Thursday, September 30, 2010

尖閣諸島のフォールアウト

パトリック・ビュキャナン氏の論評です。今回の尖閣諸島での日本と中国の衝突(及びそこから派生したレア・アース日本向け輸出規制、フジタ社員拘束事件など)は、各国にとって中国の正体を見る絶好のチャンス、中国などに頼らない産業基盤、国家財政基盤が何よりも必要だ、としています。まったくその通り。

すぐ壊れる家電、錆びるステンレス鋼、数度の洗濯で原型をとどめなくなる服、列に割り込んで平気な顔の中国人旅行者。笑止、笑止。

要約を後で出したいと思いますが、ビュキャナン氏の英語は平明で分かりやすいので、トライしてみてください。冒頭のHubrisとは、extreme haughtiness(倣岸不遜) or arrogance(傲慢)、まさに中国そのものですね。(もっとも今に始まったことではありませんが。)

The Message of Tokyo's Kowtow
(Patrick J. Buchanan, 9/28/2010 Human Event)

Hubris will do it every time.

The Chinese have just made a serious strategic blunder.

They dropped the mask and showed their scowling face to Asia, exposing how the Middle Kingdom intends to deal with smaller powers, now that she is the largest military and economic force in Asia and second largest on earth.

A fortnight ago, a Chinese trawler rammed a Japanese patrol boat in the Senkaku Islands administered by Japan but also claimed by China. Tokyo released the ship and crew, but held the captain.

His immediate return was demanded by Beijing.

Japan refused. China instantly escalated the minor incident into a major confrontation, threatening a cut off of Japan's supply of "rare-earth" materials, essential to the production of missiles, batteries and computers.

Through predatory trading, China had killed its U.S. competitor in rare-earth materials, establishing almost a global monopoly.

The world depends on China.

Japan capitulated and released the captain.

Now Beijing has decided to rub Japan's nose in her humiliation by demanding a full apology and compensation.

Suddenly, the world sees, no longer as through a glass darkly, the China that has emerged from a quarter century of American indulgence, patronage and tutelage since Tiananmen Square.

The Chinese tiger is all grown up, and it's not cuddly anymore.

And with Beijing's threat to use its monopoly of rare-earth materials to bend nations to its will, how does the Milton Friedmanite free-trade ideology of the Republican Party, which fed Beijing $2 trillion in trade surpluses at America's expense over two decades, look now?

How do all those lockstep Republican votes for Most Favored Nation status for Beijing, ushering her into the World Trade Organization and looking the other way as China dumped into our markets, thieved our technology and carted off our factories look today?

The self-sufficient republic that could stand alone in the world is more dependent than Japan on China for rare-earth elements vital to our industries, for the necessities of our daily life, and for the loans to finance our massive trade and budget deficits.

How does the interdependence of nations in a global economy look now, compared to the independence American patriots from Alexander Hamilton to Calvin Coolidge guaranteed to us, that enabled us to win World War II in Europe and the Pacific in less than four years?

Yet China's bullying of Japan is beneficial, for it may wake us up to the world as it is, as it has been, and ever shall be.

Consider.

China now claims all the Paracel and Spratly islands in the South China Sea, though Vietnam, Malaysia, Indonesia, the Philippines, Taiwan and Brunei border that sea. To reinforce her claim, a Chinese fighter jet crashed a U.S EP-3 surveillance plane 80 miles off Hainan Island in 2001. Not until Secretary of State Colin Powell apologized twice did China agree to release the American crew.

China's claim to the Senkakus (the Diaoyu Islands to the Chinese) was emphasized last week. While these are largely volcanic rocks rather than habitable islands, ownership would give a nation a powerful claim to all the oil, gas and minerals in the East China Sea.

China has repeatedly warned the United States to keep its warships, especially carriers, out of the 100-mile-wide Taiwan Strait. On the mainland opposite, Beijing has planted 1,000 missiles to convince Taipei of the futility and cost of declaring independence.

When the U.S. Navy launched exercises with South Korea after the sinking of South Korea's warship Cheonan by the North, China threatened the United States should it move the 97,000-ton carrier George Washington into the Yellow Sea between Korea and China. The carrier stayed out of the Yellow Sea and remained east of the Korean Peninsula.

In addition to her claims to sovereignty over all the seas off her southern and eastern coasts, China occupies a large tract of Indian land in the Aksai Chin area of India's northwest. Thousands of square miles were seized by Beijing in the 1962 war with New Delhi -- and annexed.

In 1969, China and the Soviet Union battled on the Amur and Ussuri rivers over lands Czar Alexander I seized at the end of that bloodiest war of the 19th century, the Chinese civil war known as the Taiping Rebellion. Leonid Brezhnev reportedly sounded out the Nixon White House on U.S. reaction to Soviet use of atomic weapons to effect the nuclear castration of Mao's China.

China's claims to her lost lands in Siberia and the Russian Far East have not been forgotten in Beijing, and remain on Chinese maps.

How should America respond?

As none of these territorial disputes involves our vital interests, we should stay out and let free Asia get a good close look at the new China. Then explore the depths of our own dependency on this bellicose Beijing and determine how to restore our economic independence.

Ending the trade deficit with China now becomes a matter of national security.

Tuesday, August 24, 2010

4度目のヒンデンブルグ・オーメン発生

9取引日で4度。2,3日に1回の割合ですね。ちなみに、ヒンデンブルグ・オーメンが市場崩壊を予兆する、と最初に提唱した盲目の数学者、Jim Miekka氏は、株式市場から投資を撤退しました。有言実行ですかね。

ちなみに、9月は市場のパフォーマンスが最低の月だそうで、ヒンデンブルグ・オーメン、カーディナル・クライマックスと相まって油断は禁物。市場、セクター、個々の株式をショートしていた皆様、おめでとうございます。金、銀関連の株式を保有されている方、たいした下げにならなくて幸いでした。今日は金、銀ともに上昇しました。そのほかの皆様、ご愁傷様です。ドルを保有している方々、I feel your pain…

Sunday, August 22, 2010

ヒンデンブルグ・オーメン1週間で3度発生、株式市場の乱降下の前触れか?

と言い回っているアナリスト、トレーダーもいます。TAブログの方に発生した時点でポストを出していますが、ヒンデンブルグ・オーメン(Hindenburg Omen)とは、

(1)ニューヨーク証券取引所(NYSE)で、52週の高値更新銘柄数と52週の安値更新銘柄数の双方がNYSE総取引銘柄数の2.2%を超えている。
(2)この2つの数字うち、小さい方が75より大きい(絶対条件ではない)。
(3)NYSEの10週移動平均線が上昇している。
(4)同日にマクレラン・オシレータがマイナスである。
(5)52週最高値数が、52週最安値数の2倍を越えない(絶対条件)。

更なる条件として、市場取引終了後にウォールストリートジャーナル紙に掲載される数字をつかうことになっています。この条件5つとも一日の間に満たした場合、「未確定(Unconfirmed)のヒンデンブルグ・オーメン」 といわれます。確定されるには、ヒンデンブルグ・オーメンが最初に発生してから36日以内に第二のオーメンが発生することが条件になっていますが、確定されなくても市場が急落した例は多いようです。

ヒンデンブルグ・オーメンは株式市場の単なる下落を予兆するのではなく、大幅且つ急激な降下、つまり2008年の秋のような市場のクラッシュ(Crash)を予兆する、とされているのです。

今回の米国株式市場の場合、36日以内どころか、最初の発生から1週間で更に2度も発生しており(これで完全に確定されてしまいました)、センセーショナルなメディアではこれで世界の最後が来るような記事まで出ています。

ヒンデンブルグ・オーメンが出たからといって株式市場が下落するとは限らないようですが、過去の株式市場の大幅下落の前には必ずこのオーメンがでている、とのこと。

そもそも、なぜヒンデンブルグ・オーメンが株式市場の急降下(Crash)を予兆する、と考えられるようになったのか。最安値銘柄数と最高値銘柄数が同日にどちらも全NYSE株式銘柄の2.2パーセントを超える、というのは異常事態と考えられます。通常に機能している市場では、最安値銘柄数が多い時には最高値銘柄数は低く、そのような状態では普通市場は下降します。その逆の場合は市場は上昇するのが普通。それに比べ、最安値、最高値どちらも数多く発生する、という状態は、市場が株の価値を算出できない状態で、つまり市場が機能していない事を示している、と思われるわけです。

それでも、考えてみればHFT(High frequency trading)のアルゴ・ボットの跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する市場は「通常」であることを辞めて久しいわけで、今更ヒンデンブルグ・オーメンが出ようが確定されようが、だからどうした、と私などは思ってしまいました。最初に出たときは(8月12日)さすがに「おっ...これはやばい」と思いましたが、一週間後に2日連続で出現したときにはなんだかばかばかしくなりました。信じる、信じないの問題ではなく、正常に機能するのをやめてしまった市場でヒンデンブルグ・オーメンが出るのは当たり前で、それこそ毎週のように出ないほうが不思議なくらいだ、と思うわけです。

株式市場が急降下、なんてことになったらまず上がるのは米ドル、米国政府債券、金、銀、と言ったところでしょうか。安全な投資、というわけです。ドルと債券は高流動性、という意味での安全、金、銀は資産保全という意味での安全です。

Tuesday, August 3, 2010

円の上昇-もうどうにも止まらない?

