Sunday, July 31, 2011

文科省:「福島原発後も、アイソトープセンターの仕事は国民の健康に責任を持つことではない」

「法律に決められた放射線取扱者を規制することが仕事だ」

東大アイソトープセンター所長児玉教授の7月27日衆議院厚生労働委員会での質疑応答部分を文字おこしされている方がいらっしゃり、読んでみたところ、児玉教授が証言の最後の方で「自分たちのやっていることは違法です、全て違法です」とおっしゃっていた意味が分かりました。

文科省がやらせないのです。

社会民主党の阿部知子さんの、「全国のアイソトープセンターを今回の除染に活躍させるために何が必要か」、という質問に答えて、

『五月に全国のアイソトープ総合センター会議というものがありまして、そこで色いろ議論をしていた時に、文科省の放射線規制室の方が、おっしゃってたのは、「福島原発以来のRI[Radioisotope Center]は、RIではない」と。「我々は国民の健康に責任を持つという仕事をやっているのではなくて、法律に決められた放射線取扱者を規制することが仕事だ」という風におっしゃっていました。

それで、ある面で私非常に違和感を感じたんですが、もう一方では例えば文科省の法律の規制室の方は、従来の規制に従ってやらざるをえない。それで、高い線量のものが少量あるということに対応した法律体系はありますが、低い線量のものが膨大にあるという、それをどう除染していくかということに関する法律がほとんどなくて、今も汚泥問題、その他すべて問題になっているのは、ここであります。

それで、しかしながら現在の全国のアイソトープ総合センターなんかは、旧来の法的規制のまんまで何らのこれらの組織、例えば先ほどゲルマニウムの機械が足りないというお話がありましたが、そんなものは全国に沢山あります。ところが、そこへの持ち込み、持ち込んだ廃棄物の引き取り、こういうのが法律的にまったくない

だから今も東大のアイソトープセンターでやっているのは全部違法行為だと申し上げました。この場合にはセンター長である私と専任教官と事務主任の上で審査委員会を設けて、内部でチェックして超法規行為を勝手にやっているというのが現状であります。

それでそういう法律を一刻も早く変えて、測定と除染というのに是非立ち上がっていただきたい。それなくして親の安心もないし、しかも先ほどから長瀧先生たちがおっしゃっている原爆型の放射能の常識というのは、これは原発型の常識の場合にはまったく違います。それから先ほどおっしゃいました、長瀧先生のおっしゃった一過性に核医学で治療をやるというのも、これも形式が違います。我々たとえば抗体にイットリウムをくっつけて打つと、ゼバリンという医薬がありますが、あれは一過性にもかなりの障害を起こしますが、それでもガン細胞をやっつけるためにいいからやっているということであって、正常者にこれをやることは、とても許されない。無理なものであります。

それで、ですから私が申し上げたいのは、放射線総量の全体量をいかに減らすか、これは要するに数十兆円かかるものであり、世界最新鋭の測定技術と最新鋭の除染技術をただちに始めないと、国の政策としてまったくおかしなことになるんです。いま我々がやっている、たとえば幼稚園で除染します。除染して高圧洗浄器でやりますと、側溝に入ります。側溝をきれいにしています。しかしその側溝の水はどこへ行くかというと、下流の農業用水になっています。それでイタイイタイ病の時の経験は、カドミウムの除染を下手にやりますと、二次被害を引き起こします。ですから国の政策として国民の健康を守るためには、総量の問題をまず考えてください。緊急避難とひとつ、総量の問題ふたつ、これを是非議論よろしくお願いします。

最後の、下手な除染休むに似たり、は残念ながらその通りのことが起こりつつあるような気がします。場当たり的な、近視眼的な一過性の対処でお茶を濁せる、と思っているのは政府と、政府の専門家。国民もすぐ忘れるだろう、と期待しているのです。

Withdraw consent to be governed.

東京大学児玉教授の衆議院での証言、4ヶ国語で(日英仏独)

児玉教授の7月27日衆議院委員会での証言が、私の英語ブログ読者の方々のおかげで、英語に加えて仏、独語でもご覧になれるようになりました。

児玉龍彦教授は東京大学アイソトープセンター所長、7月27日に国会衆議院厚生労働委員会の参考人として発言、福島第1原発事故後これまでの政府の放射能汚染対策(というより対策の欠如)を激しく批判されました。

日本語(あるいは英語)を解さないお知り合い、お友達、ご同僚、どなたにも、是非お広めください。

英語の字幕つき日本語ビデオ:

http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/video-with-english-caption-professor.html

英語 (テキスト翻訳、3部):

http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/professor-tatsuhiko-kodama-of-tokyo.html
http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/part-2-professor-tatsuhiko-kodama-of.html
http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/part-3-professor-tatsuhiko-kodama-of.html

フランス語 (Heliosさんによる、英語訳からのテキスト翻訳、3部):

http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-13.html
http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-23.html
http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-33.html

ドイツ語 (Violaさんによる、英語字幕からの翻訳、2部):

Part 1: http://youtu.be/PDOBKu8P-DE
Part 2: http://youtu.be/XefmvjI7Mk4

広瀬隆:『ただわれわれは何にも意識もなく、大丈夫と思いたくて、生きてるだけ』

ジャーナリストの広瀬隆氏とルポライターの明石昇二郎氏が、7月15日、東電幹部や高木義明文部科学大臣、福島県放射線健康リスクアドバイザー­の山下俊一氏など合計32名を刑事告発した、というニュースは多くの方がご存知だと思います。

その記者会見での広瀬氏の発言をYoutubeでつい昨日になって見てみたら、とんでもない情報があるのに気づきました。(赤字強調部分)

逐語ではないけれども文字おこしより:

広瀬:皆さんご存知の通り、事故が、3月11日に大地震が起こって事故がその日から始まりまして、でその20日からですね、長崎大学の山下俊一なる人物をですね、放射線健康リスク管理アドバイザーに迎えて、その翌日からもう安全宣伝のキャンペーンを始めて、それから4月に入りまして広島大学の神谷研二、それから長崎大学の高村昇も同じアドバイザーになって、この三人が揃って「100mSvまでは安全」とくり返して児童の被曝を強要させてきた。このことで彼らは全国から批判を浴びているわけですけれど、それは犯罪ではないんだろうかということをはっきりさせたいんですね。

福島県では、こないだ聞いたんですが、学校で子どもたちがお父さんやお母さんが意識の高い方が子どもに「シイタケやタケノコが給食に出たら食べちゃいけないよ」といって、それで子どもが学校に行ってそれを取り分けると先生が来て「食え!」っていって食わせるんだそうです。ぞっとするんじゃないですか、皆さん。え? こんなこと今起こってるんですよ、日本で。え? どうするんですか、こんなこと。それやらせてんの山下でしょう。背後にいるんでしょう。さっきおっしゃったように、文部科学省がいるからこんなことになるんでしょう。どうしてこんなことほっとくんですか日本人は。子どもたちをみんなで殺してるんじゃないですか。許せないですよこれは。

質問:放射線核種でセシウムとかそういうのばかりが新聞をにぎわしてますが、やはり一番怖いのはプルトニウムだと思うんですが、その被害について、たとえば劣化ウラン弾の被害が出ているようなイラクだとかではプルトニウムとかのα線の被害が多いと思うのですが、この辺のことについてはどのようにお考えか。

広瀬:私はプルトニウムより今怖いのはストロンチウムだと思っています。これはセシウムとほぼ同量が原子炉の中にあったはずですし、それがほとんど出ていないというのは検出していないだけであって、とくに海洋に流れた海に流れているのはとてつもない量だと思います。だからそういうことで言いましても、今の状況で、何がどこにあるか私自身もわかんないです。で、とくに魚の場合は、福島に今回行ってほんとにわかったんですけど、もう日本中に流通しているんです。そういったものが九州に流れてるんですね。九州や何かで買ったり、そういうとんでもないところで買って、それを西日本の人は安心して食べてるわけです。だから今私もう、何が起こっているかはっきりいってわかりません。ただわれわれは何にも意識もなく、大丈夫と思いたくて、生きてるだけなんだろうな。現実派ですよ。今そういう状況です、はい。

福島の子供たちの健康検査に、県が子供の親に一札入れさせている、という話もあります。広瀬さんのおっしゃるとおり、一体日本はどんな国になってしまったのでしょう。それとも、ずっと以前からこうで、福島原発の事故以来人々がやっと気づきだした、ということなのでしょうか

韓国の中央日報の記者の方が先日お書きになっていたように、
『国民が「これは間違っている」と怒らないため、政府が怠慢になり、勝手に隠蔽するのだ。』

隠蔽プラス「やりたい放題」。これを止めるのは、「やりたい放題」やっている政府であろうはずがありません。

ちなみに6月6日に保安院が発表した放射性物質の大気中への放出量推定では、

ストロンチウム89: 2.0x10の15乗(2,000,000,000,000,000)ベクレルまたは2000テラベクレル
ストロンチウム90: 1.4x10の14乗(140,000,000,000,000)ベクレルまたは140テラベクレル

セシウム134: 1.8x10の16乗(18,000,000,000,000,000)ベクレルまたは1万8千テラベクレル
セシウム137: 1.5x10の16乗(15,000,000,000,000,000)ベクレルまたは1万5千テラベクレル

となっていますので、少なくとも空中に出た分ではストロンチウムはセシウムの10分の1以下になるようです。

但し、海中に既に流出した汚染水、それに現在処理しようとしている福島第1原発内の高濃度汚染水には、大気中に放出された総量(77万~85万テラベクレル)と同じ位の量の放射性物質(72万テラベクレル)が含まれている、との推定です。

Saturday, July 30, 2011

東京大学児玉龍彦教授、衆議院委員会発表スライド

先日お出しした、3枚のまとめの詳細なバックアップデータのようです。



児玉教授の証言の英語訳・英語ビデオはこちら:

http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/video-with-english-caption-professor.html

更に、私の英語ブログ読者のフランスの方が、英語訳からフランス語訳を作っています:

http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-13.html
http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-23.html
http://bistrobarblog.blogspot.com/2011/07/politiciens-du-japon-que-faites-vous-33.html

日本語を解さないお知り合い、お友達に、広めましょう!

東京大学児玉龍彦教授の衆議院厚生労働委員会参考人ビデオ、英語字幕入りビデオになりました

児玉教授の衆議院でのビデオの英訳を3部に分けて英文ブログの方に出しましたが、東京茶とらさんがその英文をビデオに貼って字幕を作ってくれました。(ちなみに、元の英文のパート3の元訳は茶とらさんです。)

日本語を解さないご家族、お友達、ご同僚、どなたにでも、おひろめください。

英語ポストはこちら。字で読みたい方のために、元の英文ポストのリンクも付いています。

http://ex-skf.blogspot.com/2011/07/video-with-english-caption-professor.html

Friday, July 29, 2011

グリーンピース:「福島はまるで別の宇宙」RTビデオ(グリーンピースジャパンによる日本語訳)

先日ビデオだけお出しした、Russia TodayによるグリーンピースのJan Benerakさんのインタビューは、グリーンピースジャパンで日本語訳を出していました。

原文の、”It was like visiting a different universe”を、グリーンピースジャパンでは、「別世界」と訳していますね。完訳ではない、と断っていらっしゃいますが、ビデオを見る限りほぼ完訳。以下、ビデオの訳部分:

「――まるで別世界に来たみたいだ」

レポーターSean(以下S):今日はグリーンピースインターナショナルのヤン・ベラネクさんをお迎えしています。彼らは震災後、放射線の測定などを中心に日本、特に福島で活動を行っています。今日はお越しいただいてありがとうございます。始めにグリーンピースが日本でどのような活動を行っているのか、そしてメッセージを発信する目的について教えていただけますか?

ヤン・ベラネク(以下J):グリーンピースは専門家を集め、原発事故発生の1週間後には現地入りをし、独自に空気・土壌や食べ物の汚染レベルを調査しました。更に調査船、虹の戦士号を福島沖へ送り、日本人の食卓の中心である魚介類の汚染レベルを調査しました。

S:被災地の悲惨な現状の中、人々が生活を送っている…言ってみればパラレルワールドのようだとおっしゃっていましたが、それについて教えてください。

J:正直、目を疑うような光景でした。人々は何事もなかったかのように振舞うように行政から強いられているようでした。普段のように会社や学校に行き、農家は季節の農作物を植え始めました。しかし彼らの生活環境はいまだに、とても高い放射線により汚染されているのです。彼らが毎日口にする食べ物も汚染されている可能性が十分にあります。まるで同じ場所で2つの違う世界を訪れているようでした。人々が普通に生活している福島市を放射線測定機を手にして歩くと、全域から通常の30~50倍の線量が検出されるのです。さらに校庭や公園、子どもたちが通学に使う道の中には通常の500~700倍にも及ぶ線量が検出されるホットスポットが点在しています。信じられません。このレベルの放射線は健康被害のリスクがあります。チェルノブイリで事故があった時、ソビエト連邦は福島の3~4分の1の放射線量を観測した時点でみなを避難させています。すでに事故発生から3ヶ月も経過しているのです。日本政府は十分な情報を公開せず、被災者が受けるべきサポートを行っていないように思います。

S:今グリーンピースは具体的にどのような活動を行っているのですか?

