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Friday, December 9, 2011

放射能汚染を避けて沖縄に脱出した家族をオーストラリアのThe Age紙がインタビュー

「あの日の放射線量がどれだけ高かったかを知ったとき、そしてうちの子が粒子を吸い込んで外部被曝だけでなく内部被曝もしたかもしれないと気づいたとき、なぜ誰も危ないと言ってくれなかったのかとものすごく腹が立ちました。事故そのものよりも、そちらのほうがよほど私にはショックでした。」

オーストラリアのThe Age紙に、福島第1原発事故からの放射能を避けて東京から沖縄に脱出した人たちにインタビューした記事が掲載されました。

以下、東京茶とら猫さんのご好意の翻訳をお届けします。記事の中でインタビューされている竹野内真理さんは翻訳家で、このブログでもご紹介した肥田舜太郎さんとご一緒に、『人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために』(ラルフ・グロイブ, アーネスト・スターングラス著)を翻訳なさっています。

もとの英文記事はこちら。

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沖縄への脱出

オーストラリア The Age
ジェーン・バラクラフ
2011年12月6日


放射線量の高いホットスポットが東京にも現れ、国中が放射能汚染にあえぐなか、一部の日本人は福島からの放射性降下物を避けるために沖縄に逃れている。だがすでに手遅れなのだろうか。

日本で史上最大の地震が発生して巨大な津波が福島の海岸を繰り返し襲い、東京電力福島第一原子力発電所が放射能まみれの残骸と成り果てたその3日後、竹野内真理は赤ん坊を背負って東京の東部を必死に自転車で走っていた。

竹野内は東京生まれの翻訳家。わずかな時間でぎりぎりまで用事を片付けたあと、1歳の息子を連れて沖縄に逃げた。沖縄は日本の最南端の県であり、事故の起きた福島からは2000km離れている。空港に向かう途中、予約を入れておいた歯科医の治療に息子を連れて駆け込んだ。

竹野内も、ほかの数百万人の人々も、東京の上空に放射能の雲がかかっていることを知らなかった。3基の原子炉ではすでに全面的なメルトダウンが起きていた。ウランの詰まった燃料棒は過熱して融け、それが3月12日と14日に爆発を引き起
こした。

「かすかに風の吹く晴れた日でした。あの子を背負って自転車を漕いでいるときに、顔に当たった風のことは一生忘れないでしょう」と竹野内は振り返る。

竹野内と息子のジョーが本土を離れる前に外にいた3時間は、放射能の雲が最も濃くなった時間帯だった。竹野内が自転車で走っていたのは東京の世田谷区。その世田谷区で東京都が採集した空気の分析結果によると、ジョーが浴びた放射線量は平常時の背景放射線量の145倍に達する。

京都大学の測定によれば、放出の続く原発から20~30km圏で住民が自主的に避難したホットスポットと、東京の数値は同程度だった。

「できるものなら時間を巻き戻したい」と竹野内は語る。「本当は朝の便で発つ予定だったのに、電話を修理したり歯の治療を終えたりといった用事を済ませたかったから午後3時の便に変更したんです。今思えばそんなことは沖縄でもできたのに。でも、あのときは東京は安全な距離だと聞かされていたから」

当時、東電は大規模な炉心溶融で放射能が漏れている可能性を過小評価していた。政府のスポークスマンのひとりはのちに、パニックを防ぐために当初は事故の規模を過小に発表していたことを認めた。政府が正式に3基のメルトダウンを認めるのはようやく6月になってからである。

しかし、爆発後に警戒感がなかったために、竹野内とジョーは半日余計に東京に留まり、放射性降下物を避けることができなかった。その降下物は、風雨や雪の残酷な気まぐれで少しずつまき散らされ、家に、畑に、野原に降り積もり、やがて竹野内の家の近くの校庭も汚した。

足立区の小学校では、自治体が定める安全基準値の16倍の放射線量が配水管の泥から検出された。これは、3月以降次々に現れたホットスポットのほんの一例にすぎない。

首都圏の南では、横浜の住民がストロンチウム90(骨がんとの関連が指摘される物質)を含む土砂を見つけた。その濃度は、福島で確認されている最高レベルの2倍。冷戦時代の核実験の名残りより10倍以上高い。

だが、放射能不安の一番大きな原因物質はセシウム137である。セシウム137は環境中に何十年も留まり、一定量以上の被曝をすると発がんリスクが高まるおそれがある。福島原発からのセシウム137の総放出量は、1986年のチェルノブイリ原
発事故時の約42%であると、最近発表されたノルウェーの研究は指摘する。

包括的核実験禁止条約に基づく世界各地のモニタリングステーションからデータを集めたこの研究によると、セシウム137の放出量は日本政府の公式発表の2倍以上になっている。日本政府発表の数値は、諸外国や海に流れた放射性物質が考慮されていなかったからである。

公式発表の数字にはここ数ヶ月間の放出量も含まれていない。破壊された原発はいまだに安定しておらず、融けた燃料が地面を侵食しないように懸命の作業が続けられている。

爆発当初の放射性降下物は、その約2割が最終的に地面に落ちたと見られている。田舎のみならず、人口の密集した都市の地面にも。

柏市では、ある公園の近くで1日当たりの地面付近の空間線量が非常に高く、個人の年間平均自然被曝量の2分の1以上の値になっている。これは、3月下旬にセシウムを含む大雨が何度か降ったためとされている。

竹野内はこうしたホットスポット問題が表面化する前に避難したものの、やはり自分の子供の健康を心配している。取り返しのつかないダメージを負ったのではないかと気がかりでならないのだ。

「大人に対してはもちろん、低線量被曝が幼い子供にどんな影響を及ぼすかは、世界中のどんな医者にもわからないんです。なのにどうして政府は、東京では健康リスクはない、と言えるのでしょう」と竹野内は言う。

3月11日の前日、竹野内は偶然にも「ペトカウ効果」に関する本の翻訳の仕上げをしていた。ペトカウ効果とは、低レベル放射能でも不治の病を引き起こす可能性があるとする仮説で、賛否両論ある。

低線量放射線の影響については科学者の間でも意見が一致していない。しかし、チェルノブイリの被害住民のあいだでは白血病、甲状腺がん、ダウン症、先天性欠損症が多発した。この唯一福島と同等以上の原子力事故を起こしたチェルノブイリで明らかになったこうしたリスクは、ある程度は日本にも当てはまると考えられる。

「あの日の放射線量がどれだけ高かったかを知ったとき、そしてうちの子が粒子を吸い込んで外部被曝だけでなく内部被曝もしたかもしれないと気づいたとき、なぜ誰も危ないと言ってくれなかったのかとものすごく腹が立ちました。事故そのものよりも、そちらのほうがよほど私にはショックでした。事故は前から予測されていたことでしたから」

地震が引き金となって日本の原発が停止するという予測を竹野内が知ったのは、10年前のこと。アメリカの原子力安全問題の専門家が開いたシンポジウムでのことだった。以来、原子力事故が起きたら沖縄に逃げて永住しようと心に決めていた。

東北地方を自然災害と原子力災害が襲ってから数日のうちに、竹野内は東京の住まいを引き払い、那覇のワンルームマンションに移り住んだ。那覇は、沖縄県民150万人の半数以上が集中する都市である。

沖縄はかつて貿易で栄えた王国であり、独自の文化と言語をもつ。東シナ海に位置し、台湾から九州にかけて連なる亜熱帯の島々で構成され、夏には日本のみならず台湾や中国からも観光客が訪れる人気の土地である。

竹野内が新たに腰を落ち着けたのは、那覇中心部にある久茂地地区。久茂地はバックパッカーや地元の活動家が集まる場所だ。地区の目抜き通りでは、今や日常茶飯事となった米軍基地反対デモの周囲を警官が穏やかにパトロールする。そしてこの地には新たなスローガンが生まれた。「脱原発」である。

最近行なわれた脱原発デモには、おもに本土から避難してきた人々200人以上が参加した。これはごく一部にすぎず、全体では今年3月から8月にかけて17,521人が本土から沖縄に移住している。前年の同時期と比べると12.3%の増加だ。

沖縄県は、日本で原発のない地域の中でもっとも大きい。

沖縄最大の島である沖縄本島には美しい浜辺が連なり、スローフードの文化が根いて、音楽や芸術が盛んな場所である。毎年、数千人の移住者を引き付けている。ところがつい最近になって、福島原発の事故以前には沖縄への移住など考えてもみなかった親たちが放射能を心配して沖縄に移り住むようになった。

竹野内が住む那覇の低家賃マンションには、本土の各地から避難してきた人たちがほかに30人暮らしている。ほとんどが幼い子供を連れた母親で、誰もが同じ不安を抱えている。彼女たちの話題は奇妙な発疹のこと、高熱のこと、鼻血のこと。そして政府と原子力産業の「絶対に許せない」怠慢のことだ。

3月11日の津波で仙台の自宅を失ったタナカ・ユリコは、福島県北西部との県境に近い仮設住宅に住んでいたが、そこを出る決心をする。子供にとって安全な場所だとは思えなかったからだ。しかも、4歳の息子の発疹がなかなか治らないのを心配していた。

「8月に発疹が出てから治らず、腕や手にまで跡が残っています。医者はステロイドの軟膏をくれましたが、かえって悪くなっただけでした」とタナカは語る。「同じ地域に住んでいた友人の子供にも、今年の中頃から似たような発疹が出ました」

それが福島からの放射性降下物のせいかどうかは証明が難しいものの、タナカは大事をとって沖縄に移住することを決めた。

クボタ・ミナホも沖縄本島に逃げてきたひとりだ。事故のニュースを聞いた瞬間、自分の人生が変わったと語る。クボタは2児の母。以前は福島第一原発の存在すら知らなかった。

クボタは原発から190km南の茨城県水戸市に住んでいた。7歳になる息子のダイトが外で遊んでいるとき、ラジオをつけると原発で一連の爆発が起きたことを知る。

「とにかく泣きました」とクボタは振り返る。「それからダイトの首に発疹ができたんです」

4週間後、すでに日本を離れることを考え始めていた頃、まだ赤ん坊の下の息子が初めて鼻血を出した。「日本のできるだけ遠いところに行こうと決めました。でも、夫を説得するのに2ヶ月かかってしまった。夫は『自分たちにはどうしようもないことなんだから、そんなに心配しても仕方がない』って言うんです」

近所の人や友人の多くが福島の話題を「タブー」にしているのと同じように、クボタの夫も放射能の話をするのをいやがった。

過度のセシウムが検出されて牛乳が回収される騒ぎがあったあと、クボタは学校に行って息子に牛乳を飲ませないでくれと頼んだ。学校はその要請を無視した。

「結局、息子がアレルギーだという作り話をしたら、ようやく牛乳を飲ませるのをやめてくれました」

クボタは避難する以外に「選択肢がなかった」と話す。「福島の事故のせいで病気になった人の統計に、いつか自分の子供が仲間入りするのかどうか。それをただ黙って見ているのはごめんです」