(かなり古いですねえ。でもあの歌は好きだったもので…。)

日本円の対ドル、対ユーロの上昇が連日続いています。日本の輸出企業にとって採算が取れるぎりぎりは確か対ドルで86円、という数字を覚えていますが、もしかしたら92,3円だったかも知れず、輸出企業様にはご愁傷様…。がんばってくださいとしか言いようもありませんが、どちらにしても今日の円相場は85円を割るのも時間の問題(このブログを書いている時点で85.409円)、といった感がありますね。

日本でForex相場をトレードなさっている方々、またはドル預金をなさっている方々(ご家庭の主婦、OL、サラリーマンを含む)、日本円の3年間の週チャートが示すところでは、この3年間の長期のWinning tradeはドルを売って円を買う、という、ドル預金とはまったく正反対のトレードが正解だった訳です。



週チャートを私なりにTechnical Analysisで分析してみると、もうそろそろ上昇が止まって下降に入るのでは、と思わせます。RSI、MACDに、Negative divergenceが出現しているからです。つまり、円のプライス・アクションは上昇しているにもかかわらず、RSI、MACDは下降している、このような状態が出現すると、近い将来にプライス・アクションがRSI、MACDと同じ方向に転換する(つまり下降する)ことが多いのです。また、価格のチャンネルがいわゆるRising wedgeを形作っていて、これは通常Bearishなパターンです。

まあ、近い将来というのが明日なのか、来週なのか、来月なのか、数ヶ月先なのか、何の保証があるわけでもありませんが、チャートの価格ピークを結んだ線に注目していてください。この線にぶち当たって下降するか、それとも線を越えるか。この線に到達するのはひょっとしたら今週か来週でしょう。

線を越えたら、またその線に戻るか、戻ったらどのような反応をするのか。そこから反発して更に上昇するのか、それともそのまま下降するのか。

遅い設定にしてあるSlow Stochasticsが80を切ったら、多分下降でしょう。80を切ったら50ぐらいまでは戻るのではないかと思いますが、現在の116(86円相当)が105(95円相当)になるくらいではないか、と思います。過去三年間、ほとんど50を切ったことがないところを見ると、とりあえずその辺がターゲットかと。円売り、ドル買いのトレードのセットアップですね。

Forexは政府の介入、Geopolitical riskなどに左右されるので、TAだけでは判断など出来ませんが、そこを押してTAだけで判断してみると、上昇線にぶち当たるのは今週か来週、ということです。ぶち当たった辺では多分、円は85円を切って84円の半ば、といったところでしょうか。そのままひたすら上昇を続ける可能性も少なからずあると思います。確か日本のアナリストが去年の10月、円は50円代まで上昇するだろう、と言っていたのを記憶しています。

85円を切った段階で日銀が黙っているとも思えませんが…。

(お断りしておきますが、このブログポストは投資のアドバイスではありません。エンターテイメントとしてお読みください。)

Tuesday, July 13, 2010

急降下から急上昇へ-アルゴ株式市場のローラーコースター

今日の米国株式市場の上昇はアルコアの第二四半期業績上昇のため、明日の上昇(まあ、予測ですが)はインテルの業績急上昇のため、などと考えている方々へご忠告。この市場はファンダメンタルに基づいて作動することを止めて久しいのです。

7月4日の独立記念日の前の週(わずか2週間前)、ありとあらゆる株式アナリスト、経済学者が口を開けば「大恐慌の二の舞がすぐにもやってくる」、「ユーロは崩壊間近」、と、世界の終焉を宣告していました。ところが独立記念日が明けてすぐの先週、まったく突然、何の理由もなく論調ががらりと反転し、「米国経済は成長を続ける」、「ユーロ危機は終わった」、そして毎日株式市場が低い取引高で急上昇を続けました。

今週に入っても変わらず、今日は”Turnaround Tuesday"と呼ばれる、株式市場がこれまでの傾向と逆の動きをすることが多い、とトレーダーの間で言われている火曜日でしたが、傾向と逆どころか、同方向にさらに上昇。今のところ、ダウ平均指数の先物は63ポイントの上昇。

TA(Technical Analysis)でトレードする人間のトレーダーは「まったくやりにくくてしょうがない」とぼやいています。というのも、急降下したあとしばらくその辺にとどまって様子をみる、といった期間がまるでなく、急降下の後は休みなしの急上昇、人間が入り込める猶予がないのです。Zero Hedgeなどは毎日のようにアルゴ・ボットの支配するコンピュータ・トレード株式市場を揶揄しています。

最近の米国株式市場は、市場指数が上昇するとほとんど全部の株式が同じように上昇し、下降するとほとんど全部の株式が下降する、と言った具合に、関連性(Correlation)が非常に高いのが特徴です。株式間の関連性だけでなく、S&P500ミニ先物とユーロ・円の関連性、またはアジアドルとの関連性など、まったく異なった金融市場の間の関連性まで高いのです。つまり、ひとつこけると皆こける、と言うことです。この関連性をさらにお読みになりたい方、BMO(Bank of Montreal)のQuant Researchの分析をお勧めします。(これこれ

なぜか。いろいろな分析、解説を読む限り、アルゴ・ボットによるHFT(High Frequency Trading)が市場の根本的な性質を変えてしまった、という結論に達します。ファンド・マネージャーが「これはもはやStock pickerの市場ではなくなってしまった」と言うのも、理由はそこにあると思われます。アルゴ・ボットはBetaを追いかけるようにプログラムされているようです。つまり、市場が1動くと2、3と動くような株を追いかけるのです。

ここ2、3年、都合のいいことに、指数(市場指数、業界別各種指数など)の2倍、3倍動くETFが続出しています。(このブログのタイトルのSKFもそのひとつ。)5月6日のいわゆる「フラッシュ・クラッシュ」も、取引の大半はこのようなETFでした。ETFを動かすことで、ETFを構成する株式が動かざるを得なくなり、そうするとさらに株式市場指数が動き、というまったく典型的なポジティブ・フィードバックがかかるわけです。

動きが下降方向の時はそれに合わせてメディアの論調はネガティブ、動きが上昇に転じると論調は途端にポジティブになる、といった具合です。人間がコンピュータに合わせて辻褄の合うような話を作っている、というのが実態でしょう。

まだ株式市場に投資している方々、くれぐれも人間のお話に惑わされませんように。

Tuesday, June 29, 2010

Bull Marketの終焉?

英語のTAブログのほうに記事を出しておきましたが、今日(6月29日)の米国市場の下落は並みの下落ではなかったようです。

下げ幅の大きさではなく、いわば『内容』で。

Fibozachi.comの記事によると、S&P500インデックスの500銘柄の内、上昇したのは1銘柄のみ、ナスダック100インデックスで上昇したのは100銘柄の内1銘柄のみ。ダウ工業平均にいたっては、30銘柄の内で上昇したのは一つも無い、という有様。

S&P500の内上昇したのが1銘柄だけ、という状態が最後に起きたのは、2008年9月29日。全世界を巻き込むことになる10月の株式市場崩壊のわずか数日前。

だからといって今度も同じことが起きるとは限りませんが、Fibozachi.comはここでDCB (Dead Cat Bounce)無しに市場が急降下する可能性は見逃せない、としています。

今日は、シティグループの株(シンボル:C)が数瞬間で20パーセント下落し、SECのサーキット・ブレーカー(10パーセント下落で作動)がシティの株に作動し、取引が5分間停止されました。HFTを野放しにしている限り、いくらサーキット・ブレーカーをかけても下落は止められないでしょう、多分。

何とも皮肉なことに、今日の朝オバマ大統領が連邦準備銀行のバーナンキ総裁を引き連れてなぜか記者会見を行い、アメリカの経済は順調に回復している、と宣言したにもかかわらず株式市場は急降下。市場は建前を無視してしっかり真意を汲み取っている、ということでしょうか。(しかしこの大統領はまったく災難、Disasterですね。)