J:福島では独自に線量測定を行い、グリーンピースは調査を海洋まで広げること、子どもたちを守るために基準を見直すことを政府に要求し、改善が見られます。しかし、政府の対応はとても遅く、不十分です。長期的な活動予定として、われわれの専門家を現地に残し、被災者の立場になり情報提供をしていきたいと考えています。これから収穫時期を迎え、新たに汚染された食材が市場に出回り、人々が内部被ばくをするリスクが高まります。こうした内部被ばくは道路や地表面などから受ける外部被ばくより健康へのリスクは深刻です。

S:長期的な目で見て、日本はこれからどうなっていくとお考えですか。

J:今の汚染レベルやセシウムやコバルトなどの放射線の半減期を考慮すると、向こう数年、もしくは数十年間は汚染が続くでしょう。事故の深刻さを物語っています。今の日本のように、政治を中心にするのではなく、科学と人々の健康を第一に考えることがなによりも重要です。そして、失敗から学ぶということも大切です。我々全員が見たように原子力発電は安全ではありません。予測不可能の自然災害や制御ミスが重なり、原子炉が制御できない状況に陥り、今回のようなフルメルトダウンがわずか数時間で起こってしまったのです。私たちの安全をかえりみずに原子力発電に将来を賭けるのは危険すぎます。日本政府や意思決定者が方針を変え、原子力発電を2020年までに廃止することは可能です。日本で取り組める再生可能エネルギー、エネルギー効率的利用と省エネルギーのポテンシャルが高いからです。

S:日本での事故を教訓に世界はこれからどのように変わるでしょうか。

J:すでに各地で変化は起こっています。ドイツを例にとると、ドイツ政府は原発の寿命を延ばすなどのこれまでの方針を一転し、半数の原発をすぐさま停止させ、残りの半数も向こう10年のうちに停止させる予定です。イタリアの国民投票では人口の95%が原発に反対の意を示しています。スイスは原発廃止計画をスピードアップさせ、建設計画を放棄しました。原発大国フランスでも人口の77%が原発の廃止を望んでいます。このように大きなシフトは各地で見受けられます。国や意思決定者が産業での利益よりも人々や未来の世代の利益を優先すると信じています。原子力発電を段階的になくし、2050年までには世界中のエネルギー需要をり再生可能エネルギーでまかなうようになるでしょう。

S:実際に被災地に行き、現状を目の当たりにしての個人的な感想を聞かせてください。

J:とても印象深い体験でした。チェルノブイリにも行きましたから、惨劇の目撃は二回目なのですが、放射線量の測定を行い、数字の理解をし、健康への影響や環境への影響を見ます。一方で子どもを守りたいがどうしていいの分からない、情報がない、と涙を流す母親にも出会いました。その出会いで、私にできることを精一杯やろうと思いました。なぜなら、このような惨事は二度とどこにも起こしてはならないからです。



東京大学児玉龍彦教授の衆議院厚生労働委員会提出資料

教授の息子さんがアップして下さっています。

群馬大の早川教授(火山学)の地図も引用されています。

『学会主流と政府が何を誤ったかというと、現行法の「高い線量の少量の除染」を考え、濃度をもとに、「さしあたり健康に問題ない」としてきた。しかし、システム論から見ると総量が問題で、「低い濃度でも汚染が膨大におこると、特定の場所や食品に濃縮がおこり、健康に害をもたらす」可能性が生まれる。』

学会主流(100ミリシーベルト大丈夫教授など)は、広島、長崎の原爆被曝実例で福島を理解したようですね。大失敗。7月27日の国会での証言の中で、児玉教授は、

『(広島、長崎のような)原子爆弾投下後の放射能汚染は1年後で1000分の1になる。しかし福島のような、壊れた原発から出た汚染は、1年たっても10分の1にしかならない』

とおっしゃっていました。

(もっとも、主流派も政府も、大失敗だとは思ってないでしょうが。)

グリーンピース:「福島はまるで別の宇宙」

(グリーンピース・ジャパンによる、ビデオの日本語訳が出ていましたので、ポストにしました。)

グリーンピースのJan BeranekさんにRussia Todayがインタビュー。

とりあえずビデオだけ出します。Jan Beranekさんはチェコ人で、アクセントが聞き取りにくいかもしれませんが。

Thursday, July 28, 2011

東京大学児玉龍彦教授、国の原発対応に満身の怒り

2011年7月27日 (水) 衆議院厚生労働委員会
「放射線の健康への影響」参考人説明より
児玉龍彦(参考人 東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)

児玉教授は怒りをあらわにしています。政府は何をやっているのか(というか、やっていないのか、ですが)。

南相馬市で、学校児童1700人が、毎日バスでわざわざ放射線の高い飯舘村近くの学校まで通わされている、と教授。

え...

『7万人の人が自宅を離れてさまよっている時に 国会は一体何をやっているのですか!』


前のビデオがYoutubeで消されてしまったので別の方がアップされたビデオをリンクしなおしました。冒頭のところがちょっと欠けています。

Wednesday, July 27, 2011

「日本人の皆さん、少しは怒りましょうよ」

とは、韓国からのメッセージです。

「国民が「これは間違っている」と怒らないため、政府が怠慢になり、勝手に隠蔽するのだ。 それでも我慢して政府の言う通り忠実に節電して汗を流す日本人をそばで見ていると遣る瀬ない。 日本政府が大韓航空利用禁止のような非常識なことをするのも、いわば牽制装置が作動していないからだ。 国民の怖さを知らないのだ。」

「実体もないBSE牛肉に興奮して社会全体を混乱させる韓国国民も覚せいしなければならないが、実体が明らかなセシウム牛肉を食べてもネズミが死んだかのように静かな日本国民はもっと大きな問題だ。 「日本人の皆さん、 少しは怒りましょう」。

中央日報7月26日付け記事

この数日間、気分が晴れない。 3週間前、久しぶりに家族で外出して食べた牛肉が主犯だ。 当時、放射性物質に汚染した、いわゆる‘セシウム牛肉’問題は全く話題になっていなかった。 しかし一種の職業病が作動した。 飲食店に入り、家族にこっそりと従業員に尋ねた。 「ここの牛肉はどの地域の肉ですか」。「新潟産です」。その言葉に安心した。 事故が発生した福島第1原発から200キロほど離れているからだ。 「たくさん食べなさい」。その日、家族はお腹いっぱい新潟産牛肉を食べた。

それから数日後、福島産牛肉でセシウムが検出されたというニュースが出てきた。 それほど驚かなかった。 福島県のことだったからだ。 しかしその後が衝撃だった。 福島近くの宮城県、山形県に広がると、ついに新潟県の名前が出てきた。 「新潟県の牛の一部がセシウムに汚染した福島産稲わらを飼料として食べ、東京など10地域に流通した」という。 「福島牛肉」は避けたが「福島産稲わら」にやられるとは思ってもいなかった。 家族には話せなかった。

しかし福島産稲わらよりも怒りを感じたのは日本政府の対応だった。 日本政府はセシウム汚染最大許容値を牛肉1キロ当たり500ベクレルに決めた。 ドイツなど欧州国家(成人8ベクレル、子ども4ベクレル)に比べてなんと62-125倍も高い。 どう考えても非正常的だ。 さらに今回の「セシウム牛肉」からは最高4350ベクレルのセシウムが検出された。 土下座して国民に謝罪しても気がすまないほどのことだ。 ところが日本政府は高姿勢だった。 「長期間ずっとセシウム牛肉を食べない限り健康に影響はない」という言葉ばかり繰り返した。 原発周辺の稲わら一つきちんと管理できないにもかかわらずだ。 実におかしな国だ。

さらに理解できないことがある。 それは日本の国民だ。 飲食店・スーパー・給食を通して自分または子どもの口にセシウム牛肉が入ったというのに怒らない。 各メディアのサイトをチェックしたが、畜産農家や消費者の抗議デモがあったという記事は1件もなかった。 これほどになると非正常的というよりも非常識的だ

振り返ってみると、災害地域のゴミの山を片づけるとして予算を確保しておきながら、ほぼ5カ月が過ぎても実際の予算執行は7%にしかならず、寄付金が被災者にまだ20%も伝えられていないのも原因は同じだ。 国民が「これは間違っている」と怒らないため、政府が怠慢になり、勝手に隠蔽するのだ。 それでも我慢して政府の言う通り忠実に節電して汗を流す日本人をそばで見ていると遣る瀬ない。 日本政府が大韓航空利用禁止のような非常識なことをするのも、いわば牽制装置が作動していないからだ。 国民の怖さを知らないのだ。

実体もないBSE牛肉に興奮して社会全体を混乱させる韓国国民も覚せいしなければならないが、実体が明らかなセシウム牛肉を食べてもネズミが死んだかのように静かな日本国民はもっと大きな問題だ。 「日本人の皆さん、 少しは怒りましょう」。

岩手産の腐葉土に入っていたもの:放射性セシウム、タイ、ベトナム、バングラデシュの葉っぱ

秋田県で発覚した栃木産の高放射性腐葉土に次いで、鳥取県でも岩手産の腐葉土から栃木産よりもさらに高い、キロ当たり14800ベクレルの放射性セシウムが発見されました。

汚染していなかったであろう家庭菜園の土壌が、土壌改良・向上のための腐葉土で結局汚染されてしまったことになります。

が、鳥取県の発表をみてびっくり。腐葉土の原産地として上がっていたのは、

岩手県
タイ
ベトナム
バングラデシュ

え?葉っぱを東南アジアの亜熱帯性気候の国から輸入しているんですか?放射性物質は入っていないかもしれませんが、日本にはない微生物、菌などが葉っぱに付いて輸入され、それが腐葉土と共に日本に広がる、なんてことはないんでしょうか?今回の食品からの放射性物質検出の件でも分かったとおり、輸入品の全量検査など、していないでしょうから。

鳥取県の発表は以下の通り:

東北地方の植物等から生産された腐葉土から放射性物質が検出されたことについて

 栃木県産の腐葉土から高濃度の放射性セシウムが検出されたことを受け、本県としても県内の肥料取扱店に販売の自粛要請と販売状況の調査を行いました。
 この結果、岩手県等の植物等を原料として製造された腐葉土から高い放射性物質が検出されました。

県内で流通していた腐葉土の情報 New!

販売店:カインズホームFCウシオ鳥取店(鳥取市古海字西加路田590)
商品名:バーク入り腐葉土 14L (販売元:株式会社カインズ)
     ※当該製品の原産国は、タイ、ベトナム、バングラディッシュ、岩手県。

販売数量:329袋(6月~7月に329袋を販売。5月以前については調査中)
当該製品から検出された放射性物質の濃度

放射性物質の種類

測定値(Bq/kg)

備考

セシウム134

7,100

検体として1袋を検査
セシウム137

7,700

合計

14,800

福島の卵からセシウムが出ていた

テレビ朝日の7月26日『報道ステーション』。食品安全委員会が出した、生涯100ミリシーベルト被曝限度についてのレポートの冒頭に出てきます。

福島県川俣町で養鶏場を営む男性が福島県の民間ボランティア調査機関に持ち込んだ卵から、放射性セシウムがキロ当たり60ベクレル検出

男性は、「どう判断していいのか分からない。日本の暫定基準ではOKだが、ウクライナの基準と比べたら大変だ。」

ウクライナの基準と言うのは?というレポーターに答えて、男性は、「6ベクレル。」

「お客さんに何と言って説明したらいいか」と、男性は途方にくれた様子。

調査をした検査機関の男性は、「ここの人たちにとって、暫定基準値は、他に比べて高すぎる値です。」


20110726 食品安全基準 生涯で100mSv以上は‥ by PMG5

Tuesday, July 26, 2011

ドイツ気象局放射能拡散予測7月27日~29日と、予測をやめないでと頼むメールひな形

まずは拡散予測。ほぼ関東と東北に限定されていますが、29日になって北海道南部まで行っています。


ところで、世界の気象局の中で最後まで福島第1原発からの放射能拡散予測を出し続けていてくれたドイツ気象局も、7月29日で予測を終了する、というメッセージがサイトに出ています。

日本の気象庁がドイツ(やオーストリアやノルウェー)がやっているようなわかりやすいグラフィックスで出してくれないのが一番悪いのですが、それでも、ドイツ気象局に、続けていてもらえないだろうか、と頼んで見ることにしました。だめでもともと。ドイツ語の作文力はずいぶんと落ちましたので(読めますが書けません)、英語で書きました。適宜取捨選択してお使い下さっても結構です。

日本語でもかまわないと思います。(わけの分からない言語でメールがどっと行くのも効果的かも。)

メールのあて先: info@dwd.de

タイトル: Your radiation dispersion map of Fukushima

長いバージョン(私が出したのはこっち)

Dear Sirs,

I, along with many people in Japan, have depended on your radiation dispersion map ever since the accident started at Fukushima I Nuclear Power Plant in March so that we have a better idea of the radiation situation and take protective measures as we see fit. In the early days of the crisis, many were able to avoid or minimize exposure to radioactive fallout from the plant thanks to your map. But I've noticed the message on your web page that you will discontinue the map as of July 29. I'm writing to you today to ask you please to reconsider your decision.