一方、いくつかのNGOは、一部の人たちの体調不良と福島の放射性降下物との関連を指摘している。

3月に大量のヨウ素131に被曝して避難していない福島の子供130人を検査したところ、10人に甲状腺異常が見つかった。

6月に、原発から60kmの地域で実施した戸別訪問調査からは、大勢の住民が長引く鼻血や下痢に悩まされているのがわかった。同じ症状は東京でも確認されている。

自身も広島の被爆者であり、チェルノブイリや広島の被害者向けに非営利の病院を運営している肥田舜太郎博士は、今年の中頃に単発のクリニックを開いて50人の患者を診察した。

「青あざ、鼻血、高熱、下痢、骨の痛み、極度の疲労といった症状が見られました」と肥田は語る。

こうした症状は、広島の原爆による放射性降下物に被曝した人々にも程度の差はあれ現れていた。広島の原爆にはセシウムやヨウ素はもちろんだが、高濃度のストロンチウム90も含まれていた。広島の被爆者に見られた長期的な影響としては、悪性腫瘍、脊椎の不具合、先天性欠損症、白血病、乳がん、甲状腺機能障害、放射線白内障、肝疾患、心疾患などがある。

放射線による複数の症状がクリニックで確認されたのを受け、肥田は東京の放射線を心配している。世界保健機関は、日本国民の健康がただちに脅かされることないと言うが、肥田は沖縄に逃げた人たちを決して被害妄想とは呼べないと考えている。

「これは個人が選ぶ問題です。何に優先順位を置き、健康リスクをどう認識するかは、人それぞれですから。ですが、放射性降下物による色々な影響を見てきて、すぐに現れる症状もあれば遅れて現れる症状もあるのを知っている者として、私はどちらかというと用心に越したことはないという立場です」

竹野内は、広島の被爆者に関する肥田の本で翻訳を手伝ったことがある。息子が、沖縄に着いてから2ヶ月で8回目の38度を超す熱を出したとき、彼女は肥田に電話をした。

「先生はこうおっしゃいました。すでに本土を離れているし、3月15日に放射能を浴びた時間はもう元に戻せないのだから、今はとにかくお子さんを愛し続けてあげて、沖縄で普通の暮らしを送らせてやるようにすることが一番です、と」

(ジェーン・バラクラフは、日本を拠点にするオーストラリアのフリー・ジャーナリスト。)


(写真キャプション、上から)

沖縄・波の上ビーチに集う避難者たち

竹野内真理と息子のジョー

コンサートで避難者のために歌うシンガーソングライターのUA

避難した子供たちが核危機に関するドキュメンタリーに出演

福島第一原子力発電所

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Saturday, October 22, 2011

オクスフォード大学ウェード・アリソン名誉教授「年間被曝限度1.2シーベルトでも安全」(外国特派員協会講演資料日本語私訳)

ミリじゃないですよ、みなさん。1.2シーベルト(1200ミリシーベルト、1200000マイクロシーベルト)の被曝でもまったく大丈夫、とおっしゃるのは、オクスフォード大学名誉教授(粒子物理学専門)のウェード・アリソン博士。

先日(10月3日)東京の日本外国特派員協会での教授の講演資料が、米国商工会議所のサイトに上がっています。ざっと翻訳してみましたのでご参考になさってください。厚生労働省放射線審議会の年間人工被曝許容量20ミリシーベルトに引き上げ勧告、なんて目じゃありません。アリソン教授の提案で行くと、6日で20ミリシーベルトの被曝をしてもまったくOK、と言うことになります。

教授は福島でチェルノブイリの教訓が生かされていない、とし、その例として、次のようにおっしゃっています。(スライド12ページ):

『避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。』

しかしなんといっても驚くのは17ページ目。博士が提案するのは、「比較的安全な最大レベル」の被曝量の設定。その数字は、

1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV

これに続けて、年間で現行の1ミリシーベルトの1000倍以上(1200倍ですね)の緩和を提案。月100ミリシーベルトx12で1200ミリシーベルト、つまり1.2シーベルトとなります。生涯で5シーベルト、とおっしゃっていますから、この1.2ミリシーベルト年間被曝はおそらく緊急の数字だとはお考えなのだと思います。

また、放射線審議会が例に出した「ノルウェーのトナカイの肉」を教授も例に出して、食品基準を大幅に引き上げることを勧めています。教授の講演(10月3日)は、放射線審議会が被曝許容量の見直しを言い出した日に先立つことわずか3日。

教授の主張は、ガンの治療などで使われる大量の放射線をベースにしているようです。あれだけ浴びても大丈夫なのだから、と言うことらしいですが、茶とらさんも私も、読んでいて脳細胞が機能停止したため間違いがあるかもしれませんので、コメント欄でご指摘ください。

元の英語のプレゼン資料はこちら。http://www.radiationandreason.com/uploads/FCCJ_ALLISON_100311_FINAL.pdf

以下、プレゼン資料全ページ日本語私訳。(H/T東京茶とら猫)

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p.1
放射能と理性
福島とその後

2011年10月3日
日本外国特派員協会(東京)にて
講演者:
オックスフォード大学 ウェード・アリソン教授
アイダホ大学 徳弘明教授


p.2
ウェード・アリソン
英国オックスフォード大学、物理学名誉教授
核物理学者および医学物理学者(原子力産業との関係はなし)
http://en.wikipedia.org/wiki/Wade_Allison
ウェブサイト: http://www.radiationandreason.com
メールアドレス: w.allison@physics.ox.ac.uk


p.3
説明項目

1.低線量から中線量の放射線には害がない。

2.放射能を恐れることが個人にはストレスを、社会には損害をもたらし、そのことが大きな弊害を生む。

3.現行の食品基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。

4.現行の避難基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。

5.達成可能なレベルまで被ばく量を低減するという考え方に基づく国際「安全」基準は、大幅に緩和する必要がある。

6.放射能にまつわる誤解が生じたのは、冷戦時代に世間が騒ぎ立てたことに原因がある。

詳細は右サイト参照:http://www.radiationandreason.com


p.4
放射能への恐怖

根拠:
1.核兵器による大破壊、ホロコーストが起きたあとを恐れる気持ち。この冷戦時代のメッセージはまんまと当時の人々を震え上がらせた。

2.我々は放射線を感じることはできない。だが体の細胞は放射線を感じることができ、そのダメージを修復することもできる。

3.様々な規制によって放射能の危険が叫ばれている。こうした誤解が生じたのはある程度はわれわれ全員に責任がある。


p.5
放射線は生物にとってどれだけ危険なのか? そこがすべての出発点

第一
放射線は生物にどんな影響を及ぼすか。
データと理解

第二
リスク評価。
世間の受容。
安全規制。
労働慣行。
廃棄物。コスト。

最終
テロリスト。
ならず者国家
汚い爆弾(核汚染をひき起こす爆弾)の脅威。
核兵器による脅し


p.6
放射線の影響は量と期間しだい

・例:パラセタモール(解熱鎮痛薬)の場合、量と期間が両方重要(1人が一度に100錠飲んだら致命的だが、数週間かけて定期的に服用していれば頭痛が治る。)
・放射線の場合、量はミリシーベルト(mSv)であり、期間は月当たりのmSv。

医療で使われる放射線量は信頼できる

・今日では、放射性物質を使った画像診断によって大勢の人が利益を受けており、がんの治療に放射線が用いられる場合もある。
・CTスキャンを1回受ければ5-10mSvの外部被ばくをする。
・PETスキャンやSPECTスキャンでは、放射性物質を体内に注入することにより同程度の被ばくをする。
・CT-PETスキャンを1回受けたら全身が15mSvの被ばくをする。
・医療で使われる放射線や放射能は外部被曝、内部被曝とも福島で放出されているものと本質的には同じ種類である。


p.7
誤った食品基準(牛肉に含まれるセシウムの場合)
「牛肉の安全を確保するため、放射性セシウムの暫定基準値を超える牛肉を規制する対策を政府が講じる」2011年7月27日発表

・基準値上限の500Bq/kgの牛肉を1kg食べると0.008mSvの被ばく[12ページ第4項。この数字はチェック済み]
・被ばくが続くのは、セシウムの排出に要する4ヶ月
・放射性セシウムは、PETスキャンで使用される放射性フッ素と同様に体内で均一に拡散する。PETの放射性フッ素の場合、2、3時間で15mSvの被ばくをする。
・したがって、1人が汚染牛肉を4ヶ月で2000kg食べるだけの被ばくをスキャン1回でする。この食品基準値は非合理的である。
・チェルノブイリ後、ノルウェーとスウェーデンはこの過ちを認めた。
・こうした規制の根拠となる国際安全基準(ICRP)は大幅な改正が必要だ。
・15mSvは危険な線量ではない。


p.8
チェルノブイリ後のノルウェー

1986年、ノルウェー保健局はセシウム137とセシウム134の放射線レベルの介入基準値を定めた。介入基準値は牛乳と乳児の食物が370Bq/kg、それ以外の食品はすべて600Bq/kgだった。ノルウェーにおけるトナカイ飼育の伝統を維持し、サーメ
(ラップ人)のトナカイ飼育者への社会的影響を低減するためには、トナカイ肉の介入基準値を引き上げる検討が必要だった。1986年11月、トナカイ肉の介入基準値は6000Bq/kgに引き上げられ、1987年7月には野生の淡水魚と野生の鳥獣肉の
介入基準値も6000Bq/kgに引き上げられた。Harbitz, Skuterud and Strand, Norwegian Rad Prot Auth (1998)

肉やその他の食品が6000Bq/kg
-つまりノルウェーでは福島の基準値の12倍に引き上げた。
-この数値では、汚染肉を170kg食べてようやくCT/PETスキャン1回分の被ばく量になる。
-このレベルなら農家も飼育者も肉を売ることができ、誰も困らない。
-なぜ福島でこれができないのか。


p.9
スウェーデン放射線防護局
[記事要約]

もともとの記事は2002年4月24日にストックホルムの主要朝刊紙『Dagens Nyheter』に掲載された。この記事の目的は、チェルノブイリ事故に対する科学者の評価が1986年に比べてどれくらい進歩したかを世間に説明することにある。記事は国内外からの大きな注目を集め、この問題に関する新たな議論に火をつけた。そこで、スウェーデン放射線防護局は、世界の人々に自らの結論を知らしめるために英語の翻訳の提供を求められた。

チェルノブイリ事故から16年、スウェーデン放射線防護局が認めた

「われわれは何トンもの肉を不必要に汚染肉にしてしまった」

1986年4月26日のチェルノブイリ原発の事故を受け、スウェーデンは最高水準のトナカイとヘラジカの肉を何トンも不必要に処分した。当局が定めた肉に対するセシウムの介入基準値が低すぎたためである。同年のと畜場ではトナカイ肉全体の78パーセントが廃棄され、納税者に多大な負担を負わせるとともにトナカイ飼育者を一時的に困窮させた。この介入基準値を設定した背景には、個人が被るリスクを非常に低くすることで消費者が何を買えばいいかを迷わないようにする、という考え方があった。
「もしかしたらわれわれは消費者に対して責任を負いすぎたのかもしれない」と放射線防護局長の幹部たちは書いている。

