6月から7月にかけて測定していたのを今更発表するまぬけさというか卑怯さはいったん措いておくとして、ここで忘れてならないのは、放射性テルル(テルル129m)、放射性銀(銀110m)は、3月の時点で東北関東と中部の一部の地域にまで広く降っていたことです。(もっとも発表されたのは8月近くになってからですが。)
「環境放射能水準調査結果(月間降下物平成23年3月分)」のデータを文部科学省がやけに静かに公表したのが7月29日午後2時。銀110mのシンボルは Ag-110m、テルル129mは Te-129m です。表を見ると、秋田、岩手、山形から長野、静岡まで、広い範囲で検出されています。
さて、最初にリンクしたNHKニュース、放射性テルルとセシウム137の割合に触れ、こう言っています。
『このうちテルルは、原発の北西方向や南方向に拡散していて、セシウム137との比率は原発からの距離に関係なく5分の1程度とほぼ一定でした。ただ、南方向の沿岸部では高くなる傾向があったということです。』
高くなる傾向どころか、実際高いのです。セシウム137との比率がNHKの言うとおり5分の1、つまり0.2だとすると、いわき市から茨城県北部に伸びる黄色、オレンジ色、赤色の点は、この比率が0.8以上(黄色)、1以上(うすいオレンジ)、2以上(濃いオレンジ)、3以上(赤色)の場所を示しています。つまり、テルル129がセシウム137の3倍あった場所がある、ということです。NHKも、『といううことです』、などと寝ぼけたことを言っていないで、文科省の発表を見れば分かります。(下の地図参照。)
群馬大の早川先生の放射性物質拡散ルートマップを見ると、3月15日午前の帯と重なる感じでしょうか。
テルル129mの半減期は約34日、銀110mの半減期は約250日。文科省は、セシウムの50年間積算実効線量よりはるかに低いため、セシウムの沈着量に注目すればよい、と言っています。
そう今更言われても、4月、5月に裸足、素手で田植え体験学習をした幼稚園児、保育園児、小学校児童が東北、関東に数多くおり、その子供たちはヨウ素、セシウム、ストロンチウム、テルル129m、銀110mの入った水田で体験学習をしてしまった可能性があるわけですね。しかも、放射性テルルとセシウム137がほぼ同量以上で沈着した地域は福島南部から首都圏まで延びる広い地域である可能性(早川ルートマップ3月15日午前ルート)も。半減期の比較的短いテルル129m、銀110m入りの田植え当時の土壌の放射線量は、現在よりよほど高かったことでしょう。
文科省の能書きによると(5ページ目):
『ヨウ素131、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、プルトニウム以外の放射性核種の測定結果や放射性物質の移行調査の結果については、これまでも専門家の意見を踏まえて測定結果の妥当性の検証や成果の取りまとめ方等について検討を行っており、今後、検討結果を踏まえて、本調査の結果を集約した報告書を作成し、公表する予定である。』
とのことですので、これからも福島原発から放出した核種の調査結果が小出しに出てくるのでしょう。とき既に遅しとはよく言ったものです。放射性銀は、6月に保安院が発表した「大気中への放射性物質の放出量試算」の表には含まれていません。
(そういえばこの表に載っていない核種のなかには、ウラニウムがありますね。)
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