If you stop publishing the map, we will have no way of knowing what may be falling on us, now that all the other foreign weather bureaus have stopped publishing the similar maps. It should be the job of the Japan Meteorological Agency to inform the residents of Japan of the continuing radioactive fallout in a manner that is easy to understand, but unfortunately the Agency has never done that since the accident. We'll keep demanding that the Agency do so, but in the meantime, please continue the forecast for us. We could ill-afford to lose another very trustworthy source of information like yours.

Best regards,

(name, location in Japan)

短いバージョン(これでも十分。上の長いバージョンを要約したようなもんです。)

Dear Sirs,

Please don't stop the dispersion map of Fukushima. I depend on your map every day. It has helped me plan my days, and you are the only one left in the world that publishes such a map. Please continue.

Best regards,

(name, location in Japan)

福島県「脱原発」後:世界最先端の放射線医療、放射能除去技術、再生エネルギー

福島県知事が「脱原発」を言い出したときに、フーン、これは新たな目処が付いたか、と思っていましたが、やっぱり?

読売新聞によると、政府の復興基本方針で、政府系研究機関が大挙して福島県へ、とのこと。(いっそ官邸も国会も霞ヶ関も移したらどうですかね。東電本店も。)

既に1千億円の研究費を引っさげて、世界一の被曝研究をすべく山下「100ミリシーベルトまで大丈夫」俊一教授が福島医科大にいらっしゃいますし、また世界に冠たる放射能汚染除染技術などを共同研究・開発するために、福島大学と日本原子力研究開発機構が協定を既に結んでいます。日本原研と言えば、敦賀の高速増殖炉もんじゅで有名(というか悪名)ですね。

国の機関が大挙して福島入りするのは、福島県の土地、水、空気、人、動物、作物、森や山全てを実験場にして、国の後押しで世界に推進する新たな技術を作り出すためではないか、と思わせるような記事です。当然、大手重電、重機メーカー、電力会社、大手製薬会社などからの資金的、人的バックアップが不可欠です。結局、原子力を推進してきた政府・産業界の「挙国体制」が、原子力事故の後始末まで含めたトータルパッケージを生み出そうとしているだけなのでしょうか。

(そういえば2009年に楢葉町が核燃料の最終処分場候補地に名乗りを上げていたんですね。モンゴルに行くまでもなく、最終処分場まで含めた原発売り込みトータルパッケージが出来ます。)

読売新聞7月27日(03時03分)付け記事

東日本大震災の復興に向け、政府が今月末に取りまとめる復興基本方針の最終案が26日、明らかになった。

原発被害に苦しむ福島県に、医療や再生可能エネルギーにかかわる研究開発の拠点を整備し、政府系研究機関の関連部門の進出を進めることで復興を後押しする考えを打ち出した。住宅の再建が難しい被災者には、低家賃の「災害公営住宅」を提供することも盛り込んだ。政府は29日にも復興対策本部を開き、方針を正式決定する。

 最終案では、原子力災害の復旧・復興について「国が責任を持って対応する」と明記。放射性物質に汚染された土壌の除染や災害廃棄物の最終処分については、「必要な措置を講じる」とした。また、福島県に「世界をリードする医薬品・医療機器の研究開発拠点」や「再生可能エネルギーの世界最先端の研究拠点」を整備し、関連産業の集積を目指す考えを示した。自宅を失った被災者には「災害公営住宅」を提供し、希望する入居者には将来的に売却する構想も盛り込んだ。

牛の排せつ物原料の堆肥、利用自粛通知

数日前に、「セシウム汚染牛の糞はどこへ行った?」と書きましたが、やっぱり。

もう使っちゃった分はしっかり作物、植物に移行するんでしょうね。「後手後手」を絵に描いたような政府の対応。福島県南相馬市産の牛肉から食品衛生法の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)の約5倍に当たる2300ベクレルの放射性セシウムが検出されたのは今月の8日。農水省が「糞」にたどり着くまで2週間以上かかりました。

英インデペンデント紙の若い原発作業員の言ではありませんが、「現場を知らない」ホワイト・カラーのデスクワークの農水省では、早く見つけろ、と言っても無理なのでしょう。

「現場を知らない」私も農水省と同じで、自分のブログに付いたコメントを読むまで気づきませんでした。

読売新聞7月26日付け記事

農林水産省は26日、牛の排せつ物などを原料にして東北、関東地方の17都県で作られた堆肥について、利用自粛を全都道府県に通知したと発表した。

 稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出された問題を受け、牛の排せつ物にも同セシウムが含有している恐れがあると判断したため。同省は、「汚染 された排せつ物が土壌や、農作物を汚染する可能性がある」として、使用可能な堆肥の同セシウム含有割合などの基準づくりを急ぐ。

英インデペンデント紙:若い原発労働者-将来を犠牲にしてでも原発を止める意気込み

英国のインデペンデント紙に7月26日付けで掲載されている記事です。ワタナベアツシ(仮名)さんという20代の作業員に焦点を当て、福島第1原発での下請け作業員の現実を描写しています。先日やはり英国のガーディアン紙が「原発ジプシー」と題して記事を出しましたが(私訳はこちら)、インデペンデントの記事はワタナベさんの言葉で事故当時の様子が語られ、ワタナベさんが理解する原発作業員の現状などが記載されているなど、ガーディアンとはまた違った面白さです。

いろいろ制限があるにせよ、日本の報道は原発作業員のことを記事にする時は大抵が名無しの集団としての作業員であることがほとんどですが、海外の報道は「個人の人間」を描写するのに長じているような気がします。

(しかし、月給たった18万円というのはいくらなんでもひどすぎませんか?)

元の英語記事はこちらです

以下、インデペンデント紙記事(デビッド・マクニール記者)、大急ぎの私訳。
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若い原発労働者-自分の将来を犠牲にしてでも原発を止める意気込み

2011年7月26日
デビッド・マクニール(David McNeill)

ワタナベアツシさん(仮名)は普通の日本の20代の若者だ。背の高さは普通、がっしりとした体格で、生まれながらの懐疑主義者とでもいうような困惑した表情を見せる。東京の人ごみの中で、カジュアルな黒の服を着ている様は、非番の郵便配達夫か建設作業員のようにも見える。しかし、彼の仕事は地球上でも例のない類の仕事なのだ。それは、福島第1原子力発電所を止める、という仕事。

この仕事を、日本の3月11日の地震・津波の後で世界初の原子炉3重メルトダウンを起した発電所で行う、ということは、将来の健康問題への不安から彼は結婚したり子供を持ったりすることはなく、高齢になるまで生きることが出来ないかもしれない、ということを意味する。しかし、彼はそれを受け入れる。「この仕事が出来る人間は限られているんだ」、と彼は言う。「自分は独身で若いし、この問題を何とかするのが自分の義務だと思う。」

ワタナベさんは10年以上前に学校を出てからずっと、福島第1原発でメンテナンス作業員として働いている。彼が成長した1990年代には、1971年に原発の建設を決定した際の激しい論争や反対運動の記憶も薄れていた。高校を卒業したとき、就職先については家族の中でほとんど議論も出なかった。「まったく当たり前の選択だった」、とワタナベさんは言う。ワタナベ、というのは彼の仮名だが、仮名を使うのは彼の雇用主がメディアのインタビューを許可しないためだ。「第1原発は地元の空気みたいなものだった。怖いとは思わなかった。」

彼の仕事は、弁を開閉して配管内の圧力をチェックすること。仕事は好きだった。重要な仕事だと思っていた。「自分たちは安全なエネルギーを日本に、東京に供給する大事な使命を負っているんだ、と思っていた。それが自慢だった。」

月給は18万円だった。4月に福島第1原発に戻ることに同意して以来の月給も同じ額、それに毎日千円の手当てが付く。彼は「昼飯代」と呼ぶ。

3月11日、地震で原発が機能不全に陥ったとき、彼の周りで配管がシューシューと音を立てて捻じ曲がるのを見て、彼は恐ろしくなった、と言う。1週間、避難所ですごした彼は、上司から仕事に戻って来い、と必ず連絡が来るだろうと思っていた。連絡が来たとき、かれはすぐに同意した。誰にも選択権は与えられた。子供のいる既婚者に対する暗黙の同情は必然的にあったが。

原発の運転者である東京電力の下請けとして、彼と彼の同僚は雇用の食物連鎖のずっと下のほうに位置する。東電の正社員たちが食物連鎖のトップ。彼らはほとんどがホワイト・カラーの大学卒で、給料も条件も好い。東電の管理職、それには今回の危機の最中に姿をくらまし国中の笑いものになった清水正孝社長も含まれるが、実際に原発を動かしているブルーカラー労働者とは違って彼らは事務職のインテリ、という風にとられられている。

「(清水さんは)現場で働いたこともないし問題に直面したこともない。だからトラブルになったとき最初の本能は逃げることだったんだ」、とワタナベさんは言う。が、東電のボスに同情こそすれ軽蔑はしていない、とも言う。「ああいう人を追い詰めすぎると、自殺するかもしれないからね。」

最初の内、日雇労働者の数人かは原発の非常に高汚染された空気をものともせずに働いた報酬として、大金を与えられた、と彼は言う。「一日100ミリシーベルトじゃあほんの数日しか働けない。一日で一月分の給料じゃなきゃ、割りに合わない。会社は彼らを黙らせるために払っていた。将来白血病だの、他のがんにかかった場合を考えてね。自分には健康保険がある。日雇い労働者じゃなくて、社員だからね。」

ワタナベさんは、チェルノブイリ以来世界最悪の原子力災害が収束している、とするのは時期尚早だと言う。日本政府は先週、来年1月までに福島原発を収束させる工程は予定通りと発表した。しかし、東電によると、原発からは未だに一時間当り10億ベクレルの放射能が放出され続けており、壊れた3つの原子炉内のウラン燃料の状態は謎のままである。

「燃料は溶けた。でもそれが貫通したかどうか、分からない」、とワタナベさんは言う。「原子炉の底に落ちている。これが底を溶かして外に出て水と接触したら、とんでもないことになる。エンジニアの人たちが何とかしてコントロールしようと努力をしている。」

研究者たちは既に福島入りしている。福島県の人口は200万人。原発から出た放射能が人々に与える影響を調べるためだ。ウクライナのチェルノブイリ原発周辺の放射能に汚染された地域で10年以上研究をしたサウス・カロライナ大学の生物学者Tim Mousseau氏も、先週福島にいた。「いま私たちが言えることは、長期の被曝による健康への長期的な影響は、おそらく非常に著しいものになるだろう、と言うことです。」

ワタナベさんは、結婚するのをあきらめている。「女の人に、自分と人生を共にしてくれなんて言えない」、と彼は言う。「仕事のことを話せば、将来の健康、子供がどうなるか、心配するだろう。仕事を隠すわけにも行かない。」

なぜ人は危険で、死に至る可能性のあるような仕事をするのだろうか?ワタナベさんのように、「国」や「社会」への義務だ、と考える人々もいるかもしれない。勇気の誇示、という要素があることも否めない。ワタナベさんは、自分たちを侵略とその結果の大惨事に対する最後の防衛線として見た戦時中の若い神風特攻隊のパイロットに、自分を喩えている。

しかし理由はどうあれ、ワタナベさんは、彼の働く業界のトップとは比べ物にならないほど謙虚で、人情豊かで、ユーモアがある。若い会社事務員とほぼ同じ手取りで、彼と彼の同僚は普通の生活をするのをあきらめている。彼は総理大臣に会ったこともないし、地元の県知事にも、東電の社長にも会ったこがない。将来子供を持つこともないし、若くして死ぬかもしれない。別の世界では、彼は、ウォールストリートのトレーダーと同じくらい高給を取っているかもしれない。そう言うと、彼は笑う。

「自分が退職するときには、多分ペンとタオルだろうね」、と彼は言う。「それが仕事の報酬だ。」

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Monday, July 25, 2011

微量セシウム検出の熊本の豚は福島県川俣町産だった

中鬼さんのTweetで知りました。Tweetのリンク先は「女性自身」7月26日付け記事

7月15日、熊本県が豚から初めて放射性セシウムを検出したと発表した。牛肉だけでなく、豚肉までセシウムに汚染されたものが全国各地に流通していることが明らかになったのだ。

地元紙記者は「今回、解体された豚は、福島県川俣町で飼育されたものなのです」と語るが、福島県の養豚組合の担当者は「牛と違い豚には個体識別番号はあり ませんので、出荷地が生産地になってしまいます」と説明する。つまり、移送された豚は「福島県産」とはならず、食肉として出荷された地域からの「他県産」 となってしまうということだ。

前出の養豚組合の担当者は「これまで緊急時避難準備区域と計画的避難区域から約1万頭が県外へと移動しています。出荷されたのは、主に長野県や群馬県、新潟県、熊本県など。いずれも避難先の県産として出荷されています」と明かす。

政府や県はこの事実を知った上で、豚の県外移動を認めている。食卓を守るために消費者が頼るのは産地表示。だが、「○○県産」だから大丈夫、というような判断は信用できなくなっているということなのだ。本誌では、飼育業者が食肉流通の実態を激白!

