東大児玉教授が協力してきた福島県南相馬市の除染計画を、アメリカのABCニュースが記事にしています。茶とらさんにさりげなく渡したらちゃんと日本語訳に化けていました。
オリジナル記事(英文)はこちらです。
東京茶とら猫さんの日本語訳全文はこちらです。
以下、日本語訳からの抜粋:
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ABCニュース
2011年8月12日
記事:フジタ・アキコ
ボランティアたちに話をする児玉龍彦の声は震えた。ここは南相馬市の石上第一幼稚園。事故を起こした福島第一原発から約25キロの距離にある。
児玉は東京大学のアイソトープセンター長だ。学校を除染する方法を住民に指導している。これまでに何度も同じ説明をしてきたが、マスクをつけた母親や、線量計片手にメモを取る父親の姿を見るたびに、涙が込み上げてくる。
「これはすべて皆さんの健康を守るためです」と児玉は説明する。「皆さんにも皆さんの健康にも悪影響が出ないようにしたいんです。私たちが子供を守らなくてはなりません」
児玉は南相馬市との共同プロジェクトを率いて、政府が定めた強制避難区域のすぐ外側の地域で除染作業に当たっている。参加するボランティアとともに、市内のあらゆる幼稚園や学校の放射線量を下げて、最も影響を受けやすい子供たちがこの秋に戻ってこられるようにするという、壮大なプロジェクトだ。
そのためには、空中から測定して地面の線量を調べ、汚染状況の地図をつくり、それに応じた除染をするようにボランティアの訓練をしなくてはならない。除染はじつに骨の折れる仕事だ。何時間もかけて高圧洗浄機で壁を洗い、遊具を洗い、汚染のひどい校庭の土をシャベルで取り除く。デッキブラシで屋根をこすり、作業を少し進めるごとに放射線量を測定する。これを何度も繰り返して、線量が毎時0.1ミリシーベルト未満になるまで続ける。このレベルなら子供に安全とみなされている。
政府が指針を示さないことに業を煮やして、南相馬市は数千万円の予算を組み、ボランティアを中心に児玉のチームの支援のもとに除染を進める計画を立てた。コワタ・ユカリはそうしたボランティアのひとりだ。彼女の自宅は福島第一原発から16kmのところにある。3月に政府の避難命令が出てから、高齢の両親とともに仮設住宅で暮らしてきた。
「この辺りに放射能が5年も10年も残るようなら、共存していくすべを身につけないといけません」とコワタは語る。コワタは南相馬市の職員で、幼稚園や保育園を監督する仕事をしている。「子供たちに戻ってきてほしいなら、子供にとっても安全な場所にするための方法を見つけなくては」
チェルノブイリ原発事故の影響を10年間調査したジョージア大学のチャム・ダラス教授は、福島の学校で全体的な線量が下がったとしても「ホットスポット」は残ると指摘する。南相馬市の除染方法は短期的には効果があっても、危険なほど高線量の地域では高圧洗浄やブラシでこすることが適切な解決策とはいえないとも話す。
「チェルノブイリでも同じことをしましたが、うまくいきませんでした」とダラスは語る。「放射性核種があちこちに移動するだけです。5年たったらまた除染、10年たったらまた除染。25年たってもまだ放射性核種の処理をする羽目になります。移動するに任せるのではなく、最初の年に取り除くこともできたのに、です」
南相馬市の学校から放射能をなくすには、多面的な対策が必要だと児玉は言う。それでも彼のプロジェクトは立派な前進だ。これまでの政府の対応よりは一歩先を行っている。
ボランティアが仕事を終えて帰り、誰もいなくなった教室で、児玉は放射線量を測っている。天井にガイガーカウンターを向け、針が止まるのを待つ。そして微笑んだ。カウンターは「0.12」を指している。2週間前の線量と比べると60%下がった。
ささやかな勝利。だが児玉はこの戦いが今後何十年も続くと考えている。
「南相馬市については私たちはほとんど心配していません」と児玉は語る。「ですが、福島原発のすぐ近くにある市については、場所によっては50年は人が住めないかもしれませんね」
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私が個人的に引っかかるのは3点。
南相馬市が行っているのは児玉教授の言う「緊急の除染」ですが、これをもってどうも「恒久的な除染」として南相馬市が扱っているふしがあること。つい先日も、住民の内部被曝調査で最高は1ミリシーベルト、それも一人だけ、だから南相馬市内は「生活に支障ない環境」、という発言を、南相馬市長はなさっていました。