[署名]
局長
Lars-Erik Holm
部門長
Ulf Baverstam
主任科学者
Leif Moberg


p.10
放射線の本当の危険レベル

十字マークはチェルノブイリ事故時の消防士の死者数(曲線はラット)。
数字はそれぞれの線量域での死者数/全体数。

(グラフ左)
チェルノブイリ作業員の死亡率
(グラフ右下)
線量/mSv

4000mSvより高線量の被ばくで42人中27人が急性放射線症候群(ARS)で死亡。がん死ではない。
4000mSv以下では195人中1人が死亡。

p.11
チェルノブイリの作業員
-被ばく量2,000mSv未満の作業員が急性放射線症候群(ARS)で死亡した例はない。

福島の作業員
-事故後6週間で被ばく量100-250mSvの作業員が30人。
-したがって福島ではARSによる死者は出ない。

がん治療のための放射線療法
ー放射線療法を受けるがん患者は、がん細胞を破壊するために6週間にわたって毎日2,000mSvの放射線を腫瘍に照射される。
ー患者は同時に、健康な臓器や組織の多くにも毎日1,000mSvの放射線を照射されている。一か月では20,000mSv以上になる。
-これは急性致死線量(4,000mSv)の5倍以上に相当する。
-信頼できるデータか?たいていの人には、この種の治療の恩恵を受けた知人がいる。
-どうやって放射線傷害から回復するのか。日々の治療を受けたあと、健康な臓器には放射線障害を修復する時間がある。腫
瘍細胞にはそれがない。


p.12
福島での住民避難
-避難基準は年間20mSvに設定されている。
-放射線療法の例から、人間は毎月20,000mSv以上の線量に耐えられることがわかっている。
-これは現行の避難基準の1,000年分に相当する。したがって避難基準は非合理的である。
-一般に、避難をすれば放射線療法による障害と少なくとも同等の害を受ける。
-現行の避難基準は、個人の健康と社会・経済的な健康をまったく考慮していない。
-心の健康とコミュニティの健全性をないがしろにして放射線の安全を考えるのは正当とは認められない。

福島で無視されているチェルノブイリの経験
-避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。
-福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。


p.13
放射線による発がん

・人体には免疫を含む何重もの修復機能が備わっている。

・免疫系がうまく働かないと(たいていは高齢になって健康状態が悪くなるため)がんになる可能性がある。

・普通は放射線によるがんとそうでないがんを区別することはできない。

・大勢の人々を対象に、かなり被ばくした人と被ばくしていない人の生涯の健康状態を比較して初めて放射線による発がんだったかどうかがわかる。

・たとえば、広島と長崎の被爆者のうち、1950-2000年のあいだにがんで亡くなった人がどれくらいいたか。

・平均被ばく量160mSvで、発がんリスクは平均して15人につき1人の割合で増えた。

・浴びた放射線量が大きいほど発がんリスクの増加が明確に見られるが、100mSv未満については明確なリスクの増加が見られない。


p.14 [グラフは原文のPDFをご覧ください。]
広島と長崎から何がわかっているか

総人口             429,000人 100.00%
1945-1950年の死者数   103,000人 24.01%
1945-1950年の行方不明者(死者)数  43,000人 10.02%
1950年まで生きた人の数   283,000人 65.97%
被ばく量がわかっている人の数   86,955人
1950-2000年のがん死者数  32,057人 7.47%
1950-2000年の放射線によるがん死者数 1,865人 0.44%

(円グラフ左)
1950-2000年の間がんで死ななかった

(円グラフ右)
早期死
行方不明
1950-2000年のがん死者数
1950-2000年の放射線によるがん死者数


p.15 [表のフォーマットはしておりませんので、数字は恐れ入りますが原文をご覧ください。]
広島・長崎被爆者のうち、1950-2000年の間に確実にがんで死亡した人の被ばく
線量別内訳(Preston et al., 2004)

被ばく量  生存者数 1950-2000年に確実にがんで死亡した人数 余分なリスク
              実際   予想
0- 5     38507   4270  4282  -2.0- 1.4
5- 100    29960   3387   3313  0.0- 3.5
100- 200   5949    732   691   3.5-12.5
200- 500   6380 815 736 9-18
500-1000   3426 483 378 25-37
1000-2000 1764 326 191 63-83
2000- 625 114 56 72-108
合計      86611   10127  9647  5.0-5.2

「予想」とは他の都市で予想される死者数
-緑色の被ばく量[0-5、5-100]では、右端の列のリスクがほぼゼロ。


p.16
なぜ規制が間違っているのか。誰の責任か。

・各国の規制は国際的な委員会(ICRP)の勧告に従っている。

ICRPの勧告は、放射線以外のリスクを無視して「合理的に達成可能なレベルまで被ばく量を低減」(As Low As Reasonably Achievable, ALARAの原則)し、自然のレベルに近づけることを目的としている。安全上の理由ではなく社会的な理由を考慮したものである。

・ALARAの原則は、放射線恐怖症となった国際社会が冷戦時代に要求したものである。われわれはこの過ちを正すべき。

・安全なレベルは「比較的安全な最大レベル」(As High As Relatively Safe、AHARSの原則)とすべきである。
「比較的」とは、ほかのリスクと比べて、という意味である。

・AHARSのレベルは、放射線療法の成功によって示された放射線障害からの修復能力を考慮して設定すべきである。

・AHARSの原則に基づくレベルはどれくらいか。


p.17
ALARAの原則とAHARSの原則による月間被ばく量の比較

腫瘍への放射線照射
>40,000mSv/月
細胞死

健康な組織への放射線照射
>20,000mSv/月
許容線量!

新しい安全レベル案
100mSv/月[大事をとって上記許容線量の200分の1]
現行の避難基準2mSv/月[20mSv/年]の50倍

ALARAの原則によるICRPの公衆被ばく限度
0.1mSv/月[1mSv/年]

AHARSの原則に基づく新しい安全レベル案:
1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV

ALARAの原則に基づく現行の公衆被ばく限度の1mSv/年を約1,000倍緩和


p.18
福島では放射線によってどれくらいの人ががんになるか

今後50年というスパンで見ても、放射線による死者が出るとはまず考えられない。理由は以下の通り。

事故後6週間で100-250mSvの被ばくをした作業員は30人。チェルノブイリでは、被ばく量2,000mSv未満の作業員が140人いたが、急性放射線症候群(ARS)で死亡したのは1人もいない。

広島と長崎では、それと同程度の被ばくをした市民5,949人のうち、50年以内に放射線によるがんで死亡したのは150人に1人の割合。

福島の作業員が1人でも放射線によるがんで死亡する確率は25%未満。市民の被ばく量は作業員よりはるかに小さいのでリスクはない。

日本では海草を食べる習慣があるうえ、子どもたちはヨウ素剤を支給されている。どちらも小児甲状腺がんの予防になる。

チェルノブイリはヨウ素が不足乏している地域なので6,000人の子どもが甲状腺がんにかかったが、死者は15人だけである。

福島では放射線による予想死者数がゼロである。


p.19
結論

-福島では、食品の厳しい規制と避難規制により、何十万人もの人々の心の健康と自信と生計が危機に瀕している。

-チェルノブイリのときと同様に、厳しい規制によって放射線への不安を緩和しようとすることがむしろ裏目に出ている。

-放射線と放射能は毎年何千件ものがんを治療し、低線量であれば無害である。

-地質学[?地殻変動のことか?]、気候変動、社会経済の安定、人口、水と食料の供給といった問題とは違って、放射線は人類にとっての大きな脅威ではない。

-放射線の汚名をそそぐために、わかりやすい言葉でより多くの人に放射線を説明するためのまったく新しい教育があらゆる地域で必要とされている。

-私たちは健康になるためにすでに放射線を利用している。そのときと同じ配慮と敬意をもって、あらゆる地域で放射線を社会のために役立てていくべきである。

==================================================

年間1.2シーベルト。これはもう国民全員で福島第1原発でフルタイムで働けるレベルでしょうね。特に最後のスライドなどは文科省の放射線副読本がそのまま引用したような文章です。

(多くのこどもがヨウ素剤を配布された、というのはいったいどこの話なのでしょう?)

Thursday, September 22, 2011

福島県、一件5000円で南相馬市のWBC検査結果を購入したい、と打診

上昌弘さんのツイートから。上昌弘さんは、東京大学先端医療社会コミュニケーションシステム、社会提携研究部門の特任教授、という方ですが、ツイッターのプロファイルには「内科医です」と書かれ、福島、特に事故の初期から飯舘村などで住民の方の健康診断などに奔走なさっていたのをツイッターで記憶しています。

9月21日のツイート:
福島県から南相馬市立総合病院に「WBCのデータ、一例5000円出すから、福島県に渡すように」と連絡があった。「患者の個人情報」を何と思っているのだろうか。本当に、浜通にいると俄には信じられない経験をする。

その行き先は言わずと知れた福島医大。朝日がん大賞を受賞された教授のいらっしゃるところです。その福島医大、福島県と組んで、国の第3次補正予算に1000億円の要求を盛り込んでもらって、放射線医療の拠点作りをしたいとか。そのニュースはここでお読みいただけますが、再び上昌弘さんのツイートから。

9月20日ツイート1
知人の医師から 福島県立医大について連絡ありました。「福島県立医大の知人からも連絡がありました。学内では一切議論されていないようです。病院幹部も後のことを考えていないと思います。県の幹部が業者に投げて作った案だと思います。」

9月20日ツイート2
続き 「県庁の役人が支配している大学にまともな研究者が行きたがるはずがありません。現時点で800床ですが、病床はいつも混んでいないとのこと。あらたに病床を作る意味はありません。新たに330床の病院を増設しても患者がきません 病院はまず大赤字になります。赤字垂れ流し病院になります。

9月20日ツイート3
つづき 「こんな火事場泥棒大学が、被災者のことを真剣に考えるとは思えません。被災者をだしにつかっているだけです。地元の医療法人の病院は、病床が開 けず収入が減少したため、医師を含めて、給料を大幅にカットしています。ますます医療従事者が流出します。地元の医療機関を支えるべきです。


また、県と福島医大は、飯舘村で検査結果を大学によこせ、と要求したようです。

9月20日のツイート:
また、びっくりしたことがあった。飯舘村の保健師さんが紙をもってきた。昨日、福島医大から依頼書が送られてきたらしい。今回の検査結果を、福島県の調査 につかえるように住民から同意をとるようにとのこと。腹が立った。研究者が自分できてやることだ。住民のケアに忙しい保健師に押しつけるな

ああまったく。福島県知事が原発依存脱却を公言したのは次なる利権の目処がしっかり立ったからだろう、と思い確かブログでもそう書きましたが、その利権はやっぱり放射能をネタにして建設業者とつるむ、といった、原発依存とほとんど変わる事のないパターン。

南相馬市の人口は原発事故前で6万7千人、検査1件で5000円、全員検査だとするとそれだけで3億3千5百万円。それでも、1000億円の国家予算を要求する大学病院ですから、3億はまあはした金なんでしょう。

Saturday, September 10, 2011

「放射線と健康リスク-世界の英知を結集して福島を考える」シンポジウム、9月11,12日

福島市福島医科大学で開催中。

主催: 公益財団法人 日本財団


共催: 国際放射線防護委員会

    笹川記念保健協力財団


これだけでなんだか胡散臭いと思うのは私の偏見でしょう。後援として、国の有力省庁が上がっているのは言うまでもありません。笹川関連財団と国際放射線防護委員会と日本政府、という不思議なコンビネーションを山下教授がおまとめになったようですね。