え、発表してたんですか?という私同様の方々へ、厚労省のサイトに出ていた7月15日付け資料があります。これは、熊本県健康福祉部健康危機管理課が出した報道資料で、

  • 福島県産の豚が熊本県でと畜されたので、県と熊本市で放射性物質の測定をした。

  • と畜された豚は、福島県伊達郡川俣町(計画的避難区域)で飼養されていたものを、繁殖用として県内農場が6月に購入した15頭のうち2頭。

  • 1頭からは、6.6ベクレル、もう1頭からは10.1ベクレルの放射性セシウムが検出された。

  • 国の暫定基準以下なので、健康に影響を与えるものではない。

  • 自然放射線量2.4ミリシーベルトの約1万8千分の1である。

  • 福島県から購入された豚は全て福島県で、外部被曝放射線量の測定が実施されており、全頭無検出だった。

自然放射線量2.4ミリシーベルト、などと、未だに間違えて書いている公務員の方もいらっしゃるんですね。あれは世界平均です。日本平均は1.5ミリシーベルト。また、この担当の方々がお医者さんでもない限り、「健康に影響を与えるものではない」などと医学上のアドバイスをしてはいけないのではないかと思いますが、まあ、枝野官房長官などは最初から言い続けてますから、県の担当の方々が同じことを繰り返すのは無理のないことでしょう。


福島医大副学長山下俊一教授:「世界でも類を見ない甲状腺検査だ」

わくわくしている教授が目に浮かぶようです。世界に冠たる何とやら、というのは日本が昔から好きだった言葉ですが、今回の場合、何とも不謹慎に聞こえるのはなぜでしょう。

東京新聞7月25日夕刊記事

甲状腺を生涯検査 福島県、18歳以下36万人

東京電力福島第一原発事故を受け福島県は二十四日、全県民健康調査の一環として、原発事故発生時ゼロ~十八歳の子ども全員を対象に甲状腺超音波検査を二年ごとに実施、二十歳に達してからは五年ごとにチェックしていく仕組みを決めた。対象は約三十六万人に上る見通し。

 一九八六年のチェルノブイリ原発事故で放射性ヨウ素の内部被ばくによる子どもの甲状腺がんが増加したことから、福島県では保護者に不安が広がっており、県は継続的な子どもの甲状腺検査が必要と判断した。

 同日、福島市で開かれた検討委員会で合意。座長の山下俊一福島県立医大副学長は「世界でも類を見ない甲状腺検査だ」と述べた。県は「生涯にわたって県民の健康を見守る」としている。

 検討委によると、検査は甲状腺に異常がないか超音波で調べ、病変が見つかった場合は県立医大(福島市)などで採血、尿検査のほか、病変の種類を見極める細胞診を実施する、というのが一連の流れ。

 今年十月から開始。放射線による影響が表れるまでに時間がかかるとみられるため、二〇一四年三月までにいったん完了し、同四月からは二年ごとに検査。二十歳に達してからは五年ごとに健康診断を行う。

Sunday, July 24, 2011

東京の放射線の私的測定by院長先生

熊本の院長先生が東京への野暮用ついでに線量計で放射線を計測。「まじめにはかったわけではありませんので、参考程度に」とのことですのでお含みおきを。

放射線、公表されているものよりも高めですね。以下、ブログポストから測定値を拾って見ました。

新橋駅のプラットフォームのベンチ: 0.22マイクロシーベルト時

ガード下: 0.31マイクロシーベルト時

東電本店前: 0.24マイクロシーベルト時

東電本店裏門: 0.19マイクロシーベルト時

内幸町交差点: 0.24マイクロシーベルト時

Hibiya City前: 0.26マイクロシーベルト時

霞ヶ関中央官庁街: 0.29~0.48マイクロシーベルト時

資源エネルギー庁裏: 0.27マイクロシーベルト時

http://onodekita.sblo.jp/article/46936319.html

肥田舜太郎さん講演「内部被ばくがもたらすもの」

7月15日の講演です。

内部被曝には、「安全区域」はない。入ったら、生涯影響を受け続ける。放射線の被害については、現在の医学では診断法もなければ治療法もない。

肥田舜太郎さんは、

「1917年広島生まれ。1944年陸軍医学校卒。軍医少尉として広島陸軍病院に赴任。1945年広島にて被ばく。被ばく者救援にあたる。全日本民医連理 事、埼玉民医連会長などを歴任。全日本民医連会長などを歴任。全日本民医連顧問、日本被団協原爆被害者中央相談所理事長。鎌仲ひとみ氏との共著『内部被ば くの脅威』(ちくま新書)は内部被ばくのメカニズムを解き明かし、その脅威の実相に迫る」









Video streaming by Ustream

Saturday, July 23, 2011

セシウム汚染牛の糞はどこへ行った?

英語ブログの「セシウム汚染わらを食べた牛2600頭を超える」ポスト(英語)に付いたコメント:

「口から入ったものはいずれ出る。汚染わらを食べた牛の糞はどうしたんだろう?わらから最高でキロ70万ベクレル近いセシウムが出ているとすると...」

牛糞は堆肥になっているのでは?畜産農家への取材記事でも、米作農家から稲わらをもらう代わりに堆肥をあげる、という記載があったのを記憶していますが、誰か、どこかでこの堆肥の放射線、測ってないでしょうね...。

Friday, July 22, 2011

汚染牛問題、消費者団体まで生産者、業界、政府の味方:「多額の税金で肉を買い上げ焼却することが必要か」

福島第1原発事故以来、政府、関係省庁は徹底して生産者、企業、団体、地方自治体政府の便宜を図るものなのだ、ということが分かってきた方も増えていると思います。

原子力安全委員会、経済産業省の原子力安全保安院は結局原発事業者(電力会社)が安全に仕事が出来るように監視する、農水省は生産者が農作物、魚、肉などを問題なく出荷できるよう便宜を図る、文科省は学校の運営を助けるために生徒の被曝基準を引き上げる、環境庁は高放射線量の地方自治体が高放射能の汚泥、ごみの焼却灰を埋められるよう、基準を大幅に緩和する。

では、環境の放射能を気にしながら食材を選ばざるを得ない消費者の味方はいるのか?残念ながら答えはノーのようです。

毎日新聞7月23日付けで、「クローズアップ2011:セシウム汚染 牛肉価格下落、拡大」という記事が出ています。稲わら、牛肉のセシウム汚染が広がるにつれて牛肉の取引価格が暴落、生産農家だけでなく小売業者、卸売業者までもが苦境に陥っている、このままでは食肉業界壊滅だ、という記載の後、消費者団体のトップのコメントが出ています。

一応期待はしてみたのです。内部被曝の影響はいろいろな見解があってよく分からないようだが、安全に越したことはないので、と消費者の側に立った発言が多少はあるかと。保育園児、幼稚園児まで汚染牛肉を知らない間に食べさせられていたこともあるし、少なくとも子供は守ろう、ぐらい言うかな、と。

大はずれ。それどころか、彼女たちは消費者を叱ります。毎日新聞によると(強調は私)、

放射線への不安と業界の苦悩を、消費者はどう受け止めればいいのか。

 消費者団体「食のコミュニケーション円卓会議」(東京)の市川まりこ代表は「専門家は今発覚している程度の汚染肉を少量食べても健康に問題ないと 言っている。全頭検査は福島では必要かもしれないが、多額の税金で肉を買い上げ焼却することが必要か、議論すべきだ」。消費科学連合会の犬伏由利子副会長 は「米国でBSEが問題になった時は国産牛の信頼が高まったことを思い出してほしい。日本の畜産業がだめになれば自分たちの首を絞めることになる」と冷静な消費行動を呼びかける。

 一方、東京消費者団体連絡センターの矢野洋子事務局長は「行政やマスコミが数値を丁寧に説明するなど正しい情報を提供することが不安払拭(ふっしょく)につながる」と話した。

要するに、専門家の言うことを信じないで大騒ぎしていると消費者のせいで日本の畜産業がだめになる、政府やマスコミが正しい情報を出せば済むことだ、と。

消費者団体「食のコミュニケーション円卓会議」市川まりこさんは特にすごいですね。「多額の税金で肉を買い上げ焼却することが必要か」。これは、高線量を心配する柏市市民に対して「多大の人員と費用を掛けて、年間1mSV以下にすることは無駄な努力」と言い放った東北大学名誉教授中村尚司さんと同列。

一消費者にしか過ぎない市民は、自分で身を守るしかないようです。

エネルギー庁、国民の税金で国民の言論活動を監視

原発推進は黒い雨が降ろうと風が吹こうと原子炉が吹っ飛ぼうと続けます。例の指南書、いまだ健在?多分インターネットに対応してバージョンアップしているのでしょう。

東京新聞7月23日付け記事

エネ庁が原発記事監視 4年で1億3000万円

経済産業省資源エネルギー庁が原発に関するメディア情報を監視してきたことが、本紙の調べで分かった。本年度発注分を含めると、外部委託費の総額は四年間に約一億三千万円に上る。昨年度までは、いずれも電力会社役員らが理事を務める財団法人が受注していた。

 同庁の資料などによると、昨年度までの三年間は「電源立地推進調整等事業(即応型情報提供事業)」として、新聞や雑誌の記事を監視する事業を年約一千万~約二千四百万円で外部委託していた。

 委託先は、東京電力の勝俣恒久会長が非常勤の理事を務める「日本科学技術振興財団」や、経産省原子力安全・保安院のOBや元原子力安全委員会委員長らが役員になっている「エネルギー総合工学研究所」といった財団法人ばかりだった。

 事業は、一部に同庁ホームページ(HP)にあるQ&Aコーナーの更新が含まれているが、主には「不正確または不適切な報道を行ったメディアに訂正情報を送る」こと。ただ同庁によると、メディアに訂正を求めたことは一度もない。

 Q&Aのページは現在、福島第一原発の事故を受けて「苦情が多く寄せられたため」(担当者)閉鎖されている。

 本年度は震災に伴う第一次補正予算に「ネット上の不正確情報の監視」として八千三百万円を計上。

 十五日には委託先を決める入札が行われ、広告代理店が落札した。

 福島第一原発の事故で原発への不安が大きくなり、ネット上で情報が乱れ飛んだことを受け、従来の新聞記事の監視を縮小し、一般市民がツイッターやブログなどを通じて発信する情報の監視に重点を置く。

 監視により「不正確または不適切な情報」が見つかった場合は、原子力の専門家などのアドバイスをもとに、同庁HPに、その情報を打ち消すような内容を掲載するとしている。

 資源エネルギー庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の話 原子力について正確に報道されていない場合もある。報道内容を把握し、適切な広報のあり方を検討するため続けている。

落札した広告代理店、さてどこでしょう?

