5月24日のアジア各国の株式市場は現在のところ若干の例外(日経平均)を除いて大幅な値上がり。先週金曜日の米国市場(特にダウ工業平均)の上昇を好感して、というのが大方の解説ですが、ちょっとこのチャートをご覧ください。金曜日のダウ平均のIntradayチャートです。
これを見て「好感」がもてる方は、たいしたものです。自然界には通常はこのようなパターンは存在しません。存在するときは、システムがクリティカルなポイントに達しつつある直前です。(カオス理論、最近ではブラック・スワン理論ですね。)
(そういえば、ブラックスワン理論のNassim Taleb氏がアドバイザーを務めるヘッジファンドが5月6日の株式急降下の引き金になったかもしれない、という話、ご存知?英語版のブログにポストを書きました。)
最後の15分の急上昇の背景は、何もありません。格別のニュースも無し、噂も無し。いわば、5月6日の株式市場急降下(アメリカでは最近、『フラッシュ・クラッシュ(Flash Crash)』と呼ばれています)の逆、つまり、Op-Exデーなのにもう一つ冴えない市場に厭きたどこかのファンドがインデックス・オプションか、ミニ先物か、インデックスETFか、インデックスETFのオプションに大量の買いをいれ、それを嗅ぎ付けた他社のコンピュータのアルゴリズム(アルゴ・ボットと呼び習わしています。ボットとはロボットのこと。)が我先に押し寄せて買いに走り、その結果わずか15分足らずで130ポイントの急上昇となったのでは、というのが私の個人的感想です。似たようなことはこの1年の間にほとんど毎日のように起こっていました。
にもかかわらず、金曜日の取引高はOp-Exにしてはぱっとしない取引高でした。木曜日の取引高より高かったのは3主要平均の内ではS&P500だけ。
フラッシュ・クラッシュの逆だから、まあ、フラッシュ・メルトアップ(Meltup)といったところでしょうか。実体はまるでないのです。先物市場が毎晩低い取引高で突然高値を付けているのと同じことです。
5月6日のフラッシュ・クラッシュを目の当たりに実体験したことと、5月7日の、EUの1兆ドルに及ぶユーロ圏およびユーロ救済(Bailout)ファンドの設立のニュース、この二つの出来事以来、どうも『幽霊の正体見たり』といった感じで、特に株式のTechnical Analysisをやっていてもばかばかしくなることが暫しです。
ただ、アルゴ・ボットのプログラムがそれこそニューロ・ファジイである可能性もあるわけで、人間のトレーダーの思考方法を真似しているのかも知れず、だとするとTAのキーポイント(特にFibonacci Retracementなど)はアルゴ・ボットも注目している可能性が大な訳で、その意味ではまるっきり無駄ではないのかもしれません。ただ、先週の金曜日のような市場の動きは、経済、金融、政治など背景のファンダメンタルとはまったく無関係だということを、頭のどこかに留めておいてください。
ちなみに、金曜日の最後の15分間のメルトアップの真っ最中に手持ちの株を売ろうとしたけれどブローカーのシステムがまたもダウンしていて、オーダーはまったく通らなかった、とのエピソードがヤフーのメッセージボードに載っていました。まったく、馬鹿を見るのはいつも一般投資家ばかり。
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