Thursday, June 24, 2010

OT: サムライニッポン 3 デンマーク 1



はっきり言って、私はあきらめていました。0-1でデンマークが勝つだろうと。日本はどうも肝心の試合で萎縮してしまう傾向があるし、90分フルに活動するだけの体力がやはりどうも、などと考えていたのですが、とんでもない誤りでした。フリーキックで一試合に2度得点を挙げたのはワールドカップ史上40年ぶりだそうですね。

FIFAの公式サイトは日本の試合を評して”Clinical"と言っていました。デンマークに対してやりたいように好きなように戦った、という意味です。まったく絵に描いたようなフリーキックゴール。ファンのショートメッセージは圧倒的に日本を応援していました。3点目のゴールにいたっては、試合終了直前にもかかわらずとても日本人のチームを見ているとは思えない技とスピード。試合を通じて背の高いデンマーク選手は日本のすばしっこさに対応できなかった、と見ました。何よりチームプレーの練習の成果を試合で十二分に発揮できたとは驚きです。

さて、決勝リーグが断然楽しみ。株式市場が低迷しようが、20年来の経済停滞に苦しもうが、どうでもいいではありませんか。日本のイレブンのおかげで国が元気になれれば。

Tuesday, June 22, 2010

沈没しつつある船からネズミが逃げ出す…

一旦つき始めたケチはどんどん大きくなるばかり。

3月に懸案の医療(保険)改革を国民の大多数の反対を意ともせず強行可決させて立法化したはいいけれど、4月にメキシコ湾のBPの石油リグ(掘削基地)の事故(英語のブログをご覧ください)で引き起こされた原油流失の対応のまずさ(この2ヶ月間で休暇2度、毎週の4時間を超すゴルフ、パーティ三昧、大した仕事もしていなさそうな軽いスケジュール、各国の援助を断り、州政府の対応を妨害)で支持率を一段と落とし、汚名挽回とばかりに初の大統領官邸からのテレビ演説をすれば「何にも中身の無い演説」と、本来の支持基盤である民主党左派の人々にまで呆れられる、と言った具合に、オバマ大統領についたケチはメキシコ湾の原油とシンクロして日に日に大きくなっているようです。

昨日(6月21日)には、大統領直属の予算策定ディレクター、Peter Orszag 氏が辞任、オバマ閣僚の初の辞任となりました。なぜ突然、と思っていたら、今日になって、次年度の予算策定は行わない、という冗談のようなニュースが流れました。民主党の幹部によると、大統領直属の諮問機関が予算赤字を削減する方策を12月に提出する予定なので、それ以前に予算を決めても無駄だ、と言うことのようですが、ゼロ・ヘッジなどはこれは11月の中間選挙の民主党の敗北を最小限に抑えようとしているだけだ、と決め付けています。アメリカ政府の年度末は9月です。議会が予算を策定しないのは、まさに前代未聞。

また、ここ数日、オバマ大統領の首席補佐官ラーム・エマニュエル氏が11月の中間選挙後に辞任する、というが流れ出しています。何でも、大統領の取り巻きと意見が合わないとか。

今日になって、オバマ大統領が直接任命した(と言われる)スタンリー・マクリスタル司令官がローリング・ストーン誌の記事の責任を取って辞職することをゲイツ国防長官に口頭で伝えた、とのニュース。(口頭ではなく、すでに辞表を提出した、という記事もあります。詳細は、まあ明日になってからでしょう。)

マクリスタル司令官はローリング・ストーン誌の取材を受け入れ、インタビューに応じた時点で、辞める決意をしていた、と思われます。リンクした記事をお読みになればわかりますが、アフガン戦争はアメリカにとって何のメリットもない、何の成果も上がっていない、ただ人員とマテリエルを消耗してアフガン人民には極度に嫌われる、という、Demoralizingな状況なのです。

オバマ大統領の失策の数々を見ていると、どうもこの大統領が人が言うほど頭が良くはないのでは、と思われて仕方がありません。前大統領より優れているところは私が見るところただ一つ、テレプロンプターに表示される英語を読むことが出来ること。

あと2年もこんな状況が続くのかと思うと、うんざりですねえ。まあ2年で済めばいいですが…。

Tuesday, June 8, 2010

HFTアルゴ・ボット、連日の大活躍

HFT(High Frequency Trading)のアルゴリズム(アルゴ・ボット)の活躍で、米国市場は毎日がローラーコースター。金曜日、月曜日と急降下した後、今日は何の理由もなく急上昇。まあ、CNBCなどは毎日それらしい理由をこじつけていますが、ネタが尽きるのも時間の問題。今日の急上昇は連邦準備銀行のBen Bernankeが米国の景気は大丈夫だ、と発言したのを受けて、ということになっています。明日の市場展開も、Bernanke氏の議会での証言にかかっている、とのこと。

アルゴ・ボット達は終日活躍していますが、特にその活動が顕著になるのは市場の最後の1時間です。急降下か、急上昇か、それこそコイン・トスでもしているのではないかと疑えるほどランダム・イベントですが、ゼロ・ヘッジに今日こんなチャートが出ていました。

GFIグループのHFTデスクによる、SPY(S&P500インデックスをトラッキングするEFT)の、ニューヨーク時間3時49分1分間のトレードです。(多分、部分。)全部が買い注文です。ブロック注文ではなく、注文を小さなサイズに分けて出している様子がよく分かりますねえ。

このようなトレードが終日展開される市場が、現実の経済なり、政府の政策なりを反映すると考えるのは、まず間違いでしょう。


ゼロ・ヘッジの記事

”With JPM doing the ritualistic gold slaughter in the hour before the close, it was all systems go. The SPY IOIA in the last 20 minutes of the meltup is nothing short of a work of art, with every single ETF desk going nuts doing their best to telegraph to whatever HFT algos are left that massive blocks are on the bidside and that it is safe to lift every offer. We wish we could present them all but we will limit ourselves to the hundred or so "trades" at 3:49 PM EST by GFI Group. Because this is precisely the best way to split a massive order block into "unobtrusive" child algorithms.”

JPMとはJPモルガン銀行のことで、金・銀相場を違法に操作しているとかねがね噂が流れています。銀相場に関しては噂どころか、CFTCが調査を開始しています。JPMが金相場で何をしたかって?まあ金相場のProxy、金ETF(シンボルGLD)の今日のチャートをご覧ください。金相場にはアルゴ・ボットはいないので、こんなブロック注文を出して相場を一時的にせよ下落させた、というわけ。JPMがやったとは限りませんが、JPMはいわば金相場違法操作の代名詞ですね。

Sunday, May 23, 2010

金曜日の米国市場の上昇の背景は何もなし

5月24日のアジア各国の株式市場は現在のところ若干の例外(日経平均)を除いて大幅な値上がり。先週金曜日の米国市場(特にダウ工業平均)の上昇を好感して、というのが大方の解説ですが、ちょっとこのチャートをご覧ください。金曜日のダウ平均のIntradayチャートです。


これを見て「好感」がもてる方は、たいしたものです。自然界には通常はこのようなパターンは存在しません。存在するときは、システムがクリティカルなポイントに達しつつある直前です。(カオス理論、最近ではブラック・スワン理論ですね。)

(そういえば、ブラックスワン理論のNassim Taleb氏がアドバイザーを務めるヘッジファンドが5月6日の株式急降下の引き金になったかもしれない、という話、ご存知?英語版のブログにポストを書きました。)

最後の15分の急上昇の背景は、何もありません。格別のニュースも無し、噂も無し。いわば、5月6日の株式市場急降下(アメリカでは最近、『フラッシュ・クラッシュ(Flash Crash)』と呼ばれています)の逆、つまり、Op-Exデーなのにもう一つ冴えない市場に厭きたどこかのファンドがインデックス・オプションか、ミニ先物か、インデックスETFか、インデックスETFのオプションに大量の買いをいれ、それを嗅ぎ付けた他社のコンピュータのアルゴリズム(アルゴ・ボットと呼び習わしています。ボットとはロボットのこと。)が我先に押し寄せて買いに走り、その結果わずか15分足らずで130ポイントの急上昇となったのでは、というのが私の個人的感想です。似たようなことはこの1年の間にほとんど毎日のように起こっていました。

にもかかわらず、金曜日の取引高はOp-Exにしてはぱっとしない取引高でした。木曜日の取引高より高かったのは3主要平均の内ではS&P500だけ。

フラッシュ・クラッシュの逆だから、まあ、フラッシュ・メルトアップ(Meltup)といったところでしょうか。実体はまるでないのです。先物市場が毎晩低い取引高で突然高値を付けているのと同じことです。

