Sunday, January 30, 2011

エジプト革命続報: 市民パワー

エジプト政府が故意に警察機動隊を市街地から退去させ、政府の指示を受けた『暴徒』を放って略奪行為を行わせ、市民を恐怖に陥れ、市民側から政府の『庇護』を要求させる方向に持っていく...

というお決まりのパターンが失敗したようです。

恐怖に陥るどころか、エジプト市民は自衛団を組織して『暴徒』を追い払い、自分達の町を守っています。しかも、誰から指示されることなしに。(リンクの写真をご覧ください。)

日本でどのように報道されているのか詳しくは知りませんが、オンラインの日本の新聞を読む限り、デモが暴徒化して云々、という、いわゆるアメリカのMSM(Mainstream Media)と同じことを繰り返しているだけのようですね。

ロイター、ブルーンバーグ、ニューヨークタイムズなどには絶対出てこないニュースをまとめるとこんな感じです:

アレキサンドリアで銀行を襲撃した『暴徒』は市民によって逮捕され、よくよく持ち物を調べて見たらなんと警察の身分証明書が出てきた。

カイロ市内で商店などを打ち壊していた『暴徒』が持っていたのは、政府支給の銃など。『暴徒』が襲撃しているそのすぐそばに、警察機動隊の車が目撃されている。

国立博物館に押し入って貴重な文物を破壊しようとした『暴徒』は、博物館を取り囲んだ市民によって博物館から出るに出られなくなり、結局陸軍が到着して逮捕された。(写真参照) 



市民は自分たちの家族、住んでいる町を守るために、自主的に自衛団を組織している。自衛団はイスラム教徒、クリスチャン混合。(反政府デモはイスラム過激派の仕業、というナレーションも失敗ですね。)

デモの参加者は若者だけではない。あらゆる年齢(子供から年配まで)の男女が参加している。ましてやイスラム過激派などではない。

市民をまとめているリーダーは、いない

どう見ても陸軍は市民側に付いている。警察は従来通りムバラク政権側で、市民を叩きのめしている。

以前よりは物騒になったとはいえ、平和な日本からは想像しがたいのは、『市民を守る』警察が徹底的に政府側に付いていることでしょう。警察にとっての守るべき『市民』は、政治家と政治家とつるんだ金持ちだけを指しているようです。

日本を含めたいわゆる西側の政府が恐れるのは、市民をまとめているリーダーがいない、ということに尽きるのではと私は思っています。政府の強権なしでも社会が十分に機能する可能性ほど、自身の存続を脅かすものはないからです

そこで昨日あたりからうるさくなってきたニュースは、エルバラデイ氏を『反体制派』のリーダーに仕立て上げて、ムバラク大統領の後釜にすえよう、という西側の動きです。

英語のブログには常設のリンクを出してありますが、真のエジプトの様子を知りたいのならメジャーなニュースソース以外のところに行きましょう。ロイターのようなメジャーなところでも、ブログ、Twitterのセクションはメーンニュースにまったく出てこないニュースを報道しています。

Al Jazeera Live Feed

Al Jazeera Live Blog

Reuters Live Update

Christian Science Monitor (Dan Murphy)

Mondoweiss

ついでながら、英語を勉強する価値はこういうところにあるでしょう。マスメディアの上っ面には出てこない、真のニュースを探して理解する手段として。

Thursday, January 27, 2011

エジプト政府、インターネットをシャットダウン、対決姿勢を一層強化

エジプトがどう見ても革命前夜の様相を呈してきました。

英語版のブログにいくつか記事を出しておきましたが、チュニジアの独裁政権崩壊に勇気付けられたエジプト市民が、30年に亘るムバラク大統領独裁に抗議し、大規模なデモンストレーションにエスカレートしています。ムバラク大統領の後継者と目されていた大統領の息子はすでに家族と共にイギリスに亡命。明日の金曜日に予定されているデモを何とか押さえ込もうとして、ムバラク政府は何とインターネットをシャットダウンしました。

現在、エジプトへのコネクションは不可能、電話線も不通との報道があります。エジプト内でのインターネットはほぼ完全にダウン、テキストメッセージも不可能。何の情報もエジプトから出ないように、何の情報も入ってこないように、という狙いですが、今のところもくろみは成功している模様。Twitter、Facebookなどのソーシャルメディアもブロックされ、携帯電話も通じない、という情報が入っています。

