Tuesday, May 31, 2011

ゲストポスト:「都に頼らず、区や市に詰め寄ろう」

東京の茶とら猫さんの6月1日付けポスト

つい今しがたNHKで「東京都の住民からきめ細かい放射線測定をしてほしいという要望が高まっているのを受けて、区が独自に放射線量を調査してHPに公表する動きが広がっている」というニュースをやっていました。詳細はこちら

【すでに実施している】
足立区
(10年前から実施)

【今月から測定開始】
葛飾区、板橋区、台東区、江東区、渋谷区


【今後測定予定】
墨田区、品川区、世田谷区
(東京の市部はどうなってるんだー!F市なんて公園だらけだぞー!)

なかでも板橋区は、区役所周辺の線量のみならず、小学校、保育園、公園のそれぞれ1か所を抽出して校庭の土や砂場の砂、プールの水を採取して専門の業者に分析してもらうとのこと。ナイス!

前にも書きましたが、東京都のオフィシャルな測定サイトは新宿区の東京都健康安全研究センターただ一箇所。しかも、先月下旬からスタートするとヤジマさんがいっていた土壌調査の結果はまだ公表されていません。ただ、以前は地上18mの屋上でしか測定していなかった空中放射線量を、おとといの5/30から地表1mでも測定するようにしたようです(測定結果はこちら。背景にはこんな事情があった模様)。

ともあれ、先日のヤジマさんの回答(詳細はこちら) からもわかるように、東京都にきめ細かい対応を期待するのは無理そうです。みなさん、とくに小さいお子さんがいるご家庭で心配な方は、各区や市にじかに要 望しましょう。すでに始めている区がこれだけ現れてきたからには「よその区ではやっているじゃないの、このすっとこどっこい!」といって詰め寄れますよ ね。とくに板橋区の取り組みは全都に広がってほしいものです。

危ないのかどうなのか、安心していいのかどうなのか、考える元になるデータがないことには始まりませんもんね。

更に言えば、同じ区でもいわゆるマイクロ・クライメート(Micro-climate)、実に細かい気象の変化が影響を与える場合もあり、実際区に一箇所では到底足りないのです。区や市に「詰め寄る」際に、もう一押し、アイデアだけですが、いかがでしょう?

  • 市民レベルで、ある一定の区域の小中高校、幼稚園、保育園に市民一人ずつ、線量計を持った担当を決め測定方法を統一し、それを区や市に追認させる。

  • 市民が計った放射線量を区や市がまとめて出せるシステムを作る。

  • 区も市も通さず、市民が測定をアップできるまとめサイトを立ち上げる。

まあ、要するに、区も市も頼らない、ということです。

ちなみに、次の記載は、区内の農場で栽培された野菜から放射性物質が検出されたにもかかわらず独自測定は計画していなさそうな江戸川区のものです:

都内の放射線量は平常範囲です

更新日: 2011年5月27日
健康への影響がない数値です

 東京都健康安全研究センターでは、福島第一原子力発電所の事故後の大気や降下物(ちりや雨)、水道水の放射線量を測定し、公表しています。いずれの測定結果も、国の厳しい基準に照合して、健康への影響がない数値でした。全国のほとんどの地域も同様です。

 放射線量を正確に測定するため、さまざまな影響を受ける地表付近を避け、地表から18メートルの地点で測定しています。3月15日は1時間平均で 0.496マイクロシーベルトでしたが、4月20日以降は平常時の0.028~0.079マイクロシーベルトの範囲に戻っています。なお、地表から50センチメートルの地点も4月26日に測定していますが、数値は0.08マイクロシーベルトで、地表18メートルの0.07マイクロシーベルトと比べてもほとんど差はありませんでした。

年間推定積算線量は基準の6分の1以下

 東京都健康安全研究センターでは、放射線量の推移や室内・外の生活時間から積算し、1年間に受ける放射線量を164マイクロシーベルトと推定しています。この数値は、国際放射線防護委員会が定めた「年間1,000マイクロシーベルト以下」という基準値の6分の1以下です。

 区では、今後もこれらの測定結果をチェックし、必要な対応を実施していきます。

3日前のデータだ、というのも寝ぼけた話ですが、「健康に影響のない数字です」と言ってその数字は出していません。新宿で計測される毎時0.06マイクロシーベルトが1年続いたとすると、積算線量は525マイクロシーベルトを超えます。1,000マイクロシーベルトの6分の1どころか半分以上です。また、年間1,000マイクロシーベルト(1ミリシーベルト)を基準としたのは国際放射線防護委員会ではありません。日本の法律です。

(You know what I mean? You can't rely on any government, national or municipal or city.)

福島第1原発の3号機が爆発して爆風が風に乗って東京に届く前は、東京都の18メートル屋上測定は0.03マイクログレイ(マイクロシーベルト)時ちょっと、現在の半分ぐらいでした。(このページの下のほうまでスクロールダウンしましょう。)それが東京都公式の数字でも倍、有志の測定では場所によっては現在の都の公式の数字の2倍から6倍の数字です。それを「健康に影響がない」と言い切れるのはさすがお役人。(そうそう、「直ちに問題はない」は枝野官房長官の口癖でしたね。)

以前にも出しましたが、原子力に携わる有志の方々による自主測定をまとめたサイト、放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリングで、東京を含めた全国の多くの道府県データがダウンロードできます。(東京はこちら:http://www.geocities.jp/environmental_radiation/data/13tokyo.pdf)ざっと見た限り、5月の中旬からさほど下がっていませんね。

東京都下の区、市町村のサイトは、東京都がまとめてリンクを掲載しています。

IAEAの報告書骨子:東電と政府の言い訳そのもの

IAEAの調査団とその報告内容に期待していた方々、どうも残念でした、ということになりそうです。毎日新聞に出た骨子によると、何一つ新しい情報はありません。
  • 津波を過小評価していた(津波のせいで発電所が止まった)
  • 保安院の独立性を確立すべき
  • 初期対策を確立すべき
  • 水素爆発は危険
  • 原発作業員の献身的作業
  • 事態の進展に応じた東電の工程表の見直し必要

新しい情報がないどころか、IAEAの報告書は日本政府の対応を次のように褒めちぎるようです(毎日新聞より):

「素晴らしく、よく組織化されている」

何の冗談ですかね。

毎日新聞の記事全文はこちらでどうぞ

Sunday, May 29, 2011

日本の周辺諸国の原発の数: 韓国20(建設中7)、中国13(建設中27)、台湾6(建設中2)

NHKのTwitter(@nhk_HORIJUN)に、「各国の原発政策」と言う題で4つほど、Tweetが出ていました:

【各国の原発政策①】▼アメリカは世界最多の104基の原発を保有し総電力量の20%を原発で賄っている。オバマ大統領は化石燃料への過度な依存からの脱却を掲げており震災後も原発推進を表明▼フランスは58基保有し電力の約80%を賄う。依存率は世界一。原子力産業が主要産業なため推進強調。

【各国の原発政策②】▼ロシアは32基の原発を保有。今後10年でさらに20基あまり増やす計画。日本での事故後国内では原発への懸念が広がっており政府は内外にチェルノブイリを教訓にした安全性をアピール。新興国への売り込み強化している▼イギリスは19基保有。安全確認できたとして原発維持。
【各国の原発政策③】▼カナダには18基。現在作業チームを立ち上げ安全性などを調査中。民間の世論調査では原発に対する賛否が逆転し反対が賛成上回る▼ ドイツは17基保有。事故後メルケル首相はこれまでの原発維持の政策を一気に転換。今後10年で原発から完全に脱却する計画を打ち出す見通し。
【各国の原発政策④】▼イタリアは日本での事故を受けて、新たに原発を建設する計画を無期限に凍結する方針を打ち出した。国内で反原発の世論が高まっているため▼G8ではありませんが、スイスは5基を保有。電力需要の40%を賄っているが2034年までに順次廃止にする方針を25日閣議決定した。

ドイツ、スイス、イタリア以外は原発推進、売り込みの姿勢を変えておらず、日本も結局アメリカフランスの後をくっついて相変わらず推進、売込みを続けるようですね、G8を見る限り。安全性を向上させるとか。何とも空しい、無意味な言葉で、いかにも政治家の言い草です。

(ところで、日本政府とアメリカ政府がモンゴルに使用済み核燃料保管施設を作らせて、自国の原発メーカーが海外に売り込む際の利点にしようとしている、という記事はご覧になりましたか?ほとんど話題にもなっていなかったようですが。斑目デタラメ春樹さんが5年前におっしゃっていたように、「結局は金ですよ」でモンゴルにババを引かせるんでしょうか。ちなみに、モンゴルにもマグニチュード8が可能な地震の地溝帯が2つあるんです。)

さて、そんな中で、日本の市民の皆様がもっと心配しなければならないのは日本の隣国の原発ではないでしょうか。特に、風向き、気象前線の動きなどを考えると、当然ながら韓国、中国、台湾に存在する原発です。そこで、Wiki(英語)でさっと調べただけの数ですがお出ししておきます。

結構恐ろしいのが韓国。原発の数が結構多いのも驚きましたが、日本と同じく、一つの発電所内に3つ、4つ、5つ6つと原子炉が存在するのです。福島第1原発でも明らかになったように、1つの原子炉で大事故がおきると、同敷地内の全ての原子炉に影響が出ます。原子炉倍増、三倍増計画の中国も日本、韓国と同様、一つの発電所に複数の原子炉を作ろうとしています。

現在各国で建設中の原子炉が住民の反対もなく(あるいは住民の反対をものともせず)建設を終わり稼動するとなると、日本の風上で、合計75基の商業原子炉、研究原子炉も含めると80基の原子炉が運転されることになります

現在でも研究原子炉を入れて44基。狂気の沙汰です。(ああ、「狂気の沙汰も金次第」ですか、まさに。)

Wikipedia: List of nuclear reactors

韓国:

運転中20基

建設中7基

計画中4基

研究用4基

中国:

運転中13基

建設中27基

台湾:

運転中6基

建設中2基

研究用1基

Saturday, May 28, 2011

小沢一郎:福島原発は「金の話じゃない。日本がつぶれるか、日本人が生き延びるかどうかという話」

ウォールストリートジャーナル日本語版に出た、小沢一郎氏のインタビュー(5月27日付け)から、震災についての質問に答えた箇所。小沢氏の関心、不安は震災復興ではなく、福島第1原発を収束できるか出来ないか、出来なければ「日本がつぶれる」、「住めなくなる」とも。

Q:震災に話を戻す。復興、復旧にこれからお金がかかっていく。もちろん労力も。一つは第2次予算が出るか出ないかで国会でもめている。第2次予算 の緊急性と規模はどのようなものと考えるか。もう一つは、財源は増税にするのか、国債発行にするのか。そのへんはどのようにすべきか。

A:復旧に必要なことは、お金がどれくらいかかったって、やらなくてはならない。あのままでは住めなくなる。再臨界に達するかもしれない。 あそこが爆発したら大変だ。爆発させないために放射能を出しっぱなしにしている。爆発するよりたちが悪い、本当のことを言うとだ。ずっと長年にわたって放 射能が出るから。だから私は金の話じゃない。日本がつぶれるか、日本人が生き延びるかどうかという話だと言っている。金なんぞ印刷すればいい。その結果、 国民が負担することになるが。国家が本当に放射能汚染をここで食い止めるという決意のもとに、徹底して金だろうがなんだろうがつぎ込まなくてはだめだ。国 民はそのことをよく理解してほしい。国債でやれば借金だし、いずれ償還分は払わなくてはいけないが。

インタビュー全文は、こちらでどうぞ。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_242207

Thursday, May 26, 2011

フェアウィンズアソシエーツ・アーニー・ガンダーセン:「福島第1原発事故の教訓」

フェアウィンズ・アソシエーツのアーニー・ガンダーセン氏の最新(5月22日)のビデオの翻訳です。

福島第1原発の事故の教訓ということで、現在稼動中のアメリカの原発の福島同様の問題点、当局と事業者の馴れ合いを指摘しています。まあ、ご安心くださいというのもなんですが、東電と政府、規制担当のはずの保安院などとの馴れ合いは、日本に限ったことではありません。日本だけが特別ひどいわけではなく、たまたま事故になってしまったのでこれまでのいい加減な規制、馴れ合いがばれてしまった、というところでしょうか。

今回のビデオでガンダーセン氏が言っていることで耳に止まったのは、ドイツのシーメンス(まあドイツ語発音ではジーメンスですが)のサイトに、4号機の使用済み燃料プールにひび割れが入ったのは津波ではなく地震のせいだ、と言う報告書がある、と言っているところです。え、ひびが入ってたのか?とお思いになる方もいらっしゃるかと思います。

もうひとつは、福島原発事故の賠償責任の金額が日本円で約16兆円になる見込み、と氏は言っていますが、AREVA社の汚染水処理に払う金額が噂どおり1トン(1立方メートル)あたり2億円なら、予定水量の20万トンを処理するだけで40兆円が吹っ飛ぶ計算です。ははははは。どこの誰だ、原発はローコストのクリーンな発電だ、とか言ってほらを吹いていたのは?

フェアウィンズ・アソシエーツのサイトには、ビデオに出てくる米国の発電所関係のレポートがリンクされています。


The Implications of the Fukushima Accident on the World's Operating Reactors from Fairewinds Associates on Vimeo.