5月6日のフラッシュ・クラッシュを目の当たりに実体験したことと、5月7日の、EUの1兆ドルに及ぶユーロ圏およびユーロ救済(Bailout)ファンドの設立のニュース、この二つの出来事以来、どうも『幽霊の正体見たり』といった感じで、特に株式のTechnical Analysisをやっていてもばかばかしくなることが暫しです。

ただ、アルゴ・ボットのプログラムがそれこそニューロ・ファジイである可能性もあるわけで、人間のトレーダーの思考方法を真似しているのかも知れず、だとするとTAのキーポイント(特にFibonacci Retracementなど)はアルゴ・ボットも注目している可能性が大な訳で、その意味ではまるっきり無駄ではないのかもしれません。ただ、先週の金曜日のような市場の動きは、経済、金融、政治など背景のファンダメンタルとはまったく無関係だということを、頭のどこかに留めておいてください。

ちなみに、金曜日の最後の15分間のメルトアップの真っ最中に手持ちの株を売ろうとしたけれどブローカーのシステムがまたもダウンしていて、オーダーはまったく通らなかった、とのエピソードがヤフーのメッセージボードに載っていました。まったく、馬鹿を見るのはいつも一般投資家ばかり。

Saturday, May 8, 2010

5月6日米国株式市場混乱の追加情報:High Frequency Trading、Dark Pools

5月8日付けのウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、5月6日に米国株式市場が崩壊寸前に追い込まれた経緯を説明しようとしています。

株式市場のフリー・フォール(崩壊)が始まったのはニューヨーク時間の2時40分以降だが、その前、2時を過ぎたあたりから、外国為替市場で極端な動きが出始めていた。[特に、日本円・ドル。]

Procter&Gamble (PG)の大量の売り注文はトレードミスではない。この売り注文がきっかけで、市場指数は更に降下を始めたが、それはHigh Frequency Tradingを行う金融機関がトレードを停止した時間とほぼ一致している。

ダウ工業平均がマイナス500を記録した時点で、このような金融機関のひとつであるTradebot Systems Inc.はトレードを停止した。その他のHFT金融機関数社も同様にトレードを停止した。[Liquidityを供給するという、HFTの謳い文句は単なる謳い文句だったわけ。]

ニューヨーク証券取引所(NYSE)は市場の急激な降下が始まった時点で取引を停止あるいはスローダウンしたが、その結果、次々に入ってくる売り注文を[コンピュータではなく人間のトレーダーが」さばききれず、さばけなかったオーダーはその他のエレクトロニック市場にまわされた。(恐らく、Intermarket Sweep Order)

まわされた先の市場では、通常価格での買い注文はほとんどなく、株式の価格は急激に落下した。[まわされた先の市場は、ナスダックなどの大手公開市場だけはでなく、いわゆるダーク・プールと言われる市場-大手では、ゴールドマン・サックスが主体のDirect EdgeBATS Exchange (NYSE、ナスダックに次ぐ規模)などがあります-が含まれていた様子。]

PGに大量の売り注文を出したのは誰か、どこから注文が入ってきたのか、注文の大きさは?

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の答えは、『わからない』の一言。

また、市場のフリーフォールを止めたのは誰なのか?その点についての言及はまったくありません。

誰が利益を蒙ったのか? Qui Bono? それについての言及も、まったくありません。

ちなみに、金曜日の市場を見ていて面白かったのは、木曜日とは違って市場が下がるたびにどこからか、神経質にも思える買いが頻繁に入っていたことです。特定の銘柄ではなく、市場指数(ETF、指数オプション、先物)を買っていたのでしょう。私は株式スクリーンに200銘柄程度を入れているのですが、スクリーンが一斉に緑色(アメリカでは日本と逆で、上昇している株は緑、下降している株は赤)になるのです。何か、とても無理しているような、不思議な感覚でした。まるで、木曜日の崩壊直前の後、High Frequency Tradingを行う会社がどこからか厳重なお叱りを受け、アルゴリズムを変更して市場が下がるたびに必ず買いを入れるように、と指示されたかのような。

月曜日のアジア市場の開始前にはEUの金融危機対応プランが公表されるとのことですが、アメリカ市場はどう反応するか。2008年10月に米国議会がアメリカの金融危機対応プランを可決したその日から、市場の20パーセントを超す急落が始まりました。株式市場に投資されている皆様、くれぐれもご注意ください。

Thursday, May 6, 2010

米国株式市場の大混乱はHigh Frequency Tradingのなせる業

ゴールドマン・サックスで有名になったHigh Frequency Trading、覚えてます?

5月6日の米国株式市場は大変にスリリングな相場でした。ニューヨーク時間の2時42,3分ごろから、ダウ工業平均、ナスダック、S&P500等の主要指数が突然急降下を始めたのです。私はちょうど英語のブログを書きながら横目で株式チャートを見ていたのですが、それまではマイナス200ポイント程度だったダウ工業平均が数秒後に顔を上げたときにはマイナス400、あっという間に何の歯止めも掛からずに600、700、800と落ちていき、マイナス998.50を記録したのは2時46分。そこからまた急激に戻して結局はマイナス347で終わりました。

最初は、欧州の銀行が貸し出しを全面停止したらしい、という噂のせいだ、というニュースが流れました。そのあとしばらくして、どこかのトレーダーがオーダーの桁数を間違えた、という噂が流れ、そうしているうちにシティグループのトレーダーらしい、という噂になりました。

S&P500の先物契約の一種のS&P500 E-Mini Futuresを16Million(1600万)売るオーダーを出すつもりが16Billion(160億)のオーダーになってしまった、ということらしいですが、シティグループのE-Mini Futuresの今日の取引高は60億に過ぎないことが分かり、この160億のオーダーがどこから出たのか、今のところ不明です。シカゴ商品先物取引所(CME)を通じて出たオーダーらしい、ということだけは分かっていますが。

きっかけになったのはこの先物のオーダーかもしれませんが、市場を最大9パーセントも下げたのはどうも、去年一時話題になったもののマスメディアからすぐに消えてしまった、High Frequency Tradingが原因のようです。Quant Trading、Algo Tradingなどとも言われますが、要するに高速のコンピュータを証券取引所のサーバーのすぐ隣に設置し(設置料金は結構なものだと聞きます)、高度なアルゴリズムを使ったプログラムで一秒間に100、1000とも言われるトレードを出し、自社に有利なBid、Ask値を引き出すと共に市場にLiquidity、流動性を与える、というものです。

今日株式市場で起こったのは、Liquidityを付加するどころかそのまったく逆、Liquidityを吸い取る結果になりました。

どこから来たオーダーにせよ、S&P先物から更に派生したデリバティブを使って先物市場を急激に下げ、その結果通常の市場が下がらざるを得なくなる、それをかぎつけたアルゴリズムが我先に押し寄せて更に市場を下げる。ジャンボジェットで飛行中に乗客がいっせいに立ち上がって飛行機の最後部に押し寄せたらどうなるか(やらないでくださいよ)。

ゼロヘッジに詳しい記事が出ていますので、お読みください。ゼロヘッジのタイラー・ダーデンは、「(High Frequency Tradingで)株式市場がほとんど死にかけた日」と言っています。何の歯止めも無く、ただひたすら落ちていく様子は、2008年の9月、10月の市場下落の時にもそうそう見かけなかったと思います。ダウがマイナス1000を越える直前に、誰がどうやって止めたのか。

また、もうひとつ分からないのは、プログラムトレーディング(総取引高の7割以上を占めるといわれています)が今日のように機能不全に陥ったときに作動するはずのサブルーチンがまったく作動した形跡がないこと。まあ、最後には誰かがどうかして止めたのですが、下げている最中はとても止まるとは思えませんでした。

個人的には、まったくの妄想、パラノイアと言われるのを覚悟で、これは一種のCyber Terrorismだったのではないか、とも思っています。Algo Botsの誤動作防止のサブルーチンをオーバーライドしておいて、E-Mini Futuresに大量の売り注文を出す。先物と通常市場のArbitrageを出さないためには通常の市場を下げなくてはならない。いったん下げが始まると、High Frequency Tradingのアルゴリズムが一斉に作動して、一斉に同じ方向に向かって走り出す。サブルーチンがオーバーライドされているので、アルゴリズムは止まらない。まあ、私も正確に把握しているわけではありませんが、だいたいそんなところかなあと思っています。