会議の目的として、

「福島県民の健康リス ク問題を正しく評価し、今後予定される県民健康管理調査事業を支援する」

ことが第一義に挙がっています。やはり評価、管理、調査なのです。


会議概要書は次の通り:



国際専門家会議

「放射線と健康リスク―世界の英知を結集して福島を考える」

International Expert Symposium in Fukushima-—Radiation and Health Risks


会議の目的

日 本財団は、笹川記念保健協力財団と協力し、1991年より10年間チェルノブイリ事故に汚染された地域に住む約20万人の児童の検診を実施し、 WHO,IAEAなど世界にこの検診の科学的データに基づく情報を提供し、高く評価されています。この経験をもとに、福島原発事故による放射線被ばくの健 康への影響について、世界の英知を集め、科学的な検討を行うためにこのたび下記の要領で国際専門家会議を開催いたします。この会議は、福島県民の健康リス ク問題を正しく評価し、今後予定される県民健康管理調査事業を支援すると同時に、新たな国際放射線安全防護に資する方策を考え、福島の復興に資することを 目的としています。


セッションテーマ


放射線被ばくによる健康影響:低線量被ばくと健康、緊急被ばく医療の課題

(3) 汚染地域における放射線量及び線量測定 

(4) 放射線生物学と放射線安全防護学:基礎と疫学、分子疫学

(5) チェルノブイリ原発事故の教訓から学ぶ

(6) 放射線安全と健康リスクに関するガイドライン

(7) 今後の放射線健康リスク対応に関する提言


期日: 2011年9月11日(日)、12日(月)

会場: 福島県立医科大学 会議場 (福島市光が丘1番地)


主催: 公益財団法人 日本財団


共催: 国際放射線防護委員会

    笹川記念保健協力財団

福福島県医師会(予定)

福福島県立医科大学

放放射線医学総合研究所(予定)


後援(予定): 内閣府、外務省、文科省、厚労省、経産省、国交省、環境省、福島県


組織委員会:笹川 陽平(委員長・日本財団会長)

紀伊國 献三(笹川記念保健協力財団理事長)

菊地 臣一(福島県立医科大学理事長兼学長)

      丹羽 太貫(京都大学名誉教授)

山下 俊一(福島県立医科大学副学長、長崎大学教授)

David Heymann (英国グローバル・ヘルス・セキュリティー・センター長)



プログラムはこちら。

参加者リストはこちら。

Thursday, September 8, 2011

カレイドスコープブログ:「福島でヒロシマ、ナガサキと同じことが行われる」

ABCC、という機関をご存知ですか?

原爆被害調査委員会、Atomic Bomb Casualty Commission、略してABCCは、広島、長崎の原爆被害者が受けた放射線の影響を追跡調査するためにトルーマン大統領の命で1946年に設立された委員会です。治療などの目的ではなく、純粋に科学調査のみを目的にしたもので、被害者の間では極めて不評だった、と英語のWikipediaにもありますが、それでも委員会が最終的に解散したのは1975年、30年も続いていたのです。

その委員会が名前を変えて現在も存在しています。それがRadiation Effect Research Foundation、放射線影響研究所。日米に拠点を持ち、日本の拠点は広島市の比治山公園にあります。あくまで研究調査を行うことに変わりはありません。

この放射線影響研究所が福島医大と連携・協力協定を交わしたのは8月12日。

放射線影響研究所の明石理事は、福島県の県民健康管理調査検討委員会のメンバーです。

カレイドスコープブログ9月3日付けポストより抜粋:

福島県は、福島県民全員の被曝線量を検査し、その中でも被曝線量の多い人だけをピックアップして、その人たちに対しては、今後、数十年間に渡って、追跡調査をしていくための機関として、県民健康管理調査検討委員会を設置しました。

この委員会の設置は、福島県の災害対策本部が有識者の検討委員会で決めたものです。
今後、調査と管理に当たっては、福島県立医大や国の関係機関と協力していく、と書かれてあります。(いちばん上の新聞記事の囲み記事)

福島県は、「第一段階で行う全県民検査では、外部被曝しか考慮せず、内部被曝はないことにする」と言っています。

しかし、同時に、セシウムが大量に出たときのみ、過去のヨウ素被曝を考慮するとマコさんの取材に対して回答しているのです。

「県民健康管理調査検討委員会の主要メンバーである放射線医学総合研究所の明石理事は、「今の科学では、ヨウ素を考えるのは、もう無理だ」と回答しています。
まったく言っていることが正反対です。

過去のヨウ素被曝を算出する方法もあると、小左古教授は言っているのですが、放医研の明石理事は、「それは机上の空論だ」と一蹴してしまいます。

...福島県では4月1日時点で18歳以下の子供を対象に、これから2年ごとに、甲状腺の状態をエコー検査によって取っていく予定だといいます。
一次検査でエコーを取って、二次検査で、シコリが出たときのみ、血液検査等、細胞診と尿検査をやる、ということです。

これは健康調査に名を借りた、実質は簡単なガン検診に他なりません。

一次検査の段階では、ガンの早期発見には欠かせない血液検査をやらないのです。

明石によると、その理由は「医療経済」の問題。つまり、検査費用がないからだ、というのです。
そんなこなど気にせず、国民の健康を守るために血液検査の予算を取って欲しい、となぜ訴えないのでしょうか。
明石の専門は経済ではないでしょうに。

どういうことかというと、ガンのほんの初期、あるいは甲状腺機能障害の兆候が出た段階で、それを発見して治療してしまったら、疫学的なデータが取れないからなのです。

つまり、「ガンや、甲状腺機能障害という形がはっきり表れるまで余計な検査や治療をしたくない」と言っているのと同じなのです。

目的が根本的に違うということなのです。予防や治療が目的ではなく、あくまで調査が目的なのです。

...はっきりしたことは、有識者と国が一体となって設置した県民健康管理調査検討委員会の目的は予防・早期発見、治療ではなく放射線疫学調査にある、ということです。

詳しくは、カレイドスコープのポストでお読みください。

このブログでもポストを出しましたが、政府と福島県が計画する「医療特区」、これで研究所、製薬会社、検査機器メーカーを大いに誘致して儲けよう、という趣旨なのですから、研究のネタが減ってしまうようなへまはしたくないでしょう。

山下教授も、「広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県」に移られて張り切っておられることでしょう。

Wednesday, September 7, 2011

山下俊一教授:「広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県」

教授がまだ長崎大学にいらした今年4月の、『2011年4月 原研医療への新たな挑戦』と題するお言葉です。

平成23年度4月から原研組織は新たに社会医学部門、放射線生命科学部門、そして原爆・ヒバクシャ医療部門の3つに改組されました。20年間『原研細胞』の呼称で親しまれてきた小教室は、大学院組織としては放射線医療科学専攻の社会医学部門に所属し、そして附属原爆後障害医療研究施設としても社会医学部門となり、その中で放射線災害医療研究分野を専攻することになります。略称が『原研災害』ではとんだ災難、災害と誤解され、原研のお荷物のようだと揶揄されますので、ここははっきりと基礎と臨床に足場を置き、被ばく医療支援活動にも従事する教育研究講座とすることから『原研医療』と名称変更することとしました。21世紀COEプログラム「放射線医療科学国際コンソーシアム」とその継承プログラムであるグローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」の成果が結実したものが、今回の原研改組再編に伴う『放射線災害医療研究分野』や『健康リスク管理学研究分野』です。

 奇しくも3月11日東日本大震災が突如として勃発し、未曾有の地震と津波に加えて、原子力災害を引き起こしました。メディアを通じての惨劇を目の当たりにし、チェルノブイリの経験を元に最大限の努力を払う覚悟で、被災直後の緊急被ばく医療支援ならびに原子力災害医療への取組みを長崎大学から本格化しました。未だ福島原発事故の終息が見えず、長引く現状ではすべてが不確定不確実です。しかし、その渦中にあればこそ原発作業員、そして避難住民から一般被災者に至るまで幅広い支援が不可欠です。『原研医療』では大学病院国際ヒバクシャ医療センターと準備してきた緊急被ばく医療対応に加え、グローバルCOEプログラムの根幹である放射線リスク健康管理を、福島県ならびに福島県立医科大学の要請を受けて、いち早く現場で実践しています。本領域における20年間の海外での活動実績は、広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県にこそ生かされるべきだと考えると、新生『原研医療』も直ぐに正念場を迎えることになりました。

 東日本大震災で亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げ、心から被災者へのお見舞いを申し上げます。今後とも被ばく医療への道を目指す医療人の育成に努め、世界のヒバクシャに真摯に立ち向い、原子力災害ならびに放射線災害における現場医療の実践を基礎医学と臨床医療の両面から推進する所存です。『原研細胞』改め『原研医療』という玉石混合の小講座へのご支援、ご協力宜しくお願い申し上げます。

山下 俊一

Tuesday, September 6, 2011

西谷源展:「放射線に対する意識と学校教育の影響」

放射線は恐ろしいものだ、という日本人の過剰反応は不適切な学校教育、特に初等教育のせいである、という、日本放射線技術学会雑誌2004年11月第60巻第11号掲載の論文です。

西谷源展氏は当時、京都医療技術短期大学診療放射線技術学科に所属されており、論文は、日本人の放射能、放射線に対する過剰な反応がどこから来るのか、その原因を学生のアンケート調査を行って、知識形成過程での教育に原因がある、としています。そして、「正しい」教育と放射線関連学会の啓蒙活動が必要である、と結論付けています。

全文はこのリンクでお読みになれます(PDFファイル全9ページ)。以下、論点の抜粋。(強調は私です。)

まず緒言から: 

...日本人にとって「放射線」「放射能」(以下放射線等と省略する)を強烈に印象づけたのは,第二次大戦を終わらせることになった原爆である.その後には,米国の水爆実験の犠牲となったマグロ漁船の第五福竜丸の被曝であった.さらに近年では,チェルノブイリ原発事故や1999年に発生し 2 人の犠牲者を出したJCO事故である.

 しかし,放射線等は現代の医学利用においては,さまざまな疾患の診断や治療には欠くことのできない技術となっている.1997年度における日本での放射線利用による経済規模の総額は,約 8 兆 6 千億円(GDPの1.7%)となっている.この内訳は工業利用が 7 兆 3 千億円,医療分野が 1 兆円で大半を占めている.工業利用の73%は半導体加工で群を抜いている1).IT時代を支えている半導体の加工は放射線が利用されている.しかし,これらは一般の人々は認識していない.
 
一般の人々は,原爆の恐怖から放射線等は恐ろしい→危険→癌の発生や遺伝的な影響,という構図を根強く持っている.
 
こうした過剰な反応はどうして起こるのかを検証するするために,大学に在学する青年達(以下青年達と省略する)の放射線等に対する意識と知識を調査し,その原因を学校教育における授業および教科書等の記述などから明らかにするために本研究を行った.