(以下、ビデオ全訳。h/t あ)

こんにちは。フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。前回のビデオから一週間ちょっとたってしまいました。私たちのコンピュータがメルトダウンを起こしたために、ビデオの制作スケジュールが少し遅れてしまったのです。ですが、皆さんからのご寄付で前より高性能のコンピュータを手に入れることができましたので、このビデオシリーズは今後もずっと続けていけるでしょう。改めましてありがとうございます。

今日は、福島の事故からどんなことが学べるかをお話したいと思います。建設中の原子炉ではなく、すでに世界中で稼動している原子炉にとっての教訓です。まず、一番あからさまな問題点は格納容器についてです。格納容器は放射線を閉じこめるための設備です。ベントという排気設備があって、それが故障したことはご存知だと思いますが、このベントというのはあとから付け足されたものです。これらの原子力発電所が設計された1970年代から80年代、原子力発電所はべントがつくようなデザインではなかったのです。実際、世界中の加圧水型軽水炉には現在でもベントがついていないのです。だから格納容器のベントはいわばバンドエイドのような応急処置として、原子炉が建設された後で認識された問題に対応するために追加されたわけです。これまでベントの性能が試される機会は3回ありました。福島第1原発の1号機、2号機、3号機です。3回とも故障しました。故障率100%です。これはベントの設計に深刻な欠陥がある証拠です。しかもこうした事故はここアメリカでも起きるかもしれません。ドイツでも起きる可能性がありますし、世界中の沸騰水型原子炉ならどこでも起こる可能性があるのです。

したがって真っ先にすべきことは、沸騰水型原子炉のベントをすべて見直し、改良できるか取り外すべきかを見極めることです。取り外すとしたら、事故が起きたときの圧力に耐えられない格納容器をどうすべきでしょうか。

ベント自体にも問題があります。たとえばアメリカ・バーモント州の原発では、事故が起きたら原子炉を加圧して原子炉内に水を注入するシステムになっています。ですが、もしもベントを開けて開放したままにしておいたら、圧力が下がって原子炉を冷却できなくなり、メルトダウンが起きます。これはバーモントに限りません。イリノイ州のドレスデン原発でも、サウスカロライナ州のHBロビンソン原発でも同じです。アメリカ原子力規制委員会(NRC)はこの問題を放置しています。格納容器の圧力を上げて水をポンプに送り込む作業を電気事業者に任せているのです。それを禁じる規制があるのに、ドレスデン原発、ヤンキー原発、ロビンソン原発などが出力を上げた時にNRCはその規制を免除したのです。

忘れてはならないのは、ベントは格納容器の圧力の問題を防ぐためにつくられたはずなのに、いったん開放したベントが閉まらないとベント自体が問題を起こしかねないということです。福島第一原発の事故を見れば、事故が起きたらベント弁が閉まるとはとても考えられません。私は長年、格納容器の漏れの問題でNRCを追求してきました。ペンシルベニア州のビーバーバレー原発では、格納容器の側面に穴が1個開きました。私は何年か前にその問題をNRCに指摘しました。報告書の全文はこのウェブサイトに掲載されています。ニューヨーク州のフィッツパトリック原発では、格納容器の側面に亀裂が生じました。私は昨年この問題をNRCに指摘しました。さらにコネチカット州のミルストーン原発では、出力に比した格納容器の大きさが同型の原子炉の中で世界一小さいのです。私は2年ほど前にこの問題をNRCに指摘しました。するとNRCはまさにそのミルストーン原発から、「自分たちに格納容器の安全性を解析する能力はない」と言ってきたのです。その言葉は文書にはっきり残っています。それなのにNRCはいまだに、格納容器が漏れることはないと考えているのです。昨年10月の原子力諮問委員会の会合でそう明言しています。つまり、格納能力のない格納容器と、規制能力のない規制当局というわけです。そして、格納容器に亀裂や穴が次々に見つかっても、格納容器が漏れる可能性はゼロだと信じ続けている原子力産業。

この辺で話題を変えましょう。次は耐震基準についてお話したいと思います。福島第一原発は津波ではなく地震が原因で損傷したことがわかっています。津波に襲われる前の時点ですでに放射能漏れがありメルトダウンが起きていたのです。また、シーメンス社のウェブサイトにアップされた報告書によれば、4号機の燃料プールのひび割れも津波ではなく地震によって生じたのがわかっています。だとすれば、これまでの耐震解析の基準が間違っていたということです。本来なら割れるはずがない、壊れるはずがないのです。

福島を襲った地震はさほど大きかったわけではありません。たしかに沖合いで発生した時点ではマグニチュード9でしたが、福島原発に到達する頃には少なくとも耐震という点では何とか乗り切れるレベルだったと推測します。これが意味するものは、これらの原発を分析するのに私たちが拠り所にしてきたものが通用しない、という可能性です。4基のうち2基が地震でひび割れています。本来なら耐えられるはずでした。アメリカ・フロリダ州のクリスタルリバー原発では、蒸気発生器を交換するために格納容器に穴を開けたところ、格納容器に60フィート[約18メートル]もの亀裂が入りました。この原発は史上最も入念な解析がなされたにもかかわらず、亀裂が生じるとは誰も予想していませんでした。2年かけて亀裂を修復し、いよいよ再運転というときに、今度は別の方向に別の亀裂が走っていることが判明しました。このような巨大な構造物に対しては、私たちには耐震基準を設定して解析する能力が明らかにないのです。クリスタルリバー原発がアメリカでそれを証明し、福島第一原発が世界にそれを証明しました。

ほかにもいくつか大きな問題点があります。ひとつは非常用蓄電池です。数が足りません。アメリカの原発の場合、一番長くもつものでも8時間。ほとんどはわずか4時間です。もしも福島のような電源喪失事故がアメリカで起きたら、とても切り抜けられないでしょう。いや、もっとひどい事態に陥ります。

もうひとつは高波です。今回、福島原発は津波に襲われました。原発は6~7メートル(約20フィート)の津波を想定して作られていましたが、実際の津波は15メートルに達しました。カリフォルニア州のサンオノフレ原発は30フィート[約9メートル]の津波を想定して設計されています。ですが、日本の津波をフィートに換算すれば45フィートであることを考えると、私たちも高波対策に目を向ける必要があるでしょう。高波によって、かりにディーゼル発電機そのものは壊れなくても、水を注入するポンプが壊れるおそれがあるからです。

東海岸のフロリダ州は、ハリケーンによる高波の被害がある地域です。つまり、ハリケーンによって巨大な水の壁が内陸にまで押し寄せる可能性があるわけです。フロリダ州のターキーポイント原発などは、高波に襲われて水に浸かるかもしれません。今まではこうした事態は起こりえないと言われてきましたが、福島ではありえないことが現実になったわけですから、こうした事象に対しても対策を検討する必要があるでしょう。

あと2点。ひとつは緊急時の避難計画です。アメリカでは原発から半径10マイル[約16キロ]以内を避難対象地域としていますが、じつは10マイルという数字に科学的根拠はありません。風向きがどうなるかもわからないのに、原発の周りに半径10マイルの円を描いて、その範囲内の住民は数時間のうちに避難出来るはずだ、と言ってきたわけです。しかし、福島原発の例で明らかになったように、事故は何週間も続くうえ、放射能の雲は曲がりくねりながらはるか内陸まで流れてきます。アメリカでは、原発から50マイル[約80キロ]離れた地域については住民の避難を想定していません。しかし、福島ではすでに50マイル以上離れたところまで放射能で汚染されてしまいました。イリノイ州のドレスデン原発や、ニューヨーク州のインディアンポイント原発の場合、50マイルの範囲内にはシカゴ市やニューヨーク市という大都市が含まれます。原発の位置を考えたうえで、現在の机上の計画の代わりに本当に実効性のある緊急避難計画を真剣に検討する必要があります。

最後に、原発内に複数の原子炉が存在する場合の問題です。福島第1原発の事故からもわかるように、1つの原子炉が爆発すれば、ほかの原子炉のトラブル修復が遅れます。アリゾナ州のパロベルデ原発には敷地内に3基の原子炉があるのに、NRCは2週間前にあと20年の免許延長を認めました。NRCが福島で起きたことをすでに分析し終え、複数原子炉を持つ[パロベルデのような]発電所を満足に分析できた、とはとても思えません。

さて、以上が技術的な問題点のまとめです。もうひとつ、政治的な問題点を指摘しておきましょう。「プライス・アンダーソン法」です。プライス・アンダーソン法は、いわば電気事業者が加入している保険です。事故が起きた場合には、アメリカ中のすべての原発が1原子炉につき約1億ドルずつを拠出することになっており、事業者に課される賠償責任は1回の事故につき約100億ドル上限と決まっています。福島の損害賠償額は2,000億ドル[16兆円強]前後にのぼる見通しと言われています。もし同じ規模の事故がアメリカで起きたらどうなるでしょうか。残りはすべて私たち納税者の肩にのしかかってくるということです。私たちは1,900億ドルの借金を抱えるわけです。それがプライス・アンダーソン法の正体です。電気事業者はこの法律があるかぎり自分の懐をたいして傷めない。そんなことを許していいのかどうか、福島の事故を受けて私たちはしっかり考えるべきではないでしょうか。

今日は以上です。ありがとうございました。

オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)放射性ヨウ素拡散予測5月26日~28日

ううん、これはかなりひどいですね。日本で無事なのは四国の西半分と中国の西半分、九州沖縄だけ。

ところで、台風が来るんですか?ゼロヘッジに出ていましたが。福島に来るまでには熱帯低気圧となっているでしょうが、2号機、3号機からの高濃度汚染水の行き場所もほぼ無くなっているようですので、雨の量が多いと心配です。

Tuesday, May 24, 2011

毎日新聞:格納容器に大きな穴複数

圧力容器じゃないんです。その外側の格納容器です。

東電の報告書を読んでいるらしい5月25日付け毎日新聞の記事によると、

 東京電力が24日公表した福島第1原発2、3号機で炉心溶融があったとする報告書の中で、1号機は原子炉圧力容器の外側にある格納容器に直径7センチ相当の穴、2号機では格納容器に直径10センチ相当の複数の穴が開いている可能性が初めて示された。

なんでも、圧力データの解析をしてそういう結論になったそうです。

そこで疑問。

圧力データはずっと取れていたわけです。今まで何してたんでしょう。(まあ、隠していたことは別にして。)この圧力データは公開されていたデータなんでしょうか?もしそうだとしたら、専門家なら解析できるわけでしょう?

京大の小出さんが格納容器は溶融した炉心によってとっくに壊れている、と言い続けているのは、小出さんがデータを解析していたからなんでしょうか?

福島第1原発:地震後24時間以内に格納容器も損傷か(読売新聞)

それも、1号機、2号機、3号機とも。

そう記載されているらしい東電の225ページの報告書は、東電のサイトにアップされています。ここです。(私は不精にも10ページの概要だけ読んだんですが、そんなことは書いてありませんでした。)

この報告書を読んだらしい読売新聞がとりあえず正しいとして、私の個人的な疑問は、「レベル7」の計算は一体どうやって行われたのか、と言うこと。東電が炉心溶融を認めた5月15日から気になっていたことです。

4月12日に保安院、原子力安全委員会が福島はレベル7の事故、と発表した時の計算の前提は、核燃料が多少は損傷しているかもしれないが大多数は無事、溶けてもいない、圧力容器は壊れておらず、格納容器も2号機の圧力抑制室の破損以外は無事、ということでした。その前提で、原子炉から空中に飛散した放射性物質の計算をしたところ、これはレベル7に相当、しかし、チェルノブイリ事故の10分の1ぐらいだから心配は要らない、と言うことでした。私はこの記者会見をUSTREAMで見ていましたが、保安院、原子力安全委員会ともに、レベル7、だからどうした、という実に気軽な態度だったのを覚えています。

今になって、炉心は多分全溶融、圧力容器だけでなく格納容器まで実は地震後24時間で壊れていた、となると、そこから出た放射性物質の量は気軽な保安院・委員会の発表よりも桁外れに大きくなるのではないか、というのが、私の素人考えです。

まして、保安院、原子力安全委員会の計算は空中飛散分のみ。土壌、海中に染み出し流れ出したものは計算外です。4月12日の会見で西山審議官は「INESの基準は大気中の放射性物質のみ。海洋汚染は入っていない」とおっしゃっていましたが、INESの指針にはちゃんと地下水、海洋汚染の計算の仕方も出ています。

さて、これはチェルノブイリの10分の1から一挙に5分の1以下になるんでしょうか?

もう過去のことは関係ない、起きてしまったことだから、とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、どれだけ放射能が出たのか、出ているのか、どこに出たのか、どのように出たのか、しっかり把握できなければ、対策も立てようがないと私は思います。

読売新聞5月24日付け記事

 東京電力が福島第一原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)について詳しいデータ解析を行った結果、1~3号機では、圧力容器だけではなく、その外側を覆う鋼鉄製の格納容器も、地震後24時間以内に損傷していた可能性があることが分かった。

 解析結果の報告書は23日に経済産業省原子力安全・保安院に提出された。

 原子炉の運転データなどに基づいて地震後の状況を詳しく計算したところ、1号機は緊急冷却装置の「非常用復水器」が十分に働かず、炉心溶融の進行 によって、地震後15時間で圧力容器の底部が破損したことがわかった。底部には制御棒や中性子計測装置の貫通部が多数あり、強度の弱い溶接部分などが壊れ て、溶けた燃料を含む高濃度汚染水が漏れ出したとみられる。

Sunday, May 22, 2011

日本には安定ヨウ素剤配布、服用の基準がなかった?

いつものことながらどこをどう辿って行き着いたのか、忘れましたが、ivanmonitoring.net と言うサイトで、安定ヨウ素剤を市民に配布、服用させる際の、世界各国の基準を表にしたものが載っていました。

このサイトはアメリカ西海岸の諸州で放射能を計っている有志の方々が運営しているサイトのようですが、表の出所を調べたら、アメリカのThe National Research Council of the National Academies が2004年に発行した、”Distribution and administration of pottassium iodide in the event of a nuclear incident”(原子力事故の際の、安定ヨウ素の配布と服用について)という、240ページほどの本の中に出ているでした。

このブログでも事故直後の3月に安定ヨウ素の使用法となぜ安定ヨウ素が必要になるのかを書きましたが、要するに、甲状腺は放射性ヨウ素と通常のヨウ素の区別がつかないので、そこにヨウ素があれば放射性であろうとなんだろうと取り込んでしまう、そこで、取り込みを防ぐために、あらかじめ甲状腺を安定ヨウ素でいっぱいにしておけば放射性ヨウ素は入ってこれない、というメカニズムなのです。

表を見ると、日本以外の国(オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨーロッパ諸国)は、原子力事故の際に安定ヨウ素剤を国民に配布する基準として、甲状腺等価線量が一定の量を超えた時点で、という決まりがあるようです。低いところでスウェーデンの10ミリシーベルト(子供用)、ヨーロッパ諸国は大体100ミリシーベルトから300ミリシーベルト、アメリカは40歳以上の大人は5グレイ(5シーベルト)という、何かタイプミスのような高い数字が出ていますが、18歳以下の子供は50ミリグレイ(50ミリシーベルト)です。

さて、日本はどうか。

そうです。空欄なのです。基準なし。一番右の欄に、"Where a high thyroid dose is anticipated, stable iodine prophylaxis taken according to judgment of experts" 、つまり、

「高い甲状腺線量が予測される場合、安定ヨウ素剤を使った予防は専門家の判断に委ねる」

と書いてあります。

その専門家の判断とは、では何だったんでしょうか?福島第1原発の事故後、早急に放射能拡散を予測し、影響が大きいと思われる地域の住民に安定ヨウ素剤をあらかじめ配り、いざと言う場合の服用法を教え、とにかく出来るだけ安全を図る?

