Monday, August 10, 2009

オバマ大統領、人気急降下

ラスミューセン・レポート(Rasmussen Report)は、大統領支持率を毎日計るグラフをサイトに出しています。8月10日月曜日現在の数字はマイナス9、『強い支持』の数字から『強い不支持』の数字を引いた数字です。『支持』は現在49パーセント、『不支持』は51パーセント。『不支持』が『支持』を決定的に上回ったのは7月の下旬、黒人のハーバード大学教授の逮捕を巡ってのオバマ大統領の発言(ケンブリッジ警察をばか扱いした)に反発した人々が思いがけなく多く、不支持率が一段と上がりました。

もっとも、人気降下の最大の原因は、オバマ大統領の進める政策、特に、ヘルス・ケアの改革でしょう。この改革の内容が広まるにつれ、これに反対する一般市民が米国議会上院、下院の議員が開くTownhall Meetingに出かけ、抗議しています。

アメリカでは、医療保険は私的な保険がほとんどで、公的保険は65歳以上のシニアのためのMedicare、低所得者のためのMedicareですが、公的保険はすでに資金が尽きて破産状態。大統領の進める改革では、医療保険をすべて国が運営するHealth Choices Administrationなるものに移管して、大統領が指名するコミッショナーが保険のレベルから治療のレベル、支払いのメカニズムまで、すべて決定する、というものです。このコミッショナーは大統領にのみ報告義務があり、議会は何の権限も持たないのです。

ただでさえ国の保険は破産していると言うのに、すべての医療保険を国の管理下に置いて、どうやって運営するつもりなんでしょうか。

大統領と民主党の計画では、高所得者(この定義がまた問題なんですが)の税引き前の収入に課税して費用をまかなうことになります。更に、所得に関係なく、現在医療保険に入っていない人の税引き前の収入に8.5パーセント課税する、という条項も入っています。保険を提供しない中小企業への追加課税もあります。ヘルス・ケアは「権利」だ、と謳っている割には、その「権利」を行使しない権利は一切認めない、認めないどころか、罰金を科する、と言うわけです。(私は個人的には、ヘルス・ケアは「権利」などではなく、お金で買える商品(Goods)の一つだと思っています。)

私の英語のブログで最近一番ヒットが多いポストは、この改革法案(H.R. 3200)のセクション1233、シニアに対して最低5年毎に、要するにどういう風に生を終えたいか、医者またはNurse Practitionerと相談することを義務付けるセクションです。この医者の相談のガイドラインも前述のコミッショナーが決めます。相談の結果、医者が延命治療を拒否することもあるわけです。また、シニアだけでなく、別のセクションでは障害者に対する治療を限定する条項もあります。

一番呆れるのは、この改革から、議会(議員と大統領、副大統領など)は免除される、という条項です。

そして、まったく胡散臭いのは、ヘルス・ケア業界が賛成に回っていることです。

Townhall Meetingsにやって来る、改革に反対する市民を脅かす意味なのでしょう、下院議長のナンシー・ペローシは、ヒステリックに『反対するのは非国民』、と発言しています。

株式市場はどういうわけか最近上向きですが、アメリカの景気自体はまったく向上している感覚は無く(精々横ばいがいいところ)、この不景気の真っ只中、全世界に対して借金に借金を重ねる真っ只中で、なんで金のかかるヘルス・ケアの改革とやらをしなければならないのか?大統領の『カリスマ性』をまったく感じない私には、まったく分かりません。

昨年の9月末、株式市場が急降下した理由は金融市場でした。金融市場の問題はまったくと言っていいほど何も解決されていません。3月以来株価が毎日のように上がっているので、人々は何となく安心した気になっていますが、タイトなクレジット市場、劣化したアセットの問題はそのまま。改革というならこっちが先だろうに、と私は思いますが、それをしない、ということは、要は「改革」は口先だけ、真の目的は別にある、と見ざるを得ません。

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