反体制派でも穏健派のエルバラダイ氏が急遽帰国してデモに加わるそうですが、氏も、イスラム過激派(といわれる)Muslim Brotherhoodも、出遅れた感あり。デモの始まりはどうみても組織化されたものではなく、チュニジアに勇気付けられた市民たちがそこここに立ち上がった、ということのようです。Muslim Brotherhoodは今までそれを静観していましたが、さてそれがどう今後に影響するか。

アメリカのメディアは緘口令でも敷かれたように出来るだけエジプトの報道は避けているようです。いつまで避けられるかは疑問ですが。報道していないわけではないのですが、記事は埋まっていますね。写真はめったに出ていないし。

インターネットをシャットダウンする権限が欲しくてたまらないオバマ大統領は、エジプトの状況を興味深く観察していることでしょう。(それとも週末のゴルフに忙しくて、観察なんていう悠長なことをやってる暇はないかな。)

Tuesday, January 4, 2011

OT: 藤山一郎 丘を越えて

島田芳文:作詞、古賀政男:作曲。 昭和六年。

なんだか元気が出る歌です。昔、なつかしの歌謡ショーなど小馬鹿にしながら聞き流していたものですが、そんなショーで流れていた曲が実にいい歌であることに遅ればせながら気づいた今日この頃。今日気がついたのはこの歌です。(Youtubeのラジオ体操の歌からたどり着きました。ラジオ体操の歌もいい歌ですねえ。)



丘を越えて行こうよ
真澄の空は朗らかに晴れて楽しい心
鳴るは胸の血潮よ讃えよ我が春を
いざ行けはるか希望の丘を越えて

丘を越えて行こうよ
小春の空は麗らかに澄みて嬉しい心
湧くは胸の泉よ讃えよ我が春を
いざ聞け遠く希望の鐘は鳴るよ

Saturday, January 1, 2011

新年明けましておめでとうございます

日本の読者の皆様、また、日本語で情報をアクセスなさる日本国外の皆様、明けましておめでとうございます。

昨年の尖閣諸島のポストを最後に日本語版の更新がおろそかになってしまい、誠に申し訳も無い次第です。秋から年末まで、あっという間に過ぎてしまった、という感があります。英語版で書きましたが、2010年の経済、金融市場を一言で言い表すような出来事(英語で言う、”Defining Moment”というやつでしょう)は、私にとっては五月初旬の「フラッシュ・クラッシュ」でした。ダウ工業平均が何の理由も何のサポートも無くただひたすら1000ポイント近く降下する様は、ロープの切れたエレベータが底なしの、真っ暗なシャフトを落っこちていくような、ただただひたすら空恐ろしい、二度と経験したくないトレーディング・デイでした。

以来、『幽霊の正体見たり...』といった感じで、オバマ政府やバーナンキ連邦準備銀行が何をほざいても、何をやろうとも、「だからどうした?」とまず思ってしまいます。経済、金融市場の実体はほとんど何も無いのですから。金融市場はアルゴ・ボットが跳梁してナスダックのハイ・ベータ・ストック(アップル、グーグル、ネットフリックスなど)をお互いの間で超高速で取引するところ(この超高速取引がコンピュータのトラブルで0.01秒滞ると、5月6日のようなフラッシュ・クラッシュになるのです)、米国経済は政府が金を使いまくってそれが「成長」とされるところ、またその成長を判断評価する基準はこれまた政府が勝手に数字を作り出して自身に都合のいいように設定した基準(政府発表の失業率がもっとも悪名高いものです)。『株式市場の上昇は経済の上昇と同じである』と、バーナンキ総裁はいみじくも発言しています。

去年の12月に入った途端、経済・金融メディアの論調が突然変わりました(去年のうちで何度目か、勘定してませんが)。その時点まで恒常的に悲観的な観測を出していた経済学者(たとえばゴールドマン・サックスのJan Hatzius)までが180度転換して、アメリカ経済は2011年に予想を大きく上回る成長を遂げる、と言い出したのです。経済の基本的なところで何が変わったわけでもありません。変わったのは論調だけ。言うだけなら何でも言えますねえ。特に、経済、金融ともに実体はもうほとんど何も残っていないんですから。何だってありです。何の実体も実能力もない(やる気もない)大統領(またもハワイの年末バケーションで国民の税金を1億円以上浪費しているようです)が黒人であるというだけの理由で大きな顔をしてのさばっている国にまったくふさわしい状況でしょう。

というわけで、年頭から芳しくないポストですが、今年も日本、あるいは日本語環境の中だけではアクセスしにくい、また理解しにくい経済、金融、政治のトピックを、出来るだけカバーしてお届けしたいと思っています。