違います。彼らは、データを隠したのです。

放射能拡散の予測が数千キロにわたる広い範囲で可能だと言われるWSPEEDIのデータが2枚だけ、文科省のサイトにある時(5月10日)にこっそり載ったのは皆さんもご存知かと思います。そこに出ている地図のひとつが、「幼児(1才未満)のヨウ素131による甲状腺等価線量」という地図です。下に出したのは、3月25日時点での予測です。(県名は私が入れました。英語ブログ用。)

地図を見ると、500ミリシーベルトを超える地域すらあります。福島の太平洋沿岸はほとんど赤色、つまり、100から500ミリシーベルト、ヨーロッパでも北米大陸でも、18歳以下の子供に安定ヨウ素剤を配っている線量です。福島の内陸でも10から100ミリシーベルト、茨城の沿岸でも20から50ミリシーベルト、千葉でもかなりの地域が10ミリシーベルト以上が出ています。

東電が今になって公表した地震津波直後の原発の状況を見ると、もう3月11日の夜までには1号機から高い放射線量が測定され、これは危ないことになる、 ということは少なくとも東電の福島の現場では分かっていたようです。本社も分かっていたようです。地震が起きてすぐの時点で、既にSPEEDIの予測は作成されていました。1号機が水蒸気爆発して大量の放射能がばら撒かれる前に、安定ヨウ素剤の配布、周辺住民の避難勧告、いくらでも出来たはずです。

しかし国も自治体も東電も何もせず、14、15日に3号機、4号機が爆発しても一部の地域で安定ヨウ素液を服用させたぐらいで(放射能を吸い込んでからでは遅いんですが)、大規模な配布、服用指示は無く、結果として、

「国民がパニックになると困るから黙っていよう、子供にはまあ甲状腺被爆を我慢してもらおう」

ということになりました。「言わなきゃ誰もわからない」と。

それとも、「原発は事故らないことになっているし、今度の福島の事故(事象、と彼らは言ってましたね)も大したことがないといっている手前もあるし、安定ヨウ素剤を配ったら国民にいらぬ不安を与えるだけだ」と考えた政府の誰かがいるんでしょうか?

それとも、まさかのまさかですが、安定ヨウ素剤を切らしていたとか?

何しろ原子炉に入れるホウ素が足りなくなって韓国から提供してもらったくらいですから...。

オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)放射性ヨウ素拡散予測5月22日~24日

5月23日、24日と、もろに関東にかかる予測です。ご注意。

福島原発の4号機から黒煙が出ている、というTweetあり。TBS/JNNのライブカメラを見ている人たちからです。

Saturday, May 21, 2011

中部大武田邦彦教授、5月18日衆院文部科学委での冒頭陳述



ちなみに、京大の小出さんは23日月曜日の午後1時から、参議院の行政監視委員会で証言します。お見逃しなく、と言ってもまさかテレビで中継はしないだろうなあ。ネットでどこかやるんだろうか。

ほとんど検査されていない内部被爆

毎日新聞は他の大手紙に比べてどういうわけか原発関連のニュースが充実しているように見受けられます。他社の、保安院、東電、政府の記者会見に頼る報道にはあまり出てこない記事が出ていますが、これはそのひとつ。(まあ単に私が良く知らないだけのことなのかもしれませんが。)

毎日新聞5月21日付け記事 (Yahoo Japanニュース経由、強調は私です):

<内部被ばく>県外原発で働く福島出身作業員から相次ぎ発見

 東京電力福島第1原発の事故後、福島県外で働く同県出身の原発作業員から、通常ならめったにない内部被ばくが見つかるケースが相次いでいる。大半は事故後に福島県に立ち寄っており、水素爆発で飛散した放射性物質を吸い込むなどしたとみられる。周辺住民も同様に内部被ばくした可能性もあり、福島県内の一部自治体は独自に検査を検討している。【日下部聡、石川淳一、町田徳丈、袴田貴行、池田知広】

◇事故後立ち寄り…内部被ばく4766件

 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が16日の衆院予算委員会で明らかにしたデータによると、3月11日以降、福島第1原発を除いた全国の原子力施設で、作業員から内部被ばくが見つかったケースが4956件あり、うち4766件はその作業員が事故発生後に福島県内に立ち寄っていた。柿沢未途議員(みんなの党)の質問に答えた。

 保安院によると、体内からの放射線を測定できる機器「ホールボディーカウンター」による検査で、東電が内部被ばくの目安としている1500cpm(cpmは1分当たりに検出された放射線量を示す単位)を上回った件数を電力各社から聞き取った。1人で複数回検査を受けるケースがあるため、件数で集計した。1万cpmを超えたケースも1193件にのぼった。

 いずれも福島第1原発近くに自宅があり、事故後に家族の避難などのために帰宅したり、福島第1、第2両原発から他原発に移った人たちとみられる。

 柿沢氏によると、北陸電力志賀原発(石川県)で働いていた作業員は、3月13日に福島県川内村の自宅に戻り、数時間滞在して家族と共に郡山市に1泊して県外に出た。同23日、志賀原発で検査を受けたところ5000cpmで、待機を指示された。2日後には1500cpmを下回ったため、作業に戻ったという。

 取材に応じた福島第2原発の40代の作業員男性は第1原発での水素爆発以降、自宅のある約30キロ離れたいわき市で待機していた。その後、検査を受けると2500cpmだった。「大半が(半減期の短い)ヨウ素で数値は(時間の経過で)下がると思うが、不安だ」と男性は話す。

 同県二本松市には「市民から内部被ばくを心配する声が寄せられ」(市民部)、市は乳幼児や屋外作業の多い人などを選び、県外のホールボディーカウンターで内部被ばくの有無を測定することを検討している。

 ◇内部被ばく◇

 呼吸や飲食などで放射性物質を体内に取り込み、体内から放射線を浴びること。体外からの外部被ばくに比べ継続的で危険が高い。体表から10万cpmを超す線量を検出すれば放射性物質を洗い落とす「除染」が必要とされるが、東電は内部被ばくの恐れがあるとする目安を、ホールボディーカウンターで1500cpm超の場合としている。大量の内部被ばくはがんになるリスクを高める一方、時間と共に排せつされ、排せつも含めた「半減期」は成人ではヨウ素131で約7日、セシウム137で約90日。

 ◇扉ゆがむ棟「そこで食事すれば体に入って当然」…福島第1の作業員

 福島第1原発で作業拠点となっている免震重要棟は、3月に起きた1、3号機の水素爆発で扉がゆがみ、放射性物質が一時入り込みやすくなっていたという。40代の作業員男性は「そこで食事しているから(放射性物質は)体に入っているでしょう」とあきらめ顔だ。「『ビール飲んで(尿で体外に)出しゃいいよ』って感じですよ」

 ◇空気中線量高く機器測定不能に

 今月現場に入った作業員男性(34)は内部被ばくの検査態勢の不十分さを懸念する。「周りのほとんどは検査を受けていない。特に20代の若手が不安がっている」。東電は3カ月に1回の定期検査のほか、恐れのある時の随時検査を定める。だが今月16日現在、検査したのは全作業員の2割程度の約1400人、このうち結果が確定したのは40人にとどまる。最も高い線量を浴びた作業員は240・8ミリシーベルトで、うち39ミリシーベルトは内部被ばくだった。

 東電によると、同原発のホールボディーカウンター4台は空気中の放射線量が高すぎて正確に測定できず、使えるのは福島第2原発といわき市の東電施設、柏崎刈羽原発の3カ所のみ。今後増設するとしているが、内部被ばくした場合、作業に従事できないのが通例だ。県内のある下請け会社社長は「このままでは福島の作業員が大量に失業する可能性がある」とも懸念する。

Friday, May 20, 2011

坂東市のお茶からキロ当り830ベクレルのセシウム検出

これを小学校3年生に雨中で摘ませて食べさせたわけです。坂東市のお茶のセシウムは高めで、生茶葉で1キロ当たり830ベクレル。詳細は茨城県サイトのこのページです。

共同ニュース5月20日付けニュース
茨城全域で茶葉出荷を自粛 セシウム、基準値超え

 茨城県は20日、県内の7市町で採取した生茶葉から、1キログラム当たり500ベクレルの暫定基準値を超える放射性セシウムを検出したと発表した。これを受け県は、県内全域の市町村と生産者団体に、今年産の生茶葉の出荷自粛を要請した。

 茨城県によると、18日に採取した坂東市や常総市、古河市、城里町など7市町の生茶葉から、1030~523ベクレルのセシウムが検出した

 同県では、14~15日に大子町と境町で採取した生茶葉からも基準値を超えるセシウムを検出している。

京都大学小出裕章:「福島1号機は人類が始めて遭遇する未知の領域」

ビデオニュースドットコムが無料公開している、京都大学小出さん出演のビデオ。5月19日です。核燃料溶融の1号機の解説です。聞きながらざっとメモしました。

燃料が溶け出して原子炉で水素爆発が起こる、という最悪のシナリオは避けられたようだ。(東電の言っていることが本当だとして。)

圧力容器にはかなり大きな穴が開いていると思う。

(東電は、溶融した燃料がまだ圧力容器に留まっている、と考える根拠として圧力と温度を上げているが)1号機の圧力と温度のデータが果たして本当なのかどうか。水位のデータはまったく間違っていたわけだから。

あれだけ水が漏れているのに(建屋地下に4000トン)、圧力が出ている、と言うのは、原子炉の構造上ありえない。

格納容器に水があるのかないのかもはっきりしていない。建屋の地下に水がたまっていることを考えると、すでに溶けた炉心が格納容器を壊してしまった可能性。

格納容器の外は建屋のコンクリートしかない。

冷温停止と言うのは原子炉圧力容器が形としてあって、冷却水がまわせる状態であることが前提。燃料がそこにあるかどうかも分からない状況で、冷温停止を言える事態にない。

原子力を利用し始めた人類が始めて遭遇する、未知の領域。

大気中に放射性物質が飛び出してしまう状況にあるかどうか、ということだが、今現在はその可能性はないだろうと思う。建屋のコンクリートにも何がしかの損傷はあるが、全体としてはまだ壊れていない。

このままコンクリートから出て地下水まで行ってしまう可能性は、今のところ正確に判断できない。地下水に放射能が流れ、海を汚染する恐れ。

溶けた炉心、水があったとしても、内部は説けた状態だと思う。

建屋地下のサプレッションチェンバーはドーナツ型。溶けた炉心の落ちたあたりのしたはコンクリート。コンクリートをどこまで破壊していくか、が今後のネック。

東電の言う、建屋にたまった水を循環させる方式というのは、格納容器が壊れていることを認めているのと同じ。そうなると、東電の言うようにやる以外にない。

ただし、コンクリートの中に入っていってしまうと、循環も何もない。手の打ちようがない。建屋ごと石棺のように固めるしかなくなるのかもしれない。

東電のロードマップはもともと政治の圧力で東電の本社が出したものではないか。実際に苦労している東電の福島の人たちではない。

2号機、3号機は現在も東電のデータは燃料棒が半分水に漬かっていることになっている。

チェルノブイリとの比較について、福島はまだ現在進行中、今後も水蒸気爆発があるかもしれない可能性があるので、チェルノブイリを上回る可能性もある。

国会(参議院行政監視委員会午後1時から、最長3時間)の参考人としての出席(5月23日)は、原子力に関して行政が果たしてきたとてつもない罪がある、それをきちんと監視していただきたい、と思うので、言いたいことを言ってくる。

Thursday, May 19, 2011

平成23年度 5月11日(水) 『さしま茶 ふれあい学習』 茨城県坂東市の小学3年生、雨中で茶摘、生葉のてんぷら

すでに坂東市の岩井さくら商店街のウェブサイトからは削除されていますが、グーグルのキャッシュにはしっかり残っています。ちょっと正気の沙汰とは思えませんが、実際にあったことのようです。

放射能が依然として高い茨城県で、坂東市の13の小学校3年生が雨の中をお茶摘み体験学習、その後で、摘んだお茶をてんぷらにしたものを食べたのだそうです。

このイベントの後の5月16日、さしま茶の生茶葉から放射性セシウムがただでさえ緩い暫定基準値を超え、出荷自粛が要請されました。あくまで自粛です。検出されたのは茨城北部の太子町と西部の堺町、堺町は坂東市の西隣です。

以下、削除されてキャッシュに残った、小学校3年生の雨中の茶摘学習情報 (写真は残っていませんでした):

**************************
茨城県坂東市は、平将門ゆかりの地。
豊かな農産物(野菜・お茶・お米)は坂東市の主要ブランド品です。
【後援】 : 茨城県坂東市教育委員会  ℡:0297-35-2121(代表)
平成23年度 5月11日(水) 『さしま茶 ふれあい学習』 

■5月11日水曜日、坂東市にある茨城県立農業大学で、平成23年度、恒例の『さしま茶ふれあい学習』が開催されました。あいにくの雨でしたが、坂東市の小学3年生を対象とした13校が参加しての合同学習会です。

■市内13校の小学校が6班に分かれ、交代にローテーションを組みながらの学習会。元々全国的に【さしま茶】で知られる、猿島地区が学習会の始まりでしたが旧岩井市と猿島町が合併し、坂東市になってから規模が大きくなりました。

■写真は第3班の第一小学校の児童。 坂東市の職員が『おはよう』のあいさつをすると元気に『おはようございます!』の返事が返ってきました。

■坂東市教育長のあいさつ。

■つづいて、これは先生の手作りでしょうか? スケッチブックの絵を使って、お茶ができるまでの工程をやさしく説明されました。

■茨茶生産連坂東支部長のお茶についての説明を熱心に聞く児童たち。

■これから茶畑に行って実際にお茶摘みを体験します。

■新芽がまぶしい、一面新緑の茶畑は、ほのかにお茶の葉が香るような気がします。

■元気にお茶の新芽を摘んで、カメラに向かって見せる児童。

■先生と一緒に2列になってお茶摘み。中には初めてお茶の葉に触れる児童もいたのでは?