2点目は、チェルノブイリの調査をしたアメリカの学者が、チェルノブイリ事故でも同様の除染(高圧洗浄機、デッキブラシ、土の削り取りなど)をしたが効果はなかった(オリジナル英文:”it didn't work”)、としていること。放射能が次の場所に移動するだけだ、と。福島第1原発から広範囲に出てしまった放射能が他の市町村から風、雨、水に運ばれて移動してくれば、せっかく南相馬がきれいにしてもまた除染のやり直し。南相馬から出て行く放射能は他の市町村に移動。
確か国会証言では、児玉教授は、取り除いた放射性の土を東京まで持って帰ってきている、とおっしゃっていましたが、その持って帰ってきた土はどうなるのでしょうか。この場合、放射能が南相馬市から東京(のアイソトープセンター)に長距離移動したということになります。
最後の1点。記事の中で、ボランティアの方が「この辺りに放射能が5年も10年も残るようなら、共存していくすべを身につけないといけません」とおっしゃっていますが、放射能と共存など、可能なのでしょうか。彼女が何を指して「共存」と言っているのか、分かりませんが、外部自然放射線がせいぜい毎時0.03マイクロシーベルト程度だった地域でずっと暮らしてきた人々に、5年10年で人工放射線からの外部、内部被曝に対処する進化などが起こるとも思えません。(まあ、起こる事を期待している某教授もいらっしゃるかもしれませんが。)
第一、5年10年で済むとも思えません。セシウム137、ストロンチウム90の半減期は約30年、プルトニウムに至っては、人間の時間感覚では把握できない半減期です。
薄く、広く、放射能を全国(全世界)に拡散してしまえば何とかなる、と政府も思い、そのように着々と布石を打ち、国民も半ばあきらめているような気配があるのが感じられます。
全く同感です。
ReplyDelete今の政府、役人が望んでいるのは、自分たちは労力もお金も使わず、福島県民が「除染すれば住めるようになる」と信じ込んで「勝手に」ボランティアで一所懸命、除染作業をすることです。
児島教授も結果的に政府の思うつぼになっていると思います。
本来は、政府は住民全員を避難させて(もちろん生活の補償もする)、消防や自衛隊に「恒久的な除染」を行わせるべきなのです。
dream on by aerosmithを聞きながら書いています。児玉先生の行動は賞賛に値します。なぜなら避難したくてもできない人たちが「より健康的な」生活をするために、ただそれだけのためにされていると思えてならないからです。
ReplyDelete消防や自衛隊に? 住むなら自分達ででも除染。もう他人まかせではなにも進まない所に日本は来ているんだよ。
ReplyDelete南相馬市議大山弘一
ReplyDelete何時も拝見しております。貴重な情報を有難うございます。
除染中の小学校、幼稚園周辺住民から連絡があり急行。
水煙、土埃で周辺住宅が包まれてしまいました。
除染の専門家ではなく 単にボランティアだそうで 責任が無いとのこと。共同記者会見まで開いて・・・びっくりしました。
住民の誰も除染できると思っていません。 捨て場が決められていず その場に仮おき。2階の屋根に上り高圧洗浄機をかけようなどというボランティア精神の住民は誰も居ません。
補助金も200件にたいし50万円と 話にならず・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=O-VMhQFn00g
大山様、「除染中の小学校、幼稚園周辺住民から連絡があり急行。
ReplyDelete水煙、土埃で周辺住宅が包まれてしまいました。除染の専門家ではなく 単にボランティアだそうで 責任が無いとのこと。共同記者会見まで開いて・・・びっくりしました」、それは一体いつの話ですか?もしかして児玉教授と南相馬の市長さんがやった共同会見のことですか?
それはあまりにひどい。除染どころか汚染をばら撒いているわけですか。
捨て場の件ですが、福島県の汚染土壌の総量1億立方メートルという数字がありましたね。大変大きな数字に見えるが、5kmx2kmx10mの盛土をすれば埋め込む事ができますね。簡単じゃないですか。東京都が計画しているガスタービン発電機施設の嵩上げに使えば、東南海地震の津波対策として一石2鳥。福島原発の最大受益者は東京湾周辺地域だったですよね。
ReplyDelete福島原発の最大受益者は東京電力と国です。高い電気料金を払わされている国民、都民ではありません。
ReplyDelete福島原発に持っていって原発をその土で埋めたらどうですかね。