政府の作った「メルトスルー(炉心貫通)」アニメ

メルトダウン、メルトスルーなど、カタカナ英語がいまいち実感できない皆様へ、経済産業省所轄団体である独立行政法人・原子力安全基盤機構が原子力防災専門官向け資料として作成していた、炉心溶融(メルトダウン)、炉心貫通(メルトスルー)のシミュレーションアニメがあります。

福島事故の前には作成されていたとのことですが、どれだけ前かは不明。

よっくご覧ください。まるで福島第一原発1号機を想定したかのようなアニメ。マークI型沸騰水型原子炉で、制御棒が挿入されて原子炉が止まった後、炉心冷却に全て失敗した場合、どのようなことが起こるか。

事故の設定は、原子炉圧力容器につながる大きな配管が破断し、大量の放射性物質が環境に放出される事故。

  1. 配管破断、冷却水が漏洩。
  2. 炉心露出。
  3. 炉心中央部燃料溶融 (事故後30分)。
  4. 溶融燃料、圧力容器下部に到達 (事故後1時間)。
  5. 溶融燃料、12-15センチの厚さの圧力容器を貫通(事故後3時間)、圧力容器を支えるペデスタル中間床面に落下、コンクリートの床を侵食しながらガスを発生させる。
  6. ガスの発生によって、格納容器内の圧力、温度が上昇。
  7. 更に、ペデスタル貫通、その下部のコンクリート床面に落下。
  8. 圧力が格納容器の限界を超えると、フランジ部から原子力建屋内にガスが充満
  9. 原子炉建屋を通じて環境に放出される。

事故後30分で溶け出し、1時間で圧力容器下部へ落ち、3時間で圧力容器を貫通して、その下のコンクリートに落ち、コンクリを溶かして更に下に落ちる。

政府も、東電も、原子力専門家も、知っていたんですね。知らぬは無知な国民ばかり。

このアニメを見て気が付いたことが2点:

  • 冷却水を注入できなくなって炉心が露出したら、後はもう時間の問題で、あっという間に溶け、圧力容器の鋼鉄、格納容器のコンクリートを溶かしてガスを出す。冷却が出来ない限り、このプロセスを止めることは出来ない。

  • 溶融燃料がコンクリの床面に落ちた時点でやっとガスの言及をし、さらに放射性物質が排気塔から環境に放出される図を出している。

ということは、福島の1号機でベントの指示をした時点で、既に溶融燃料はコンクリートの床面を溶かしていた??

だから京大の小出さんなどは早くから、溶融燃料はとっくに圧力容器から出て、格納容器からも出ている、と推量していたわけですか。

福島第1原発原子炉で今「冷却」しているものはいったい何で、それはどこにあるのでしょうね。それに一切言及せずに、「ステップ1」が成功裏に終了、と言われても、はいそうですか、と納得する人はいないでしょう。


何度かこのブログでも言及したと思いますが、溶融燃料(というか、燃料、制御棒、圧力容器内機材、圧力容器自体などが全部溶けた物)、”Corium”の解説は英語版のWikipediaに詳しく出ています。燃料被覆管(”Cladding” ”Zirconium alloy”)の説明も詳しく出ています。福島第1号機が爆発した後、私が読んでみたのがWikiのこれらの項目。燃料が溶けて落っこちていないわけはない、と3月の時点で日本の友人に言いましたが、取り合ってもらえませんでしたね。政府はそんなこと言っていない、ということで。古きよき3月でした。

Thursday, July 21, 2011

フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセン:深刻な放射能汚染と福島の「黒い雨」

フェアウィンズアソシエーツ、アーニー・ガンダーセン氏の7月19日付けビデオ全訳です。福島第1原発の状況まとめの後、放射能汚染の深刻さを日本人がまだ理解していないのではないか、と指摘、最後に「黒い雨」が放射能を稲わらの上に振りまいたのだ、という元原子力安全委員会事務局の専門家の言を引用しています。当然稲わらだけでなく、そのとき外にあった物、人、全てに振りまかれた、ということになります。ビデオの最後の方で、ガンダーセン氏はこう警鐘を鳴らしています:

「日本人は自分たちが直面している問題の大きさに気づく必要があります。そうでなければ適切に対処することはできません」



Ex Japanese Nuclear Regulator Blames Radioactive Animal Feed on "Black Rain" from Fairewinds Associates on Vimeo.



「元原子力安全委員会事務局が稲わら汚染の原因を『黒い雨』のせいと指摘」

こんにちは。フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。今日は7月19日火曜日です。今日お話したいのは、まず福島第一原発の原子炉の現状についてと、もっと重要な問題ですが放射性物質が福島だけでなく日本中で検出されている件について、そして日本で「黒い雨」と呼ばれ始めているものについてです。

まず原発自体の現状からです。1号機から3号機までのすべての原子炉と4号機の燃料プールからは、放射性物質が放出され続けています。日中は暑いために放射性物質の放出を目で見ることはできませんが、夜になれば見えます。これについては、原子炉が爆発したのではないかとたくさんのメールをもらっていますが、あれは原子炉から立ち上る蒸気が太平洋からの冷たい空気にぶつかったものです。いずれにせよ放射性物質の放出は続いています。

とはいえ、福島からの放射性物質のほとんどは3月と4月に放出されました。現時点では、一日あたりの放出量は3月や4月よりもはるかに少なくなっています。福島からの放射性物質の約90~95%は事故後最初の6週間で放出されました。今も放
出は続いているとはいえ、日々の放出量で見たら当初とは比べ物になりません。その一方で、福島からは今後も長期にわたって放射性物質が放出され続けるおそれがあります。

日本では大きなテントを作って各建屋にかぶせる計画を立てています。現在は最初のテントを製造中で、1号機にかぶせる予定です。それから順次2号機、3号機と移って、最終的には4号機にもテントをかぶせます。テントをかぶせる目的は、蒸気が外に出るのを防ぎ、蒸気を水にして集め、その水を処理することにあります。これにより、9月以降は福島から空気中への放射性物質の放出はほとんどなくなります。少なくとも1号機からは。

しかし、放射性物質の多くは汚染された地下水と現場の汚水となり、当分のあいだはそれを除去する手立てがありません。それどころか日本政府は、格納容器の底に落ちた炉心を取り出す作業に「着手する」までにあと10年かかると発表しています。今はまだ炉心を取り出す技術が存在しないのです。思い出していただきたいのですが、燃料は原子炉を突き抜けて「メルトスルー」して格納容器の底に落ちました。スリーマイル島の事故のときは、燃料が溶けて原子炉の底に落ちましたが、メルトスルーはしていません。ですから今回のような状況には前例がないのです。

この作業は、フライパンの底にこびりついた卵を剥がすようなものです。加熱時間が長ければ、剥がすのはそれだけ難しくなります。私たちが直面しているのはそういう状況です。原子炉をきれいにするのには長い時間がかかります。また、それと並行して膨大な量の放射能汚染水の処理も進めなければなりませんが、これには10年か、場合によっては20年かかるかもしれません。

私がそれ以上に心配しているのは、最近になって原発以外の地域から聞こえてくる情報です。私の友人で、チェルノブイリでも仕事をした生物学者数名が、調査のために日本に行きました。彼らは日本がひどい状況にあることは想像していましたが、今週私に電話をかけてきて「状況は本当に本当に深刻だ」と話しました。彼らは筋金入りの科学者で、放射線の問題を扱うのにも慣れています。にもかかわらず、福島の状況は彼らの予想をはるかに超えるひどさだと言うのです。

その言葉を裏づける証拠も得られてきています。最初はシイタケです。原発から50~60kmくらい離れた地域で、日本の基準値を大きく超える放射性物質が検出されました。興味深いのは、そのシイタケが「屋内で」栽培されていたということです。なぜ屋内で栽培されたシイタケから基準値を超える放射性物質が検出されるのでしょうか。これは非常に憂慮すべき状況です。もう一度言いますが、原発から55km程度離れた地域で起きたことなのです。

2つ目の証拠は、福島県各地と福島県外で汚染牛が見つかっていることです。最初は8頭の牛に汚染が確認されたと伝えられ、やがてそれが40頭になり、130頭以上になりました。この数は時間とともに間違いなく増えると思います。[1400頭以上です。]この問題でいくつか注目したいのは、まず汚染牛が原発から50~60kmくらい離れたところで見つかっていること。そして検出されたセシウムの量が、これまでに定められた食品のいかなる基準をもはるかに上回る高レベルだったことです。

汚染牛が売られるとき、日本政府は肉のサンプリング検査をしませんでした。牛の皮をこすった上で外側から被曝の有無を確認しただけです。被曝が確認されなかったので市場で売られました。売られたあとでようやく肉の汚染が明らかになったのです。このようなやり方は、牛肉の汚染を調べる方法として容認できるものではありません。

ですがもっと重要な問題は、牛はどこで放射性物質を取り込んだのかという点です。アメリカの皆さんは牛の餌にはサイレージ、つまり原発事故前に貯蔵しておいた牧草が与えられると思うでしょうが、日本では牛の餌に稲のわらを使っているのです。70km以上離れた農家が稲を刈ってできたわらを、福島県内の農家に出荷していたのです。その稲わらは、1kg当たりの崩壊数が毎秒50万個(つまり50万ベクレル)でした。これはセシウムですので半減期は30年です。つまり、今から30年たってもまだ25万ベクレルの放射能があるということです。さらにその30年後に12万5000ベクレルになる。それが半減期という言葉の意味です。

これは原発から約70km離れた場所での話です。米国原子力規制委員会(NRC)が当初、原発から半径80km圏内のアメリカ市民を避難させるべきだと提言したのを覚えているでしょうか。どうやらNRCは正しかったようです。日本政府は20km~30kmで止めずに、80km圏内の住民を避難させるべきでした。放射能汚染は福島県外にも広がっています。にもかかわらず、日本政府が放射線被曝を心配しているのは福島県だけについてのようです。

今日最後にお話したいのは、その80km圏外で何が起きているかです。汚染された稲わらが見つかったことからもすでに明らかなように、80km圏外であってもチェルノブイリ並みに汚染されている地域が存在します。たとえば東京[首都圏]はどうでしょうか。私は東京についても心配しています。ひとつには、東京の汚水処理施設で放射性物質に汚染された汚泥が見つかっているからです。通常であれば汚泥は建設用資材に加工されますが、今回は放射線レベルがあまりに高いため、処分方法が決まるまでは防水シートをかけて屋外で保管するしかありません。

そしてもうひとつ、ある日本人の方が私宛てに検査報告書を送ってくれました。東京[首都圏]の公園近くの道で採取した土を、この方が直接研究所に持ち込み、自分でお金を払ってデータ分析を依頼したのです。これがその報告書です。東京の公園近くの土から、キロ当たり約53,000ベクレルの放射能が検出されています。この方は非常に心配になったので、市長を訪ねました。ところが市長の返事は「私は心配していない」というものでした。

一市民が、身銭を切って研究所に検査を依頼したにもかかわらず、市に訴えてもまったくらちがあかなかったのです。

さらにもうひとつデータがあります。やはり東京の近くにある国立がん研究センターの病院からです。これは病院のウェブサイトに事故の数日後から掲載されているデータです。この報告書を見ると、事故から9日後の3月24日に計測された屋外の背景放射線量が、屋内の背景放射線量の30倍に達しています[表を見ると実際は約36.6倍]。ホットパーティクル(高放射能粒子)が土に降り、それによって線量が高まったため、測定器が検知して屋内の30倍という数値を記録したのです。国立がん研究センターですから、線量を測る方法は間違いなく心得ているはずです。ですから熟練した研究者によって計測されたデータです。

最後にもうひとつレポートをご紹介します。私は毎日、日本の著名な物理学者であるグレン佐治博士[おそらく、佐治悦郎さんと思われる]からメールをもらいます。佐治博士はかつて原子力安全委員会の事務局を務めていました。彼は2日前のメールでこう書いています。汚染された稲わらが見つかった件についてです。

「汚染の原因は、事故後一週間の間に放射能の雲が通過したときに稲わらを屋外で保管していたためであり、とくに『黒い雨』のせいであると考えます」

佐治博士が「黒い雨」という言葉を軽々しく使うとは思えません。事故後の日本に「黒い雨」が降ったのは明らかです。つまり、博士が言うのは、高放射能の雲が日本の北半分の至る所にホットパーティクルを落とした、ということなのです。

日本人は臨機応変な国民です。そのことは、日曜日のワールドカップサッカーの勝利からもわかります。しかし、日本人は自分たちが直面している問題の大きさに気づく必要があります。そうでなければ適切に対処することはできません。情報を制限するのではなく、放射性物質を制限することが重要です。

ありがとうございました。またお目にかかりましょう。


(H/T東京茶とら猫


ドイツ気象局放射能拡散予測7月21日~23日

21日に福島から西に横断、佐渡島を突っ切って伸びたオレンジの帯は、23日には反時計回りに関東に下り、太平洋に抜けています。


「生涯被曝100ミリシーベルト基準」 食品安全委の事務局案、来週にも厚労省に提出

現時点でどれだけ外部被曝、内部被曝をしているのかろくに分からない状態で、「生涯被曝100ミリシーベルト」までは安全だということにします、と政府に言われて、はいそうですか、と安心しますか?