■児童と一緒にお茶摘みをする先生も、とても楽しそうです。

■児童が摘んできたお茶の葉を、『坂東市くらしの会』の皆さんがてんぷらにして子供たちにふるまいます。

■皆さんが腕によりをかけて作る美味しいお茶のてんぷら。 中には初めて食べる児童もいたのではないでしょうか・・・。

NEXT
・・・ 主催 ・ 協力 ・・・
主催 : 茨城県茶生産者組合連合会坂東支部   
後援 : 坂東市・坂東市教育委員会       
協力 : 茨城県立農業大学校園芸部 ・ 坂東地域農業改良普及センター 
    /坂東市くらしの会      

【参加学校名】
七重小学校 弓馬田小学校 飯島小学校 神大実小学校
岩井第一小学校 岩井第二小学校 七郷小学校 中川小学校
長須小学校 生子菅小学校 逆井山小学校 沓掛小学校
内野山小学校 * * *

Copyright ⓒ 坂東市観光協会 All rights reserved.
******************************

Wednesday, May 18, 2011

クリストファー・バスビー:「福島原発、核分裂は継続中、収拾のめどつかず」



Russia Today (RT)による、5月17日、放射線リスク欧州委員会クリストファー・バズビー教授インタビューです。いまさら何が出来るのか、誰にも見当がつかない、と教授は言い、せめて放射性物質の全世界への空中拡散を防ぐためのドームを被せるくらいが関の山か、と言った、悲観的なコメントに聞こえました。東電は最初から事態の深刻さを知っていたが隠していた、とも。

「クリストファー・バズビー教授:福島は放射能を帯びた地獄の業火」

司会者:福島第一原発で、さらに2つの原子炉がメルトダウンを起こしている可能性が浮上しました。すでに1号機についてはメルトダウンが確認されており、地震によって冷却機能が失われたことが原因とみなされています。では、この問題をさらに掘り下げてみましょう。放射線リスク欧州委員会のクリストファー・バズビー教授にお話を伺います。バズビー教授、ご出演ありがとうございます。福島原発の事故が起きた当初は、メルトダウンが最悪のシナリオといわれていました。それが現実になったということは、具体的に何を意味しているのでしょうか。

バズビー:メルトダウンというのは、原子炉内の燃料が非常に高温になって融けたということです。原子炉内部は、いわば放射能を帯びた地獄の業火が荒れ狂っているような状態になっています。われわれは燃料がすでに原子炉の外に出ていると考えています。圧力容器が損傷しているのは間違いないからです。思い出していただきたいのですが、事故当初からメルトダウンが起きている兆候はいくつも確認されていました。今彼らがメルトダウンを認めたのは、本当の状況がはるかにひどかったからです。最後にあなたとお話ししてから得られたデータによれば、核爆発が起きていたことがわかりました。放出された放射性物質の同位体の比率を調べた結果です。これは非常に悪い状況です。すでに放射性の粒子はアメリカで見つかっていますし、福島よりずいぶん南の東京でもかなりの放射能が確認されています。きわめて深刻な事態です。

司会者:じつに心配な状況ですね。ところで東京電力は緊急作業チームの労働環境を改善すると話していますが、もう2ヶ月ものあいだ作業員の命を危険にさらしてきたわけですよね。もっと早くに手を打てなかったのでしょうか。

バズビー:たしかに人命が長期間危険にさらされてきたのはたしかですが、東電にすればほかに手立てがなかったのだと思います。簡単に解決できる問題ではありません。誰も危険を冒さずに手をこまぬいていたら、事態はもっとひどくなっていたでしょう。われわれは作業員たちの勇敢さを称えるべきです。労働環境を改善するというのもけっして簡単ではありませんが、今までに起こった出来事の数々が結果として作業環境を改善することになります。というのも、最初に大量に放出された放射性物質が現在はそれほどではなくなっているからです。ただし、指摘したいのは核分裂が今も続いているということです。つまり核反応はまだ止まっていません。放出されている放射性物質の同位体比率を調べてそれがわかります。ですから、まだこの危機は続いています。収束とは程遠い状況です。

司会者:責任のなすり合いも続いていますね。東電は状況の深刻さの判断を誤った、と常に批判されていますが、もうそろそろ政府は東電に任せずに現場を完全に掌握すべきではないんでしょうか。

バズビー:私は東電が判断を誤ったとは思いません。東電は最初からすべてを隠そうとしてきただけです。ですが、今ではいろいろな人たちが独自に測定を行なっていますので、東電は「何事も起きていない」という建前をもう続けられなくなったということだと思います。たしかに日本政府がすべてを掌握すべきだとは思いますが、この状況をコントロールするのが非常に難しいのもまた事実です。基本的に状況はすでに手に負えなくなっています。個人的には、これはもはや日本政府だけの問題ではなく全世界の問題だと思います。ただ、日本政府、日本国民が今何らかの手を打たなければならない状況にはなっています。

司会者:東電は9ヶ月で解決するといっていますが、それは具体的にどういうことなのでしょう。実現可能だと思いますか?

バズビー:絶対に無理です。何をどうすればいいか、彼らにもさっぱりわかっていないと思います。現状で彼らに何ができるのか、私にも思いつきません。いろいろアイデアは出ていますが、奇妙奇天烈なものばかり。私のいるイギリスのウェールズ地方にもイギリスのほかの地域にも、ヨーロッパにも放射性物質は飛んできていますが、こうした世界規模の飛散を防ぐためには思い切った方策を講じる必要があります。原子炉をドームなどで覆うことをして、少なくとも核分裂によって生じる放射性物質を外に出さないで閉じこめることを考えるべきでしょう。

司会者:教授、どうもありがとうございました。放射線リスク欧州委員会のクリストファー・バズビー教授にお話を伺いました。

Tuesday, May 17, 2011

アメリカ、フランス、カナダからの線量計がいまだに成田 の倉庫に

日本のブロガーの方(Yougenさん)によると、福島第一原発の事故のあとでアメリカ、フランス、カナダから寄付された線量計4万個が、いまだに成田国際空港の倉庫に眠っているそうです。

Yougenさんのポストによれば、この線量計を管理するのは経産省の原子力安全保安院であり、受け入れを担当しているのは外務省。

線量計を原発労働省に配布するのは厚生労働省の仕事。それらを市民に配布するのは原子力安全保安院の仕事。

ポストの中で、Yougenさんはとある共産党の衆議院議員に対して憤りをぶつけています。この議員は「線量計をなぜ市民に配布しないのか」と厚生労働省に詰め寄ったが、それはまったく筋違いであり、攻撃すべきは経産省の原子力安全保安院である、なぜそんな馬鹿な質問をするのか、と。

馬鹿げているのは、一般市民の健康にかかわることが厚生労働省の管轄ではなく、(よりによって)保安院にある、ということで、さらに馬鹿げているのはこの議員さんが言うとおり、「なぜ市民に配布していないのか」ということだと私は思いますが、それはさておいて、Yougenさんのポストの一番肝心な点は「寄付された計器類がいまだに倉庫に眠っている」ということです。

計器類だけではありません。世界各国から寄付されたラーメン、水、スニーカー、毛布、下着、靴下、缶詰、米、マットレス、石鹸などが、今なお被災地の公式の物資集積所に山積みになっている可能性もあります。いまだ10万人以上の人々が水も食料も乏しいままに避難生活をしていることなど、きっとどうでもいいのでしょう。役人は役人。やれといわれたことだけしかやらない。古今東西、どんな災難が降りかかろうが、こればかりは変わらないようです。

(そういえば、アメリカのハリケーン・カトリナの大災害でも、まったく同じでした。)

Monday, May 16, 2011

東京都民の皆様へ:東京都内の放射線量、公式vs非公式

東京の公式の空中放射線量の測定は都内で一箇所、東京都新宿区百人町3丁目24番1号、東京都健康安全研究センターの地上から18メートルの屋上に設置された測定器によって行われています。

最新の値は、平均0.064マイクログレイ時(5月17日午前9時~9時59分)、センターはマイクログレイとマイクロシーベルトを同等としています。福島第1原発の3号機、4号機が爆発するまで、平均値は0.035マイクログレイ以下でした。

18メートルの屋上ではなく、地上では?新宿以外の場所の放射線量は?

公式にはそのようなデータはありませんが、非公式には結構出ています。YoutubeやUSTREAMで個人で線量計のライブビデオを出している方々から、放射線、原子力関係の研究者、教育者のボランティアが測定してまとめているサイトまでいろいろですが、後者のデータをご紹介しておきます。

サイトは「放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリング」、東京都だけではなく、1府(京都)17県を除く全国のデータをまとめています。データはほとんど、地上100センチのところで測定した空中放射線量です。サイトのマップで県名をクリックするとPDFファイルがダウンロードされます。

東京のダウンロードはここです:http://www.geocities.jp/environmental_radiation/data/13tokyo.pdf

測定値を見ると、新宿百人町のビル屋上に比べて低い場所もありますが、高い場所の方が多く、それも多少どころではなくとんでもなく高い場所が1箇所。ご参考までに、各測定場所の最新値を以下に書き出しておきます。都庁を信用するしないの問題ではなく、皆さんが普段生活する場所、あるいはそれに少しでも近い場所、似た場所の、生活する高さで測定された値を知っておくのは有効だと思います。

中央区京橋: 0.071マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cmコンクリート
昭島市玉川町: 0.061マイクロシーベルト時、5月9日、地上100cm芝生
文京区本郷: 0.14マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cmアスファルト
文京区本郷: 0.094マイクロシーベルト時、4月21日、地上100cmコンクリート
港区港南: 0.083マイクロシーベルト時、4月28日、地上100cm植栽
葛飾区金町2: 0.359マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cm砂
練馬区下石神井: 0.074マイクロシーベルト時、5月6日、地上100cm土
世田谷区赤堤5丁目: 0.059マイクロシーベルト時、5月8日、地上100cm土
渋谷区代々木2丁目: 0.114マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cm、コンクリ板舗道
世田谷区喜多見: 0.065マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cm芝生
八王子市台町: 0.078マイクロシーベルト時、5月11日、地上100cm土
府中市白糸台6丁目: 0.091マイクロシーベルト時、4月30日、地上100cmアスファルト
千代田区北の丸公園: 0.085マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cm土
隅田川清洲橋: 0.067マイクロシーベルト時、5月10日、橋上100cm石
世田谷区玉堤: 0.063マイクロシーベルト時、4月11日、鉄筋コンクリートビル5階
町田市: 0.069マイクロシーベルト時、4月28日、地上100cm土
箱崎エアターミナル(中央区日本橋箱崎町): 0.085マイクロシーベルト/時、5月10日、地上100cm石、高速の下
中央区日本橋中洲: 0.111マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cmアスファルト
新宿区西新宿: 0.124マイクロシーベルト時、5月10日、地上100cm片道4車線道路の歩道
品川区東品川: 0.084マイクロシーベルト時、4月30日、地上100cm土

葛飾区の金町の値は、一年これが続くとすると、年間で積算3.142ミリシーベルトになります。西新宿でも1.086ミリシーベルト。屋内では線量が減る、と言われていますが、どれだけ減るのかはどうも議論の余地があるようです。

USTREAMに、葛飾のアパートの2階の室内で測定しているライブビデオが出ていますが、室内で0.16~0.20マイクロシーベルト時が出ています。

Sunday, May 15, 2011

フェアウィンズアソシエーツ・アーニー・ガンダーセン:「福島第1原発、1歩進んで4歩後退」

Fairewinds Associatesのアーニー・ガンダーセン氏の5月13日付けビデオです。タイトルの、1歩進んで4歩下がる、というのは言い得て妙ですね。(残念ながら。)中でも氏が気にしているのは3号機のようです。

Fukushima - One Step Forward and Four Steps Back as Each Unit Challenged by New Problems from Fairewinds Associates on Vimeo.


氏は、3号機が再度水蒸気爆発する可能性がある、といっています。その理由が、原子炉の温度が高いのに圧力が低い、このような状態では水が存在しえない、ということ。また、3号機の使用済み燃料プールの爆発(氏の先日のビデオ)が音速より早い「デトネーション(爆轟)」だった証拠として、燃料のかけらが2キロ先まで吹き飛ぶための初速の計算(氏が行ったもの)に言及しています。

また、ビデオの中で、他のどこでも聞いた覚えがないのは、「専門家によれば、発電所自体が1フィート[約30センチ]ほど沈下している」という情報。(単に私が不勉強か。)そうなると、氏の言うとおり、土台のコンクリートが割れていないはずがないことになります。

最後の方で氏は、原発から5,60キロのところにある高校に触れ、原発労働者並みの被爆を受けるような地域で学校の授業を行わせているのは非人道的、人倫にもとる、と発言しています。

以下、ビデオ全訳:


福島第一原発:一歩進んで四歩後退:新たな問題が次々に

こんにちは、フェアウィンズのアーニー・ガンダーソンです。今日は5月13日金曜日です。今回は、福島第一原発とその周辺地域で何が起きているかを整理してみたいと思います。まずこの一週間を一言で振り返るなら、ロデオの暴れ馬がカウボーイを振り落とし続けた日々と言えるでしょう。

来週の木曜日、アメリカ原子力規制委員会の会合でスタッフから状況説明があります。おそらくスタッフは「状況はいぜんとして不安定」と報告するでしょうが、「不安定」とはあまりに控えめすぎる表現だと思います。今日、東京電力は、1号機の炉心が露出してかなりの燃料が損傷を受けていると発表しました。皆さんにとっては少しも意外ではなかったと思いますが、とにかくそれが東電の記者会見での発表でした。なぜこの事実が明らかになったかといえば、短時間とはいえ建屋の中に人を入れて格納容器に新しい計器を取り付けることができたからです。その結果、原子炉内には水がなく、格納容器内にはごくわずかな水しか溜まっていないことがわかりました。では、あれだけ注入した水はみんなどこに行ったのでしょうか。なにしろ過去2ヶ月で何万トンもの水を注入してきたのです[実際は1号機で1万トン強]。要するに水が漏れて地下水に入り込んでいるということです。これについてはまたあとでお話しましょう。

