これを、読売は、単に東電国有化の話に落としたわけです。翌日の12月16日に野田政権が「冷温停止状態・事故収束」を宣言する予定だったのですから、さぞ都合が悪かったことでしょう。そこで、一番今となっては害のない、3月4月時点での再臨界に若干触れた、ということなのではないでしょうか。
消えないうちに記録のためにコピーしておきます。
宇宙人、とあだ名されるらしい元首相ですが、原発事故に関してはしっかりしたことを書いていらっしゃるようです。(地下原発推進だけはおやめください。)
記事の住所はここ: http://www.natureasia.com/japan/nature/specials/earthquake/nature_comment_121511.php
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Nature 480, 313-314 (2011年12月15日号)
doi:10.1038/480313a
平智之と鳩山由紀夫は、福島第一原発事故の真相を科学者たちが究明するためには、これを政府の管理下に置くしかないと主張する。
平 智之、鳩山 由紀夫
2011年3月11日の地震と津波に続いて福島第一原子力発電所で発生した事故は、日本と世界の原子力の未来にとって、きわめて重大な出来事である。この深刻な事故に適切に対応するためには、そこで起きたことと今も起こり続けていることを正確に把握する必要がある。
事実関係を明らかにするためには、あらゆる可能性について証拠と反証を収集し、それらを公開しなければならない。これにより初めて、世界の人々は、東京電力が策定した事故収束計画を信頼し、あるいは、それをどのように修正すべきかを判断できるようになる。
なかでも重要なのは、最悪のシナリオが現実のものとなってしまったのかどうかを知ることだ。具体的には、損傷した炉心で持続的核分裂反応が再び始まり(再臨界)、さらなる核分裂生成物と熱損傷が生じた可能性はないのか、地震から数日後に原発で爆発が起きているが、これが核爆発で、破損した燃料棒から放射性金属がまき散らされた可能性はないのか、そして、溶融した燃料が原子炉格納容器の底を突き破り、環境汚染を引き起こすおそれはないのか、という問題である。
3月24日、有志の国会議員が最悪の事態に対応できる計画を策定することを目標とする「Bチーム」(政府の「Aチーム」に対する)を結成した。B チームは、結成を呼びかけた鳩山由紀夫(元首相)のほか、藤田幸久(財務副大臣)、川内博史(衆議院政治倫理審査会会長)、平智之らをメンバーとする。B チームが今後発表する報告書で行う勧告は、政府とも、原子力安全・保安院とも、東京電力とも独立の立場からのものとなる。
われわれのこれまでの調査は、カギとなる証拠が不足していることを示している。われわれはいまだに最悪のシナリオが実現してしまったのかどうかを知らない。それを明らかにするためには、福島第一原発を国有化して、独立の立場の科学者が原発に立ち入れるようにしなければならない。
再臨界の可能性
炉心内部で核分裂反応が進行している場合、さらなる核分裂生成物ができ、その熱により冷却・除染システムが損傷されるおそれがある。ある種の同位元素が検出されることが、再臨界が起きたことの証明になる。例えば、塩素の放射性同位体である38Clは、その安定同位体が中性子を吸収したときに生成するもので、半減期は約37分と非常に短い。したがって、38Clの存在は、その時点における核分裂反応を示唆している。
福島第一原発で38Clが検出されたのかどうかについては、報告に混乱がある。3月26日の原子力安全・保安院の報告では、東京電力が2日前に1号機の地下で採取した溜まり水から38Clが検出されたということだった。1号機への海水(塩化ナトリウムを含む)注入はそれ以前より続けられていた。4月1日には、同じ原子力安全・保安院が、東京電力による核種分析に疑問を呈した。放射性ナトリウム(24Na)もまたサンプルに含まれるはずだという。しかし、一部の科学者は、たとえ24Naが検出されなくても、38Clが検出されることがありうると主張している。4月20日、東京電力は以前の報告を撤回し、38Clも24Na も検出されなかったと発表したが、その分析に用いたデータは公表しなかった。われわれBチームは、原子力安全・保安院を通じて東京電力のデータ(ゲルマニウム半導体検出器によるもの)を入手し、再度、分析を行った。その結果、当初の報告に近い濃度(160万ベクレル/ml)の38Clが存在していたという結論に達した。われわれは、原子力安全・保安院と東京電力がこの検出を疑問視したことは根拠を欠くと考える。
もう1つの根拠が、ウランやプルトニウムが核分裂を起こすときに生成される、半減期が9時間のキセノン135(135Xe)である。11月1日、東京電力は2号機で135Xeを検出した。しかし、原子力安全・保安院は、それが微量であることを理由に、この135Xeは停止した原子炉内の燃料が自発的核分裂を起こしたことで生じたものと推定され、持続的核分裂反応によるものとは限らないとした。したがって、再臨界に関する証拠は、いまだ決定的なものではない。
核爆発の可能性