その手法はアンケート調査。1998~2002年に大学に入学した学生284名を対象に、

  • 放射線を知った年代
  • 何によって知ったか
  • 知識が形成されたときのイメージ
  • 放射線と言う言葉から連想されるもの
  • 放射線に関する知識

について回答を求めた、とのこと。

その結果、西谷氏は、小学校高学年の社会、歴史の教科書に注目します。PDFファイル5ページ目の右欄下の方の記載では:

6 年生になると歴史的分野となり,第二次世界大戦の歴史的記述として原爆をほとんどが取り上げており,36点中28点に記載がされている.また,「平和」と関連しての原爆も取り上げている.核兵器としての関連から1954年 3 月に起こった水爆実験による第五福竜丸の被曝によるものを取り上げている. 小学校での教科書では 6 年生社会における「原爆」が大きなインパクトを与えている.Fig.は,核兵器について 6 年生社会(下)に記述されたもので,放射線量を単位とともに記述している.小学校における放射線等の記述は,「原爆」「核兵器」から怖いものとして取り扱われている

さらに中学校、高校の教科書を検証した上で、次のように「問題点」をまとめられています。

3-2 放射線等の教科書記述の問題点

 放射線等の知識が形成される初期は,2-1で述べたうに小学校が最も多い.この時期における教科書の記述は 6 年生社会が最も多くなっている.そこでの記述は,広島・長崎の原爆被爆がほとんどであり,悲惨な状況とともに「恐ろしいもの」として教えられている.また,中学校では利用についての記述は増加するものの原子力発電は否定的な記述もされている.社会(公民)は小学校同様に原爆,核兵器,第五福竜丸の被曝,チェルノブイリ原発事故などを取り上げている.放射線等の利用に否定的な記述が多く,多方面に有効に利用されていることは記述されていない.高等学校物理1Bに詳しく述べているが,それまでの教育による既成概念は強く生きており,正しい理解を阻害している.また,高等学校において物理1Bを選択履修しない生徒にとっては,正しく理解されず,小学校時代「恐ろしいもの」しか残っていない.また,それぞれの教科書における記述も必ずしも正確な記述となっていない教科書を多く見受けることは問題である

更に、世界平均の自然放射線被曝量は2400マイクロシーベルトである、とした後(日本平均が1400マイクロシーベルトだという記述は無し)、新しい学習指導要綱に基づいた検定に合格した社会科の教科書では「より正確な」記述が見られる、と評価:

社会科の原爆について「放射線」の影響を記述しているのは少なくなり,3 社の教科書は「放射線」という記述が全くされていない.さらに「アメリカ軍は,8 月 6 日に広島…中略…地上1 万mまできのこ雲が立ち熱線と爆風で,またたくまに建物はくずれ…」(教育出版 伊東光晴他著 平成13年1 月検定合格)と記述しており,従来の放射線の影響を強調した記述はなくなっており,より正確な記述に改められている.

ということは「不正確」だった部分と言うのが原爆由来の放射線の人体への影響を記載した部分、ということなのでしょうか。

そして結論部分:

 わが国の青年達の放射線等への知識形成は初等教育で大部分がなされている.知識形成に大きく影響しているのは原爆によるものであった.そのために原爆の悲惨な状況を強調することになり,そのことから「危険」なものや「恐ろしい」ものとして認識されている.また,教科書の記述も社会科に偏っており,利用面での正当な評価がされていない.放射線等への科学的な知識形成は高等学校でなされるが,危険なもの,恐ろしいものとしての既成概念により正しい知識形成がなされていない.また,高等学校での理科分野の選択制において物理を選択する生徒が30%程度であり,これがさらに正しい知識形成を阻んでいる.平成14年度に改正された学習指導要領においても内容の大幅な改善はされておらず,こうした状況の改善は現状の学校教育では困難な状況にある.そのため本学会や放射線関連学会等による啓蒙活動が重要である.

さて、教科書を調べてどこまで青少年への影響がわかるのか。小学校から高校まで、社会、歴史の時間には、どういうわけか第2次世界大戦に話が行く直前でいつも学期がなぜか終わっていたのを覚えています。教科書には確かにそれ以降現代まで記載がありますが、運用として、そこまで学ばせない、というような暗黙の了解があったような気がします。チェルノブイリの事故の時も、どこか遠くの関係ない国で何かあったらしい、という程度で、ほとんど当時ニュースなどでも聞いた覚えがありません。

西谷氏は論文で、放射線が危険なもの、恐ろしいものという既成概念がある、とおっしゃっていますが、先日のポストでも出しましたとおり、日本は世界に冠たる人工放射線被爆国。

逆に、そのような既成概念がしっかりあったら、原発もなかったかもしれない(従って福島事故もない)し、子供が規定の40倍のテクネチウムを投与されることもなかったかも知れない、と個人的には思います。

この論文を斜め読みして思い出したのが、例の、科学技術庁が1991年に作成させた原発推進指南書。文部科学省に総理府の外局だった科学技術庁が編入されたのは2001年。それを考えると、この論文もこの指南書の流れなのかもしれません。

(H/T anonymous reader of my English blog)

Sunday, September 4, 2011

日本の人工放射線被曝、世界平均の5倍以上

今回の福島事故以来、放射能汚染食物を摂取することでの人体への内部被曝を論じる際に、「胸部レントゲン(X線)何回分と同じ」だから心配は要らない、というコメントを現在でも見かけますが、実際、日本の人工放射線被曝は世界にずば抜けて高いのです。

せっかく世界平均を大幅に下回る自然放射線量の日本は、医療による人工放射線の被曝が非常に多く、日本の平均人工放射線被曝量は世界平均の5倍以上、他の先進国と比べても倍近くになります。

放射能に汚染された食品の安全を議論するときによく引き合いに出されるカリウム40からの内部被曝は、平均0.41ミリシーベルト(410マイクロシーベルト)。これは世界平均0.3ミリシーベルトを上回っていますが、大地放射線、宇宙線、ラドンの吸入、全て世界平均をかなり下回っています。日本に住む日本人は、このレベルの放射線に適応して生活してきたのです。

それでは足りない、と言わんばかりの人工放射線被曝量です。

以下の表をご覧ください。文部科学省 の委託事業として、公益財団法人原子力安全研究協会が運営する、「緊急被ばく医療研修のホームページ」掲載の資料です。

表4-2:自然放射線および医療被ばくによる1人当たりの受ける年間実効線量(mSv/年)


被ばくの種類 世界平均
(国連科学委員会)
日本の参考データ
自然放射線 大地放射線
宇宙線
40K等の経口摂取
ラドン等の吸入
0.5
0.4
0.3
1.2
0.32
0.27
0.41
0.45
人工放射線 医療被ばく 世界平均 工業国 日本
医科X線診断・CT
歯科X線検査
核医学診断
0.4
0.002
0.03
1.2
0.01
0.08
2.3
0.02
0.03

表4-3:主なX線診断における実効線量(mSv/検査)

診断部位 実効線量(mSv/検査)


男性 女性
一般X線診断 頭部 0.1 0.1
胸部 0.06 0.06
上部消化器 8.00 7.00
注腸 6.00 8.00
X線CT検査 頭部 0.48 0.49
胸部 8.63 8.58
上腹部 9.00 9.00
下腹部 3.60 7.10
集団検診 胃部 0.6
胸部(間接撮影) 0.05

そして、

表4-5:核医学検査時の胎児・卵巣の被ばく線量
検査 放射性医薬品 実効線量(mSv/検査)


胎児 母親の卵巣
骨 テクネチウム-99m 4.5 2.6
甲状腺 テクネチウム-99m 0.3 0.4
甲状腺 ヨウ素-123 0.1 0.1
心筋 タリウム-201 3.7 8.9
腫瘍 ガリウム-67 5.8 17.0

出典:放射能と人体(渡利一夫、稲葉次郎編、研成社、1999)

(前のポストに関連しますが、人工放射線被曝と感染症、アレルギーの関連の研究などはあるのでしょうか。興味があります。)

そういえば、山梨の病院で、きれいな映像を取るために子供たちに最高で規定値の40倍ものテクネチウムを投与していましたが、どれくらいの実効線量だったんでしょう。

アレクセイ・V・ヤブロコフ博士の論文「Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment (チェルノブイリ:大災害が人と環境へもたらした影響)」 によると、チェルノブイリの汚染地域で、あたらしい放射線レベルに人体が適応する(放射線への過敏な反応が少なくなる)のに20世代、400年かかる、としています。(PDFファイルの59ページ目、右側の欄中ほど。)

日本での過剰なまでの人工放射線被曝はせいぜい戦後になってからではないか(もっと最近のことかもしれませんが)と思いますが、戦後からでもまだ66年ですね。3世代ちょっとです。まして福島第1原発事故以降の東北、東日本の放射線レベルに人体が適応できるとしたら、あと400年。

小児性白血病と感染症・アレルギーとの関係

高度情報科学技術研究機構掲載のATOMICA原子力百科事典よりの情報です。

「放射線感受性についてのブロスの説」

<概要>
 ブロスと共同研究者達は“3州調査”と呼ばれる調査を基に、医療被曝による白血病のリスクについて解析を行った。研究内容は大きく分けて2テーマからなる。1つは出生以前の医療被曝と小児性白血病の関連についてであり、もう1つは成人非リンパ性白血病と医療被曝についての定量的な解析である。その結果、低線量の放射線によるがんのリスクが、一般的に行われている推定方法によって示されるものよりもはるかに大きく、通常の診断用 X線 被曝により DNAが損傷を受けている危険性が大きいと主張した。また放射線感受性は個人差があり、アレルギー体質や感染症歴のある子供達や心臓疾患のある成人は対照群にくらべて高感受性であると報告した。しかしBEIR・(1980) では、彼らの統計方法やモデルに信憑性が乏しいとして、ブロスの説を疑問視しており、特にリスクの推定値に関しては否定的立場を取っている。

<本文>
 ブロスらは、アメリカ3州における 1959-1962年の小児性白血病と胎内被曝について分析を行った結果、母親が妊娠中に受けた診断X線被曝(通常0.5-5rad)により、子供達が白血病にかかる相対的リスクが50%も増加すると報告した(Bross and Natarajan,1972)。さらに、1)被曝集団内には、アレルギー体質や感染症歴から判断されるような感受性の異なるグループが混在していること、2)高感受性のグループでは、特に「放射線による影響を受け」やすく、診断X線被曝により白血病のリスクが非常に高くなることを報告した( 図1 )。例えばこの調査では、小児性白血病患者の12%がアレルギー体質であり、高感受性のグループに属する。また上記のような高感受性のグループでは、母親が妊娠以前に受けた診断X線被曝によっても白血病のリスクが増加することが報告された(Natarajan and Bross,1973)。さらに、彼ら独自の数理モデルを用いて解析した結果、両親が診断X線照射を受けた場合、胎児の1%が「影響を受けて」おり、彼らの白血病の相対リスクは50倍、アレルギー等の相対リスクは5倍増加していると推定した (Bross and Natarajan,1977) 。

 また成人男性についても同様の分析をおこなった結果、たとえ0.5radレベルの診断X線でも、照射を受けた人の5%が「影響を受けて」おり、彼らの白血病の相対リスクは10倍、心臓病の相対リスクは3倍に増加すると推定した(Bross et al.,1978,1979) 。

本文は更に続きますが、文中の「図1」がこれです。Y軸は対数スケールです。
クリックすると大きな画面でご覧になれますが、図の説明は、

「アレルギー体質(喘息や蕁麻疹)の子供および細菌性感染症(肺炎や百日咳、赤痢)やウィルス感染症(はしかや水疱瘡)にかかったことがある子供について白血病の相対リスクを健常児と比較した。特にアレルギー体質の子供は交換受精で、胎内被曝により白血病のリスクが顕著に増加した。」

となっています。この研究の「胎内被曝」というのは、上記の本文にもあるとおり、「母親が妊娠中に受けた診断X線被曝」です。

Saturday, August 20, 2011

放射線研究で世界に冠たろうとする山下俊一教授、独シュピーゲル誌とインタビュー

ドイツのシュピーゲル誌のインタビューに応じた長崎大・福島医大の山下俊一教授、いろいろと過去の発言について鋭く突っ込まれています。

「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」という発言の意図は?

