Saturday, April 14, 2012

(伝言ゲーム・パート2)新聞記事見出し比べ: 福島3号機使用済み燃料プールでクレーン発見(日本語新聞)→福島3号機のMOX燃料が入っている使用済み燃料プールに機械が落ち、プールが損傷した(英字新聞)

4月11日の「伝言ゲーム」ポストで、毎日新聞の日本語版→英語版→海外のブログと記事が書かれる過程で、「首都圏住民の避難を余儀なくされるという想定の最悪シナリオ」が「政府は現在首都圏全住民の強制避難計画の詳細を策定中」に化けた事例を書きました。

今回は内容ではなく、記事の見出し。またも出所は日本の新聞。

東電が4月13日に出した福島第1原発3号機使用済み燃料プールの内部の写真についての記事です。

まず、数社から拾った日本語記事の見出し。

朝日: 使用済み燃料プール内の画像公開 福島第一3号機
読売: 福島第一3号機、燃料交換機がプール内に落下
共同: プールでクレーン発見 3号機、爆発で落下か

これが英語になると、
朝日: New photos show damaged fuel storage pool at Fukushima plant (新しい写真で、福島原発の燃料貯蔵プールの損傷が明らかに)
読売: (存在せず)
共同: TEPCO finds 35-ton machine fallen in Fukushima No. 3 spent fuel pool (東電、福島3号機の使用済み燃料プールに35トンの機械が落下しているのを発見)
ジャパンタイムズ: Machine fell into MOX spent-fuel pool: Tepco (東電発表: MOX使用済み燃料プールに機械が落下した)

共同通信は日本語から英語になった時点でクレーンの重量の情報が付け加えられ、爆発で落下したのかという推測が消えていますが、特に問題はありません。日本語も英語も、機械(クレーン)が落下しているのを発見した、と正確に描写しています。

結構問題なのは朝日。日本語から英語になった時点で、日本語で単に「使用済み燃料プール」というだけだったのが、「損傷を受けた燃料貯蔵プール」、という風になっています。おそらく、記事の書き手は ”Damage in the fuel storage pool”、つまり、プールの中に破損したものが入っている、という認識だったのではと好意的に解釈していますが、朝日の英語記事の見出しを日本語の忖度ができない外国人が読むと、「プール自体が損傷を受けている」、と理解します。実際にプールが損傷しているかどうかは別にして、記事の中身は日本語も英語も同じで、プールの中にがれきが散乱しており、35トンの燃料交換機の一部が見つかった、というもの。プール自体の損傷についてはどこにも記載されていません。

しかし、英語の見出しをこのようにしたおかげで、見出しだけを見てすべてを判断する傾向がより強いアメリカ人などは、「3号機プールはやはり壊れているんだ」と考え、そのように記事にします。折も折、日本でもフォローする人々の多いガンダーセン氏が「3号機も危ない」とラジオ番組で発言したばかり。この朝日の英語記事の見出しを引用して、3号機の使用済み燃料プールは壊れていた、という印象を与える記事を出している英語サイトもあり、ブログ読者があわててリンクを送ってきました。(この英語サイトでは見出しに更に拡大解釈が付いて、「広範の損傷を受けたプール」ということになっていました。)

今回の伝言ゲームの最悪の結末はジャパンタイムズ。ジャパンタイムズの見出しは、3号機使用済み燃料プールに重機が落ちた、とあたかも落ちたのが最近のような印象を与えるに留まらず、3号機使用済み燃料プールにはMOX燃料が入っているかのような書き方になっています。共同ニュースの記事を引いている、ということになっていますが、共同ニュース英語版で現在検索できた限りの記事はジャパンタイムズの記事とは見出しも内容も異なります。

このジャパンタイムズの見出しが、多くの海外の読者が福島事故の情報を求めて訪れるENENEWSに出、それを見た読者が私のブログに、「これは大変だ!」とリンクを送って来ました。ジャパンタイムズを参考にする読者は朝日、読売、毎日、共同などの英語版の記事も参考にしますので、読者の頭の中では今回は朝日とジャパンタイムズの見出しを組み合わせ、その結果「MOX燃料が入っているプールに機械が落ちて、プールが壊れている!」という話が出来上がりました。

MOX燃料についてはまったくの「風評」、プールが壊れているかどうかについては現在のところ不明だが、見た限りでは見当たらなかった、というところが妥当だと思うのですが、もう既に外国人読者の頭の中では4号機に続いてMOX燃料の入った3号機の使用済み燃料プールも今にも壊れる、あるいはもう壊れている、というイメージが出来つつあります。

日本のメディアが外国メディアに対して「風評を煽る」、とはよく言えたものだなあ、と感心しています。

東電の出した3号機燃料プール水面、水中の写真をまだご覧になっていない方、こちらです

3 comments:

  1. >MOX燃料についてはまったくの「風評」
    前年2010年に東電が保安院と福島県に提出した『福島第一原子力発電所3号機の燃料プールに保管中の
    MOX燃料の健全性の確認結果について』をご存知だろうか。

    その検査報告書には、1999年9月 27日搬入以来、10年以上水中に保管してきたMOX新燃料(ベルゴニュークリア社/FBFCインターナショナル社製造)32体の保管状況が記載されている。

    当然、3月14日の爆発時点でそれは存在していたことは明らかだ。

    しっかりして欲しい。

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    1. 知っています。読みました。その32本のMOX燃料は2010年にプルサーマルを開始する際に、3号機原子炉に装着されました。爆発時点ではその32本は原子炉に入っていました。

      東電が輸入したMOX燃料で福島第1原発用のものはこの32本のみです。

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  2. それと、下記の記事くらいは既に読んでおくべきだろう。

    Secret US-Israeli Nuke Transfers Led To Fukushima Blasts
    http://www.rense.com/general94/secbb.htm

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