5月8日付けのウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、5月6日に米国株式市場が崩壊寸前に追い込まれた経緯を説明しようとしています。
株式市場のフリー・フォール(崩壊)が始まったのはニューヨーク時間の2時40分以降だが、その前、2時を過ぎたあたりから、外国為替市場で極端な動きが出始めていた。[特に、日本円・ドル。]
Procter&Gamble (PG)の大量の売り注文はトレードミスではない。この売り注文がきっかけで、市場指数は更に降下を始めたが、それはHigh Frequency Tradingを行う金融機関がトレードを停止した時間とほぼ一致している。
ダウ工業平均がマイナス500を記録した時点で、このような金融機関のひとつであるTradebot Systems Inc.はトレードを停止した。その他のHFT金融機関数社も同様にトレードを停止した。[Liquidityを供給するという、HFTの謳い文句は単なる謳い文句だったわけ。]
ニューヨーク証券取引所(NYSE)は市場の急激な降下が始まった時点で取引を停止あるいはスローダウンしたが、その結果、次々に入ってくる売り注文を[コンピュータではなく人間のトレーダーが」さばききれず、さばけなかったオーダーはその他のエレクトロニック市場にまわされた。(恐らく、Intermarket Sweep Order)
まわされた先の市場では、通常価格での買い注文はほとんどなく、株式の価格は急激に落下した。[まわされた先の市場は、ナスダックなどの大手公開市場だけはでなく、いわゆるダーク・プールと言われる市場-大手では、ゴールドマン・サックスが主体のDirect Edge、BATS Exchange (NYSE、ナスダックに次ぐ規模)などがあります-が含まれていた様子。]
PGに大量の売り注文を出したのは誰か、どこから注文が入ってきたのか、注文の大きさは?
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の答えは、『わからない』の一言。
また、市場のフリーフォールを止めたのは誰なのか?その点についての言及はまったくありません。
誰が利益を蒙ったのか? Qui Bono? それについての言及も、まったくありません。
ちなみに、金曜日の市場を見ていて面白かったのは、木曜日とは違って市場が下がるたびにどこからか、神経質にも思える買いが頻繁に入っていたことです。特定の銘柄ではなく、市場指数(ETF、指数オプション、先物)を買っていたのでしょう。私は株式スクリーンに200銘柄程度を入れているのですが、スクリーンが一斉に緑色(アメリカでは日本と逆で、上昇している株は緑、下降している株は赤)になるのです。何か、とても無理しているような、不思議な感覚でした。まるで、木曜日の崩壊直前の後、High Frequency Tradingを行う会社がどこからか厳重なお叱りを受け、アルゴリズムを変更して市場が下がるたびに必ず買いを入れるように、と指示されたかのような。
月曜日のアジア市場の開始前にはEUの金融危機対応プランが公表されるとのことですが、アメリカ市場はどう反応するか。2008年10月に米国議会がアメリカの金融危機対応プランを可決したその日から、市場の20パーセントを超す急落が始まりました。株式市場に投資されている皆様、くれぐれもご注意ください。
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