Saturday, February 4, 2012

「福島第1原発事故による低レベル放射線の鳥などの生物への影響」は既に研究されていた模様 (英インデペンデント紙記事訳)

しかも、来週発表される予定の論文の結論は
  • 3月から7月の主要な繁殖期間中に放射能が鳥に即座に悪影響を与えた

  • 個体数への影響は日本の被災地のほうがひどい

というもの。

昨日NHKニュースで流れたこのニュース (堀 潤 さんのツイート連投より):

東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質が、周辺に生息する生物にどのような影響を与えているのかについて調べるため、アメリカの大学の研究チームが、ことし5月から、福島県などで本格的な調査を始めることになった。

調査に当たるのは米国サウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授の研究チーム。ムソー教授の研究チームはチェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質が周辺地域に生息する鳥や虫、植物等の生物にどのような影響を与えているのかを13年以上にわたり継続的に調査。

ムソー教授の研究チームが、チェルノブイリ原発事故による周辺地域への影響について調査した結果、毎時1マイクロシーベルトから3マイクロシーベルトといった低い線量の地域でも、鳥や虫などの生物に個体数の減少や異常が見られたとしている。

サウスカロライナ大学のムソー教授の研究チームは、東京電力福島第一原発の事故でも、鳥や虫などの生物を長期に渡って調査することで、低い線量の放射線の影響が分かるのではないかとみており、日本の研究者などの協力を得ながら、長期的に調査したいとしている。

研究チームを率いるムソー教授は、調査に向けた準備のため、今月中旬から福島を訪れる予定で、「鳥などの生物は、世代交代のペースがヒトと比べて早く、放射線が遺伝に与える影響も調べることができる。ヒトへの影響を調べるうえでの手がかりになる」と話している。

いかにも今年の5月からアメリカの研究者が日本側の協力を得て行うような書きぶりです。

しかし、英国インデペンデント紙の2月3日付けの記事によると、ティモシー・ムソー教授を初めとするデンマーク、日本の研究者を含む研究グループは(おそらく)昨年から福島で調査を行っており、来週論文が発表される、と言うのです。以下、デビッド・マクニール記者のレポート私訳:

Researchers working around Japan's disabled Fukushima Daiichi nuclear plant say bird populations there have begun to dwindle, in what may be a chilling harbinger of the impact of radioactive fallout on local life.

破壊された日本の福島第一原発の周辺地域で調査をしている研究者チームによると、周辺では鳥の個体数が減り始めている。これから地域の生物に放射性降下物の影響が出てくることを告げる恐ろしい前触れかもしれない。

In the first major study of the impact of the world's worst nuclear crisis in 25 years, the researchers, from Japan, the US and Denmark, said their analysis of 14 species of bird common to Fukushima and Chernobyl, the Ukrainian city which suffered a similar nuclear meltdown, showed the effect on abundance is worse in the Japanese disaster zone.

今回の研究は、過去25年間で世界最大の核危機の影響を調べた大規模な研究としては初めてのものである。日本、アメリカ、デンマークの研究者からなるチームは、同じようなメルトダウンを起こしたウクライナのチェルノブイリと福島の両方に共通する14種類の鳥を調べ、個体数への影響は日本の被災地のほうがひどいことを示した

The study, published next week in the journal Environmental Pollution, suggests that its findings demonstrate "an immediate negative consequence of radiation for birds during the main breeding season [of] March [to] July".

来週『エンヴァイロンメンタル・ポルーション(環境汚染)』誌に掲載予定のこの研究は、「3月から7月の主要な繁殖期間中に放射能が鳥に即座に悪影響を与えた」ことを示唆している。

Two of the study's authors have spent years working in the irradiated 2,850 sq metre zone around the Chernobyl single-reactor plant, which exploded in 1986 and showered much of Europe with caesium, strontium, plutonium and other radioactive toxins. A quarter of a century later, the region is almost devoid of people.

研究論文の著者のうち2人は、チェルノブイリ原発周辺に広がる2,850平方メートルの汚染地域内で長年研究を続けてきた。チェルノブイリは1基の原子炉をもつ原発で、1986年に爆発してヨーロッパの広い範囲にセシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどの放射性の毒物をまき散らした。事故から四半世紀たった今、その周辺地域にはほとんど人が住んでいない。

Timothy Mousseau and Anders Pape Moller say their research uncovered major negative effects among the bird population, including reductions in longevity and in male fertility, and birds with smaller brains.

ティモシー・ムソーとAnders Pape Mollerは、自分たちの研究によって鳥の個体群に深刻な悪影響が生じていることが明らかになったと語る。その悪影響には、寿命の低下、雄の生殖能力の低下、通常より脳が小さい鳥の誕生なども含まれる。

Many species show "dramatically" elevated DNA mutation rates, developmental abnormalities and extinctions, they add, while insect life has been significantly reduced.