原発で起きた一連の爆発の原因は何かという疑問にも答える必要がある。それらは当初、水素爆発によるもの、すなわち、燃料棒を覆う合金と炉心の水蒸気との間で高温の化学反応が起きた結果であると報告されていた。しかしこれに関しても、未解決のままである。ほかに考えられる可能性は、核爆発か、別の種類のガスの爆発である。
爆発により、どれだけの量の、どのような種類の放射性物質がまき散らされ、どこまで拡散していったのか、そして、3号機のプールに貯蔵されている使用済み核燃料がどのような状態にあるのかを明らかにするためには、核爆発が起きたかどうかがわかっていることが不可欠である。2つの観察事実からは、核爆発がもっともらしいと思われる。1つは、ウランより重い数種類の金属が、原発から数十kmも離れた地点で検出されたこと。もう1つは、3号機の建屋上部の鉄骨がどうやら溶けたためにねじ曲がっていることである。
文部科学省の報告によると、重金属元素キュリウム242(242Cm)が原発から最大3km離れた地点で、プルトニウム238(238Pu)が原発から最大45km離れた地点で検出されている。これらはいずれも猛毒であり、摂取すれば内部被曝を引き起こす。242Cmの半減期(約163日)が短いことと原発周辺の238Puの蓄積が通常よりはるかに多いことから、文部科学省は、これらは過去の大気中核実験の放射性降下物ではなく、福島第一原発から放出されたものと考えられると結論付けた。その場合、破損した使用済み燃料棒が現場周辺に散乱している可能性があり、非常に危険である。
これらの元素は、より軽いセシウムやヨウ素のように放射性プルーム(放射性雲)にのって運ばれることはないため、非常に大きな力で吹き飛ばされたと考えられる。水素爆発に、重金属元素をこれほど遠くまで拡散させる威力があるのかどうかは不明である。また、水素爆発は、鋼鉄を溶かすほどの高温を発生させなかったであろう。東京電力は当初、3号機の爆発により白煙が発生したと発表していたが、再調査により、煙は黒かったことがわかっており、ただの水素爆発ではそのような色にはならないと考えられている。したがって、核爆発であった可能性がある。ほかの爆発性ガスが発生していたかを検討することも、同じくらい重要である。
メルトダウンの可能性
溶融した核燃料が、原子炉格納容器の底のコンクリートをどの程度侵食したかも未確認である。これが重要なのは、東京電力が、炉心を水で満たして放射線を吸収し、核燃料を取り出すことを計画しているからである。格納容器の底のコンクリートにひびが入っている場合、放射性物質が地下水に入ってしまう可能性がある。
政府は最近まで、そのような事態にはなっていないと考えていた。6月7日にIAEAに提出した報告書では、溶融した燃料の大半は原子炉圧力容器の下部で冷却されており、圧力容器に漏れ出した燃料はわずかしかないとされている。
しかし、2週間前、東京電力は、溶融燃料が1号機下のコンクリートの4分の3を侵食したこと、ほか2つの原子炉の基礎も損傷している可能性があることを発表した。しかし、ここでも注意が必要である。炉心内部の核燃料の状態を実際に観察した者はいないのだ。そのため、燃料の流出の程度はいまだはっきりしていない。
福島第一原発を国有化して介入せよ
事故処理の当事者が「現実は違う」と楽観的だとしても、福島第一原発の解決 — 半世紀にわたり放射能汚染を封じ込める方法から炉心や溶融燃料を処分する方法まで — は最悪のシナリオに基づかなければならない。未解明の事実は多いが、やらなければならないとわれわれが考えていることが2つある。
1つは、情報がオープンな形で収集されるために、福島第一原子力発電所を国有化しなければならない。事実は、どんなに困難なものであっても、国民に知らせなければならない。さらに、政府にこの事故の検証と補償を行う義務があることからも、国有化は不可避である。
Bチームは、8月に東京電力に対して原発のマニュアルを請求したが、それを入手するだけでもたいへんな苦労をした。これは、事故の情報がどのように規制されているかを示す一例である。東京電力は当初、委員会にマニュアルを提出することを拒否した。9月にようやく提出したときには、多くの語句(カギとなる温度や実際の手順)が黒く塗りつぶされていた。東京電力は、それらが自社の知的財産であると主張したのである。東京電力が全マニュアルを公表したのは6ヶ月も経過してからであった。Bチームは、東京電力が地震後(津波がくる前)に、緊急炉心冷却システムの一部のスイッチを切ったり入れたりしていた理由を知るためにはマニュアルが重要だと見ていた。緊急システムがいつ破壊されたかを明らかにするためである。
もう1つは、さまざまな分野の科学者が協同して分析にあたれるように、特別な科学評議会を設置しなければならないということだ。これにより、原子力産業界の技術者の一部にみられる致命的な楽観論を打ち破ることができるだろう。たとえ最悪の事態になっていたとしても、このような評議会を通じて、廃炉、除染、放射性廃棄物の地層処分施設の建設に必要な新しい技術を確立することができるだろう。
※この記事は、英文記事の参考訳であり、平議員により編集されたものです。
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