「どれだけ人々が被曝しているか、土地が、水が、食物が汚染されているか、分からないしとんでもなく多いかもしれない、ここは100ミリシーベルトという一応大きな数字を出して、これを「生涯の積算」ということにしておけば、当分は大丈夫だろう(つまり、だませるだろう)、そのうち放射能も収まるか、みんなが忘れてくれるか、どっちかだろう」、というのが、政府の考えのわたしなりの汲み受け。(まず後者でしょう。)

また、「発がん影響」だけ言及しているのも、妙ですね。放射線の影響はがんだけではないのですが。

原発作業員の年間最大許容被曝量50ミリシーベルトを撤廃しておいて、5年間で100ミリシーベルトの積算被曝量は守る、としたのと似た考えですね。今年さえ何とか乗り切れば(だませれば)あとは適当に何とかなるか、忘れるか。

今や福島医大の副学長でいらっしゃる山下俊一教授は、3月の福島市の講演では年間100ミリシーベルトまでは大丈夫、とおっしゃっていました。あとで訂正されたそうですが、実は本音だった?

現状もよく把握できていないのに生涯被曝許容量などと前例のないことを言い出した、ということは、「100ミリシーベルト」という数字自体が大切なのだろう、と推測します。「100ミリシーベルトまでは安全なんだ」という、刷り込みです。一時期影を潜めていたようですが、最近また、100ミリシーベルトまで安全、といって憚らない専門家の方々のインタビューがいろいろなところで目に付くようになりました。

5歳の子供が文科省許容限度の20ミリシーベルトの被曝を今年して、来年以降はほとんど被曝なし、それでも数年後に放射線の影響と見られる疾病にかかったとして、100ミリシーベルトまでは安全と決まったのだからそれは放射線の影響ではない、したがって、政府も東電も関与しない、補償などはあるわけがない。これが狙いかな。

朝日新聞7月22日付け記事

放射性物質が人体に与える影響を検討していた食品安全委員会の作業部会で21日、「発がん影響が明らかになるのは、生涯の累積線量で100ミリシーベルト以上」とする事務局案が示された。食品だけでなく、外部環境からの被曝(ひばく)を含む。平時から浴びている自然由来の放射線量は除いた。この案を軸に来週にも最終結論を出し、厚生労働省に答申する。ただ厚労省からは「基準づくりは難航しそうだ」と、戸惑いの声があがっている。

 東京電力福島第一原発事故を受け、厚労省は3月17日に食品衛生法に基づき、放射性物質に汚染された食品の流通を規制する暫定基準を設定。この基準の科学的根拠を得るため、食品からの被曝による健康影響評価を同委に諮問していた。

 同委は当初、食品だけからの被曝レベルを検討。国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の元になった論文を含め、様々な国際的な研究を精査した。だが食品とその他の被曝を分けて論じた論文は少なく、「健康影響を内部と外部の被曝に分けては示せない」と判断。外部被曝も含め、生涯受ける放射線の総量を示す方向を打ち出した。宇宙からの放射線など平時から浴びている自然放射線量(日本で平均、年間約1.5ミリシーベルト)は除く。

 生涯の累積線量を目安に考えるということは、例えば、緊急時に一時的に20ミリシーベルトを浴びたら、残りの生涯で被曝を80ミリシーベルト以下に抑えるのが望ましいとするものだ。

 また、子どもや胎児については成人より影響を受けやすいという研究があり、事務局案では「留意が必要」としている。

 ICRPの考え方では「100ミリシーベルトを浴びると、発がんリスクが0.5%上がる」とされる。

 外部被曝も含めた形で結論を出すことに委員の一人は「本来は原子力安全委員会など他の政府機関でやるべきだが、他がやっていないので仕方ない」と話す。

 緊急時を想定した現行の暫定基準は、食品からの年間被曝量をヨウ素やセシウムなど核種ごとに割り当て、全体で年17ミリシーベルトを超えないように設定されている。

 食品安全委の答申が出れば、厚労省は食品ごとの基準を改めて検討することになる。担当者は「年間被曝量で答申されると想定していた。生涯累積線量だと、若者から高齢者まで年代ごとに摂取量を考えなければならず、作業に時間がかかりそうだ」と話した。

食品安全委員会は来週の7月26日、午前10時から12時まで、ワーキンググループ会合を開きます。一般公開ですが、傍聴人40人まで。詳細は食品安全委員会のサイトでどうぞ。連絡先の電話番号も出ています。

19日に福島の牛出荷規制、20日に早くも出荷再開プラン骨子出来上がり

福島県は今月中の出荷規制解除を目指すそうです(福島民友新聞)が、朝日新聞にやや詳しくその出荷プランなるものの概要が出ていました。

これを見る限り、今やってることとあまり変わらないような感じです。変わるのは、計画避難区域、緊急避難準備区域の牛は福島県内で肉にして全頭検査、というところぐらい。それすら、政府が避難区域を縮小して区域外にでもなれば、ほとんど検査なし。

「ほとんど」と言ったのにはわけがあります。避難区域外では、出荷制限が解除になって出荷する際、畜農家から最初に出す牛一頭以上の肉を検査してそれが基準値(500ベクレル・キロ)以下なら残りの牛全てフリーパスで出せるのです。ある一定期間後に再度牛一頭以上の肉を検査する、という条件は付きますが。

また、福島以外の県でも汚染牛は発生しているが、その土地で汚染稲わらが発見されない限り出荷規制の対象にはならない、というザルぶり。例えば、新潟で宮城から買った高濃度汚染わらを食べさせていた牛がいても、新潟の稲わらが放射能汚染されていない限り、新潟の牛は出荷規制の対象にはならない、というのです。

以下、朝日新聞7月20日付け記事:

福島県産の牛の肉から基準を超える放射性セシウムの検出が相次いでいる問題で、原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)は19日、県全域の肉用牛の出荷停止を県知事に指示した。出荷停止の解除方法の考え方も公表。福島県が提出した肉用牛の管理計画を対策本部が了承して、各畜産農家が計画に基づいた県の検査を経て出荷されることになった。

 厚生労働省は、災害対策本部と福島県が考えている管理計画の概要を明らかにした。計画的避難区域や緊急時避難準備区域など高濃度の放射性物質が検出された地域では、飼育されたすべての牛について、県が解体された時に肉を調べる全頭検査を実施する。

 それ以外の地域では、すべての畜産農家を対象に、県が汚染された稲わらを与えていないかなどを調べる全戸検査をし、その後も2カ月に1回定期的にチェックする。さらに解除後、最初に出荷する際に1頭以上を選び、県が肉の放射性物質検査をする。基準を十分に下回っていれば、その農家が飼育している牛の出荷が当面認められる。東京など県外に出荷することも可能になる。ただ一定期間がすぎたら、再び1頭以上を選んで肉を検査する。

 福島県内のと畜場は郡山市の1カ所のみ。しかし、厚労省は、年間に最大約9千頭の処理能力があり、牛の解体や牛肉の検査は1カ所でも可能とみる。

 福島県以外でも、汚染された稲わらを与えられた牛が見つかっている。ただ、厚労省は、出荷停止を検討するのは、牛を飼育している地域の稲わらが汚染されていることが前提とする。汚染された稲わらを遠方から購入して与えていても、その地域のわらが汚染されていなければ、対象とはならないとしている。

これで安心して国産牛肉を買える人が増える、と政府は思っているんですかね?そうなんでしょうね。今に、政府が安全と言った食品、園芸土、セメントなどを買うのを拒否すると罰金刑、なんてことになるかもしれませんね。

あるいは、環境省が放射性がれきの焼却灰の基準を現在のキロ当たり8000ベクレル以下埋め立て可から10万ベクレル以下可にしようとしているのと同じ要領で、牛肉の放射性セシウム安全基準値を現在のキロ当たり500ベクレルから5750ベクレルに引き上げてしまえば、今のところ5000ベクレルを超える牛肉は発見されていないようですから、すべて安全基準値以下になりますね。

狂牛病の時の日本政府の対応とはずいぶん違いますね。同じ国とも思えませんが、狂牛病の場合は原因が外国でしたからね。今回は自国内の不始末。

Wednesday, July 20, 2011

エネルギー総合工学研究所、内藤正則氏:「福島第1原発、原子炉冷却が2日半止まるだけで核燃料は再度溶け出す」

7月20日のNHKニュースはいわゆる東電・政府の「工程表」の「ステップ1」とやらが成功裏に終了したことを告げるものでしたが、その中にこんな言及が埋まっています。

専門家は、トラブルで原子炉への注入が止まると、2日半程度で核燃料が溶けて放射性物質が放出されるおそれがあるとして、リスクは続いていると指摘しています。

...これに対し、原子炉の解析に詳しいエネルギー総合工学研究所の内藤正則部長が試算した結果、福島第一原発1号機で、トラブルで原子炉への注入が止まると、 1日半で、原子炉や格納容器にたまっている水は、核燃料が発する熱で蒸発してなくなり、さらに1日後には、核燃料の温度が2850度に達して溶け出し、放 射性物質の放出が始まるとしています。

内藤部長は、「今、核燃料が持つエネルギーは事故直後の10分の1以下に落ちているが、熱はまだ残っていてリスクは続いている。国と東京電力は、こうしたリスクを示すとともに、今の対策で対応できるか地元住民に説明すべきだ」と話してます。

(話してます、っていうのが愛らしいですね。)

事故直後の10分の1のエネルギーですら、1日半で原子炉の水を蒸発させるのに十分なわけですか。1号機の圧力容器には穴が開いており、格納容器も損傷していることをお忘れなく。つまり、水が原子炉に大量に溜まるような構造ではすでにないのです。これで注水が止まったら、1日半よりよほど早く水は蒸発するような気がしますが。


ちなみに、東電が発表した現在の放射性物質放出量の試算は一時間当り10億ベクレル、最盛時の200万分の1、ということですが、あくまで試算であることをお忘れなく。

しかも、この10億ベクレル、今までの政府(保安院、原子力安全委員会)が出した放出量試算がINESの基準に従ってヨウ素131換算であるのに対し、単にセシウム134と137の試算値を足したもののようです。どうも作為が感じられます。セシウムの量をヨウ素131換算すると、セシウム134は3倍、セシウム137は40倍しなければならないのです。セシウム134と137の比率などは東電の発表にはどこにも書かれていませんが、半々とすると、一時間あたりの放射性物質放出量はヨウ素換算で215億ベクレルになります。一日で5160億ベクレル、二日で1テラベクレルを超えます。

Tuesday, July 19, 2011

国の作った原発推進指南書「主婦の場合、自分の周りに原発なければ他人事」

そこで「父親層をターゲット」、「子供向けには漫画を使い」「人気キャスターを取り込んで」「事故時を絶好の好機とせよ。」

また、原子力に疑いを持たせるような記載を教科書から抹消すべく、文部省の検定を強化する必要まで上げています。

チェルノブイリの事故を受けて、1991年に科学技術庁が作成させた、政府機関、電力会社向けの広報の「指南書」のポイントが、西日本新聞に出ていました。原子力が国策とはよく言ったものです。

ちなみに、科学技術庁というのは原子力推進のために設立されたようなものです。初代長官は正力松太郎。第5福竜丸事故直後の日本の反核感情を翻すプロパガンダに奔走した、読売新聞・日本テレビのオーナーです。(冷戦下の日本への原発導入推進については、1994年のNHKドキュメンタリーの書き起こしがありますので、是非お読みください。)

西日本新聞7月20日付け記事より:

九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開をめぐる九電の「やらせメール」問題は、意見投稿の例文集を取引先に渡すなど、電力会社による世論操作の実態を白日の下にさらしたが、原発にからむ世論対策は今に始まったことではない。チェルノブイリ原発事故後、旧科学技術庁(現文部科学省)が原発推進のため、政府機関や電力会社向けに“指南書”を作成していた。そこには、国民や報道機関、教育現場に原発の必要性を浸透させるための具体策が列挙されている。

