その中のひとつが、ストロンチウム。ストロンチウムが検出されたというニュースを聞かないが、他に同時に発生している放射性物質が検出されているのにストロンチウムが出ていないはずがない、と言うのです。また、彼らは、ストロンチウムの方がヨウ素131などよりよっぽど危ない、と言います。
ストロンチウムはウランが核分裂、崩壊するときに出来る放射性物質のひとつです。日本でも外国でも、福島第1原発からの放射性物質を挙げるときはまずヨウ素131、次にセシウム137、あとの物質はせいぜいプルトニウム、正確な測定資料が確定するまで出すな、とか、原子力安全保安院が「指導」したようですが、定期的に出てくるのはせいぜいこの3つ。
ストロンチウム(原子記号Sr)の放射性同位体ストロンチウム90は、カルシウムと殆ど構造がが同じなため、体は区別することが出来ず、カルシウムの代わりに体内に取り込んでしまうのです。ストロンチウム90の半減期は28.9年、骨に入ってしまうのでヨウ素やセシウムと違って体内から排出されず、はるかに厄介なのです。
確か3月11日に始まった事故から数日後、ヨウ素131は安定ヨウ素剤で体内摂取を防止できるがストロンチウムやセシウムは防止する手立てがない、という短い記事を見たきりで、それ以来ニュースではまったく見た覚えがありません。
そこで、検出されているのか、されていないのか、調べて見たら、こんなポストに行き当たりました。東大名誉教授の森敏博士のブログです。博士は原子力の専門ではなく、農学部、植物栄養学の専門です。
結論から言うと、出ている、しかし検出が難しいこともあって、政府、東電は測定を行っていない。検出には、ストロンチウムを直に検出することは出来ず、ストロンチウム90が更に崩壊したイットリウム90(原子記号Y)のベータ線を計ってストロンチウム90の放射能を測定する。セシウム137が存在する場所にはストロンチウム90がある、つまり、空気中、土壌中に。
政府・東電は測定しているのかもしれませんが、公開していないことは確かです。(フランスのAREVAが出していないか、後でちょっと探しに行こうと思います。確か、彼らの発表の中に、東電が一般に公開していない原発の測定データが入っていたようなので。)
博士の3月31日のブログ。
東電福島原発事故でストロンチウム90の測定データが発表されないゆえんについて
ウランが崩壊するとヨウ素-131(I131),セシウム-137(Cs137),のほかにストロンチウム-90(Sr90)が生じてくる。にもかかわらず、現在新聞紙上ではI131とCs137だけが、データーとして報じられている。それは何故だろうか。
理由は簡単で、前二者は半導体検出器で特性ガンマ線を検出できるのだが、Sr90はベータ線を出すので、ベータ線だけを測ってもそれがSr90由来であると特定できないからである。日本分析センターのホームページにはこのことがわかりやすく以下のように解説されている。
ストロンチウム90の放射能測定の要点 ほとんどの放射性物質は 壊変 したときにガンマ線を放出します。ガンマ線はそれぞれ物質に固有のエネルギーを持っているので、ガンマ線を測れば含まれる放射性物質が何であるか、また、どの程度含まれているかを知ることができます。
しかし、ストロンチウム90は、ガンマ線が放出されないで、ベータ線のみが放出されます。ベータ線はガンマ線と違って、固有のエネルギーを持っていないため、どの放射性物質から放出されているかを決めることはできません。このため、化学的にストロンチウムだけを分離精製する必要があります。ストロンチウムだけになった後に、ストロンチウム90のベータ線を測るわけですが、実際には、ストロンチウム90が 壊変 して生成されるイットリウム90のベータ線の方がエネルギーが大きく測りやすいため、このベータ線を測定し、その結果からストロンチウム90の放射能を算出する方法をとります。
つまり、Sr90だけを分離精製するのに1週間ぐらいかかる。だから東電や行政当局はこの核種を測っている余裕がないのである。
しかし、Sr90は体内に入ると電子配置・半径が似ているため、骨の中のカルシウムと置き換わって体内に蓄積し長期間に亘って放射線を出し続ける。このため大変危険である。原発事故で放出される量はCs137と比較すると少ない、とWikipediaでも解説されているのだが、今回の東電福島原発事故に関しては放出されている両者の存在比は全く不明である。。
そうであるから、今回我々は、Sr90も東電福島原発事故の大気から摂取し続けており、Cs汚染地域ではSr90でも土壌も常に汚染され続けていることを忘れてはならない。将来は当然汚染土壌からSr90も作物に移行し、可食部にも移行する。Sr90の半減期も28.9とCs137(半減期30年)と同様に長いので、決して無視してはいけない。今年の産米では、きちんとSr90とCs137を測定しなければならなくなるだろう。
ウィキぺディアの「ストロンチウム90」から:
ストロンチウム90の崩壊により生成されるイットリウム90は高エネルギーのベータ線(228万電子ボルト)を放出する。このベータ線は水中で10㎜まで届き、ストロンチウム90はベータ線を放出する放射性物質としては健康影響が大きい[2]。 経口で10000Bqのストロンチウム90を摂取した時の実効線量は0.28mSvで、外部被曝が大きくなる恐れがある。皮膚表面の1cm2に100万Bqが付着した場合は、その近くで1日に100mSv以上の被曝を受けると推定される[2]。
日本の皆様、東電、保安院、政府に、ストロンチウムの測定と情報の公開を要求しましょう。待っていたのでは多分永久に出てきません。
東電:https://www4.tepco.co.jp/info/custom/service/echob_s-j.html
原子力安全保安院:https://wwws.meti.go.jp/nisa/index.html(ただし返事は1ヵ月後だそうです。ははは)
行政機関に問い合わせても無反応です。
ReplyDeleteSr90は融点が高いから放出していないという前提はメルトダウンで全く否定されました。したがって、Sr90は広範囲に飛散しているはずです。
政府のパニックを招くから重大事項は公表しない姿勢は問題です。
すべて、明らかにして国民全体で考える必要があると思います。
事の重大性が明らかになれば、与野党で争ってる場合ではないと思います。