このブログで今年の1月にご紹介した、ネクタリーナさん(
「原発事故、放射能汚染を親しい人と語れない」)のお友達が書かれたものです。東京から山口に避難なさって健康を取り戻したものの、山口県防府市ががれきを受け入れる意向、と知って、以下に掲載する文とほぼ同文の手紙を山口県知事宛に送ったそうです。
ネクタリーナさんと似た素直な文章で、ご自分の体験から書かれています。
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私は昨年3月11日には東京で会社員として勤務していました。
福島原発爆発で放出された大量の放射性物質は風にのって東京にもプルームとしてやってきて、3月15日と21日の雨で降り注ぎ、東京を汚染しました。
放射性物質が含まれた雨に濡れると被曝することを知らなかった私は、仕事の帰りにその雨に濡れてしまいました。右手を怪我していたのに雨に濡れたのは本当に運が悪かったと思います。
クレーターのように皮膚に穴があき、ぼこっと血が噴き出るなど、かつて経験したことのない症状がすぐにでました。そしてその後、下痢がとまらない、倦怠感、頭痛、熱が下がらない、帯状疱疹、リンパの腫れ、紫斑がでる、小さな疱疹が繰り返しできるなどの症状に悩まされました。
11月に心臓が急に痛みはじめた時は、もうこのままでは死んでしまうと避難を決意しました。
日本のどこなら安全だろうと避難先を探した時に、幼い頃住んだことがある瀬戸内海沿いなら地震も津波も少ないし、福島原発からは950kmと離れているし、海の汚染も太平洋側よりはずっと少ないだろうと思いました。
何より東京ではもう水源地が汚染されたために水道水も汚染されていて、炊事はミネラルウォーターを使いましたが、お風呂や洗濯、掃除すべてが汚染された水道水を使うしかなく、もうこの状態では東京で生活していくのは無理でした。
また汚染が少ないであろう西の食材を買いたくても、産地偽装が横行していて、不安は尽きませんでした。
だから安心できる空気や水、食材を求めて山口県に避難することを決意しました。
昨年12月に仕事を辞めて山口県に避難してきた時は、心からほっとしました。
安心して呼吸できる空気、安心して使える水道、新鮮な地元産の野菜が手に入る喜び。綺麗な海や川、優しい山口県の人たちの人情に触れて嬉しくて涙しました。
洗濯ものを外に干せる喜び、マスクなしでも外を歩ける感激、体調もこちらに来てからだいぶ回復しました。
仕事をやめて、生活基盤は失ったけれどもとにかく生きていれば、道が開ける。そのことがとても嬉しかったです。
まだ関東に残っている友人たちに、山口産のお野菜を送り、「新鮮でとても美味しい」と喜ばれています。
みんな「山口県は素晴らしいところだね。山口県に移住したい」と言ってくれています。
しかし先日、防府市が瓦礫を受け入れる意向だと新聞で知りました。
その時もうこれ以上どこに逃げればいいのか、途方に暮れて悲しい気持ちでいっぱいになりました。
この山口県の素晴らしい自然は宝物です。これを汚染させることがないよう、心からお願いいたします。
これからも綺麗な海や空、空気、食べ物を守ってください。
そして私と同じように体調不良に苦しんでいる東日本の人々が安心して移住して来られる山口県でいてください。
今関東にいる多くの友人は避難したいけれども瓦礫受け入れの動向を確かめてからと、じっとことの顛末を注目しています。
是非そういう人たちを受け入れられるよう、「瓦礫は受け入れない」と宣言していただきたいです。
どうかよろしくお願いいたします。
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放射能に対する感受性はそれこそ個人個人によって大きく違います。ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告ですらそのことを明言しており、「平均的個人」を対象とする対策にはあまり意味がない、としています。
アメリカ、ヨーロッパ在住の読者は英語ブログの方に、去年の事故の最初の頃から、「放射線の影響としか思えない健康被害が自分に出ている」というコメントを寄せてきています。最近ではそれに皮肉を利かせて、「山下教授の言うように笑っていないせいだろう」と言い、その裏に「日本人はいったい何やってるんだ?」という気持ちが怒りに変わってきつつあるのが分かります。政治家、官僚のことではありません。一般の日本市民は何やってるんだ、と言うのです。
彼らは日本が放射能に汚染された地震・津波がれきを日本中で焼却するという恐ろしい事態に対して遠方から何をすることも出来ず、何もしていない(ように海外からは見える)一般の日本人が理解不能な不可思議なものに見えるのです。危険が迫ると頭を砂に突っ込むダチョウのように、放射能汚染を見たくない、知りたくないのは日本人の勝手だが、世界にこれ以上汚染を撒き散らすのはやめてくれ、と彼らは言います。
このネクタリーナさんのお友達の文章を英語ブログでも出してみようかと思います。ちゃんと声を上げている日本人もいる証拠に。