いずれにせよ1号機に水はなく、おそらく燃料は融けて原子炉を突き破り、今は格納容器の底に落ちているものと思われます。このせいで放射線レベルが非常に高くなり、建屋内で作業するうえでの被曝リスクを高めています。被曝量は70R/時[700ミリシーベルト時]。4、5時間浴びたら死に至るレベルです。長期の[被爆による]死ではなく、早い死です。それだけ1号機の線量は非常に非常に高いということです。したがって東電は1号機の作業計画を一から見直す必要があるでしょう。放射線量が高すぎます。

次に2号機ですが、こちらはほとんど変化がありません。ざるのように水が漏れています。上から水が入って下の穴から出てくる。格納容器から漏れているのです。つまりここからも大量の水が発生しているわけですが、現場にはそれだけの水を収容できるスペースがありません。しかも水は除染が必要です。前例にないほどの大量の除染です。福島の原子炉はそれぞれおよそ毎日100トンの水が注入されていますが、除染できるのはせいぜい一日1、2トン。したがって除染の計画も大幅な見直しが迫られています。さもなければ汚染水が地下水や海に流れ込んでしまいます。

3号機は興味深い状況になっています。3号機から煙が出ているという噂がネット上に広まっていますが、たぶん心配はいりません。煙が出るのは夜で、空気が冷えています。太平洋の水も冷たくなっています。おそらくあれは3号機からの熱い水蒸気が冷たい水に触れて、濃いもやとなって立ち昇ったのだと思います。放射性の蒸気であることは確かですが、火災が起きているわけではないでしょう。少なくとも私はそう考えています。

ただし、3号機については良いニュースはここまで。前にもお話したとおり、原子炉最上部の温度は非常に高いのに原子炉の圧力はきわめて低い状態です。こういう状況下で水が存在することはできません。気体の温度が高いのに圧力が低いということは、3号機の原子炉の中には水も水蒸気もないということです。だとすれば炉内には空気が入っているわけですが、原子炉は空気で冷やされるようなつくりにはなっていません。したがって、3号機の原子炉をどう冷やすかは依然として非常に深刻な課題です。温度と圧力のギャップが大きいので、3号機ではまだ水素爆発の可能性があります。

3号機については今週新たなことがわかりました。燃料プール内の映像が公開されたのです。3号機はすでに瓦礫の山も同然であることを思い出してください。そして映像に映った燃料プール内の状態はじつにひどいものでした。コンクリートの大きな破片がプールに落ちたのがわかります。大きな金属の塊も見えます。制御棒や燃料ラックは、私には変形しているように見えました。プール内で激しい爆発があったのは間違いありません。私は3号機の燃料プール内で発熱を伴う何らかの爆発があったとずっとお話ししてきましたが、この映像がそれを裏付けています。

裏付けとなる情報はほかにもあります。プール内で高濃度のヨウ素131が検出されたことです。事故後2ヶ月が経過しているのですから、本来ならヨウ素131はなくなっているはずです。にもかかわらず高濃度のヨウ素131が検出されたということは、私が数週間前から指摘してきたような「即発減速臨界」が燃料プール内で起きた証拠です。

次は4号機ですが、4号機は傾いています。傾いていることは東電も認めています。構造が損傷したのは明らかに3号機の火災と爆発によるものでしょう。ですが、一番上の部分が傾いている。これは良くありません。もしも強い余震が来たら4号機は崩壊するおそれがあります。東電はなんとか4号機を支持構造で補強しようと懸命に努力していますが、これは大変な作業です。それから、4号機についても燃料プールの映像が公開されました。ラックは壊れていないように見えます。だとすれば、周辺で発見されたプルトニウムは4号機からのものとは考えられません。4号機では2日間火災が発生しましたので、その原因となる熱源があったのは確かですから、プルトニウムをはじめほかの放射性同位元素、セシウムやストロンチウムなどが4号機で揮発化したのは間違いないでしょう。ですが、周辺で検出された大量のプルトニウムが4号機由来のものだとは思いません。

今週計算してみたのですが、アメリカ原子力規制委員会の報告書にあるように核燃料の破片が2キロ先で発見されたとすれば、破片は時速約900~1,000マイル[時速約1,450~1.600キロ]で燃料プールから放り出されたはずです。私の想像ですが、人差し指の先くらいの大きさの燃料のかけらが、3号機の燃料プールから2キロ先まで吹き飛んだ。ということは、空気の抵抗も考えると、おそらく初速は時速1,000マイル以上に達していたでしょう。つまり、私がたびたび指摘してきたように音速[時速約1,200キロ]を超えているわけであり、3号機で起きたのは「デフラグレーション(爆燃)」ではなく「デトネーション(爆
轟)」だったということです。

以上が何を意味するかといえば、まず1号機の格納容器からは水が漏れていて、窒素を注入しても圧力を維持できません。2号機からはずっと水が漏れて周囲のトレンチに溜まっています。今や3号機からも水が漏れ出してトレンチに溜まっています。つまり1~3号機の格納容器からはすべて水が漏れているということです。これまでアメリカの原子力規制委員会は、格納容器に漏れが生じることは「ありえない」と説明してきました。原子力諮問委員会などは昨年の10月、格納容器が漏れる可能性は「ゼロパーセントと想定している」と明言しました。明らかに間違っていたわけです。このことは、原発の運転にかかわる様々な規制に影響を及ぼします。現在認可を申請中のウェスティングハウス社製の新しいAP-1000原子炉も、影響を免れないでしょう。これについては来週詳しくお話しするつもりです。

最後に、こうした状況が福島第一原発の周辺地域に対してどんな意味をもつかを考えてみたいと思います。最初の問題は水です。先ほどもお話したように大量の水が発生していますが、すべてを収容しきれていません。専門家によれば、発電所自体が1フィート[約30センチ]ほど沈下しています。だとすれば土台のコンクリートに亀裂が生じており、放射性物質が地下水に入り込んでいるに違いありません。前回私は、放射性物質が近隣の町の下水システムに流入したという話をしました。今週、下水関係の専門家と話をしたところ、地震のあとで地下水が下水に染み出すのは珍しくないそうです。したがって、東電と日本政府に出してほしい今一番重要なデータは、地下水の放射能レベルがどれくらいかということです。

それから空気中の放射性物質についてです。今週、日米合同で上空を飛行して汚染の度合いを調べたところ、原発から50~60キロの地域まで汚染されていることが分かりました。その地域に高校があります。生徒はマスクと長袖シャツを着用して皮膚の露出を防ぐようにいわれています。その学校で生徒が授業を受けている間、屋外の駐車場では土壌の表面を除去する作業を行なっています。汚染レベルが高すぎて、生徒が屋外に出たら原発労働者並みの放射線を浴びてしまうからです。このような状況で、あの学校を開校させているのは人道的に許されないことです。

最後になりますが、放射性物質はすべての原子炉から放出され続けています。格納容器が用をなしていないため、下からは水として、上からは蒸気として出て行きます。そしてそれを止める見通しはまったく立っていないのです。

ありがとうございました。また来週お目にかかりましょう。

([ ]内は訳者の補足)


(h/t あ)

Friday, May 13, 2011

青山繁晴:「福島第1原発事故、ほとんどは人災」

先日、「管総理の浜岡原発停止要請はアメリカ政府からの圧力のため」と発言した青山繁晴氏が、5月13日の参議院予算委員会の参考人として出席、福島第1原発について発言しています。

ビデオがこのサイトに出ていますので、ごらんになりたい方はどうぞ。(あ、ハルキさんが居眠りしてる...?)

氏の発言で、興味深い点をいくつか上げておきます:
  • 4/22に現場に行って海側の被害(つまり津波の直撃を受けた側の被害)を見たが、タービン建屋などの破壊状況はそれはそれは凄まじかった。自分は多少軍事のこともかじっているが、通常兵器ではこのような破壊は起こりえない、小型戦術核のようなもので攻撃されないかぎりこのような破壊はありえないというくらいにすさまじかった。

  • にもかかわらず原子炉建屋は意外としっかりしていた。揺れの被害は多少あったようだが(配管にずれができるなど)、原子炉建屋や格納容器・圧力容器は大半が無事、その後の判断ミス、対応の遅れによって水素爆発が起き、放射性物質が漏えいした。全てではないが多くのものが人災だ。

  • 首相の訪問によって、通常の作業に加えて準備の作業が加わったのは確か。ただ、具体的にどのような作業の遅れがあったのかは現場の人間からはひとことも聞いていないので、ここでそれに関する判断を述べるのはフェアじゃない。したがって、総理訪問の影響が事実としてどれくらいあったのかは言えない。ただし、安全保障の専門家のひとりとして個人の見解を述べるならば、こういうときに国のリーダーは官邸の執務室にいるべきではなかったか。それは現場に行ったからいうのではなく、安全保障の専門家として原則としてはそうだと個人的に考えているということ。

  • 今後、大きな余震と津波がくることを原発所長の吉田さんはいちばん心配している。スマトラのときは3ヵ月後にM8.6の余震。私たちの災害に当てはめればそれは6月半ば。今の状態でそういうのがきたら「致命的だ」と所長はあえてカメラの前で明言した。そのために仮説の防潮壁が6月半ばまでにつくられることになった。できるだけ早く本物のものも必要がある、というのが吉田さんの現在の危機意識。

青山氏が4月の22日に福島第1原発入りして撮影したビデオをまだご覧になってない方、どうぞ。原発建屋、海側の状況などを撮影した箇所はちょうど真ん中ぐらいです。

OT: グーグルのBLOGGERの不具合でポスト消失

このブログを作成しているプラットフォーム、グーグルのBloggerがメンテナンスの失敗で全世界的にダウン、その状態が24時間経った今も続いています。ようやっとBloggerのプログラムにはアクセスが可能になりました。

システムを5月11日の状態に戻す必要があった、とか言ってますから、大失敗の部類でしょう。そのおかげで、5月11日以降のポスト、コメント、ドラフト、ページ変更が全世界的に全部削除され、グーグルでバックアップは取っているものの全てが元通りになるには更に数時間かかる、と言っています。

BloggerのTwitterは、十数時間前からひたすら「もうすぐ直ります」と言い続けていますが、はっきりした時間工程、作業工程を明示しないところなど、まるで東電だなあ、と思いつつ、あきれています。

Wednesday, May 11, 2011

大阪MBSニュース:福島第1原発1号機圧力容器、格納容器に水はほとんどなし

(UPDATE: MBSニュースのリンクが更新されています。新しいリンクはこちら。新しい情報として(さっき終わった東電の記者会見からのようです)、13日から1号機原子炉建屋に化学繊維のカバーを掛ける作業をするそうです。それと、圧力容器内の水位は燃料棒上部から5メートル以上下、ということで、どれくらい下かは明言なし。)

----------------------------------

さて、水はどこへ行ったのでしょうか?毎時6トン、毎日144トン、毎週1008トン、7週間で7056トン。

そういえば、日本原子力技術協会最高顧問、石川迪夫さんは、燃料棒は全部溶けて、圧力容器から出ているかもしれない、と言っていましたね。石川さんが「原子炉に橋頭堡を築け」とテレビで発言なさってから、東電が高放射能(高いところで700ミリシーベルト・時もあった)をものともせずに作業員を1号機に送り込み、水位計、圧力計を修理してみたら水がなかった、ということですか。さてこれからどうするんでしょうか。(ないのは水だけか?)

5月12日付け、毎日放送MBSニュース:

1号機、水たまっておらず

 福島第一原発の1号機で、圧力容器やその外側の格納容器に、ほとんど水がたまっていないことがJNNの取材でわかりました。「格納容器に水をためる」という、当初、予定していた冷却方法の大幅な見直しを迫られることになります。

 1号機には作業員が原子炉建屋の内部に入り、今週、水位計や圧力計の修理を行いました。圧力容器の水位は、これまで高さ4メートルの燃料棒が半分以上、 水に浸かっている位置を示していましたが、水位計を修理したところ、実際の水位は大幅に低く、水がほとんどたまっていないことが政府関係者への取材でわか りました

 燃料棒がむき出しになり、空だき状態になると水素爆発の危険が高まりますが、原子炉の状態が安定していることから、燃料が 溶けて圧力容器の底にたまり、かろうじて水で冷やされている可能性もあるということです。また、外側の格納容器にもほとんど水がたまっていなかったという ことです

 1号機では、原子炉を冷却するため、格納容器に水を満たす「冠水」を目指していましたが、格納容器から水が漏れている可能性が強まったことで、大幅な見直しを迫られることになります。(12日02:29)

東京大学松井哲男教授:「福島第一原発で被災後に核分裂連鎖反応が再開していた可能性」

核分裂連鎖反応再開=再臨界

京大の小出さんは結局正しかったんでしょうか?