山下:リラックスも大事だと

リラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっているが?

山下:日本政府が混乱させたのが悪い。

教授を非難する人々がいるが?

山下:そういう人たちは科学者じゃない。医者でも専門家でもない。

原発周辺の住民には放射線によるどのような健康リスクがあるか?

山下:そんなものはない。放射線のレベルが低すぎる。

大熊町の一年間の積算放射線被曝量は508ミリシーベルトです。山下教授にとってはそれでも低すぎるんでしょうか。

そのくせ、教授は、住民に放射線リスクなどはない、と言ったすぐそばから、福島県全体、県民全員を対象にした科学界未曾有の規模の研究について嬉々として語っています。血圧上昇を覚悟で記事の全訳、お読みください。

しかし一つ解せないのは、こんな学者を世界の学者が放っておくことです。

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8月19日付けドイツ・シュピーゲル誌記事全訳(リンクは元記事に行きます):

福島事故の余波
「住民は放射能恐怖症にかかっている」

山下俊一は放射線の影響を研究する分野において日本を代表する科学者の一人だ。山下は『シュピーゲル』紙とのインタビューで、福島第一原発周辺の住民に放射線被曝の潜在的危険性を伝える仕事について語った。多くの住民が重度の放射能恐怖症にかかっていると山下は話す。

低線量放射線被曝は人体にどれくらい害を及ぼすのか。この問題については科学者のあいだで熱い議論が戦わされている。しかし、原発周辺の住民にその議論の詳細まで説明するには、今はいい時期とはいえない。住民は今まさに放射線の危険と背中合わせで暮らしているからだ。

山下俊一は放射線防護の専門家で59歳。放射線の影響を解明するうえで多大な貢献をしてきた。長崎の被爆者や、1986年のチェルノブイリ原発事故の影響を研究し、チェルノブイリについては日本の科学調査団の一員として現地を100回近く訪問している。山下が今調べているのは福島における大事故の影響だ。ところが、山下の仕事は地元住民の強い反発を買っている。

『シュピーゲル』は山下にインタビューし、福島で予想される被曝の影響や、過去最大級の科学研究をこの地域で行なう計画について話をきいた。この研究で山下は、約200万人の被験者を対象に原発事故の健康影響を調べる考えだ。


シュピーゲル:あなたは福島県から招聘されて、被害地域の住民に放射線リスクを伝える仕事をしてきた。一番最初に「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」とおっしゃったが、あれはどういう意味だったのか。

山下:あれは3月20日の最初の集会でしたね。本当にショックを受けましたよ。皆さんあまりに真面目で、誰も笑わないんですから。

シュ:自分たちの村や町が放射能で汚染されてしまい、目に見えない危険がどんなものかを誰も知らない。そういう反応も当然だと思うが。

山下:皆さん非常に重苦しい雰囲気でした。ラットを使った動物実験からは、ストレスを感じやすいラットほど放射線の影響を受けやすいことが明確にわかっています。放射線の影響下にある人たちにとってストレスは百害あって一利なしです。しかも精神的なストレスは免疫系の働きを抑制するため、ある種のがんや、がん以外の疾患の発症につながるおそれがあります。だからリラックスも大事だと話したのです。

シュ:住民がリラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっている。通常それは原発労働者の緊急時の被曝上限だと思うが。

山下:100mSvでも大丈夫だから心配いらない、などとは言っていません。ただ、100mSv未満ではがん発症率の上昇が証明できていない、と話しただけです。これは広島、長崎、チェルノブイリの調査から得られた事実です。

シュ:だが、そうやって安心させようとすることが、住民の方々の怒りと恐怖をかえって高めることになるとは思わなかった?

山下:日本政府が年間被曝上限を20mSvに設定したことが、混乱に拍車をかけたと思います。国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力非常事態が起きた際には年間被曝上限を20~100mSvのあいだに設定するよう提言しています。その範囲のどこで線引きをするかは政治的な判断で決まることです。リスクと利益をはかりにかけて考えなくてはいけません。避難するにしてもリスクを伴うからです。放射線防護の観点から見れば、日本政府は最も慎重な方針を選んだのですが、それが皆さんの混乱と不安を高めてしまいました。

シュ:あなたはご自身の数々の発言のため世間で物議をかもしている。あなたを刑事告発したジャーナリストがいるし、反原発の活動家は……

山下:……そういう人たちは科学者ではありません。医師でもなければ放射線の専門家でもない。研究者が研究を積み重ねてきめた国際基準についても何も知りません。皆さんが噂や雑誌や、ツイッターの情報を信じているのを見ると悲しくなります。

シュ:だが専門家は原発は100%安全だと何十年も言い続けてきた。そんな専門家を信じられるわけがない。

山下:私は福島に来て、こういう事故に対する備えがまったくなされていなかったのを知って驚きました。私はかつて中国や旧ソ連諸国に放射線防護に関する助言をしました。今度は自分の国で恐ろしい事故が起きたのに、誰も備えをしていない。福島の人たちは、自分たちの地域に原子炉が11基あることも知らなかったんです。福島大学の医学部には放射線防護医学の専門家がただの一人もいませんでした。

シュ:事故の被害に遭った人たちに対して、今だったら話し方を変えるか?

山下:最初は住民が放射能について何の知識もなかったので、曖昧な表現を避けようと思いました。今では白黒をはっきり言うのではなく、灰色の部分も伝えるような話し方に変えています。

シュ:住民ははっきりした答えを知りたがっている。どこまでが安全なのか。どこからが安全でないのか。

山下:そういう答えはありません。「100mSvまでなら100パーセント安全なんですか?」と尋ねられたら、科学者としてこう答えるしかないのです。「わかりません」と。

シュ:これまでの研究で、100人が100mSvの放射線を浴びたら1人がその放射線のせいでがんを発症することが統計的にわかっている。同程度のリスクが100mSv未満にも当てはまる可能性はあるのか。

山下:可能性はあります。ただ問題は、低線量被曝の健康リスクを推測する際にいわゆる「しきい値なしの直線線量反応モデル」というのが使われることです。このモデルは、たとえわずかでも通常時より多い被曝を受けたら、その被曝した集団の中でがんの発症率がわずかに上昇するという前提に立っています。そうした上昇は理論的にはありえますが、被曝量が100mSv未満の場合には統計的に有意な上昇ではないので、リスクが高まることを支持しているとは言い切れません。それに、何が原因で腫瘍ができたかは区別できません。放射線由来の腫瘍であることが突き止められるような特有の特徴が残るわけではないのです。放射線生物学の研究からは、低線量被曝で人間のDNAが傷つくこともわかっています。ですが、人体はそうした傷を短時間でうまく修復する能力をもっています。生まれながらに人体に備わった防護メカニズムです。私はそういうことを伝えようとしているのです。

シュ:では、そういう情報を住民はどう受けとめればいいのか。

山下:低線量被曝の状況下では、残るか去るかは住民自身が判断しなくてはなりません。ほかに決めてくれる人はいません。自分でリスクと利益をはかりにかけて考えるのです。避難すれば仕事を失い、子供は転校を余儀なくされるかもしれません。それがストレスにつながります。反面、その一家は発がんのリスクを回避できるかもしれません。発がんリスクといってもごくわずかではありますが。

シュ:原発事故の被害を受けたうえにそうした決断を自分たちでしなければいけないとういのは、家族にとってきわめて大きな負担だ。

山下:その通りです。ですから東電も日本政府も、家族が決断しやすいように支援してあげる必要があります。留まろうと思う住民に対しても、1mSvを少しでも超えたら高すぎると考える住民に対しても。

シュ:原発周辺の住民には放射線によるどのような健康リスクが考えられるのか。

山下:周辺住民に放射線による直接的な影響が生じるとは思いません。線量が小さすぎます。

シュ:では、がんもがん死もまったく起きないと?

山下:データに基づいて考えればそうなります。もちろん原発作業員の場合は別です。

シュ:あなたはこれからの研究計画についてすでに話をしている。福島県民の健康状態を今後30年にわたって追跡調査すると。

山下:現在の状況では、私たちは地元の方々になかなか受け入れてもらえません。考えられる最良の医療を住民の皆さんに提供することが最優先です。

シュ:これまでにもっと思いやりのある話し方をしていれば住民に受け入れられたのではないか。

山下:今回の事故のせいで、福島県民は東電と日本政府への信頼を完全になくしました。住民の皆さんは苦しんでいます。地震と津波の被害だけでなく、放射線対する大きな不安に苦しんでいます。まさに放射能恐怖症です。ですから、私たちはその不安を和らげて、住民の心の支えになってあげる必要があります。疫学研究の話はあとからでもできます。地元住民の支援なしには私たちは何もできません。今の状況では、私が長崎とチェルノブイリで研究した専門家であるという肩書きもいっさい役に立たないのです。だから私は福島に移ってきました。

シュ:研究ではどういうことを調べるつもりなのか。

山下:被験者を3つのグループに分けます。原発労働者、子供、それから一般住民です。労働者は高線量の放射線に被曝しています。がんをはじめとするいろいろな疾患について、放射線の影響を追跡調査することが絶対に必要です。一般住民はさらに2つのグループに分かれます。比較的低線量の被曝をした住民と、比較的高線量の被曝をした住民です。福島県の保健福祉部では、26,000人の住民を対象に先行調査を行なっており、まもなく問診票の回収を終える予定です。

シュ:でも住民自身は自分の被曝量がわからない。

山下:それは私たちが突き止めないといけません。3月11日には何時にどこにいたかをきき、以後も3月中の毎日について同じ質問をしています。それから、事故後最初の2週間に何を食べたかや、自宅やアパートが木造かどうかといったことも確認します。そうしたデータと、放射能の雲の分布状況を組み合わせて、それから被曝線量を計算するのです。

シュ:どれくらいの人が被験者になるのか。

山下:200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります。政府は原発事故の被害者に対する補償金について先ごろ決定を下しました。そうした補償プロセスを通じて、県外に避難している住民の方々にも連絡を取りたいと考えています。

シュ:子供についてはどうか。

山下:18歳未満の子供全員について甲状腺の超音波検査を実施したいと考えています。全部で360,000人です。被曝してから甲状腺がんを発症するまでには約5年かかります。それはチェルノブイリの経験で明らかになったことです。

シュ:事故による精神的な影響についても調査しているのか。

山下:もちろんです。チェルノブイリの経験から、心理的な影響が非常に大きいことがわかっています。チェルノブイリでは避難住民の寿命が65歳から58歳に低下しました。がんのせいではありません。鬱病やアルコール依存症、自殺などのためです。移住は容易ではありません。ストレスが非常に大きくなります。そうした問題を把握するとともに、その治療にも努める必要があります。さもないと住民の皆さんは自分が単なるモルモットだと感じてしまうでしょう。

