Thursday, February 2, 2012

カリフォルニア州サンオノフリ原発続報: トラブルが起こったのは三菱重工製の新しい蒸気発生器

案外重大なトラブルかもしれません。

カリフォルニア州サンオノフリ原発3号機で漏洩があった蒸気チューブは、三菱重工製の蒸気発生器の中。三菱重工の蒸気発生器4機は、古い設備を置き換えて2010年12月に設置されたばかり。設置後、3号機が再稼動したのは2011年の2月。つまり、まだ1年しか使用していない。

事故を起こした3号機の蒸気発生器に加え、2号機の蒸気発生器でも検査の結果800本以上のチューブの肉厚が10%以上減っていることが判明。うち2本は余りに厚さが減っていたため取り外した。肉厚が20%以上減っていたチューブは69本、10パーセント以上減っていたチューブは800本以上。

3号機の蒸気発生器内で漏洩したチューブは1本、ということになっている。蒸気発生器は格納容器内に設置される。現在3号機の原子炉は十分に温度が下がり、作業員が入って調査しているが、今だに詳細は不明。

放射能漏れを感知したセンサーは原子炉建屋ではなく、原子炉に付随した建物(タービン建屋か)に設置してある。ということは、放射能を含んだ蒸気が格納容器から出て別の建屋に流れた、と言うことになる。

原発の運転者であるSouthern California Edisonは、蒸気発生器の納入の前に、三菱重工側から製造欠陥があるとの通告を受けていたが、運転者と三菱による試運転で問題が無かったためそのまま納入、設置した

蒸気発生器4機のコストは6億7400万ドル(514億円)。

今回の事故には関係ないが、先週の金曜日、定期点検中の2号機のオペフロで懐中電灯を拾おうとした作業員がプールに転落(何のプールか不明)、低レベルの放射能汚染水を飲んだ可能性があるが、検査では内部被曝はなかった。

サンオノフリ原発は加圧水型原子炉が2基ある(1基は1992年に廃炉)。三菱重工の蒸気発生器に不具合があるとすると、現在定期点検で止まっている2号機を含め、2基とも止めなくてはならなくなる可能性がある。(また去年のような大規模停電か。)

三菱の蒸気発生器自体の欠陥ではなく、その前工程の設備の欠陥である可能性もある。

Orange County Register2012年2月2日記事を参照しました。)

蒸気発生器について、ウィキペディアの記述から抜粋します:

仕組み

商用炉用蒸気発生器はメーカーによって形式が異なるので、ここでは日本国内で使用されている三菱重工業製加圧水型原子炉(PWR)の蒸気発生器を取り上げる。同社のSGの評価は高く、いくつかの輸出実績がある。しかしながら過去には製作不良による事故も経験している。

三菱重工製SGは縦置逆U字管再循環型で、直径約5m、全長約20mの円筒形をしている。SG下部から内部に向けて逆U字型の伝熱細管(直径約 2cm、厚さ約1.3mm)が管板を介して約3300本溶接されている。中ほどに2次側(給水側)入り口があり、発生した蒸気は気水分離器、湿分分離器を経て最上部から外へ出てゆく。1次冷却水が下から入りU字管内部を流れて下から出ていく間に2次冷却水と熱交換する。2次側の冷却水は1次側に比べて低圧となっており、伝熱細管内を冷却水が高速で流れている事とSG内部で盛んに蒸発が起こるため内部は激しい振動にさらされている。

SGは原子炉格納容器内に置かれる。SG一基を含む1次冷却水の回路をループと呼び、PWRではループの数によって出力が決定される。現在の100万kW級PWRでは4ループ構成になっている。

保守

SGはPWRの弱点である。原子炉の表面積のほとんどが数ミリの厚みしか無い伝熱細管で占められており、その検査と保守には多大な労苦がある。検査の結果、腐食や減肉で使用に耐えないと判断された細管は栓をされ、使用され無くなる。

蒸気発生器の健全性評価基準の一つとして施栓率がある。日本国内で初期に稼動したPWRでは、やがて施栓率が一割を越えるような状態で運転されるものもあったが、熱効率の悪化による出力低下により定格出力を保てなくなったことと、新規立地が難しくなり、原子力発電所の建て替えが進まなくなったため、電力各社は既存原子炉の延命を図り、初期に稼動した原子炉の古いSGのいくつかは交換されている。

PWRのSGは巨大な装置で、原子炉圧力容器より大きく、SG取替えはBWRの炉心シュラウド取替えと並ぶ極めて大規模な工事となる。原子炉設計時には、このような大型機器の交換工事は考慮されておらず、このため工事にあたっては、あらかじめ原子炉格納容器と原子炉建屋の一部を破壊して搬入・搬出口を設ける必要がある。

SGを使って炉心冷却系を炉心内部を経由する1次冷却系と、炉心を経由しない2次冷却系に分けることで、放射線管理が原子炉圧力容器内に限定されることになる。そのため1次冷却系の圧力モニターが”低”の信号を発したり2次冷却水の放射線モニターが”高”の信号を発した場合、1次冷却水漏洩と判断されて、原子炉は自動停止(スクラム)する。PWRでは原子炉のスクラムをトリップと言う。

事故

伝熱細管が破損すると1次冷却水は2次系へ急速に漏出する。これは2次系の圧力が1次側に比べて低いためで、これにより原子炉冷却材が急速に失われていくことになる。伝熱細管破損はBWRの主蒸気管破断と並んで、想定されている事故の中では最も深刻である。1991年2月9日に、関西電力美浜発電所2号炉で伝熱細管がギロチン破断(刃物で断ち切った様に真っ二つになる事)して冷却水が2次側に漏洩した。一次冷却水の漏出により「加圧器圧力低」の信号が発報し、原子炉はトリップ、続いて非常用炉心冷却装置が自動作動して原子炉は冷却され安全に停止した。この事故は、国内の原子力発電所でECCSが動作する最初の事例となった。その後の調査では、細破破断の原因はSGの製作不良(振れ止め金具の挿入不良)による高サイクル疲労によるものと判定され、メーカーである三菱重工による損害賠償が行われている。美浜2 号炉を含む関西電力のいくつかの原子炉では、事故の後、順次SGの交換が行われた。なお事故を起こした美浜2号炉のSGは美浜発電所構内に展示されており、一般に公開されている。

1 comment:

  1. 素人考えとしては『接合部』からの漏洩ではなく、『チューブそのものの肉厚が薄くなった』という以上は、『出力アップを狙って絞り込み率を変更した結果、内部流速が“想定外”に速くなり、サンドブラストをかけたような感じでチューブを刮げ落としていった』か『チューブの耐性に合わない“何か”が蒸気に混入した』または、『そういう事象が複合して起こった』…だと思うんですけどねぇ。
    『想像力』の欠如した技術者だと、やはり『想定外』って言うんでしょうか?

    ReplyDelete