前述のゼロヘッジの記事の最後の方に、市場が急激に下げている真っ最中にLimit Orderで買い注文を何度か出してみたファンド・マネージャーの意見が載っています。出すたびに、彼の注文より1セントだけ高い注文がほぼ同時に出、彼の注文はいっさい通らなかった、とのこと。この1セント高い注文はHigh Frequency Tradingで、実際のトレードが成立したのかどうか、多分しなかったのでしょう。そのようにして、Liquidityがほとんどゼロのまま、市場の指数はひたすら落ちていったのです。

しかも悪いことに、一般の投資家が利用するオンラインのブローカーはどこも、市場が下落している間中システムがダウンまたはスローダウンし、私も自分のアカウントにアクセスできませんでした。ダウがマイナス1000の直前で止まって引き返したのを見て買いを入れたかったのですが、まったくだめ。

さて明日はどうなることやら。

Wednesday, April 14, 2010

エドワード・グリフィン インタビュー

エドワード・グリフィン氏の本、『The Creature from Jekyll Island: A Second Look at the Federal Reserve』は、米国の連邦準備銀行制度がどのようにして成立したのか、真の目的は何か、を明らかにしたものです。10年以上も前に書かれたにもかかわらず、まるで2008年から現在までに起こった出来事を描写しているようで、読んでいると何とも不思議な気分になります。

ここにリンクしたYoutubeのクリップは、4月14日にグリフィン氏がアテネのジャーナリストと行ったインタビューです。この中で、氏は、「自国の負債をMonetizeして(中央銀行に負債を購入させて)インフレを引き起こした国で、生き残った国は一つも無い」、と述べています。また、「そもそも問題を引き起こした張本人の政府に何とかして問題を解決するように求めるのは、残念ながら国民の無知としか言いようがない」とも。

日本の民主党は何でもインフレ・ターゲットを制定して日銀に国債の購入を強制し、円を30パーセント切り下げる法案(?)の骨子を提出した、と英国のテレグラフ紙のAmbrose Evans-Pritchard氏が報道していますが、どうかこのブログをお読みになっている方、まだ円が強いうちに金貨を買うなどして、資産の保存をお計りになってください。

お上の事には間違いはございますまいから」とは、森鴎外の痛烈な皮肉です。


Wednesday, March 31, 2010

株式市場はなぜ上昇を続けるのか?

米国株式市場の上昇が続く中、金融アナリスト達は首を捻っているようです。

WHY? 上昇する理由なんてろくにないじゃないか、というわけです。

Stocks Soar, but Many Analysts Ask Why (3/29/2010 ニューヨークタイムズ)

”The unemployment rate remains locked in a range that recalls the economic doldrums of the early 1980s. Housing is stuck in a ditch, with foreclosures rising. And consumers are still reluctant to part with the little cash they do have.

”Yet the stock markets are partying like it’s 2003, when hiring was brisk, real estate was booming, wallets were fat — and the major stock indexes started a four-year rally that would double their value and push them to new heights just before the financial crisis hit.

”Judging from stock prices alone, one would think the economy was poised for a roaring comeback. But the federal government plans to unplug the economic life-support programs that stimulated production, kept interest rates low and placed a thick cushion under the real estate market.

”Some analysts see ample reason for caution in equities, with many economists, including those at the Federal Reserve, forecasting tepid growth in the near term.” [記事はさらに続きます。]

先週の日曜日の夜の夜中に米国議会下院が『オバマケア』と揶揄されるヘルスケア改革法案を僅差で可決し、誰もが翌日の株式市場の急降下を予測したにもかかわらず、翌月曜日は上昇。株式市場が下落したのは先週は水曜日だけ、今週も水曜日になってやっと下がりました。

ヘルスケア改革とは名ばかり、実のところは高い健康保険を「権利」と称してアメリカ市民に強制的に買わせ(強制しておいて何が権利だ、と思うのですが)、ありとあらゆるヘルスケア商品(薬から日焼けサロンの果てまで)に新たな課税をし、所得税を引き上げ、政府の新しい巨大な官僚機構を作り上げて市民生活を管理する、という、日本ではいざ知らず、アメリカでは信じがたい改革なのです。アメリカの建国の祖、ワシントン、ジェファーソンが知ったら、自分たちの努力はまったく無駄だった、とさぞかし失望することでしょう。

このような法案が目白押しの中、何で株式市場は上がるんだ?と半ば怒りをこめて疑問を投げかける人も多いのですが、私はなんとなくわかる気がします。

オバマ大統領が大統領でいる限り、株式市場に上場しているような大企業は絶対安全なのです。

ヘルスケア改革は保険会社のビジネスをしっかり保障(何しろ3000万人分の新規ビジネスが政府の強制によって作り出されるんですから)、金融改革は大手の金融機関に対して新たに5兆ドルの援助を保障、地球温暖化防止法案(地球温暖化が実際に起こっていようがいまいが)はアメリカの平均家庭の年間の税金負担を2000ドル以上増加させる、とオバマ政府自身が認めています。オバマ大統領の地球温暖化法案を支持するのは大企業ばかり。

去年の3月に株式市場が底を打ってから今まで、何で市場は上がるのか、ファンダメンタルがこうも悪いのに?と思っていましたが、今はわかります。大企業と政府の尻拭いを納税者に有無を言わせずやらせる政府の方針が続く限り、株式市場は上がるでしょう。

ブッシュ大統領時代より悪くなるわけがない、と思って今の大統領に投票した知人達は、オバマ、と聞くと顔をしかめています。まあ、私に言えるのは、"I told you so" ぐらいですが、黙っています。

Monday, March 1, 2010

ゼネラル・モーターズのリコール問題

ゼネラル・モーターズ(アメリカでは"Government Motors"と揶揄されています)のリコール問題は問題にすらなっていませんね。

3月2日付けロイター通信のニュースによると、

ゼネラル・モーターズ、パワステの不具合で130万台のリコール

衝突事故14件、怪我1件、クレーム1100件。

特に低速(15マイル、約24キロ)での走行中に、パワーステアリングが利かなくなることがあり、保障期間の切れた古い車(といっても2005年ですが)でより発生しやすい、ということです。

トヨタの品質担当副社長と北米トヨタ社長は火曜日、またも米国議会公聴会に引き出されるようですが、ゼネラル・モーターズの経営陣がこのリコールで議会公聴会に引き出される可能性はまずゼロと見ていいでしょう。

トヨタのリコール問題のニュースも、メディアからばったり消えました。ところで、公聴会でアクセルの急加速の恐怖の体験を涙ながらに証言した女性の車を政府が買い上げて調査することにしたそうですが、この女性はこの「危険な」車を黙って他人に売り渡しており、彼女から車を買った人は買ってから一度もアクセルの問題がおきたことはない、とのことです。やっぱり何か裏がありそうですねえ。(Wayne Madsen氏のレポートはこのブログでも取り上げました。)

このRed Stateのブロッガーは、次の車は絶対トヨタを買う、と公言しています。リコール問題を巡る公聴会、マスコミメディアの攻撃は、オバマ政権の仕業だ、と決め付けています。

アメリカのオバマ政権がトヨタを目の敵のようにして追求する中、ロシアのプーチン首相は日産のゴーン社長と会談、ロシア極東での自動車生産を進める意図を示したそうです。(ニュースリンクはこちら。)

Wednesday, February 24, 2010

公聴会での豊田社長のナイーブさには驚き

ナイーブ(Naive)という単語は、日本語ではどうもいい意味に使われているようですが、英語では、『単純、馬鹿、阿呆、非現実的』といった、悪い意味で使われます。

トヨタの豊田社長の公聴会での発言は、ナイーブを10倍、100倍にしても足りないほどのナイーブさです。

ここは日本ではないのです。

FBIは火曜日の夜、トヨタのサプライヤーに強制捜査をかけました。すでに刑事事件に仕立てあがっているようです。議会公聴会の発言は全て、検察当局によってトヨタの刑事責任の追及に利用されます。このブログでも昨日書いたとおり、合衆国憲法修正条項第5条を盾にすべきでした。

米国トヨタの経営陣はそれくらいのことは理解していたはずですが、なぜそれを日本側に伝えなかったのか?品質の問題よりも、私はそっちの方がよっぽど問題だと思います。

Monday, February 22, 2010

トヨタ、連邦大陪審から召喚状

日経ネット2月23日の記事

米連邦大陪審とSEC、トヨタに書類要求 リコール問題  

『トヨタ自動車は22日、米ニューヨーク州南部連邦地裁の連邦大陪審から同社製車両のアクセルの不具合や「プリウス」のブレーキに関する書類の提出を求める召喚状を受け取ったと発表した。米証券取引委員会(SEC)のロサンゼルス支部からも同様の文書の自主的な提出や召喚状を受けとったことも明らかにした。トヨタは大陪審などの要請に協力、書類を提出する考えだ。

『トヨタによると、検察の要請を受けて連邦大陪審が召喚状を今月8日にトヨタと米子会社に発行した。リコールでメーカーがこうした要請を受けるのは異例という。現地の検察当局が刑事上の責任追及を視野に調査を始めた可能性がある。

『米SECも19日にトヨタに対し、自主的な文書の要請をしたほか、米販売子会社に対して召喚状を送付した。トヨタ車のアクセルの不具合や同社の情報開示指針や慣行についての書類の提出を求めている。 (00:19) 』

トヨタがいったい何の法律に抵触したのか、一切不明。大陪審(Grand Jury)の要請に協力?トヨタはアメリカの司法システムを理解しているんでしょうね?