インタビュー:コーデュラ・マイヤー

山下俊一について
山下俊一、59歳。放射線の影響を研究する分野において日本を代表する専門家の一人。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授。福島第一原発の事故後、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任。
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DNAの修復が短時間で出来るのは、放射線被曝が短期間で終わった時の事でしょう。今回のように、被曝がずっと続いている状態でどのような修復がなされるのか。なされないのか。

ああ、この先生はそれを調べたいわけですね。数年、十数年、数十年かけて。モルモットにモルモットと感じさせないために、いわゆる「心のケア」も忘れないそうですから、皆さん安心してください。

福島原発事故で信頼を失ったのは東電と日本政府だけではなく、山下教授のような専門家もなんですが、その辺はごっそり認識が抜けていますね。さすがです。

(H/T東京茶とら猫)

Saturday, August 13, 2011

赤旗:「原発作業員、福島第1は別枠、他の原発移動時に被曝線量ゼロに」

8月14日付け日刊赤旗記事の写真。

記事が本当なら、福島第1原発で作業後他の原発に移る作業員の線量は、福島第1での仕事がなかったことにされる、ということになります。

画像をクリックすると、Twitpicのサイトで大きな画像でお読みになれます。

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Sunday, July 10, 2011

柏市委託の専門家:柏市民の大騒ぎを見て「福島県民はどう思うだろうか」

もう驚くだのあきれるだのを通り越して怒り心頭です。血圧が一挙に上がった気がする。

一般可燃ごみの焼却場から実はキロ当たり7万ベクレル以上(1万ベクレルの騒ぎではなく)の放射性セシウムが出ていたことを認めた千葉県柏市は、「東葛6市(松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市)における空間放射線量測定を行い、その結果に基づく専門家による見解を公表」しています。

柏市のサイトに出ている、7月8日付けの専門家の見解の中で、中村尚司東北大学名誉教授のこの発言にご注目ください。

「関東の他の地区と比べても例えば、茨城県北部はこれより高いところもあり、もっと数値の高い福島県民はこの騒ぎをどう思うだろうか。」

そして、「東葛地区のような低い線量」と言い放った後、更に教授は、この程度で除染だのと騒ぐのは金の無駄、とおっしゃっています。

「多大の人員と費用を掛けて、年間1mSV以下にすることは無駄な努力」

「いずれにしても、このようなことに多額の費用を掛けるのは問題だと思います。」

福島県民がどう思うかって?きっと、このセンセイのコメントを読んだら怒るに違いありません。もうすぐ福島県民になられる長崎大の山下俊一教授は喜ばれることでしょうが。

毎時0.65~0.80マイクロシーベルトを計測する地域が低線量なら、全国の原発から放射線管理区域(毎時換算すると0.60マイクロシーベルト)なども一切なくして、原発内に保育所でも開設したらいかがでしょうね。教授が名誉所長にでもおなりになって。

このほかにも血圧を上げるコメントがいくつもありますが、日本の自然放射線量が2.4ミリシーベルト/年だ、と大嘘を平気で言っています。(正解は1.4ミリシーベルト/年。)また、今一番心配すべきなのは外部被曝であって、内部被曝ではない、セシウムは飛ばない、とも。(プルトニウムを飲んでも安全、と言った東大教授よりはましなのか?)

報告書には教授の略歴が出ています。

昭和14年奈良県生まれ、京都大学工学部博士号、東京大学原子核研究所助教授を経て、昭和61年東北大学サイクロトン・ラジオアイソトープ研究所教授等、平成15年退官、現在、3民間会社の技術顧問を勤め、また、文科省原子力災害対策支援本部に大きくかかわっていらっしゃるようです。

以下に、教授の2ページの「専門家意見」をお出しします。画像をクリックすると多少大きくなります。読みにくい場合は、柏市掲載のPDFはこちらです。赤線強調は私です。



1ページ目で、今後は測定回数も場所も減らせ、ともおっしゃってますね。金の無駄、ということでしょうか。

Saturday, July 2, 2011

フランスのNGO、CRIIRAD日本調査団の暫定報告書日本語訳(パート2)

昨日お出ししたパート1に引き続き、フランスのCRIIRADの福島原発由来の放射能汚染についての暫定報告書の後半、お届けします。

放射能で汚染された穀物、野菜などは、単品でたとえ暫定値を下回っていても、合計すると積算の放射線量は年間許容量の1ミリシーベルトをはるかに超える、また、今後の万が一のための空中放射線モニターはろくに作動しておらず、福島県は新たに安定ヨウ素剤を住民に配布する予定もない、とのこと。

CRIIRADが報告する福島第1原発事故後の日本は、政府の対応を見る限り事故前の日本とあまり変わっていないようですね。まるで事故がなかったかのようです。

(元の英文の報告書はこちら。)

以下、以下、CRIIRAD報告書からの抜粋 日本語訳パート2

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備考
CRIIRADのチームが福島県滞在中に複数の農家から聞いた話では、政府は水田の土壌の汚染レベルがキロ当たり5,000ベクレルまでであれば作付けを「許容」するという案を示しているそうだ。汚染された水田から米自体に移行する放射性セシウムは全体の10%にすぎないというのがその根拠である。かりにそうだとすれば、その汚染地域で栽培される米の放射能量は穀物の暫定規制値であるキロ当たり500ベクレル以下となる。しかしCRIIRADが強調したいのは、あらゆる食品がそのレベルまで汚染されていたら、汚染食品を毎日1kg食べると年間被曝量は3ミリシーベルトとなり、がん死を許容できるかできないかを分ける基準値の3倍に達するという事実である。CRIIRADの今回の訪日の目的は、放射線に対する市民の理解を高めることにより、避難や除染や十分な補償について政府や東電とより有利な交渉ができるようにすることである。[「測定器47台プロジェクト」[放射線量計計測データの集計および公表を行なっている全国の有志による団体]47プロジェクトとCRIIRADが、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などのNGOと協力して様々なワークショップや講演、記者会見を開催したのはそのためだ。

食品サンプルの放射線測定を独自に実施したいという「測定器47台プロジェクト」の願いを受け、CRIIRADは特別な測定器(LB200)を持参して、5月29日に福島市内で測定ワークショップを実施した。このワークショップでは、参加者が各自好きな食品を一品ずつ持ち寄り、約30品目の食品(玉ねぎ、長ねぎ、鶏肉、アスパラガス、じゃがいも、えんどう豆、大豆、豆腐など)についてセシウムの放射線量を実際に測定した。結果は検出限界である30~40ベクレル/kgから200~300ベクレル/kgの間であった。これらの食品のほとんどは温室栽培されたと見られるので、茶葉、たけのこ、しいたけといった最も危険度の高い品目[つまり、野外で栽培されている作物]にも、汚染を防護する対策を拡大すべきである。たとえば、CRIIRADの技術者が福島市の渡利地区で「すぎな」(食べられる植物)を採取して測定したところ、セシウムが3,600ベクレル/kg含まれていた。

(3)福島第一原発からの新たな放射線放出に備えたモニタリング・ネットワークと準備が不十分

福島第一原発では、3基の原子炉と複数の使用済み燃料プールが甚大な損傷を受けている。

東電は原子炉を「安全な状態」に戻す期限を延ばし続けている。原発からは通常レベルをはるかに上回る放射性核種が大気中に放出され続けている。このような状況であれば、継続的な放射能の大気放出の影響を評価するためのモニタリング・ネットワークは高性能で、放出量が増加した場合には警報を発してくれるものと普通は予想する。

5月30日の東電記者会見の場で、CRIIRADの研究所長であるシャレイロン氏は原発周辺の空気汚染モニタリングの手順について質問した。東電の説明によると、モニタリング・ポストは原発西門の一箇所にしかなく、毎日20分程度使用されるだけだという。つまり、残り98.6%の時間は原発周辺の空気汚染レベルが測定されていないことになる。CRIIRADのような小さいNGOですらフランスの5箇所にモニタリング・ポストを設置しているのに、なぜ東電が一箇所しか設置できないのだろうか。東電の回答は、資金の問題ではなく測定器のフィルターを交換することの出来る作業員が不足しているため、というものだった。

福島県県庁[?]で、CRIIRADは県の緊急時対策担当者と面会した。空中放射線量の増加を早期発見するためにどのような測定装置を設置しているのかとCRIIRADが尋ねたところ、福島市内の空中線量モニターは原発事故によって汚染されたためにもう使用されていないとの回答があった。原発の周辺には空中線量を測定する装置のネットワークがあるが、自動操作できるものではなく、実際に誰かが行って手作業でフィルターを交換しなければならないという。そのような仕組みであるため、残念ながら測定は毎日15~20分しか行なわれていない。

担当者にもうひとつ尋ねたのは、放射性ヨウ素が新たに大放出される場合に備えてせめて安定ヨウ素剤を住民や学校に配布したのかどうか、である。そうしておけば、汚染が通告されたら住民はすぐにヨウ素剤を飲むことができる。県の担当者は、その種の決定は国が下すものなので、そのような計画はない、と答えた。

さらに担当者は、原発からの放射性ヨウ素で被曝するよりも、安定ヨウ素剤の副作用のほうがはるかに深刻だと言ったが、その情報をどこから得たのかは語らなかった。CRIIRADはそれに対し、チェルノブイリの事故を受けてポーランド政府は国民に安定ヨウ素剤を配布したが、大きな副作用は確認されていない、と伝えた。

(4)CHIRIIRADから日本国民の皆さんへのお詫び

チェルノブイリ原発の事故から25年、原子力発電を行なう国家と電力会社は、原発事故の影響を低減させるために様々な手を尽くして迅速に対応できるようになっているのだろう、と普通は思う。しかし福島第1原発の事故で明らかなように、日本のような近代国家であってもそうはなっていない。事故が起きて汚染が広域に拡大すると、政府には自国の国民の安全を確保する能力もない。住民は次のよう
なきわめて難しい二者択一を迫られる。

1. 政府から「許容レベル」と宣言された汚染地域に留まる

2. 受けた被害や転居の費用や新しい仕事に対する十分な補償も得られないまま、汚染のない(または少ない)地域に逃れる

また、CRIIRADはフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の姿勢について日本国民の皆さんにお詫びしたい。IRSNは3月17日に発表した試算の中で、福島原発[?]の近くに住む子供の被曝量は50ミリシーベルト未満に留まると述べた。50ミリシーベルトは、日本で一時避難を勧告する基準値である。幸い、日本政府は半径20km圏内の住民の避難を決めた。けっして十分とはいえないものの、少なくとも一部の住民の安全を守ることはできた。IRSNは国の機関であるが、フランスでも原発事故が起きた場合に住民の健康保護にかかわる判断をここに任せていいのかどうか、CRIIRADは強い懸念を抱いている。

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(H/T 東京茶とら猫)

ちなみに、CRIIRADが非難しているISRNのレポートは、この3月22日発表の、「2011年3月12日より福島第一原子炉から放出された放射能雲大気中拡散シミュレーション」のことと思われます。CRIIRADは非難していますが、この時点で甲状腺等価被曝量の試算を公表していたのは世界中でISRNぐらいでした。私はこのシミュレーションの一歳児の甲状腺等価被曝量の動画を見たのが、ISRNが発表した直後ぐらいだったと思います。その当時出ていたニュース(「大丈夫、安全」)とはかけ離れたシミュレーション画面だったので、驚いて何度も見直した記憶があります。関東をはるかに越えて被曝範囲が広がっています。(上記リンクの3ページ目。)