多くの種で、DNA突然変異率の「大幅な」上昇、発達異常、および絶滅が見られるとともに、昆虫の寿命も著しく低下していると2人は付け加える。

(H/T東京茶とら猫)

日本の生物学者よがんばれ、と怒っていた東大の森敏博士は、いっそうお怒りになるのではと思います。SPEEDIの情報が米軍にいち早く開示されていたのを思い起こされる方もいらっしゃるでしょう。

SPEEDIの情報が米軍に開示されたのは、米軍が資料を出してくれ、と外務省を通じて要求したので出た、というのがどうも朝日の「プロメテウスの罠」を読む限りの事実のようです。管政権の誰も、SPEEDIの情報を出せ、と要求しなかったので出なかった、という間抜けな話。

福島における生物への放射能の影響調査も、日本の生物学者はやらせてくれ、と言わなかったのか、森敏博士やその他少数の学者を除いて行こうともしなかったのか、行くなといわれていたのか(実際森先生などは行かれていますが)、さて真相は。

11 comments:

  1. この研究では、日本の被災地が津波で壊滅状態になり、鳥の住み処がなくなったり餌が少なくなったりといった影響は考慮されているのでしょうかね?

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  2. >SPEEDIの情報が米軍に開示されたのは、米軍が資料を出してくれ、と外務省を通じて要求したので出た

    米軍「資料を出してくれ」→文科省「ただちにSPEEDIの情報を出します!」

    官邸「資料を出してくれ」→文科省「“SPEEDIの情報を”とは言われなかったので…」

    どの国の省庁だ文科省?

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  3. 気のせいかもしれないけど、今年はスズメあんまりみかけないんだよね

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  4. 寿命や生殖能力が1年未満の調査で分かるとは思えないので、今回の調査では個体数の減少だけ確認して、今後本格的に調査するということではないでしょうか。
    他のブログや報道でも、この科学者たちのチェルノブイリでの調査結果と今回の調査がゴチャ混ぜで訳がわからなくなっていると思います。

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  5. @glasscatfish、経緯をご本人の教授から直接伺っています。別途ポストにする予定です。

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  6. 我が家では毎年お正月に、スズメがしめ縄飾りの稲穂をつつきに来ていたのですが、一昨年のしめ縄では稲穂が丸々残っていたので不気味に感じてネット検索したことがあります。

    2010年1月11日『らばQ』
    「いったいなぜ?日本のスズメが10分の1に激減…環境省の調査結果」
    http://labaq.com/archives/51413043.html

    少なくともスズメの減少は3.11以前から指摘されていました。
    脱原発派の私だからこそ、かえって「なんでもかんでも放射性物質のせい」というような感情的な論調には持っていきたくないと思います。
    ただ、近年の日本のスズメの減少がそもそも原発施設急増による(低濃度放射性物質の)排気の影響だったのではという考察はできるかもしれませんね。

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  7. 外から見ていると、何がどうあっても放射能のせいにはするものか、という感情論のほうが目につきますね。

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    1. >外から見ていると、何がどうあっても放射能のせいにはするものか、という感情論のほうが目につきますね。

      この一文は、どこの どなたのことを 書かれたものでしょうか?
      位置的にも日付的にも私のことをおっしゃっているように見えてしまうのですが、もしそうなら、ブログ主さまこそが感情的になってしまって私の最後の文章もお目に入らなかったのだなと、とても残念に思います。
      私のことを原発推進派と勘違いなさってらっしゃいますか?
      私のブログは脱原発の文章で埋まっておりますよ…

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    2. 特に誰を指したわけでもなく、感情的というのはちょっと意味が分かりかねますが。

      私のブログには推進派であろうと反原発であろうと、福島事故の実態、汚染の実態を知りたい人たちが世界から来ています。日本語ブログの読者も日本からだけではありません。そのような人々が日本の放射能汚染と政府・メディアの対応を見て、「何で放射能のせい、という選択肢を無理やり外しているのか、分からん」と言っています。原子力研究者の人たちもいますが、同じことを言います。「確かに微量で影響は無いのかもしれないが、調べもしないで結論など出せない」。

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  8. > 確かに微量で影響は無いのかもしれないが、調べもしないで結論など出せない

    ですよね~。
    だから、「近年の日本のスズメの減少がそもそも原発施設急増による(低濃度放射性物質の)排気の影響だったのではという考察はできるかもしれませんね。」と書いたのです。
    そこにブログ主さまから同意コメントが返って来なかったのが寂しかったのですよ、私は(笑)

    福島や関東で鼻血が増えたという話についても、その事象を伝えようとしないメディア各社の姿勢や、「調べもしないで」即座に "原発事故で鼻血などありえない" と一刀両断する(自称)医師たちがネットに出没したことに、大きな疑問を抱いています。

    その一方で、昨春、濃い放射性物質が飛んだはずの地域で瓦礫に小蝿が大量発生したというニュースを見たときには「そんな小さな虫たちが平気で生きていられるなら…」とちょっと胸をなでおろしたものですし、
    逆に、「警戒区域で野良化した飼い犬は元気だったけど、猫の死体をいくつも見た」という話も強く印象に残っています。猫は犬と違って体表を毎日こまめに舌で手入れしますから、大気汚染がそのまま体内汚染に直結するのではないでしょうか。

    いろいろなことについて、いまは「白かもしれない」し「黒かもしれない」。双方を念頭に置くべき時期ですよね。

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  9. >いろいろなことについて、いまは「白かもしれない」し「黒かもしれない」。双方を念頭に置くべき時期ですよね。

    その通りですね。

    がれきの蝿は、ちょっと不気味でした。やたらと大きな蝿だったようですから。昆虫は世代交代が早いので、変化が早いかもしれません。東大の森敏教授の研究をみると、放射性物質の生体濃縮も昆虫では非常に高い。それこそどなたかが蝿を捕まえて調べて欲しかったです。

    最後に物を言うのは、やっぱり科学だと思います。きちんと調査して、公開する、これ以外にはありません。

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