大陪審の召喚状(Subpoena)が来ている、ということは、トヨタの米国議会公聴会での発言は検察当局がトヨタに不利な証拠として利用できる、ということなのです。

公聴会に出席するトヨタの首脳陣、日米を問わず、これは "Take the Fifth"(合衆国憲法修正第5条:自身に不利な証言をすることを拒否する権利) をせざるを得ないはずで、そうさせること自体が恐らくオバマ政権の狙いだと思われます。"Take the Fifth"ということは胡散臭い、疾しいことがあるからに違いない、というわけで、いわばそれだけで有罪も同然、というイメージを植えつけるわけです。

まったく、これが一国の長のすることか、と思いますが、シカゴのチンピラを首席補佐官にしているくらいですから、程度は推して知るべし。今回のリコール騒動をこれだけあおっているのはほかでもない、オバマ大統領とその取り巻きです。

豊田社長は「誠心誠意」理解を求めるそうですが、そもそもそんな次元の問題ではないのです。誠心誠意、謝りでもしたら、それは検察の訴追の材料になるのです。(詳しくは英語ブログをご参照ください。)何を言っても不利な証言と検察に取られるか、証言を拒否して有罪同然のダメージを受けるかのどちらかです。要するに行くだけ無駄です

さて、日本は12月に中国を抜いて世界一の米国債券保有国(約70兆円)に復帰しましたねえ。ドルが多少上がっているうちに多少なりとも売り払って、その代金でIMFから金を200トンばかり買ったほうがよほど日本の将来のためにいいのではと思いますが、いかがでしょう?

Tuesday, February 16, 2010

トヨタのリコール問題は沖縄基地問題の延長線上?

オバマ政権のトヨタ自動車に対する執拗な「攻撃」は沖縄基地移転問題に端を発している、という記事を Lewrockwell.com がリンクしていました。リンク先の記事はこれです。

Obama waging economic warfare on several fronts, including Japan (Wayne Madsen, 2/12/2010 Online Journal)

The Obama administration has expanded its economic warfare against other countries, first reported on January 18 by WMR in the case of an authorized financial campaign against Venezuela. The Obama administration, according to WMR’s Asian sources, is waging an economic warfare campaign, coupled with industrial sabotage, against Japan through a pre-planned operation directed against the Japanese automobile manufacturer, Toyota.

WMR has learned that the Obama administration authorized the anti-Toyota campaign as a warning shot to Japan over its reformist government’s insistence that the U.S. pull its military troops out of Okinawa. WMR has learned that Obama and his chief of staff, Rahm Emanuel, have decided to turn the screws on Japan, not only for auto market leverage, but also to punish Japan over the insistence by Prime Minister Yukio Hatoyama and the newly-elected anti-U.S. military mayor of Nago on Okinawa to move the U.S. military off of Okinawa.

要するに、オバマ大統領とラーム・エマニュエル主席補佐官の間で決定されたことで、沖縄からの米軍撤退を求める日本の民主党政権にプレッシャーを掛けるために、トヨタのアクセルの問題をことさらに取り上げることにした、というのです。

記事の後半では、トヨタ、ホンダ、GM、フォードに電子制御のアクセルのアセンブリーを供給している会社、CTSには、以前からこのアセンブリーの誤動作問題があったこと、また、CTSの社長はインド人で、オバマ政権内の重要な地位についているインド人およびインド系アメリカ人に遠慮があるのか、CTSについては何の咎めもない、といぶかしがっています。

また、どのような情報をMadsen氏がつかんでいるのかはわかりませんが、このCTSのアクセル・アセンブリーは、「非民間用」、つまり「軍事用」の周波数に影響されやすい、つまり、アクセル・ペダルの事故は、米軍が通信に使用している周波数に影響されて誤動作している可能性がある、としています。

それが表向きになってしまう前にとにかくトヨタに責任を押し付けてしまおう、という訳です。

それにしても、品質のトヨタがなぜそんなアクセル・アセンブリーを調達していたのか、私には理解しかねます。全世界でCTSだけが供給しているというわけでもないでしょうが。(ひょっとして?)

オバマ政府はトヨタに対して、アメリカ国内だけでなくヨーロッパのリコールのデータまで提出するよう要求しています。同じペダル問題のある競合他社、また問題のペダルを作った当のCTSからも同様のデータを要求しているという話は一切聞きません。安全性を問題にしているのではないことが、このことからも窺えます。

Madsen氏の記事では、日本政府もトヨタも、オバマ政府の狙いが政治的なところにあることは承知している、となっていますが、どうでしょうか?

Tuesday, February 9, 2010

米国トヨタのリコール広告

日本の本社の訳の分からない記者会見に業を煮やしたか、米国トヨタが多分独自に広告を出し始めました。私が先のポストで書いたようなことを、ナレーションで言っています。



『安全で、信頼の置ける高品質の車を皆様に提供するのが、この50年間、トヨタの最も大切な使命でした。最近になって、皆様のトヨタの品質に寄せる期待にそぐわない問題が起こりました。私たちの自身に対する期待にすらそぐわないものです。そこで、私たちトヨタおよびトヨタのディーラーの全従業員17万2千人を挙げて、問題を解決すべく立ち上がりました。私たちは、工場の製造ラインを止めました。お客様の車を第一に、最優先で修理するためです。』云々とあって、最後に

『皆様の信頼をトヨタに取り戻すために。』

1分足らずのコマーシャルですが、大変に効果的だと思います。その上でそれこそご飯が食べられるんじゃないかと思えるほどきれいな工場の床が、私には印象的でした。日本のトヨタの工場を見学しましたが、アメリカでも同じなんですねえ。

Monday, February 8, 2010

トヨタの豊田社長が記者会見で言うべきだったこと

トヨタの社長の記者会見でのコメントを読んで、思わずため息。(英語版も読みましたが、あれでは英語圏の人々はいったい社長が何を言っているのか、よくわからなかったでしょう。一瞬機械翻訳かと思いました。)何と日本的な発言。

トヨタが日本の自動車メーカーに留まっているのならあれでもいいでしょうが、全世界に製造、販売拠点をもつグローバル企業の長がただ謝るだけとは。まして、アメリカ政府の政治的打算が見え見えで、しかもアメリカのマスコミ(特にABCニュース)が鬼の首でも取ったかのような報道をし続けている中、特にアメリカに言及することも無く。

トヨタの広報は何をしているんでしょう。(記者会見がすぐに全世界に流れることは承知だったでしょうに。)

トヨタの社長が記者会見で伝えるべきだったことは、自社の品質に対する自信、そして、リコール問題を完全に、短期に解決できるという自信です。

私が広報だったら最低でも以下のようなことを社長に言わせます。

『今回のリコール問題では多方面に迷惑をかけることになってしまい、遺憾である。しかし、リコール問題はトヨタとトヨタの車のオーナーの方々との間のことである。[本音:米国連邦政府が口を挟むような事態ではない]

『また、今回の対応の遅れはあくまで日本の本社サイドの問題である。米国トヨタは、アメリカの消費者が求める、他社の追従を許さない高品質と高機能を常に提供してきた。そのような車を生産してきた米国トヨタ工場の従業員、また、顧客第一のサービスを提供してきた全米のトヨタのディーラーには、全幅の信頼を置いている。

『リコールの対象車を増やしたために、トヨタの品質の低下を疑う向きもあろう。この上は、トヨタの歴史上最大規模のリコールを、史上最短時間で解決して見せることで、トヨタの品質の高さ、顧客重視の姿勢を示したいと思う。全世界のトヨタの従業員、トヨタのディーラーをあげて取り組む所存である。』

といったところでしょうか。

しかし、社外の専門家に品質管理のアドバイスを求める、というのにはちょっと驚きました。トヨタに品質管理のアドバイスが出来る専門家が居ようとは思わなかったので。

南部の諸州(トヨタの工場所在地)のトヨタ・ディーラーの組織は、リコール問題で偏った報道を続けるABCニュースに怒り、ABCネットワークからトヨタのコマーシャルを取り下げました。(記事はこちら。)トヨタはアメリカでもしっかり愛社(愛車かな)精神を植えつけたようですねえ。豊田社長ももう少し自信を持ってもいいのでは?

