東大農学部名誉教授森敏博士からの追加情報では、
福島市渡利地区の山中で捕獲したジョロウグモも、放射性銀(Ag-110m)を300倍濃縮していた。
生物は、銅の替わりに放射性銀を取り込んで体内での酸素の運び手に使っているのではないか。
とのことです。(教授からの最初の情報はこちらのポストでどうぞ。)
1点目も興味深いのですが、より深刻なのは2点目。ジョロウグモなどの昆虫、エビ、カニなどの節足動物は哺乳類と違って「ヘモシアニン」という物質を酸素の運び手に使うのですが(哺乳類は「ヘモグロビン」)、それには銅イオンを必要とするのだそうです。下の周期表で分かるように、銅と銀(さらに金)は同系列。銅の代わりに銀(この場合は放射性銀)を取り入れて使っているのでは、という考察です。さらに教授は哺乳類でも、警戒地域の牛の肝臓から高濃度で放射性銀が発見されたニュースに触れ、同様に肝臓で銅を利用する酵素が銅の代わりに放射性銀を利用してしまっているのではないか、ということです。
小生らは、先日このWINEPブログで、飯館村のジョロウグモから高濃度の放射性銀(Ag-110m)を検出したことを報告した。
その後の研究で、飯館村でなく福島市渡利地区の山中で捕まえたジョロウグモも、やはり放射性銀(Ag-110m)を、約300倍濃縮していた。だからジョロウグモによるAg-110mの体内濃縮は再現性が確認された。
先日、再度ジョロウグモの大量捕獲を狙って,飯館の現地に出かけたのだが、すでに処処の林内のクモの巣はすすけて、一匹のジョロウグモも見つけることができなかった。すでにクモは冬に向かってどこかに姿を消してしまっていた。
さてここからは銀がなぜジョロウグモに濃縮されたかの考察である。
イカやタコなどの軟体動物の場合はリンパ液の酸素の運び手がヘモグロビンではなく、ヘモシアニンである。哺乳動物の血中ヘモグロビンはその酸素の結合部位に鉄イオンを必要とするが、エビ・カニなどの節足動物やヘモシアニンの場合は銅 (Cu) イオンを必要とする。
銅 (Cu)・銀(Ag)・金(Au)は周期律表では1B系列に属している。であるから、ヘモシアニンを酸素の運び手としている生物は銅のかわりに銀をも使いうる可能性が高い。血液が赤くないジョロウグモはヘモシアニンを酸素の運び手として銅の代わりに銀も利用できてしているのではないか? だから放射性銀を体内摂取して利用しているのではないか。
と思っていたら、以下の日経新聞の記事によれば、本日東北大学のグループが、高濃度汚染警戒区域の野生化した牛の肝臓から放射性銀を検出したと報告している。肝臓の放射性銀の濃度は血中濃度の25倍と述べている。一方セシウムは血中濃度の20~30倍である。
草食動物である牛は、東電福島原発から20キロ圏内で暴発原発からの直接の放射性降下物で高濃度汚染した雑草や汚染土を直接舌でなめて摂取したため、強く銀汚染したのだと思われる。
20キロ圏内の避難区域の土壌の放射性セシウム(Cs-134,Cs-137)値や放射性銀(Ag-110m)値は文科省の発表では実にさまざまである。、かつ、牛は20キロ圏を広範囲に移動していると考えられ。なので、牛の体内で放射性銀がどれだけの割合で生物濃縮しているのかを考察することは少し困難を伴うだろう。
牛の場合は体組織ごとに個々の放射性物質の濃度が測定できるが、残念ながらジョロウグモの場合は総重量が1g以下なので、組織ごとではなく体全体での放射性物質濃度でしか分析できていない。
牛の場合、なぜ放射性銀が肝臓に蓄積していくのであろうか? 哺乳動物の場合、銅の臓器中濃度は肝像が最も高く、脳、心、腎の順である。また、銅を活性中心にもつ酵素はSOD(superoxide dismutase)など20種類ぐらいある。これらの酵素は肝臓に凝集されている。おそらく牛の放射性銀はこれらの酵素の活性中心の銅の代わりに使われているのだろうと推測される。
小腸からの放射性銀の吸収も銅のトランスポーターを経由して血中に取り込まれているだろう。血清のセルロプラスミンと結合して、血中を運ばれているのではないだろうか。
11月12日付け日経の記事はこれです。(Savechild.netさんでの引用から。日経新聞もよく記事が消えますので。)
東北大学加齢医学研究所の福本学教授らのグループは、福島第1原子力発電所の事故に伴い警戒区域に指定された地域で野生化した牛の内部被曝(ひばく)状況を調査した。放射性セシウムが筋肉に多く蓄積しており、濃度は血液中の20~30倍だった。セシウムの濃度は親牛に比べて胎児では臓器にかかわらず、ほぼ 1.3倍高いことも分かった。
別の2種類の放射性物質も腎臓や肝臓に集積していた。研究成果は13日に仙台市で開く国立大学協会防災・日本再生シンポジウム「放射性物質の拡散と大学人の役割」で発表する。
研究グループは8月下旬から9月半ばにかけて警戒区域内で、屋内で飼っている牛や野生化した牛計26頭を捕獲し、その胎児4頭を含め内臓や筋肉、血液中の放射線の被曝線量を測定した。
放射性セシウムは筋肉にたまりやすいといわれてきたが、今回の調査で改めて裏付けられた。血液中の濃度が1キログラム当たり60ベクレルの 場合、ももの筋肉の濃度は同1800ベクレルだった。舌や肝臓などの濃度は筋肉よりも低く、血中濃度の10倍程度。甲状腺には放射性セシウムはほとんど沈着していなかった。
ほかに「放射性テルル129m」が腎臓、「放射性銀 110m」が肝臓にたまっていた。放射性テルルは26頭中5頭でごく微量検出。放射性銀 は26頭すべての肝臓に蓄積していた。被曝線量はほとんどが1キログラム当たり100ベクレル以下だったが、最大同500ベクレル蓄積している牛もいた。 肝臓にたまった放射性銀の濃度は血中濃度の25倍だった。放射性のテルルと銀の内部被曝状況が分かったのは初めてという。
内部被曝線量は屋内飼育より、野生化した牛のほうが高かった。放射性物質に汚染された草を食べたり水を飲んだりしたとみられる。
研究グループは今後も調査を続け、ぼうこうなどの内部被曝の実態を詳しく分析する計画。福本教授は「放射性テルルは血中では検出されなかった。放射性セシウムや放射性銀については血中濃度を測れば、筋肉や肝臓にどの程度沈着しているか予測できることが分かり、人にも応用できる可能性がある」 と話している。
銅の含有量が多い食品一覧。
ReplyDeletehttp://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/copper.html
牛レバー、ダントツですね。
胎児が1.3倍、、、、。
ReplyDeleteあと血液検査でセシウム検査すれば、肉のセシウム量が推測できるのでは、、。