東大の松井教授の専門は原子核理論。科学論文などのPreprintをアーカイブする”arXiv”サイトに教授が5月2日アップした論文を、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のテクノロジーレビューのブログが5月9日に紹介しています。(ブログの元の英文はこちら

ブログによると、松井教授は原子炉が運転を開始した当初(7ヶ月から12ヶ月前)の原子炉内の放射性ヨウ素131とセシウム137の比率を推算、また、3月11日に原子炉が止まった時点での同比率を推算し、それと東電が行った実測値と比べたところ、

「4号機の冷却プールで採取した水のサンプルと、2号機付近の地下水排水設備で採取した水のサンプルは、異常な数値を示している。このデータが正しいとすれば、これらの核分裂生成物の一部は、地震後に再開した核分裂連鎖反応によって生じた可能性がある

東電の計り間違え、という可能性ももちろんあります。

教授がアップした英語論文(9ページ)はこちら。教授は実際に”criticality”(臨界)という言葉を使っています。

以下、MITブログの5月9日付け記事の、英語論文を参照した上での全訳をお出しします(H/T あ):

The Physics arXiv Blog(物理学アーカイブ・ブログ)
2011年5月9日

福島第一原発で被災後に核分裂連鎖反応が再開していたと新研究が指摘

放射性副産物の分析結果から、震災で原子炉が損傷した後も核分裂連鎖反応が継続していた可能性が示唆されている。

原子炉からは様々な放射性副産物が生成されるが、それぞれの原子が崩壊して放射能が弱まっていく速度は物質の種類によって異なる。とりわけ多く発生する副産物のひとつに放射性ヨウ素131があり、半減期は約8日。やはり多く発生する放射性セシウム137の半減期は約30年だ。

原子炉が停止すると、ヨウ素131の放射能のほうが短期間で少なくなっていくため、両者の比率は数日のあいだに急激に変化していく。したがってこの比率を測定すれば、核反応がいつ停止したかを判断する絶好の目安になる。

ただしここには複雑な要因も絡んでくる。なかでも重要なのは、ヨウ素131とセシウム137の比率は原子炉がそれまでどれくらいの期間運転されていたかによって変わってくるということだ。

というのも、原子炉が運転を開始したあと、ヨウ素131の量は、半減期(8日)とほぼ同じくらいの期間で生成と崩壊が釣り合って平衡状態に達するのに対し、セシウム137のほうは半減期が30年と長いので、平衡状態に達するにはヨウ素131よりはるかに時間がかかる。そのため、原子炉の一般的な運転期間を考えれば、原子炉が運転されているあいだは基本的にセシウム137の量は増え続けるといって
いい。

福島第一原発は3月11日午後2時46分(日本時間)にマグニチュード9の地震に見舞われた。運転中だった3基の原子炉はただちに停止した。

しかしおよそ一時間後、今度は高さ5mの津波に襲われる[原論文には「高さ15m超」とあり]。このせいで原子炉の電気冷却機能が破壊され、原子炉温度が上昇し始めた。核燃料を覆うジルコニウムから水素が発生し、それが水蒸気と反応して1号機、3号機、4号機で水素爆発を起こした。

多くの人が疑問に思っているのは、高温になった核燃料が融けたのではないか、融けた燃料が臨界質量に達して核分裂連鎖反応が再開したのではないか、ということである。

今、東京大学の松井哲男教授は、福島第一原発の限られたデータから判断するかぎり、核分裂連鎖反応が事故発生の12日後までに再開していたに違いない、と指摘している[原論文では「12日」という具体的な数字は出てきていない]。

松井教授によれば、その根拠は、原発周辺の数箇所および付近の海水で測定したセシウム137とヨウ素131の比率である。松井教授はまず、原子炉が7~12ヶ月間運転されていたと仮定して、原子炉内に存在したはずの両者の比率を計算した。これが比較のベースとなる。

その比率と、事故後に1号機と3号機のドレンで採取したサンプルの比率を比べたところ、核反応が地震発生と同時に停止したという見方と一致した。

ところが、2号機付近のドレンと、使用済み燃料棒を貯蔵する4号機の冷却プールのデータからは、核反応がもっと遅い時点に起きた形跡が見られる、と松井教授は語る。

「4号機の冷却プールで採取した水のサンプルと、2号機付近のサブドレンで採取した水のサンプルは、異常な数値を示している。このデータが正しいとすれば、これらの核分裂生成物の一部は、地震後に再開した核分裂連鎖反応によって生じた可能性がある」と松井教授は指摘する。

この連鎖反応は事故発生後かなりの時間が経過してから始まったものと思われる。「2号機付近の異常なデータは、相当量の核分裂生成物が事故の10~15日後に発生したと仮定しないかぎり辻褄が合わない」と松井教授は言う。

だとすれば、2号機では3月末まで非常に危険な状態が続いていたことになる。

データには疑問の余地もあると松井教授は指摘する。ひとつ考えられるのは、セシウムとヨウ素の化学的性質が異なるために、原子炉から流れてくる過程で比率が変わったということだ[原論文には、「両者の化学的性質が異なるために、それらの物質が見つかる環境によって(真水中か海水中か、空気中か、エアロゾル状としてか)存在比が異なる可能性がある」という趣旨のことが書かれている]。

しかし、どのような化学的プロセスによってそのような現象が生じたのかを見極めるのは難しく、同じ原発内でもこの現象が起きている場所と起きていない場所があるのがなぜかを理解するのはなおさら難しい。

もちろん、4号機の使用済み燃料プールと2号機で具体的に何が起きたのかは、実際に現場を詳しく調べられる状態になるまでは突き止めるのが不可能だ。

しかしそれまでのあいだ、津波後に本当は何が起きたのかをうかがい知るうえで、松井教授の分析は現時点で最も有力な仮説のひとつといえるのではないだろうか。

参考文献:arxiv.org/abs/1105.0242: Deciphering The Measured Ratios Of Iodine-131 To Cesium-137 At The Fukushima Reactors(「福島第一原発で測定されたヨウ素131とセシウム137の比率の意味を解き明かす」

Monday, May 9, 2011

青山繁晴:管総理の浜岡原発停止要請はアメリカ政府からの圧力のため

国民の安全、安心」のためではなかったんですねえ。Liar, liar, pants on fire。うそつき。

5月8日、テレビ朝日の「サンデースクランブル」に出演した、元ジャーナリストで現・原子力安全委員会専門委員の青山繁晴氏(氏は4月22日に福島第1原発の地上レベルからのビデオを撮影し、政府の批判を買った方です)の発言:「浜岡原発停止はアメリカからの圧力だ」

アメリカの圧力は4月の初めからどんどん強くなったそうです。アメリカの関心(国益)は、第7艦隊の基地である横須賀基地。浜岡原発の風下になるから、と青山さん。

青山さんにもアメリカの国防省(Defense Department)、外務省(State Department)から直接電話がかかってきて、浜岡を何とかしろ、といわれたそうです。青山さんによると(英語で)、”We're just out of Fukushima. That Hamaoka...”

また、アメリカの圧力が強くなってきた頃政府内でも浜岡は止めたほうがいいんじゃないかという意見が出、また中部電力の管轄内にはトヨタ、ホンダ、スズキなどの工場があることもあり、経産省に影響の試算をするように指示が出た、ところが、首相はその試算を要求しないで、浜岡原発の停止を要請した、とも。経産省に電話して聞いたら、いや試算を出せとは言われませんでした、と青山さん。

アナウンサーの方は絶句してましたが、出せと言われなければ出さない経産省の役人も役人だと私は思います。

SPEEDIの放射能拡散予測を地震のすぐ直後から沢山作ったけれど政府に出せと言われなかったから出さなかった斑目さんと一緒ですね。リンクは私の英語ブログへ行きます。図だけでもご覧ください。)

それより何より、外国からの強い圧力がないと、自国民を守るための判断(浜岡原発を止める)すらできないような政府は、政府なんでしょうか?

(h/t あ)

Sunday, May 8, 2011

TBS・JNN福島第1原発ライブカメラが捕らえた?真夜中の煙?火事?

TBS・JNNは24時間ライブのHDカメラを福島第1原発に設置していますが、このカメラが捕らえたビデオとそこからコマ撮りした写真がアメリカのブログに掲載され、インターネットで広まっています。映像処理をしているのかどうか、不明。ブログ記載の日付は5月8日となっているのですが、日本時間なのかどうなのか、不明。5月8日の夜の夜中、ということなら、日本時間では5月9日の未明になります。

(TBS・JNN福島原発ライブカメラはこちら。http://youtu.be/FptmoVcgpqg

何かニュース、日本で出てます?

映像を見る限り、福島第1原発から火事の煙でも出ているようです。実際、建屋からオレンジの火がでているように見えます。(右側の矢印。何号機だ?)


映像はこのサイトからです--->http://blog.alexanderhiggins.com/2011/05/08/massive-fire-breaks-fukushima-daiichi-nuclear-power-plant-8th-2011-22424/

CTBTO高崎ステーションの計測で放射性ヨウ素、セシウムが再び上昇

CTBTO(包括的核実験禁止条約)準備委員会の高崎ステーション(下のチャートの38番)で計測されている放射性ヨウ素131、セシウム137とも、また大きく動いています。

ドイツの連邦放射線保護局(Das Bundesamt für Strahlenschutz)が出しているチャートです。上がヨウ素131、下がセシウム137です。


Friday, May 6, 2011

放射能にご注意:5月8日、福島第1原発1号機の作業で原子炉建屋の二重扉が開きます

河野太郎議員の、5月5日付けブログポストより:

5月1日の政府・東電統合本部全体会合の議事録。

『このままいくと8日にも高濃度の放出が行われる。』

『細野補佐官から,本件は熱交換機の設置といった次のステップに進む上で非常に重要である,また,(今後,放射性物質が外に排出され得るという点で,)汚染水排出の際の失敗を繰り返さないよう,関係者は情報共有を密に行い,高い感度を持って取り組んで欲しい,とする発言があった。』

保安院の西山審議官は、放出量は微量、と言っているそうです。

汚染水排出の際の失敗」というのは4月4日の、隣国に通知しないで、沿岸の漁民にも何も言わず、汚染水を放出してあとから叩かれた事件。でも、「関係者は情報共有を密に行い」、という場合の関係者って、誰だと思います?

間違っても県民や国民ではなさそうですね。河野さんのブログ以外に、「高濃度放射能放出」を国民に伝えている政府関係、東電関係の広報は見当たりませんから。「関係者」というのは多分、政府の関係者、ということでしょう。汚染水排出のときは農林水産大臣が「聞いてない」と怒っていましたから。

せめて作業者は関係者に入れてもらえるんでしょうかね?

(みなさん、自分の身は自分でしか守れません。)

Thursday, May 5, 2011

オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)放射性ヨウ素拡散予測5月5日~7日

海側からの風向きのせいで、ほぼ日本全域にかかります。かからないのは沖縄ぐらい。結構強めの黄色の帯が、福島以北の東北に延びています。

日本時間にするには7時間足します。

Area A(紫色)は最大0.3マイクロシーベルト/時、Area B(青色)は最大3マイクロシーベルト/時となる可能性がある地域、Area C(水色)は30マイクロシーベルト/時、Area D(黄色)は300マイクロシーベルト/時、Area E(オレンジ色)は3000マイクロシーベルト/時、つまり、3ミリシーベルト/時で、福島第1原発の放射線量を示している、との説明です。

原子力安全委員会斑目委員長の6年前:「原子力発電に対して安心する日なんて来ませんよ」

原子力安全委員会の委員長、斑目春樹さん(またの名を「デタラメハルキ」と人の呼ぶ...)の6年前のインタビュー。映画『六ヶ所村ラプソディー』(2006年)非公式予告編ということで、Youtubeにアップされています。

ハルキさんはいわゆる理系のエリートですね。Wikipediaの記載を見る限り、実社会で額に汗して働いたのはわずか3年(大学修士課程後東芝の研究所)、すぐに東大の大学院に戻り、あとはずっと東大で2010年に退職、原子力安全委員会の委員就任。

非常に率直なコメントで、原発は金(かね)、としっかり(しかも楽しそうに)言い切るところが学者とは思えず、また常に引きつったような、相手を馬鹿にしたような笑いが浮かんでいるのがなんとも私には怖いですね。(京大の小出さんなどから受ける印象とはまったく正反対。)

『とにかくわかんないけどやってみようはどうしてもあります。で、だめ、危ないとなったら、ちょっとでもその兆候があったらそこで手を打とうと。』

『今まで良かった良かったって来てます。ただし良かったじゃないシナリオもあるでしょうね、って言われると思うんですよ。そのときは原子力発電所は停まっちゃいますね。』

『原子力発電に対して安心する日なんて来ませんよ。せめて信頼してほしいと思うんですけど。安心なんかできるわけないじゃないですか、あんな武器になるもの。』

『最後の処分地の話は、最後は結局お金でしょ?どうしてもみんなが受け入れてくれないとなったら、じゃあ、おたくには今までこれこれっていってたけどその2倍払いましょう、それでも手あげないなら、じゃ5倍払いましょう、10倍払いましょう、どっかで国民が納得することは出てきますよ。』

『原子力発電なんてのはものすごい儲かってるんでしょうね、きっとね。そりゃそうですよ、原子力発電所1日止めると1億どころじゃないわけですよね。だから、そういう意味からいくと、今動いている発電所をつぶす気なんてアメリカは毛頭ないし、日本も電力会社、あるものは出来る限り使いたいというのが本音ですよ。』



斑目さんのシーンが終わって、どこかのイベント会場らしきところ(映画の試写会の後かな?)でインタビューに答えている若い女性の言葉:

『地雷の上に家を建てる人はいないって。それが当たり前のことだと思います。国が反対の意見をこう、ふたをしようとしてるじゃないですか...』

便利な電化生活に不可欠、と原子力発電を売り込まれ続けて、気がついたら日本中の誰の家も原発という地雷の上に建っている羽目になってしまった、ということでしょうか。

斑目さんにとっては、福島第1原発の事故はせいぜい中学校の理科の実験でちょっと失敗した、ぐらいの感覚のような、いやな気がします。同じ東大の小佐古教授がなぜあんなに怒っているのか、まったく分からない、とおっしゃるくらいですから。知能指数は多分大変に高くていらっしゃるのでしょうが、常識指数、感情指数がどうも通常人以下であるような気がします。

Tuesday, May 3, 2011

フェアウィンズアソシエーツ・アーニー・ガンダーセン:「3号機は水素爆発ではなく使用済み燃料プールでの臨界状態からの爆発の可能性」

というビデオはChristopher Busby氏のビデオ(日本語訳はこちら)とともにすでにお出ししましたが、日本語訳ができましたので、お届けします。ビデオも再度リンク。

Gundersen Postulates Unit 3 Explosion May Have Been Prompt Criticality in Fuel Pool from Fairewinds Associates on Vimeo.