Friday, February 5, 2010

トヨタを非難する日本政府、マスコミは解ってない!!

今回のリコール騒動は『政治的』なのです!

日本政府がトヨタの対応の遅れを非難し、マスコミが輪を掛ける、というのは、まあ日本では当たり前でいわば建前、慣習のようなものですが、日本の政府、マスコミの反応、トヨタのいかにも日本企業らしい日本向けの謝罪・対応が『まったく額面どおりに』アメリカのマスコミで報道されていることをご存じない?トヨタもトヨタで、ひたすら謝り挙句の果てにLaHood長官に感謝するなど、日本では褒められたことかもしれませんが、アメリカでそのまま報道されるとこれは単に支離滅裂です。

ホワイト・ハウスのプロパガンダ機関と化しているABCニュースなどは、あることないこと取り混ぜてトヨタの災難を文字通りあざ笑っています。

私の憤慨の詳細は週末に書きたいと思いますが(何しろ真夜中近いので…)、政府も、マスコミも、トヨタを攻撃するのなら攻撃の矛先をアメリカ政府、オバマ大統領にも向けるべきです。

不慮の加速、電子制御の誤動作、ペダルの問題などはトヨタに限ったものではありません。トヨタが一方的に攻撃される中、フォードなどはこっそりと制御ソフトの交換をしています。オバマ政府が特にトヨタを標的にした、真の意図は何か、と疑いをかける記事がこちらでは出始めています。このWashington Examinerの記事などは、オバマ政府をマフィアのギャングに例えています。

前のポストのHedgecock氏も言ってましたが、大げさに言えばトヨタの北米市場での存亡と、消費者が自由に車を選べるFree Market Systemの存亡がかかっているかもしれないのです。

Tuesday, February 2, 2010

トヨタはオバマのターゲット?

トヨタのリコール問題について、リコール、米国での販売および生産の停止はオバマ政府によって指示されたものである、との報道があったのが1月28日、同じ日に米国議会下院のエネルギー・通商委員会が公聴会を2月25日に行うことを決定、さらに今日に至って米国運輸省がトヨタに民事制裁金(Civic fine)を課すことを検討している、との報道。

スタイルは他のメーカーに劣るかもしれないけれど、品質と信頼性は何といってもトヨタ、というのが今の今まで全世界的に信じられてきた神話のようなものです。これまで放置してきたトヨタが何より悪いのでしょうが、トヨタにだけ販売、生産を停止させ(同じような問題を起こすアクセル・ペダルは、GM、フォード、クライスラー、ホンダの車にも入っています)、しかも議会公聴会、制裁金まで課せられる、というのは、どうも行き過ぎのような気がしていたところ、こんな記事を見つけました。

著者のRoger Hedgecock氏はサンディエゴのラジオ・トークショーのホストで、氏の番組は全米にシンジケートされています。

Obama attacks Toyota (Roger Hedgecock, 2/1/2010 World Net Daily)

この記事の中で、Hedgecock氏は、

『トヨタはSUA(Sudden Unintended Acceleration)問題でパーフェクト・ストーム(要するに悪いことが全部重なる事態)に直面している。が、ここにアメリカ政府の「欲」が絡んでいないだろうか?トヨタのライバルのゼネラル・モーターズ、クライスラーの大株主であるオバマ政府がトヨタに対して聖戦を挑んでいるのは「消費者保護」のためなのか、それとも労働組合組織化されていない、Red State(保守的な州、あるいは共和党支持の州)に生産拠点を置くトヨタへの報復なのか。危機は政策を進める絶好の機会だ、とする(大統領首席補佐官の)ラーム・エマニュエルの発言を考え合わせると、この疑問はよく考えてみたほうが良い。』

記事にもあるように、ゼネラル・モーターズ、フォード、韓国の現代自動車はここぞとばかりトヨタのオーナー向けのディスカウント、金利ゼロファイナンスなどを提供し始めました。

記事の最後の方には、こんな箇所もあります。トヨタの株主には考えたくもないことでしょう。

『今回の騒動から起こる訴訟の結果次第では、トヨタの米国撤退も考えられる。GMにとってはまったく好都合だ。(GM、ゼネラル・モーターズは、アメリカではGovernment Motorsとあだ名されています。)』

そして、『アメリカに自由で競争的な自動車市場の存在が(これからも)許されるかどうかが、トヨタのリコールの対応に掛かっているのだ。』としています。

トヨタの対応の遅さ、まずさはさておいて、私がこのポストで言いたいのは、

いったい日本政府は何をしているのか?

ということです。これは単に一私企業(トヨタ)の問題で、政府には関係ない、という態度なのだと推測しますが、どうもこれはオバマ政府の強い関与があると思われます。オバマ大統領は中国製各種製品に高関税を掛け、中国との関係はこれまでになく冷えていますが、今回のトヨタのリコール騒動もオバマ大統領がうまく利用してトヨタの居心地を悪くさせようとしているのでは。

GMを抜いて世界一の生産台数を達成したのが多分トヨタにとっての失敗だったのでしょう。

また、労働組合はオバマ大統領の最大支持基盤でもあります。

アメリカから見ていると、これはかなり政治的な動きで、政治的な対応を必要とする場合だと思われます。それこそ、日本政府からアメリカ政府に抗議し、トヨタだけを悪者扱いにするのはどういうつもりか、ぐらい言うべきでしょう。まあ、政府のどの部署を押せばいいのかは私には分かりませんが、日本政府が保有する巨額の米国債券を市場で投売りする、とでも脅かせば、公聴会だの制裁金だのはすぐに取りやめになるでしょう。

Saturday, January 30, 2010

オバマ大統領の癇癪(かんしゃく)で市場が下落

マサチューセッツの特別選挙は確かにMarket Moverでしたね。もっとも、予想しなかった形でしたが。

マサチューセッツの選挙が共和党候補の圧勝(何しろ過去40年以上、ケネディ上院議員が独占していた議席ですから)に終わって、さて民主党ならびに大統領がどう出るか。大方の評論家は、敗戦をきっかけに大統領は協調路線を取らざるを得ないだろう、という意見でした。

とんでもない誤解でした。

協調どころか、選挙の翌日の一般教書演説では、野党共和党が協力的でないと言って叱り、大統領のヘルスケア改革に反対する国民を叱り、挙句の果てには正面に座っている最高裁の判事たちに向かって、政治資金改革に関する最新の最高裁の判断を満場の議会で批判する、といった始末。大統領と言うよりは、シカゴのマフィアといった口吻でした。

幼稚園の砂場で砂をかけられて腹を立て、大声で騒ぎまくっている、といった感がありますね。

その翌日の木曜日には、新たに金融機関を規制する試案を発表、これを嫌った株式市場は2日連続の続落。翌日の金曜日も大統領の強気な発言は止まず、市場はまたも下落。今週に入っても、先行き不透明で市場は膠着状態、金曜日の第4四半期GDPの5.7%の伸びのニュースに接しても、市場は午前中の上昇をキープすることが出来ず、結局大幅下落に終わりました。オバマ大統領は大統領選挙戦をまだやっているつもりなのか、全米各地を毎日のように国民の税金で飛び回って、自分の政策を売り込もうとしています。

先行き不透明なのは、政府の介入がいつどんな形でどんな理由で入ってくるかが分からない、という不安があるためです。レーガン大統領時代に連邦準備銀行総裁だったPaul Volcker氏を突然起用してまとめさせた金融機関規制案などはいい例です。2008年の秋のような金融危機が二度と起こらないようにするため、金融機関が自分の資金で各種金融市場でトレードするのを禁止し、またヘッジファンド、プライベートエクイティファンドに投資するのを禁止する、というものですが、2008年の金融危機の最大原因には一切触れず。

2008年の全世界を巻き込んだ金融危機の最大原因は、1)連邦準備銀行の長年にわたる低金利政策の弊害(資源のMisallocation)によって発生した不動産バブル、2)住宅ローン、クレジットカードローンなどの各種負債の証券化(MBS、ABSなど)とその証券のデリバティブ(Credit Default SwapsCDOなど)による、レバレッジの増加です。これを無視して自己資金のトレード、ヘッジファンドの規制などをやっても、効果が無いどころか、市場の流動性が減少し、より不安定で危険な市場になりかねません。

