を廃止 |
毎日新聞の記事で読みましたが、原子力安全・保安院の設定した原子力非常事態時の避難範囲はわずか10キロ半径である、とのこと。今保安院のサイトなど調べて、原文の法律を探していますが、本当だとしたら、いったい政府は何を考えていたのでしょう?
巨大地震が発生しやすい日本海溝を沖に控えた海岸沿いに原発を建てておいて、非常時の想定から地震も津波も欠けている、というのは、どういうことなんでしょうね。地震、津波を除外して、格納容器から放射線が漏れ出すような事故が何によって引き起こされる、と想定したのか、保安院のお役人さんに聞いて見たいものです。
上に出したような図、フローチャートを作り上げるということは、事業者の単なる操作ミスかなにかを考えていたのではないか、と思われますが。(ため息。)
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