Sunday, November 20, 2011

東京新聞: 除染待てず田起こし 福島の一部 農水省は静観

「福島の一部」というのは、緊急時避難準備区域だった地域。9月30日付けで解除されましたが、その後の目処が必ずしも付いているわけではなく、農地(畑、水田)の「除染」方法が確立されているわけでもありません。そこで、痺れを切らした農家の方々が、田をこれ以上荒らさないようにとの田起こしなのだと思いますが、そこで田起こしというのはどれくらいの深さでやるものなのだろうか、とざっとネットで調べてみました。

結果は10センチから20センチ。これで表層5センチにあったであろう放射性物質が少なくとも10センチの深さまで混ざった可能性。田起こしは作付けまで数回行われるものだそうです。

福島県の土壌中の放射性物質はセシウムだけでなく、既に公表されたストロンチウム、放射性銀、場所によっては微量のプルトニウムを含んでいます。その他、文科省が今後も随時発表する、と言っているものの現時点ではまだ未発表の核種もあります。

東京新聞11月18日付け記事

土壌に放射性物質の蓄積が確認されている福島県の水田の一部で、除染をしないまま、土をかき混ぜる「田起こし」が進められていることが本紙の調査で分かった。国などによる除染の実施時期が不透明で、雑草が茂り土地が荒れるのを恐れた農家が行っている。汚染は表土近くに集中し適切に除染すれば安全な農地に戻るが、混ぜると放射性物質が拡散、除去が困難になり汚染長期化の恐れもある。 

 農林水産省も把握しているが、担当者は「田起こしをして下の土に放射性物質が混じっても根さえ汚染土に触れないよう深く耕せば、問題ないのではないか」と、静観の構え。ただ、実際にそうした耕作が可能なのか確認はしていないという。

 十月まで緊急時避難準備区域だった南相馬市原町区で本紙が取材した結果、二割ほどの水田で田起こしが行われていた。同じく準備区域内だった他の四市町村でも、自治体やJAへの取材で、楢葉町を除く田村市と広野町、川内村で田起こしの事例が確認された。

 これらの地域では福島第一原発事故後、無条件に水田に作付け制限がかかり、荒れ放題の状態だった。

 汚染土壌は地表の土を除去するか、表土と、作物の根が触れない深部の土を入れ替える「反転耕」で耕作可能となる。しかし、安易に田起こしをすると放射性物質が根が触れる範囲にも拡散。除染が極めて難しくなる。

 厚生労働省は食品による内部被ばくの規制値を従来の五分の一に厳しくする方針。それに伴い現在の作付け制限値(放射性セシウム濃度が土壌一キログラム当たり五〇〇〇ベクレル)も厳格化の方向で見直しが必要となる可能性が高い。

警戒区域、避難区域以外の福島県の地域はほとんどすべて、今年の米の作付けを行い既に収穫も終わっているようですが、考えてみれば作付け前の田んぼの準備で今年の春に田起こしをしたはず。宮城県の話ですが、田に放置しておいた稲わらを春に鋤きこんだ農家もあったようです。

たとえ土壌中のセシウムがキロ当たり5000ベクレルを超えていた場所(で計測されなかった場所)でも、20センチの深さまで土を混ぜれば表層5センチのセシウムの量は単純計算で4分の1になるわけで、元が5000ベクレルの土壌は混ぜた後は1250ベクレルの土壌。政府の使った土壌から米への移行係数0.1を使っても米のセシウムは125ベクレル、福島以前の過去の例からの移行係数0.01~0.001を使うとわずか12.5~1.25ベクレル。

農水省は旧緊急避難区域での秋の田起こしを静観、との東京新聞の記事ですが、春の時点で避難区域以外の田起こしも静観した農水省ですからまあ驚くには値しないでしょう。

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