こんばんは。フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。フェアウィンズにはいろいろなテーマについてたくさんの電子メールが寄せられます。今とりわけ多くの質問と懸念、いくつかの良く考えられた発言が寄せられたのが、「福島第一原発の3号機に何が起きたのか」という問題です。3号機の爆発のしかたは1号機ともほかの原子炉とも違います。なぜでしょうか。そこで今日は、確実にわかっている事実に基づきながら、3号機で何が起きた可能性があるかを考えてみたいと思います。

まず最初にいえるのは、3号機の爆発は1号機よりはるかに大規模だということです。工学の専門用語に「デトネーション(爆轟)」と「デフラグレーション(爆燃)」というのがあります。どちらも平たく言えば「爆発」ということですが、「デフラグレーション」で生じる衝撃波は音速を超えません。一方、「デトネーション」のほうは衝撃波が超音速で伝わります。したがって、デフラグレーションよりデトネーションのほうが被害は大きくなります。専門的なニュアンスの問題と思われるかもしれませんが、この2つの違いこそが1号機と3号機の爆発の違いを生んだのです。

1号機が爆発したときの噴煙を見てください。3号機のときと比べるとゆっくりした速度で建屋から広がり出ています。では、3号機で起きた客観的事実をいくつか踏まえた上で、私の考えを述べてみましょう。

まず、3号機の爆発はご覧の通り1号機と比べてはるかに大規模です。また、大量のエネルギーがまっすぐ上に向かって放出されたのがわかります。専門用語でいえばベクトルです。3号機の爆発では、1号機の時にはなかった上向きのベクトルが見られます。これは重要な手がかりですので、のちほどまた詳しく説明します。次に、3号機の場合は明らかに爆発が起きたことがわかります。建屋の南側、つまり右側を見れば、黒煙が上がる前に黄色い閃光が確認できるからです。これも重要な手がかりですのでのちほど説明します。

もうひとつの事実は、核燃料棒の破片が原発から2マイル(3.22キロメートル)以上はなれた地点で見つかっていることです。前にもお話した通り、4号機では燃料棒が乾燥[水に浸かっていない状態?]していましたが、燃料ラックは壊れていませんでした。したがって、数キロ飛んだ燃料棒の破片が4号機の燃料プールからのものとは考えられません。だとすれば3号機から飛んできたことになります。

そしてもうひとつ、アメリカのハワイと西海岸でウランの微粉末が、また原発の敷地内ではプルトニウムの微粉末が検出されています。アメリカ北東部のニューイングランド地方でもアメリシウムが確認されています。これらの元素はすべて「超ウラン元素」と呼ばれ、ウランより重いのが特徴です。超ウラン元素が発見されたとすれば、福島原発で核燃料が損傷して揮発化した可能性があるということです。

3号機の写真を見ると、爆発後に建屋のかなりの部分が失われています。とくに南側が顕著です。ところが、同じ3号機建屋の赤外線写真を見てみると、爆発後も南側に熱源が残っているのがわかります。データを見るかぎり、3号機の格納容器自体、原子炉自体が損傷していないことは確かです。じつに不思議です。原子炉も格納容器も壊れていないのに、建屋は粉々に吹き飛んだ。なぜでしょうか。私の考えはこうです。縦15m×横15m×深さ15mの燃料プールが空になっていたのです。そこに気体が充満し、上方に吹き飛んだ。プールの上には蓋がなく、側面には壁があるために、エネルギーは上に向かうしかなくなって物質を噴き上げた。そう考えればほかのいくつかのことにも説明がつきます。たとえるならば燃料プールは銃の銃口のようなものです。銃口が上を向いていたので、上に向かって発射されたわけです。

映像からわかる点はもうひとつあります。爆発のあとで大量の瓦礫が降ってきているということです。これらは燃料ラックや燃料棒であり、ウランやプルトニウムのかけらです。原発から何キロも離れたところでウランやプルトニウムが発見されたのはそのためです。それから、煙が黒いことにも注目してください。これはウランやプルトニウムが揮発したしるしです。言い換えれば、エアロゾルと呼ばれる非常に細かい微粒子になったということです。だから風に乗って太平洋を越え、ハワイや西海岸に、そして今やこのニューイングランドにまで達することができたのです。

では、上向きのエネルギーを生じさせたものは何でしょうか。ただの水素爆発だとしたら、水素と酸素が反応して水ができます。そうすると、爆発が起きてもその衝撃波は音速を超えません。つまり「デフラグレーション」です。1号機で起きたのはこれです。見た目は派手ですが、激しい爆発ではありません。では、3号機が爆発した原因は何でしょうか。実際に爆発があったことは間違いありません。理由はふたつあります。ひとつは噴煙がかなりの高さまで噴き上がっていること。もうひとつは建屋の側面に閃光が見えたことです。「デフラグレーション」であれば閃光が起きることはありません。閃光を生じさせるのは「デトネーション」です。

では、デトネーションを起こした原因は何なのか。水素と酸素が反応するだけでは不十分です。ほかにも何かあったに違いありません。まだ確たる結論は出ていませんが、水素爆発が起きたためにその衝撃波でプール内の燃料棒が動いて歪んだ。そのせいで即時に核反応が起き、プール内のものを粉々にして上向きの噴煙として噴き上げたと考えれば辻褄が合うのではないでしょうか。それによって生まれたエネルギーが、私たちが3号機で目にした凄まじい光景を作り出したのです。

この仮説を確かめる方法がひとつあります。噴煙に含まれる同位体の種類を調べるのです。アメリカ軍の飛行機が上空を飛んでサンプルを採取していることは分かっています。すでに研究所で調べていることでしょう。キセノンには2種類の同位体があり、それらの比率を調べれば、燃料プールで即発臨界が生じたかどうかがわかります。つまり証拠はあるのですが、まだ私たちには開示されていない。ですが、おそらくアメリカ政府は証拠をつかんでいるものと私は想像しています。

ご清聴ありがとうございました。新たな情報が入り次第またお知らせします。

(h/t あ)

Monday, May 2, 2011

ノルウェー大気研究所放射性ヨウ素131、セシウム137拡散予想5月2日~7日

今回はノルウェーの研究所(NILU)の予測。6日、7日は風向きが太平洋側からの風に変わるようで、濃淡の差こそあれほぼ全国がヨウ素131の雲に覆われています。

特に、東北の太平洋沿岸で濃い色になっていますが、千葉、茨城も相変わらず。

アニメーションを見るにはサイトで。ここです。

セシウム137も、似たようなところをしっかり飛んでいます。

セシウムのアニメーションは、こちらです

京都大学小出裕章:4月29日講演ビデオ

2011年4月29日明治大学アカデミーコモン内 アカデミーホール「終焉に向かう原子力」第11回、京都大学小出裕章さんの講演部分です。

2011.4.29 終焉に向かう原子力 小出裕章氏講演 from kayo sawaguchi on Vimeo.

Physicians for Social Responsibility:日本政府による福島県児童の放射線被曝許容量の引き上げは「人倫にもとる」行為

昨日お出しした、米国団体”Physicians for Social Responsibility (PSR)”の日本政府による福島県児童の放射線被曝許容量の引き上げに強く抗議する声明文の日本語訳です。(強調は私。)

Physicians for Social Responsibility (社会的責任のための医師の会)(PSR)
「核戦争防止国際医師会議」のアメリカ関連団体
1985年ノーベル平和賞受賞

2011年4月29日
福島県児童の放射線被曝許容量引き上げに対するPSRの声明文

放射線に安全なレベルなど存在しない。それが医学界と科学界の総意であり、米国アカデミー全米研究評議会による報告書『電離放射線の人体への影響Ⅶ』(通称『BEIR Ⅶ』レポートhttp://www.nap.edu/openbook.php?isbn=030909156X)にも概要がまとめられている。いかなる量の被曝であっても、たとえ自然放射線の被曝であっても、がんを発症するリスクを高める。そのうえ、被曝の影響は誰もが均等に受けるわけではない。子供は大人に比べて放射線の影響をはるかに受けやすく、胎児はそれに輪をかけて影響を受けやすい。子供の年間被曝許容量を20ミリシーベルト(mSv)に引き上げるのは、人倫にもとる行為である。大人が20mSvの放射線を浴びれば、500人に1人ががんを発症するおそれがある。同じ量を子供が浴びれば200人に1人ががんを発症するおそれがある。このレベルの放射線を子供が2年間浴び続けたら、がんを発症するリスクは100人に1人となる。このようなレベルの被曝量を子供にとって「安全」とみなすことはとうていできない。

(h/t あ)

Sunday, May 1, 2011

アメリカの医学グループ、福島の児童に対する日本政府の放射線量の方針を「非良心的」と強く批判

福島の幼稚園児、小中学生を年間20ミリシーベルトの放射線量を仮定した学校校庭に遊ばせる無責任さにあきれ、憤っているのは日本人だけではありません。アメリカの医師グループが声明を発表して、日本政府のこの方針を強く攻撃しています。このグループは”Physicians for Social Responsibility (PSR)”といい、1985年のノーベル平和賞を受賞した団体です。

”Unconscionable”という言葉を「非良心的」と一応訳しましたが、英語の語感ではもっと強くて、「人倫にもとる」「非人道的」という方が当たっているかもしれません。

5月2日付け共同ニュース英語版発信のニュースですが、日本語版には出ていません:

U.S. medical group blasts Tokyo radiation policy on Fukushima children (5/2/2011 Breitbart)

アメリカの医学グループ、福島の児童に対する日本政府の放射線量の方針を攻撃

Physicians for Social Responsibility, a U.S. nonprofit organization of medical experts, has condemned as ''unconscionable'' the Japanese government's safety standards on radiation levels at elementary and middle schools in nuclear disaster-stricken Fukushima Prefecture.

医学専門家の米国非営利組織である”Physicians for Social Responsibility (PSR)"は、福島の小中学校の放射線量に関する日本政府の安全基準を「非良心的」と強く批判した。

The PSR statement directly challenges the Japanese government stance that it is safe for schoolchildren to use playgrounds on school premises in the prefecture as long as the dose they are exposed to does not exceed 20 millisieverts over a year.

PSRの声明は、福島の学校の校庭の使用は児童の年間放射線被爆量が20ミリシーベルトを超えない限りは安全である、とする日本政府のスタンスと真っ向から対立するものである。

The PSR view is also in line with that voiced by Toshiso Kosako, who said Friday he would step down as an adviser to Prime Minister Naoto Kan on the Fukushima nuclear crisis in protest. The University of Tokyo professor urged the government to toughen guidelines on upper limits on radiation levels the education ministry recently announced for primary school playgrounds in Fukushima.

この見解は、金曜日に辞意を表明した内閣官房参与小佐古敏荘氏の意見とも合致する。小佐古東大教授は、先に文科省が発表した小学校校庭の放射線許容量の上限のガイドラインを厳しく設定するよう政府に強く迫っている。


なお、元の声明は4月29日に出ています。これです:http://fukushima.greenaction-japan.org/wp-content/uploads/2011/04/PSR_Statement_on_Fukushima_Children.pdf


中部大学武田邦彦:放射能規制値の設定の根拠

松本外相が日本は安全なので訪問してください、と外国にアピールする不毛、高木文科相が福島の学校の校庭は3.8マイクロシーベルト時以下なら安全と言って憚らない愚、消費者に安全で栄養のある野菜を作ってきた農家を代表する(はずの)福島県農協が福島の復興のために福島の野菜を買いましょう、とキャンペーンする不可思議。

ゴールポスト(放射能規制値)を都合よく勝手に変えてしまった日本政府の「つけ」は、国内外の信頼の失墜ぐらいで済むとも思えません。

中部大学武田教授の5月1日付けのブログに、規制値の設定の根拠などがわかりやすく説明されています。

教授はブログポストの最後で水の放射能規制値について触れていますが、ちょっと驚きました。WHOの基準が1リットル1ベクレルというのは知っていましたが、ドイツの基準は0.5ベクレル、アメリカは更に厳しくて0.1ベクレル、日本は10ベクレルだったのを、福島第1原発事故後300ベクレルに引き上げ、つまり、WHO基準の300倍、ドイツの600倍、アメリカの1000倍の放射能まで「安全」と認めることに勝手に決定したわけです。

誰が決定したんでしたっけ?そんな権限、決定した人にあったのでしょうか?あったとしたら、誰がそんな権限を決定者に与えたんでしょうか?

以下、武田教授の5月1日付けのブログ 全文 (強調は私です。)

-------------------------------------

規制値の再整理


「放射線は体に良い」、「20ミリまで大丈夫」、はては「核実験の時には今より放射線物質が多かった」など、いかがわしい話が横行しています.

まるで今まで何も検討されてこなかったというような報道が行われています。

そこで、ここで放射性物質の規制値を再整理しておきます.

この規制値は、私が勝手に決めたわけではなく、「国際勧告」と「国内法」で決まっているものです。

また、テレビで「専門家」という人が登場し、「一般人で100ミリまで良い」などと発言していますが、ここに示す値はその人達が決めたものです。

決定に当たっては、もちろん膨大なデータをもとに1970年代から20年かけて「今、テレビに出ている専門家」が多く参加して議論をし、1990年にハッキリ決まり、それから20年間も守ってきたものです。

また、福島原発が起こったから、日本人が急に放射線に強くなったということはありません。

・・・・・・・・・低い方から・・・・・・
まず、まとめますと次の7段階です。

1. 1年20マイクロシーベルト
2. 1年50マイクロシーベルト
3. 1年0.1ミリシーベルト(=1年100マイクロシーベルト)
4. 1年1ミリシーベルト(=1年1000マイクロシーベルト)
5. 1年5ミリぐらい(おおよそ)(=1年5000マイクロシーベルトぐらい)

6. 1年20ミリシーベルト(=1年2万マイクロシーベルト)
7. 1年50ミリシーベルト(=1年5万マイクロシーベルト)

1. 1年20マイクロシーベルト

文科省が決めている「クリアランス・レベル」というもので、「これ以下なら過去に放射線に接していても、普通のものとして扱って良い」という数値。

これに反すると懲役1年以下の犯罪で、現在の文科省の言動は、自分で作った法律に違反して犯罪を犯している。私もこのクリアランス・レベルの検討に参加していた。

今、テレビで「100ミリまで安全」と言っているある組織の専務理事のところで決まったもの。

2. 1年50マイクロシーベルト

放射線の影響がほとんどなく、あまり気にしなくても良いレベル。原発の境界などはこの線量を守ることが求められていた。

これも公的な数字で、福島原発事故が起こる前には盛んに使われていたが、今では隠されている.

原発関係社は50マイクロのことを良く知っていて、原発に見学に行くと「被曝限度は1年に1ミリですが、原発は50マイクロを守っています。だから20倍、安全です」と広報していた。

3. 1年0.1ミリシーベルト

ICRPの国際勧告の10分の1で、ECRR(欧州放射線防護委員会)が国際的基準として求めているもの。

ICRPとの差は、放射線で発生するガンについてのデータの見方が違うため(ヨーロッパの方がガンに対して厳しいので10分の1になっている).

「日本の基準値は厳しすぎる」という専門家がいるが、それは間違いで、これでわかるようにヨーロッパは現在の国際勧告の10分の1の値を求めている。まだ世界を説得出来ないので、ICRPはこの値の10倍を採用している.