マサチューセッツ選挙の敗戦のダメージを気取られないようにするにはどうするのが一番か。これは、いわゆるギャンブルで言うDouble-downなのでしょう。この1年で失速した政策の数々(ヘルスケア改革、地球温暖化防止のためのキャップ・アンド・トレード、金融改革、経済活性化政策、要するに軍事政策以外のすべてですね)を、見直すどころか今までにもまして推し進める姿勢を見せる。株式市場はこれを嫌って急降下、国民の間に、これは2008年秋の再来か、と、危機感が広がり、金融機関への怒りと不満が倍増。そこへオバマ大統領が颯爽と登場して悪いゴールドマンサックスを懲らしめる。まるで桃太郎のお伽話のようですが、この1年、この大統領と彼の取り巻きのアドバイザーの面々を見ていると、せいぜいその程度なのでは、と思わせます。(ちなみに、大統領のChief of Staffは元バレーダンサーです。どうでもいいことですが。熱狂的なイスラエル支持者でもあります。)

この1年で増えたのは失業者と国の借金だけ。もし今年大統領選があったら、まず再選は無いでしょう。次の大統領選までアメリカが国として持つかどうか、疑問視する人も増えています。

Tuesday, January 19, 2010

マサチューセッツの臨時選挙にご注目

日本の投資家の皆様、明日(水曜日)の米国株式市場がどちらに振れるかをいち早く知りたいのなら、現在開票中のマサチューセッツ州臨時選挙にご注目。脳腫瘍で亡くなった故テッド・ケネディ上院議員の後釜を選出するこの選挙、つい1週間前までは民主党Martha Coakley候補者の圧倒的リードだったのですが、あれよあれよという間に共和党Scott Brown候補が追いつき、選挙直前のアンケートでは4パーセントから10パーセントのリード。

オバマ政権の政策に不満を持つアメリカの過半数の市民は、マサチューセッツの選挙をいわばオバマ大統領に対するレファレンダムとして見ており、共和党候補が勝てば不人気の医療改革、キャップアンドトレードを無理押しすることができなくなるのでは、と期待しています。臨時選挙がこれほど全国の関心を集めるのは珍しいことです。

火曜日の株式市場が上昇した理由はひとつにはマサチューセッツの選挙が共和党候補の勝利になるのでは、という期待からです。万が一(というのも、去年の12月の時点では民主党候補のおばさんが2,30パーセントのリードだったのです)共和党候補が勝利するとなると、水曜日の株式市場は恐らく急上昇するものと思われます。ただし、Sell the newsで大幅に売られる、という可能性もありますね。どちらにしても、市場を動かすニュースであることは間違いないと思われます。

ただ、間抜けなことに、一週間前まではほとんど誰もこの選挙に注目していなかったため(民主党の楽勝と思われていた)、選挙の報道がまったくばらばらで、インターネットでもろくな情報が見つかりません。Boston.comのサイトはアクセスのリクエストが殺到しているからでしょう、アクセスはほとんど不可能。開票結果もページに出たかと思うと、ページを更新した途端消えてしまう、といった状況です。

共和党候補の人となり、政策はどうでもいいからとにかくオバマ大統領がプッシュする民主党候補に勝って欲しい、という意見の人も数多くいるようで、オバマ政権への不満がこの一年でいかに大きくなったかが窺えようというものです。

現在、69パーセント開票で共和党候補53パーセント、民主党候補46パーセント。共和党候補は、2008年にオバマが勝利した地区で票を獲得、圧勝しているようです。

あ、最新のラジオニュースです。民主党Martha Coakley候補が敗戦を認めたそうです!

日曜日にわざわざマサチューセッツにやってきて選挙応援をしたオバマ大統領に、またけちがついたようですね。

Monday, January 18, 2010

地球温暖化防止にはペットを食べろ?

ここ1ヶ月ばかりでマスコミからばったり途絶えたニュースが2つ。ひとつは世界中で大騒ぎしたH1N1インフルエンザ。たまにアメリカののニュースに出たかと思うと、余ったワクチンがトラックに一杯あってこまったものだ、というニュースでした。

もう一つは、いわゆる「地球温暖化危機」のニュース。Climategateが日に日に大きくなる中で開催されたコペンハーゲンの環境サミットはどう好意的に見ても失敗。挙句の果てには、オバマ大統領を含めたアメリカからの参加者一行は、ワシントンDCの猛吹雪を避けるために日程を繰り上げて帰国する始末でした。サミット以来、北半球は数十年来といわれる寒波に襲われ、何とも皮肉なことです。それまで地球温暖化、特に人間由来の地球温暖化一辺倒で報道してきたマスコミがまったく音無しなのは、何とも愉快なことです。そういえば、アル・ゴア前副大統領も最近マスコミに出てきませんねえ。ロシアのプーチン首相などは、地球寒冷化の心配をしなくては、と言ったとか。(タス通信の記事をご覧ください。)

個人的には、私は温暖化どころかミニ氷河期が来るのではないか、とかねがね思っていました。学術的根拠は温暖化「理論」よりはるかにあると思います。(デイリー・メールのこんな記事もあります。『ミニ氷河期は今ここに始まる』)

ところで、地球温暖化派(Warmers)の議論は曲論(データ捏造)ばかりではなく、こんな極論もあるのです。

Polluting pets: the devastating impact of man's best friend
(2009年12月20日AFP)


『人間の最良の友は環境の最大の敵かもしれない。最新の研究によると、ペットの犬のカーボン・フットプリントはガソリンを多量に必要とするスポーツ・ユーティリティ車の2倍以上であるという。

『しかし、ニュージーランドの著者ロバート・ヴェイル(Robert Vale)とブレンダ・ヴェイル(Brenda Vale)の『犬を食べよう:環境を破壊しない生活ガイド』(Time to Eat the Dog: The Real Guide to Sustainable Living)に怒ったのはペット・オーナー達。

『Victoria University of Wellingtonの環境スペシャリストのヴェイル夫妻はペットフードを分析し、中型の犬は1年でおよそ164キロの肉と95キロの穀物を食べる、と算出。これをまかなうのに必要な土地を計算に入れると、中型犬のフットプリントは年間で約0.84ヘクタールとなり、これは四輪駆動車を一年間に1万キロ運転するフットプリント0.41ヘクタールの約2倍のフットプリントになる。車を製造するのに必要なエネルギーも加えて、の話である。』

記事は更に続き、犬だけでなく他のペットも標的にあげられています。当然の事ながら、ペットのオーナーは全世界的に大反発。ニュージーランドの著者は少しも揺るがず、「ウサギはいい。但し食用にすればの話だが」と言っています。

さて、エコなんとかにすっかり入れ込んでいるようすの日本、こんな記事を見たらどうするんでしょうか。もっとも、日本は未曾有の人口減、それが何よりの地球温暖化防止になるんでしょうか。

Monday, January 4, 2010

Got Gold?

21世紀の最初の10年(まあ正確に言えば9年ですが)が終わりました。ようやく終わってくれた、と喜ぶか、二度と繰り返したくない10年だと思うか、人によって異なるのでしょうが、投資の面から考えるとどうなるか。

日本の株式市場はこの10年で40%以上の下落。10年前にドル預金を始めた方は25%以上の損。米国の株式市場に投資した方は若干の損で済んでいるようですが、たんすのへそくりで現金を持っていたほうが良かったくらいですね。

この10年間、日本で可能な投資で大幅な利益を上げたのは、金。下に出したチャートをご覧ください。2000年の初めに100万円分の金を買ってそのまま10年間放置しておいたとすると、現在価値は400万円以上になります。



この金の動きは何も日本円に限ったことではなく、ドル、英ポンド、ユーロ、スイスフラン、などの基軸通貨、オーストラリアドル、インドルピア、中国元などでも、過去10年間の平均の上昇率は11%から17%。(表の出典は、http://goldmoney.com/commentary-gold-shines-for-the-ninth-consecutive-year.html?print


ゴールドマネーのJames Turk氏によると、金は長期上昇トレンドの第二段階、第三段階はまだ先の話だ、ということです。日本を含む先進各国による債券発行に歯止めがかかる見込みはどうもありません。アメリカの長期債券の金利がじりじりと上昇しているのは、景気上昇の観測によるインフレ懸念だ、というスピンがかかっていますが、本当のところは長期債券をより多く発行していくという米国財務省の方針の変化のためです。要するに供給過剰を見込んだ金利の上昇(つまり債券価格の下落)です。

日本には金貯蓄・金積み立てという、いいものがありますねえ。金、持ってますか?