Huffington Postに3月24日に掲載された、米国エール大学予防学研究センター所長のデビッド・カッツ(David Katz)教授が書いた記事です。(ほぼ全訳。原文の英語を確かめるにはリンクをクリック。)
日本の原発事故をきっかけに、放射線の危険性について、また、ヨウ素を使った放射線の摂取防止についていろいろ混乱した情報が流れているので、特に放射線医学というよりは一般的な医学の見地から分かりやすく説明したい、と前置きした後、カッツ教授は、
1.甲状腺ホルモンは甲状腺で、ヨウ素を使用して作られる。恒常的なヨウ素欠乏の状態が続くと甲状腺腫、甲状腺機能低下症が引き起こされる。
2.甲状腺は数種のがんにかかりやすい。甲状腺は新陳代謝が活発なため、体内の他の器官よりもがんにかかりやすいのである。甲状腺の細胞は特に放射線の影響を受けやすい。
3.ウラニウム、あるいはプルトニウムの核分裂は幾種類もの放射性物質を生み出すが、その中のひとつが放射性ヨウ素、特にヨウ素131である。
4.甲状腺は、安定ヨウ素と放射性ヨウ素の区別をつけることが出来ない。そこで、放射性ヨウ素があれば、それを安定ヨウ素を取り入れるのと同じように取り入れてしまう。この性質を使って、きちんと制御された医療環境で放射性ヨウ素を使っていろいろな甲状腺の病気を治療する。ところが、原発炉の崩壊などによって引き起こされたような、制御されていない環境では、放射性ヨウ素はその放射線で甲状腺の細胞を傷つけてしまう可能性がある。そのように傷ついてしまった細胞は、将来がんをひきおす可能性がある。
ヨウ素の補給、特にヨウ化カリウムの補給は、2つの面で有効である。ひとつは、甲状腺が安定したヨウ素ですでにいっぱいになっていれば、放射性ヨウ素が来ても入り込む余地がないこと。
もうひとつ、ヨウ素は甲状腺の機能に不可欠で、ヨウ素が足りないと甲状腺機能低下症状につながることがあるが、逆にヨウ素が多すぎても甲状腺機能低下症になることがある。この矛盾した反応は「ウルフ・チャイコフ効果」(Wolff-Chaikoff effect)と呼ばれていて、発現するのにいくつかの段階があるが、その段階のひとつに、そこにあるヨウ素から甲状腺ホルモンを造る過程を抑制してしまう、というのがある。この抑制は短い時間しか続かないが、その間はヨウ素が甲状腺に取り込まれるのが阻止されるのである。[つまり余計にヨウ素を取っておくことで、ヨウ素が甲状腺ホルモンに作り変えられる過程を止めることが出来る、と言うわけです。]
現在、アメリカではヨウ素の摂取をする必要はまったくない。最後に、2点ほど、注意しておきたいことがある。ひとつは、安定ヨウ素の摂取が放射性ヨウ素がすでに取り込まれた後だと、安定ヨウ素の摂取がかえって甲状腺の活動を低下させ、放射性ヨウ素が甲状腺内にとどまるのを長引かせてしまう可能性が多少あること。もうひとつは、安定ヨウ素は甲状腺を守るだけであって、体内の他の器官を放射線の害から守ってくれるものではないことである。
ヨウ素を使った防御はヨウ素131に対して有効である。影響を受けている日本の地域の住民はヨウ素を摂取するべきである[といってカッツ教授がリンクしているのは、テレグラフ紙の、金町浄水場からのヨウ素131検出で東京からペットボトルが売り切れた話]。われわれアメリカ人は摂取はするべきでないが、メカニズムを理解し、万が一そのような事態になった時のために手元においておくべきだ。もちろんそうならないことを望むが。
ここで注意に値するのは、カッツ教授は、
放射性ヨウ素が問題になるのは子供だけだ、とはまるで言っていないこと。
また、ヨウ素が足りていない状態であれば、そこに放射性ヨウ素が入ってしまう、と言っていること、つまり、年齢にあまり関係ないのです。子供は新陳代謝が活発、つまり甲状腺が活発なので、より放射性ヨウ素が入りやすいし、入ったら影響をより受けやすい、と言うことです。
もうひとつ、放射性ヨウ素がすでに体内に入っていると、あとから安定ヨウ素を摂取するとかえって逆効果になる可能性もある、といっているところです。
とはいえ、安定ヨウ素剤は政府なり公的機関が飲めといったら飲むように、勝手に飲むとかえって害がある、という話も聞きます。さて、どう判断するか。(政府が飲めと言ったときは時すでに遅し、になっているような...。)
現にいくら微量とはいえ放射性ヨウ素は東京にも降っているわけで、すでに遅いということになるんでしょうか?それともまだ微量だから間に合う、と言うことなんでしょうか?返事をもらえるかどうか分かりませんが、カッツ教授にメールを出して見ようと思います。万一返事が来たらブログに載せます。
(ヨードチンキを念のためにおなかに塗っとく分にはどう転んでもそう害もないような気もしますが。)
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