(「竜の柩」ノンノベル版、30ページより)
大地震起り、近寄り大水わき上がり、田畑の各処、邸内はもとより、家の床下よりも噴き上がりぬ。また、墓地よりも湧上れるに、白骨一面にいでなむ処あり。道行く人々、田畑に労せる人々、ただ、唖然とて、地に座すのみなり。地揺れおさまりげ暫し、崩れし家をかたづくるの間、海鳴り聞えむや、数丈の大津波、一挙に十三湊より逆流なして見ゆ。一刻の大惨事と相成れり。安東船、諸国の通商船数百艘、木の葉の如く、怒涛に砕け、十三湊の蔵邸人家、ことごとく大津波に崩れ、福島城の牧に遊ぶる駒も、襲ふる怒涛に、千数百頭浪死す。各邑々の死者十万人、引く潮に流れ行く崩家材流木、海にいでては、渡島(北海道)にぞ陸続きたる如く見ゆ。さながらの地獄絵図なり。かしこに遺る人の骸に、鴉ぞ唖々として群がり、肉をつばむさまぞ、天なる怒りか、地なる憤怒か、水なるの報復か、ただ、神仏を念ずる身なり...
高橋克彦さんの小説では興国2年、となっていますが、原文の「東日流外三郡誌」では興国元年となっているようです。でっち上げ(偽書)というにはあまりにリアルな描写です。
平成23年の大地震の場合、北海道に陸続する流木ではなくてハワイに届こうかという流木ですが、まるで興国年間の大地震さながら。
写真は4月8日の英デイリーメール紙からです。なお、この太平洋横断中の「崩家材流木」、タイヤ、プラスチックのおもちゃなどの漂流予測の記事については、英語版のブログをご覧ください。
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