4. 1年1ミリシーベルト

ICRPの国際勧告の中心をなす値で、「我慢できる限度」ということで定められている。例えば、交通事故は1年で約5000人が死亡するが、だからと言って外出を控えるということはしない。つまり、この社会は危険性がある程度あることを承知で行動をすることから決まっている。

1年1ミリシーベルトを被曝すると、1億人で5000人のガン+遺伝性異常が発生すると考えられている.これが世界の専門家のコンセンサスである。

もちろん極めて膨大なデータと専門家の議論に基づいているので、今更1年1ミリの根拠を説明してくれといっても、それは無理である。普通の人が勉強して、この1年1ミリを理解するためには3年ぐらいはかかる。

ところで、放射線の規制については、ICRPの勧告で、国際的にどの国も同じ数値を使っている
その理由は、

1). 海外旅行したときに、どこかの国に行くと被曝をしてしまうのは危険であること、
2). 国際的に輸出入をするためには、製品の安全性を保つこと
3) 海外に転勤命令が出た時に、相手の国と自分の国の基準が同じでなければならないこと

等から、放射線の基準値は国際的に決めてから、国内法を検討する手順になっている。

今、福島で「100ミリまで大丈夫」と言っている学者などは、ICRPの委員で決定に参加している.また、ICRPの勧告に基づいて国内法を決める時には、今、テレビに出たり、新聞でコメントしているほとんどの専門家が参加している.

だから、「人がガンになるのは3分の1・・・」とか、「核実験の時には・・・」などという新聞記事を書いた記者は誰から聞いたのか、その人を特定する必要がある。

5. 1年5ミリぐらい(おおよそ)

日本では、1年に1ミリシーベルトを守るために、多くの法律ができているが、その中心となるものが「管理区域」という概念である。

「管理区域」というのは、世の中の役に立つために放射性物質やレントゲンを使わなければならないので、そのような場所を限定して安全を確保しているからだ。

だから、管理区域にずっと生活していると1年に5ミリシーベルとぐらいの被曝を受けることになるが、人間はずっと管理区域にいることがないので、少し高めの値が設定されている。

私たちが病院に行くと、レントゲン室に放射線のマークが貼ってあるが、それが管理区域である。現在の福島の多くの場所が管理区域以上の放射線の強さであるので、早く表示をしなければならない

6. 1年20ミリシーベルト

職業的に放射線を浴びる人の基準である。職業的に被曝ということは、

第1に、成人男性であること、
第2に、自分の意思で職業に就いているので、放射線で被曝するのが嫌だったらその職業やめればいいからであること、
第3に、被曝量を測定すること、
第4に、白血球の減少(白血病ではない)等の健康診断を定期的に受けること、

の条件がついている。
子供はもちろん職業的に放射線を浴びるところにいることはできないし、また妊娠している女性については職業的であっても特例が設けられている。

現実に「20ミリ制限で働いている人」の平均的な被曝量は1年に0.7ミリシーベルトである

従って、今のところ日本では集団として見た場合、「平均的に1年1ミリシーベルト以上の環境に曝されている人はいない」ということで、これは注意を要する.

子供は3倍ぐらい感度が高いので、この職業人の考え方を取れば、

1) 子供と妊婦、近いうちに妊娠希望の女性は7ミリで、
2) 被曝量を測定し、健康診断を受ける、
3) 被曝量が多くなったら、そこから移動する、

という考え方もある。

なお、ICRPが事故時には「1ミリから20ミリ」というのは、「20ミリ被曝しても良い」というのではなく、「事故時でも無限に被曝してはいけない.被曝量は20ミリに制限し、早くその状態を離脱すること」ということである。

7. 1年50ミリシーベルト

職業的な理由で、どうしても大量の被曝を避けることができない場合、1年に50ミリシーベルトまで認められている。しかし、5年間で100ミリシーベルト(1年平均では20ミリシーベルト)という制限があるので、1年に50ミリシーベルト被曝した人は、その他の4年間で調整して、5年間の合計で100ミリシーベルトにしなければならない。

以上のことから判るように、中心的な基準となっている「1年に1ミリシーベルト」というのは、それほど低い値ではありません。

また、原則的には、1年に「大人で、被曝量を測定し健康診断があり、自主的(職業的)に被曝」の場合でも、20ミリシーベルト以上の被曝は認められていません。

軍隊とか非常時は全く別の考え方なので一緒に議論することは出来ません。

また医療用に受ける放射線量については全く別の考え方をとっています。つまり、お医者さんは患者さんの足が腐ってくると、足の切断手術をすることができますが、だからと言って、日常的に一般人が人の足を切断してい良いということではありません。

傷害罪になります。

医療では、医師が患者さんの全体を考えて被曝による損害があってもそれ以上の必要性があれば、患者に被曝させることがあります。これは足の切断手術と同じことです。

その点で官房長官や保安院が、一般の人の被ばく量と CT スキャン等の医療用の被曝を比較したことは誠に不見識でした。

政府がこんなことをしてはいけません。

・・・・・・・・・

ところで、野菜や魚などの基準は、日本はそれほど甘いわけではありません。おおよそ国際的な基準に沿っているということが言えます。

しかし、原発事故が起こってから水の基準だけは、もともと甘かったのに、さらに30倍に引き上げられました。

もともと、WHO の基準が1リットル1ベクレル(ヨウ素)ですが、日本の基準は10倍でした。

それをさらに原発事故で300倍まで上げたので、これははっきりと根拠を説明しておかなければなりません。

ちなみにヨーロッパは厳しい基準で、ドイツは0.5ベクレルアメリカは0.1ベクレルです。

従ってこのブログでは、一般の食材については規制値をもとに考えますが、水道については、国際基準との関係も見ながら計算を進めていきたいと思っています。

つまり、私は「売り上げ確保、利権、風評、パニック、パフォーマンス」等とは関係なく、子供の健康だけを考えて計算を進めていくつもりです。

(平成23年5月1日 午前10時 執筆)

京都大学小出裕章氏4月29日講演:「この事故を防げなかった責任は、私にもあります。ごめんなさい」

JanJanBlogより:

 その日(4月29日)、明治大学アカデミーホール(東京)では『終焉に向かう原子力』第11回浜岡原発現地報告会&講演が行なわれた。開場前からホール 入り口は、およそ数百人の人であふれた。京都大学原子炉研究所の小出裕章氏も、1200名以上の聴衆を前に、〈悲惨を極める原子力発電所事故〉について 語った。

  ◇◆◇ 小出氏の苦悩 ◇◆◇

 講演後に、司会者の男性は小出氏のことをこう評した。

 「ふつうの人間が、現在のような原発推進体制の中に入ったら、どういう行動を採るか。それは、組織の中に迎合していくか、あるいは、そういう体制 に嫌気がさして縁を切るかだが、そんな中で研究所に残って原発の危険性を訴え続けて来た人、何十年も真実を伝えて来てくれた人、それが小出さんだ」

 司会者からそう評された小出裕章氏だが、講演冒頭、まず小出氏の口から発せられたのは予想外の謝罪の言葉だった。

 ――今回のような原発事故は、いつか起きると思っていました。原発は、とてつもなく巨大な危険を抱えたものです。それゆえ原発 は、都会では建設することはできず、地方に建設して電気を都会に送っています。何とか、原発を廃止したいと思って活動して来ましたが、事故を防止すること ができませんでした。いま、とてつもない悲劇が進行しています。私は、言葉では言い尽くせない無念さをもって過ごしています。この事故を防げなかった責任 は、私にもあります。ごめんなさい。

JanJanBlogのリンクで、残りの記事をご覧ください。こちらです。


講演ビデオをどこかで見つけたら、またリンクします。

それでは一体具体的に何をどうしたら事故を収束できるのか、具体的に何をすれば炉心の状態をはっきりつかめるのか、どうすれば冷温停止にもっていけるのか。これは、政治の問題でも社会の問題でもなく、科学、技術、エンジニアリングの問題です。それこそ小出さんを含めた(石川さんも含めた)世界の原子力専門の学者、エンジニア、技術者が知恵を出し合って、ブレーンストーミングして行動計画を出していくべきことでしょう、と思います。

事故以来50日以上の長い間やってきたように、政府官邸、東電、保安院、原子力安全委員会が適当に場当たり的に決められるような代物ではありません。

世界に冠たる技術大国の日本ではありませんか。(だった、のかな?)それが、この50日間、もともと高技術を誇る会社とは言いがたい東電と政府の役所の、まるで素人じみた対策(トレーサーに入浴剤を使う、「できちゃった」水棺方式など)だけが、政府、保安院、原子力安全委員会の常に後手に回った現状認識と施策だけが、全世界に報道されました。

ここはそろそろ名誉回復に、原発賛成、反対に関係なく、学者、技術者、エンジニアの皆さんが立ち上がってください。東大の小佐古敏荘氏、日本原子力技術協会の石川迪夫氏など、本来政府側、原子力・原発推進側の方々まで、福島第1原発事故の政府の対応、実態把握に異を大いに唱えだしているようです。

日本原子力技術協会最高顧問・石川迪夫:「福島第1原発の炉心は溶融している」

これは、結構見ものです。

4月29日テレビ朝日の「朝まで生テレビ」に出演した日本原子力技術協会最高顧問、石川迪夫さんの発言がTwitterなどに出ています。私がこれを見たのはこのサイトですが、そこに出ている石川氏の発言を見て、これは元のビデオを見たいものだと探したところ、Youtubeに出ていました。

私が特に興味を持ったのは、福島第1原発の現状の認識の部分。石川氏は、いわゆる原発推進派ということで、長いキャリアをお持ちの方、ということだそうですが、ホストの田原総一朗さんが途中で「石川先生、先生は原発推進派ということなんで、福島原発はうまく行っている、というお話をされるのかと思ったんですが...」と言い出すほど、厳しい状況判断で、政府、東電、保安院に対しても何をやっているんだか、といった口吻。田原さんの問いかけには、「うそを言ってもいいんだったら...」

下のビデオは全11本あるうちの第2番目、福島原発の炉心溶融などについて述べている部分です。あえて要点を書き出すと(英語ブログに出したときのメモからのまとめですので、石川氏の言葉どおりではありません。私のまとめではなくてちゃんと全部見たい、という方は、ポストの最後にEmbedしたビデオに直行してください。):

東電の工程表について:

「9ヶ月目までに炉心を冷やして固化し、放射能を出ないようにする、というのが目的なんだろうと思うが、水棺だの窒素だの、横っちょのことをやっている。窒素、あれは危ない。

「炉心を冷やさなければどう仕様も無い。何とかして冷やさなければならない」

炉心の状態について:

「炉心はほとんど溶融していると思う。すでに圧力容器から出ているかもしれない。30パーセントだの50パーセントだの行っているが、私はみんなメルトダウンしたと思う。燃料が溶融するときは真ん中から下が溶ける。

「溶融した炉心の中の温度は2千度から2千数百度だと思う。水が当たる表面が鋳物のようなかさができている。崩壊熱は2千から3千キロワット。かさの表面の割れ目から放射性物質(主に希ガスとヨウ素)が出ている。

「現在はもうほとんどの揮発性のガスは原子炉から出ていると思う。

「ただ、中の水はウラニウム、プルトニウム、セシウム、コバルトなどが溶け出していて、非常に高濃度になっている。今まで見たこともないくらい高濃度。

「昔の同僚が連絡してきて、計算をしたか、という。してない、といったら、計算をしてくれた。崩壊熱が2千キロワットだとして、コバルト60という物質がある。放射性の高い、1メートルから1メートル50の遮蔽が必要。1000キューリーで人が死ぬ。同僚の計算では、コバルト60等価で1000万キューリー原子炉内にある。(ええっ、という田原さんの声。)もし炉心から10%のコバルト60が水に溶け出したら、100万キューリー。」

(ええと、これをベクレル換算すると、とんでもない数字になるのですが。1キューリーは37ギガベクレル、1000万キューリーは37万テラベクレル、100万キューリーは3万7千テラベクレル。コバルト60だけでレベル7になってしまう!)

「東電は何とかこれを強制循環で廻したい。だが、循環システムができても、配管とか機器とか、放射線をシールドするのは大変なこと。困難な作業になるだろうが、やらざるを得ない。

「なんとしてでも、炉心の状態を把握する必要がある。(炉心が溶融しているというのは)私の想像ですが、一日待てばそれだけまた汚染水が高濃度になる。これは戦争。原子炉に橋頭堡を築く必要がある。タービン建屋だの、汚染水の移送だの、横っちょの問題をやっている場合じゃない。

(石川氏の説明に、原発反対派の環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏が大きく肯いているのが見えます。)

福島第1原発は「戦争」:

「たとえばがれきの取り除き作業。がれきを集めてドラム缶に入れたりしている。まるで通常時のように。これは戦争。非常時なのである。どこかに穴を掘って瓦礫を埋めて土をかぶせる、あとできれいにすればいい。とにかく、非常時のやり方でサイトを整備する。原子炉の床まで橋頭堡を築く。

「政府、東電、保安院の指揮系統がはっきりしていない」

(ここで、厚生省の副大臣が口を挟む。石川氏、何をほざいているんだかこのガキ、といいそうな表情で副大臣をじっと見ている。視線が合ってしまうとにっこり笑い、副大臣のいうことはまったく無視して、最後の一言。)

「タービン建屋からの対策など、ポンチ絵。まずは正体を見てみろ。原子炉が本当に溶融しているのか」

このあと、「石川さん、原発推進派として、福島はうまく行っているという話じゃないんですか」「いや今うそ言っていいなら」というやり取りの後、飯田哲也さんに話が振られます。飯田さんは、日露戦争の日本海海戦の例を挙げて、石川さんの原子炉の評価、福島原発の状況の評価に賛成します。東郷平八郎がいま必要なんだ、とも。

そのあと話を振られたのは中日新聞の長谷川さん。

「いままで30パーセントだの50パーセントだのという前提でわれわれはやってきた。ところが石川さんがおっしゃるには全部溶融」

ここであわてた先の副大臣が急いで矛先を収めようと、「どうなっているかは私もわからない、石川先生もわからない、誰もわからないのだから、全国放送であまり確定的にものを言わないようにしてくれ」と言いかけます。なんで政治家がここに挟まっているのか、理解しがたいですが、これに対して中日新聞の長谷川さんの言は痛快。

「わからないことをあたかもわかっているように、そういう表が毎日毎日報道されている、ということが問題なんです」

その辺でビデオは終わっています。全部見るには、Youtubeのこのチャンネルに行ってください。