ISRNは海洋汚染のシミュレーションも、東電が「低レベル」汚染水を海洋投棄する前に、いち早く行っていました。(これはフランス語だけだったと思います。)日本人にはあまりなじみがない研究所のようなので、情報が拡散しなかったようなのは残念です。(すいません、と私も謝っておきます。たしかリンクはしたことはしたんですが。そういえば3月の末ごろは、放射能が高い、という情報を出すと「おまえはうそつきだ」とかいうコメントが残されていた時期でしたね。)

他にも日本語でレポートが出ていますので、遅まきながらですが、ご覧ください。日本政府が今更のように小出しにしているデータは、ISRNではもう3月の時点で出ています。

http://www.irsn.fr/EN/news/Pages/201103_seism-in-japan.aspx

また、英語版のレポートでは、日本の原子力安全保安院が6月6日になってやっと出した福島第1原発から放出した放射性核種の種類と量を、3月22日の時点で推測しています。プルトニウム、ストロンチウムはありませんが。

ということで、非難するとしたら、この情報が拡散しなかった、ということを非難した方が当たっているような気はします。

もっと非難すべきは、同様の情報を持っていてひたすら隠した、日本政府でしょう。

Thursday, June 30, 2011

フランスのNGO、CRIIRAD日本調査団の暫定報告書日本語訳(パート1)

(パート2出ました。)

5月の末から6月にかけてIAEA(国際原子力機関)の調査団が日本に来ていたのとほぼ同時期に、フランスのNGO、CRIIRAD(Commission de Recherche et d'Information Indépendantes sur la Radioactivité、放射能に関する独立研究情報委員会)も日本に調査団を送っていました。

IAEAが政府、東電、原子力産業界と会合を持ち、福島原発などを見学に行ったのとは対照的に、CRIIRADは、放射能被害地域の地方自治体、ボランティア団体などと協力して福島、茨城、東京などで実際に放射能測定を行い、住民に放射能測定方法を教えるワークショップを実施、といった具合に、民間レベルでの情報収集と情報拡散に努めた模様で、その結果を6月29日に暫定報告という形で発表しました。

また、IAEAが日本政府の対応を褒めちぎったのとは正反対で、政府の対応は不適切、不十分だったと非難、100ミリシーベルトまでは健康の害はない、とする政府(長崎大山下教授など)の「キャンペーン」をでたらめだ、と断言しています。

元の英文の報告書はこちら。

以下、CRIIRAD報告書からの抜粋 日本語訳パート1:

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2011年5月24日~6月3日
CRIIRAD(放射能に関する独立研究情報委員会)日本調査団 暫定報告書

(前略)
今回の調査で得られた暫定的結果の主なものについては、すでに福島市(5/29に講演、5/30に記者会見)と東京(5/31と6/1に記者会見、6/1に会議出席、6/2に放射線モニタリングに関する講演とワークショップ)でのさまざまな公開イベントで発表してきた。それらの調査結果とわれわれの見解を以下にまとめる。

CRIIRADの研究所に持ち帰った土や食品のサンプルの分析が終わったら、数週間のうちにより詳細な科学報告書を発表する予定である。

(1)放射能の健康被害についての適切な情報と防護策が不足

3月12日、福島第一原発の原子炉と使用済み燃料プールは事故で損傷し、以後そこから膨大な量の放射性物質が空中と海中に放出されている。公式発表されたデータによると、空気中への放出が最も甚大だったのは3月12日から3月30日までの期間である。

日本政府は半径20km圏内に住む住民の避難を指示し、半径20~30km圏内の住民を屋内退避とした。しかしこの対策は不十分だったことが明らかになっている。

1. 20km圏外の住民についても、風向きと気象条件に応じて避難させるべきであった。風や放射性粒子が政府の施策に従ってくれるわけではない。

2. 屋内退避が有効なのは、空気の汚染が短期間で収まって放射線量が小さい場合に限られる。福島第一原発の場合、放射性物質の空中放出は数日にわたって継続した(しかも線量ははるかに低くなったとはいえ現在も続いている)。このような状況下では、屋内と屋外の空気が入れ替わることにより、屋内退避は有効とは言えない。屋内の空気も屋外の空気に匹敵するほど汚染されてしまう。

3. 安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれれるのを減らすため、とくに幼い子供の甲状腺がんリスクを低減させる効果がある。甲状腺がんのリスクについては、チェルノブイリ原発の事故以来よく知られている。効果を十分に発揮させるためには、放射能汚染が始まる数時間前に安定ヨウ素剤を服用する必要がある。日本では、安定ヨウ素剤の配布が適切に実施されなかった。CRIIRAD調査団が日本滞在中に得た証言から判断すると、いくつかの自治体はヨウ素剤の配布に踏み切った。たとえば三春町の町長は3月15日に住民へのヨウ素剤配布を決め、実際に飲むように指示した。福島県の当局はこの取り組みを非難した。いわき市では、担当者が3月12日からヨウ素剤の配布準備を進めていた。市は3月18日に住民へのヨウ素剤配布を実施したが、住民に対しては「当局の明確な指示があるまでは服用はしないように」と命じた。結局、ヨウ素剤の服用が指示されることはなかった。それ以外の地域(飯舘村など)で多量の被曝をした住民に対しては、今に至るまで安定ヨウ素剤は配布されていない。

4. 空中に放出された放射性物質は、放射性降下物として地面に落ち、食物連鎖を急速に汚染する。とりわけ汚染されやすいのが葉物野菜と牛乳だ。日本政府は3月18日になってようやく特別な食品検査プログラムを開始した。初回の検査では数種類の食品サンプルから多量の放射能汚染が確認された。たとえば、3月18日に茨城県で採取されたほうれん草からは、ヨウ素131が1kg当たり54,000ベクレル検出されている。CRIIRADの試算によれば、2~7歳の幼児がこのほうれん草を200g食べれば年間被曝許容量の1ミリシーベルトを超える被曝をする。その後発表された新たな検査結果によれば、飯舘村(福島第一原発から40km北西)で採取した草からキロ当たり250万ベクレルものヨウ素131が検出された。この地域の野菜の汚染レベルは間違いなくきわめて高いものである。注目してほしいのは、2~7歳の幼児の場合、そうした食物をたった5グラム食べるだけで1ミリシーベルトを超える被曝をするということだ。政府は3月12日の時点で迅速に、ガンマ線量計で放射性降下物が検出された高リスク地域(福島第一原発の北100kmにある女川や、南230kmにある東京も含む)の食物を食べないように勧告すべきであった。日本政府はそれをしないばかりか、そうした汚染食物を食べてもCTスキャンを1回受けるのと同程度しか被曝しないと主張した。


(2)汚染地域の住民に対する防護策が不十分

米国エネルギー省と日本の文部科学省が発表した公式の土壌汚染地図を見ると、半径20kmの避難区域圏外でも汚染レベルの高い地域がある。CRIIRADはいくつかの地点で地上1mの線量を計測した。その数値を自然放射線量と比較すると、日立(福島第一原発から南100km)で2~3倍以上、郡山(西60km)で9倍、福島市(北西60km)内の学校や公園を含む複数地域で20倍、飯舘村長泥地区で130倍だった。測定後1年間のあいだに、それぞれの地域でわずか12時間、4時間、等々を屋外で過ごすだけで、住民の被曝量は年間被曝許容量の1mSvを超える。しかも、セシウム134とセシウム137が放出するガンマ線は高エネルギーなので、家や学校やビルの外の土壌が汚染されていると、建物内部の線量も増加する。たとえば、CRIIRADが福島市内の一軒の民家で線量を計測したところ、居間の床上1mでは通常の線量の6倍、子供部屋の畳の上では4倍高かった。この家の場合、福島市内の他地域の線量も勘案すると、適切な防護策が講じられなければ子供たちの被曝量は1年間で約7~9ミリシーベルトに達するとCRIIRADは推定した。この試算は外部被曝だけを計算したもので、汚染食物を摂取したり土壌から放射線粒子を吸い込んだりして生じる内部被曝は含めていない。日本政府は避難の目安としてICRP勧告の年間20ミリシーベルトを採用している。だが、年間20ミリシーベルトという被曝許容量は、下記の理由によりあまりにも高すぎる。

1. ICRPは安全な基準値などないと考えている。将来的にがんで死亡するリスクは被曝量に比例し、「これを下回れば発がんしない」という閾(しきい)値は存在しない。福島第一原発の事故後最初の数日間から数週間のあいだにすでに高レベルの被曝をした人たち(大人も子供も)に対しては、以後の期間は被曝レベルを1ミリシーベルト未満に抑える必要がある。

2. にもかかわらず日本政府は、一般に許容される発がんリスクを20倍も高めるような線量を追加で被曝しても構わないと考えている。住民にこのリスクを受けれさせるため、政府は100ミリシーベルトまでは実際の健康影響がないとするデマを広めるキャンペーンを開始した。これはでたらめである。比較的最近の疫学研究からも、室内でラドンを吸い込むことによる被曝量と肺がんで死亡するリスクとのあいだに直接的な関連が確認されている。このリスクは年間被曝量がわずか2ミリシーベルトでも生じるものであり、これを下回れば発症しないという閾値は存在しない。

3. 年間20ミリシーベルトという基準値は主に外部被曝を念頭に置いて定められたものである。このことは、日本政府がこの数値を読み替えて1時間あたりの許容被曝量を毎時3.8マイクロシーベルト(外部被曝)と定めたことからも明らかである。これはきわめて高いレベルであり、自然放射線量(通常は約0.1マイクロシーベルト時)の約38倍に当たる。日本政府はこの数値を計算するのに、8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすことを前提としており、屋内の線量は屋外の線量に減衰率の0.4を掛けた数値としている。これで計算すると1日あたりの被曝量は54.7マイクロシーベルトとなり、年間被曝量は19.98ミリシーベルトになる。しかしこれ以外に、汚染された土を吸い込んだり、汚染された土を食べたり(とくに子供)、汚染地域で生産された汚染食物を食べたりする内部被曝の線量も加えなくてはならない。文科省は自身のウェブサイトに、子供が校庭にいるあいだの内部被曝の影響は全体の2.5%未満だと記載している。この値は、4月14日に13の学校の校庭で測定した数値を平均したものだが、これが正当な数値であるかどうかは独立機関の科学者によって検証する必要がある。

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(パート2に続く)


三春町町長さん、えらい!

いわき市は結局配らなかったんですね。福島県は市町村に配った安定ヨウ素剤を返せ、と言っている、という噂も聞きましたが。

(H/T 東京茶とら猫)

少量被曝、天使の微笑み


これはすごい。少量の放射性物質を含んだ食品はプレミアが付き、福島は健康ブランドになる、と、この福島県のお医者様はおっしゃっています。そのほかの明るいプレゼンテーションは、こちらのサイトでご覧になれます。

---->http://e.oisyasan.ne.jp/asahi-cl/topics/radi.html

長崎大の山下教授がさぞ喜ばれるでしょう。