 “指南書”は、文科省と経済産業省所管の日本原子力文化振興財団が科技庁の委託で1991年にまとめた報告書「原子力PA方策の考え方」。PA(パブリック・アクセプタンス)とは「社会的合意形成」の意味で、財団によると、文書の配布先は不明だが、「チェルノブイリ事故を受け、どんな広報が必要かを検討するために作ったのでは」(横手光洋専務理事)という。

 報告書の記述を転載した隔月刊誌「放送レポート146号」(1997年発行)によると、新聞社の論説委員、電気事業連合会や原発プラントメーカーの広報担当者などでつくる委員会の議論を集約した内容で、科技庁の官僚もオブザーバー参加。(1)市民対応(2)マスコミ対応(3)タイミング(4)学校教育-といった論点について、国や電力会社の広報のポイントと手法を提言している。

 原発の必要性をどうアピールするかでは「原子力による電力が『すでに全電力の3分の1も賄っているのなら、もう仕方がない』と大方は思うだろう」と記述。主婦層に対しては「現在の生活レベル維持の可否が切り口となろう」「自分の周りに原発がなければ、他人事(たにんごと)としか受け取っていない」などと説く。

 中学校の教科書での原子力エネルギーの取り上げ方を「原発や放射線は危険で、できることなら存在してもらいたくないといった感じが表れている。書き手が自信がなく腰の引けた状態で書いている」と指摘。「これではだめだ。厳しくチェックし、文部省(当時)の検定に反映させるべきだ」と踏み込んでいる。

 報道機関への対応の助言も具体的だ。「スポークスマン(役人を含む)を養成する。新聞記者が積極的に彼の意見を求め、記事に引用するようになる。一種のマスコミ操作法だが、合法的世論操作だ」と指摘した。

 報告書について、財団の横手専務理事は取材に「一部、不適切な表現がある部分は反省しなければならない」とした上で「広報戦略を立てること自体はどこでもやっていることで問題はない」と話した。九州電力は「報告書は社内に現存せず、受け取ったかどうかも分からない」(広報部)としている。

■情報公開の視点ない 福島第1原発事故「事故調査・検証委員会」の委員を務める吉岡斉(ひとし)・九州大副学長(科学技術史)の話

 原発推進の思想を注入することを重視した放言集のような印象だ。ここに書かれた大衆扇動のテクニックは事実上、最近まで実践されてきた。正確な知識の啓発活動は必要だが、それには原発のリスクを含めた情報公開や市民との対話が不可欠だ。その視点が抜け落ちている。

(記事は続きます。)

西日本新聞の記事には、このような表で「指南書」の趣旨をまとめています。

ドイツ気象局放射能拡散予測 7月19日~21日

日本で無事なのは北海道だけ。あとは青森から沖縄まで、全部掛かります。韓国、北朝鮮まで行きます。

東京電力と政府の合同で出した「工程表」の進捗状況発表に付随して出ていた資料によると、現在福島第1原発から放出している放射性物質の量は一時間に10億ベクレルとのこと。一番ひどかった3月15日の毎時2,000テラベクレルに比べると200万分の1、と資料は自慢げに記述していますが、考えて見ると、もともとこんなものは通常時ではほとんど出ない、つまり今でも無限大の放射能が出ているわけです。東電の松本さんも、この10億ベクレル時が多いのか少ないのか、判断を避けています。判断できないのでしょう。通常時には、ヨウ素と希ガス以外の核種は計算外です。

3月15日のとんでもない放出、毎時2,000テラベクレルの時には政府はじっとだんまりを決め、国民を被曝させることを選択しました。そのことをゆめゆめお忘れなく。今になって、あのときに比べたら200万分の1と言われても、嬉しい人はあまりいないと思いますが。

Monday, July 18, 2011

東京都の下水汚泥からいまだにヨウ素131検出

ヨウ素131の半減期は8日。福島第1原発から大量の放射性物質が放出されたらしいのは3月21日。それ以降出ていないのなら、ヨウ素131などはとっくに不検出になってしかるべきなのですが、東京都下水道局が発表している下水の脱水汚泥中の放射性物質はセシウムだけでなく、いまだにヨウ素131が検出されています。

最新の検査では、場所によっては(府中市小柳町、足立区宮城、稲城市大丸)、ヨウ素131の検出量が増加しています。

ヨウ素131の発生源は唯一つ、福島第1原発。管首相が福島原発の「収束が見えてきた」とおっしゃったそうですが、都下水道局のデータは見ていらっしゃらないんでしょう。

(Twitterを見ると、甲状腺治療に使うヨウ素の垂れ流し説もあります。)

東京都下水道局が公表しているデータから、ヨウ素131だけを取り出して表にまとめてみましたので、ご覧ください。単位はキロ当たりベクレル。一番古いデータが5月11,12日の検査です。多分一番ヨウ素131が出ていたであろう3月下旬から4月いっぱいのデータは、存在しないようです。(少なくとも公開していませんね。)

ちなみに、この汚泥を焼却した後の焼却灰からはヨウ素131は(清瀬を除いて)不検出です。(焼却炉の煙突から外へ出ているんでしょうか。フィルターではヨウ素は取れないと聞きましたが。)

(H/T 院長先生

戊辰のうらみを乗り越えて??

結局行き着くところは何と明治維新。

7月15日付けで福島医大の副学長にご就任なさった長崎出身の山下俊一教授も、3月の福島市での「100ミリシーベルト安全」講演で、福島市民に「白虎隊でしょう?」と暗に全員玉砕をお勧めになっていたかのような発言をされたようですが、会津若松市の市長が戊辰の怨敵、長州、もとい、山口県の萩市市長を訪問したそうです。

朝日新聞7月19日付け記事: 

福島県会津若松市の菅家一郎市長が18日、山口県萩市を訪れ、野村興児市長らに震災後の風評被害に苦しむ現状を伝えた。

 長州と会津は戊辰戦争で戦い、わだかまりが残るとされるが、菅家市長は、萩市から義援金や物資を受けたお礼に、市長としては14年ぶりにやって来た。

 萩市民300人を前に菅家市長は「会津は安全。みなさんを歓迎します」。野村市長は「市民を募って行きましょうか」と、友好ムードを演出していた。

負けた賊軍も勝った官軍も、コメントがどことなくこわばっていますね。

戊辰戦争はいまから140年ほど前。それくらいの短期間ではうらみはそうそう忘れられるものではない?

そう言えば、司馬遼太郎氏の『翔ぶがごとく』(西南戦争の顛末を描いた歴史小説)のあとがきだったと思いますが、司馬氏が政府の高官の言(昭和50年代?)を引用していたのが非常に印象的でした。その政府の高官は、司馬氏に、「わたくしたちは太政官がお作りになった制度を守ってゆくのが使命です」のようなことをおっしゃったとか。一言一句この通りではなかったと思いますが、このような内容だったのは間違いありません。

日本の近代、現代はなんだったんでしょうね。

Sunday, July 17, 2011

英ガーディアン紙ジョージ・モンビオット:「福島のおかげで原子力が大好き」

ジョージ・モンビオット(George Monbiot)氏は、英国ガーディアン紙に毎週論評を書くばかりでなく、著作、テレビ出演などによって地球温暖化に警鐘を鳴らし続けている、非常に影響力の大きいライターです。現在来日中のクリストファー・バスビー博士の「論敵」である氏は、福島の1号機が3月12日に爆発、3号機、4号機、2号機と14日、15日にかけて次々と爆発(火事)した後、また大量の放射能を放出した何かしらの事象(3号機から黒煙が上がっていた日です)があった3月21日(英国時間)に、次のような記事を書いています。ご参考まで。

元の英文記事はこちらです。

以下、モンビオット氏の記事抜粋私訳。

「福島のおかげで原子力を恐れるのをやめて愛するようになった私」
ガーディアン紙2011年3月21日
ジョージ・モンビオット(George Monbiot)

日本での出来事が私の原子力に対する見方を変えた、と告げても、読者は驚かないだろう。しかし、見方をどのように変えたかを告げたら、驚くに違いない。福島原発の大災害のおかげで、私はもはや核中立の立場ではない。核賛成の立場に変わったのだ。

安全設備も不十分な古ぼけた原発が、巨大な地震と津波に見舞われた。電源が喪失し、冷却システムが機能しなくなった。原子炉が爆発をはじめ、メルトダウンが始まった。福島原発事故は、設計のまずさと手抜きというおなじみの話だ。だが、我々が知る限り、死に至るような放射線量を受けた人は一人としていない。

環境保護論者は放射能汚染の危険を大いに誇張してきた。が、xkcd.comが発表しているグラフを見てみたまえ。スリーマイル島事故の際、原発から10マイル以内に住んでいた人々の平均被曝量は、アメリカの放射線労働者に許されている年間の被曝量のわずか625分の1であった。放射線労働者の年間許容被曝量は、ガンのリスクが上がる最低のレベルとされる年間の被曝量の半分である。そして、このガンのリスクが上がるレベルと言うのは、放射線被曝致死量の80分の1である。心配する必要がない、と言っているのではない。バランスの取れた見方が必要だ、と言いたいのだ。

原子力以外のエネルギーの生産形態が何のダメージも引き起こさないのであれば、これらの影響はより大きなものとなるだろう。しかし、エネルギーは医薬品のようなものである。つまり、副作用がないなら、その薬は利かない可能性が高いのと同じだ。

殆どの環境保護論者と同じく、私も再生エネルギーの拡大を指示している。同時に、再生エネルギーに反対する人々の不満も理解できる。人々が気にいらないのは陸の上に建設される風力発電だけではなく、新しいグリッド(送電線や鉄塔)である。再生エネルギーの比率が上がるにつれ、電気を切らさないためにより多くの揚水貯蔵が必要になる。つまり、山間部の貯水池だが、これも人気がない。

再生エネルギーのインパクトとコストは、再生エネルギーが電力に占める割合が増加すると上昇する。エネルギーの貯蔵と冗長性の必要が増加するからである。もしかすると(実際の比較研究を見たことはまだないが)、再生エネルギーが総送電網に占める割合がある一定のところまでは、例えば50%とか70%までは、再生エネルギーは核エネルギーに比べて二酸化炭素の排出が少ないのかもしれないが、その一定のところを超えると核エネルギーのほうが二酸化炭素の影響が少なくなる、ということがありえるのかもしれない。

この後、氏は、自分は他のグリーンの人々と同じく、再生エネルギーが化石燃料による発電量を置き換え、さらに交通の手段としての石油、暖房の手段としてのガスに取って代わることを目指してきた、と述べた後、再生エネルギー、化石燃料を次から次へと槍玉に上げ、現在の産業、人口を支える電力供給を行え、安全でしかもクリーンなのは原子力だけ、という結論に達します。

そして、記事の結論部分はこうです。

『私は今でも原子力業界の嘘つきどもが大嫌いだ。今でも、無害な選択肢があるのなら原子力セクターをシャットダウンするのにやぶさかでない。しかし、理想的な解決はない。どのエネルギー技術にもコストが付きまとうし、エネルギー技術が存在しないことにもコストが付きまとう。原子力は今回の事故でもっとも厳しいテストを受けた。が、人間と地球に与えたインパクトは小さいものだった。福島の危機で、私は原子力発電賛成に回った。』

ちなみに、ガーディアン紙といえば、福島事故のわずか2日後、イギリスで反原子力の世論が高まるのを抑えるべく、イギリス政府が原子力業界に対して、福島第一原発の事故を過小評価すべく共同で宣伝戦略を策定することを呼びかけていた、というすっぱ抜き記事を6月30日付けで出しています。茶とら猫さんがこの記事の日本語訳を出していますのでご参考。また、つい最近では、ガーディアンは福島第1原発で働く「原発ジプシー」密着取材の記事も出しています。

モンビオット氏に対するクリス・バスビー博士の反論は、このサイトでお読みになれます。(英文)

クリス・バスビー博士日本講演スケジュールとライブリンク

ふくしま集団疎開裁判」ブログサイトに出ています。たった今、早稲田での講演が行われている真っ最中です。USTREAM中継はこちら

福島の車のエアフィルターからプルトニウム239、東京の車のエアフィルターからウラン235、テルル129が出たらしい。エアフィルターをバスビー教授の所に送って検査してもらった週刊現代。東京の車は東京と千葉を行ったりきたりしていた車。

東京でさえ、大気中核実験をやっていたときの250倍ぐらい悪い、福島は1000倍。

真夜中の1時40分を越えているここカリフォルニア。皆さん、ご覧になって、気に留まったことなどコメントにお残しください。私は明日の朝ビデオで見ることにします...。

以下、「ふくしま集団疎開裁判」ブログサイトからの講演情報コピー:

  1. 2011年7月17日(日)午後4時~8時(開場3時50分)
    対話者:矢ヶ崎克馬 琉球大名誉教授(ただし、スカイプ中継による参加)
    東京 会場:早稲田奉仕園 スコットホール講堂
    (新宿区西早稲田2丁目3−1 地図
    定員:先着200名(事前予約はしていません。当日会場にお越しください)
    参加費:1000円
    ネット中継:USTREAM配信 OurPlanetTV
           USTREAM配信 IWJ Ch2
    連絡先:メール office.sokai@gmail.com
    早稲田奉仕園は今回の講演会とは関係がありませんので、問い合わせは上記メールまでお願いします。
    ※駐車場の用意はございません。会場周辺の有料駐車場をご利用ください。

  2. 2011年7月18日(月)午後1時半~4時半(開場1時)
    千葉 会場:松戸商工会館 5F大会議室
    (松戸市松戸1879-1 地図
    定員:先着200名(事前予約はしていません。当日会場にお越しください)
    参加費:無料
    ネット中継:USTREAM配信 IWJ Ch2
    連絡先:メール expose2011@mail.goo.ne.jp
    松戸商工会館は今回の講演会とは関係がありませんので、問い合わせは上記メールまでお願いします。
    ※松戸駅西口より徒歩6分。駐車台数に限りがありますので、出来るだけ公共の交通機関をご利用ください。

  3. 2011年7月19日(火)午後6時半~9時(開場6時)
    対話者:沢田昭二 名古屋大名誉教授
    福島 会場:「アピオスペース」展示ホール
    (会津若松市インター西90番地 地図・駐車場
    定員:先着250名(事前予約はしていません。当日会場にお越しください)
    参加費:無料
    ネット中継:USTREAM配信 IWJ_FUKUSHIMA1
    連絡先:080-5557-5407(酒井 ただし、会津若松講演会に関してのみ)
    アピオスペースは今回の講演会とは関係がありませんので、問い合わせは上記携帯までお願いします。

  4. 2011年7月20日(水)午後2時~4時半(開場1時半)
    東京 会場:千代田区立内幸町ホール
    (千代田区内幸町1-5-1 東京電力東京本店前 地図
    定員:先着183名(事前予約はしていません。当日会場にお越しください)
    参加費:1000円
    ネット中継:USTREAM配信 OurPlanetTV
           USTREAM配信 IWJ Ch2
    連絡先:office.sokai@gmail.com
    千代田区立内幸町ホールは今回の講演会とは関係がありませんので、問い合わせは上記メールまでお願いします。

ドイツ気象局放射能拡散予測7月17日~19日

台風の接近のせいでしょうか、パターンがちょっと変わっていて、18,19日には列島を横断して韓国の釜山まで届いてしまいます。



しかし、宮城県の登米市、栗原市の畜農家の方々が、ドイツ気象局の飛散予測(あるいはノルウェー、ZAMGでもよかったのですが)を3月、4月の時点でご覧になる機会があったら、宮城県はしっかりと福島からの放射能をかぶっていたことがお分かりになったと思うのですが、残念です。

Friday, July 15, 2011

郡山市の稲わらからキロ当たり50万ベクレルのセシウム

これで牛が汚染していなかったら奇跡です。稲わらは原発の高放射性廃棄物のレベル(10万ベクレル)すらはるかに超えています。

小佐古教授の言っていた、「収穫の秋の混乱」はもう起きつつあるような。

毎日新聞7月16日付け記事

福島県は16日、新たに放射性セシウムを含んでいたとみられる稲わらを食べた肉牛84頭が、福島県内を含め東京、埼玉、山形、宮城の5都県に出荷されていたことが分かったと発表した。

 福島県によると、出荷した畜産農家はいずれも県内で、▽郡山市2軒▽喜多方市2軒▽相馬市1軒--の計5軒。このうち郡山市の農家に残っていた稲わらから1キロ当たり50万ベクレルの放射性セシウムを検出した。ほかに、相馬市で12万3000ベクレル、喜多方市で3万9000ベクレルの値だった。

ちなみに、福島第1原発からの距離と方角は、

  • 郡山市: 西60キロ
  • 喜多方市: 西北西105キロ
  • 相馬市: 北43キロ

朝日新聞によると、相馬市の農家は宮城県の業者から稲わらを買っていたそうです。また、出荷の内訳は、「東京都に53頭、埼玉県川口市に8頭、仙台市に2頭、山形県に2頭、福島県内に19頭。3月28日から7月13日にかけ出荷されていた」とのこと。

朝日新聞に出ている放射性セシウムの量は毎日の5分の1ほどになっていますが、乾燥したわらを水で元に戻したとして計算するためです。牛が食べたのはわらなんですが。

なぜ100キロ以上も離れた、安全なはずの会津地方の喜多方が?とお思いの方、群馬大の早川由紀夫さん(火山学者)の地図をご参照ください。

低線量被曝による「脳障害」「不妊」「糖尿病」などを警告するドイツ女医のインタビュー

木下黄太さんの7月15日付けブログポストに紹介されていた、チェルノブイリ被害者救済を続けるドイツ人女医、デルテ・ジーデンドルフ氏のドイツ国営放送によるインタビューの和訳です。

木下さんによると、訳は「FBの「福島第一原発を考えます」グループで、メンバーのドイツ在住の女性翻訳家」がなさったそうで、木下さんのお知り合いの専門家の方もこのドイツ人医師の見解に同意している、とのこと。

ガンだけではないのです。

この女医さんが語るチェルノブイリは、既に日本を見るような思いがします。

以下、翻訳記事の転載(強調は私)
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ドイツ国営放送ARDのニュース番組、TagesschauのH​Pにチェルノブイリ被害者救済活動を続けるドイツ人女医、デルテ・ジーデンドルフ氏へのインタビュー記事が掲載されています。

http://www.tagesschau.de/ausla​nd/tschernobyl134.html

以下、翻訳しました。

「チェルノブイリは遺伝子の中で荒れ狂う」


チェルノブイリ事故から四半世紀が経過した。しかし、被曝被害は​広がる一方だとデルテ・ジーデンドルフ氏は語る。ジーデンドルフ​氏は20年前からベラルーシで医療支援活動を行い、同時に反核運​動にも関わって来た。

Tagesschau: ジーデンドルフさん。あなたは1990年以来、ベラルーシの各地​を定期的に訪れてチェルノブイリ事故の被害者の救済活動を続けて​いますね。ベラルーシではどんな事故の影響が見られるのでしょう​か。

Siedendorf: 風で運ばれた放射性降下物の量はベラルーシが最大でした。私達の​組織のある町の姉妹都市であるKostjukowitischi​市はベラルーシ東部の、チェルノブイリから約180km離れたと​ころにあります。その地方の1/3が放射性物質で汚染されました​。3万5000人の住民のうち8千人が移住しなければなりません​でした。30以上の村が取り壊されるか、埋められました。

Tagesschau: 現在はどうなっていますか。

Siedendorf:  他のどんな災害とも異なり、被曝被害と​いうのは時間が経つにつれて拡大します。逆さにしたピラミッドの​ようなものです。フクシマ事故に関しては、今、そのピラミッドの​一番下の先の部分にある状態です。チェルノブイリはそれよりもも​う少し進んでいる。チェルノブイリは遺伝子の中で猛威を振るって ​います。いえ、遺伝子だけではない、遺伝子が操作するすべての細​胞にチェルノブイリが巣食っているのです。25年経った現在は、​主に低線量被曝が問題となっています

Tagesschau: どのような経路で低線量被曝するのでしょうか?

Siedendorf:  たとえばストロンチウムやセシウムなど​、半減期が30年ほどの核種に被曝するのです。この30年という​半減期ですが、10倍にして考えなければなりません。これらの核​種が生物学的サイクルからなくなるまでにそのくらいの時間がかか​ります。300年という年月はヒトでいうと8~10世代に当たり​ ますが、この間は被曝による病気が増えると考えられます。

Tagesschau: 放射性物質はどこにあるのですか?

Siedendorf:  ベラルーシでは放射性物質はもうとっく​に地下水に入り込んでいます。ベラルーシには湿地や砂地があり、​地下水脈はそう深くありません。 放射性物質は一年に2cmのペースで地下を降下すると考えられて​います。今は地下50cmくらいです。その地下水から放射性物質​は植物や動物に取り込まれます。砂地ではガイガーカウンターを当​てても、今ではもう反応しません。その反対に、森では枯れ葉やコ​ケがあって放射性物質は地中に入り込みませんから、地表に残って​います。落ち葉の多い場所や森の縁ではガイガーカウンターが反応​します。雨水が溜まる窪地も線量が高いです。

Tagesschau: どのような援助をなさっているのですか?

Siedendorf: 最初の10年間は薬品の原料を現地に運​び、薬局で点眼薬や点耳薬、座薬などが調合できるようにしていま​した。10年前からそれは許可されなくなり、現地の薬局は国が購​入して配る医薬品しか販売してはいけないことになりました。

Tagesschau: それはうまく行っているのでしょうか?

Siedendorf:  まあ、大体は。でも、特殊な医薬品が不​足しています。どういう医薬品が認可されるかは薬を登録しようと​する医薬品メーカーが払う賄賂の額で決まるのです。たとえば、ベ​ラルーシには国に認可されているインシュリン薬は二種類しかない​のが問題です。子どもに投与するには別のインシュリンが必要な場合が多いのです。糖尿病は、チェルノブイリ事故の後、子ども達の​間に急激に増加した病気の一つで、新生児でも糖尿病を発症するケ​ースがあります。そのような場合には私達は個別に援助します。

Tagesschau: 何故、子どもの糖尿病が増加しているのですか?

Siedendorf:  セシウムによる低線量被曝が原因だと考​えられます。食物連鎖を通じて妊婦の腸内に取り込まれます。子宮​内で胎児の膵臓の発達が阻害されるのです。膵臓はインシュリンを​分泌する、非常に繊細な器官です。子どもは三歳になるまで修復機​能を備えた免疫系を持ちません。また、子どもは大人よりも細胞分 裂が速いです。細胞がちょうど分裂するときに放射線を浴びると、​影響が大きいのです。ですから、子どもの場合、ほんの少しの線量​の被曝でも成長が妨げられてしまいます。

Tagesschau: 残存する放射線の影響は他にはどんなものがありますか?

Siedendorf:  たとえばよく言われるのは、チェルノブ​イリの近くに住む人達は神経質で、「放射能恐怖症」にかかってい​るということですね。だから、彼らは何をやっても集中できないの​だと。しかし、これは汎発性の脳障害なのです。人が生まれて来た後​に最も頻繁に細胞分裂する器官の一つが脳ですから。チェルノブイ ​リ事故後の最初の世代では夫婦の30%が子どもに恵まれていませ​んドイツでも10%がそうです。遺伝子が傷つけられたことで流​産や早産、そしてその結果、乳幼児の死亡が増えています。胎児の​段階で死なずに生まれて来れば、障害は次の世代へと受け継がれま​す。

Tagesschau: チェルノブイリ事故の被害者数に関して​はいろいろな説がありますが、これはどうしてでしょうか?

Siedendorf:  統計を取っている方から聞いたのですが​、行政から「これくらいの数字にしてくれ」と指示されるようです​ね。お上の言う通りのことを書かないと報奨金がもらえない。20​10年の統計には癌患者はほとんど含まれませんでした。若くない​人は皆、老衰で亡くなったということになってしまうのです。癌患​ 者の中には他の原因で亡くなる人もいますし。ですから、ベラルー​シやウクライナのような独裁的な国の統計は当てになりません。病​気の原因を被曝以外のものにした方が国にとっては安く済みます。​原子力ロビーと独裁政治は相性が良い。どちらにとっても、チェル​ノブイリは終わったものとした方が都合がよいのです。しかし、人​々はこう言います。「チェルノブイリは私達の人生そのものだ、と​ね」

Tagesschau: WHOやIAEAはどのような役割を担っているのでしょうか。

Siedendorf:  チェルノブイリの健康被害について私達​の知らないことがたくさんあるのは、1959年にWHO とIAEAの間に結ばれた秘密の協定のためですWHOに被曝に​よる健康被害について何を調査し、何を発表するかはIAEAが決​めているのです。そのために多くの国際学会の開催が中止になり、​ロシアやベラルーシ、ウクライナの研究者の低線量被曝に関する研​究は発表されませんでした。しかし、幸いにも2009年にニュー​ヨーク科学アカデミーがこれらをまとめて発表しました。

Tagesschau: フクシマの被害はどのくらいになると予想されますか?

Siedendorf:  フクシマの被害はチェルノブイリ以上に​なるのではないかと思います。まだ事故は収束の目処が立っていま​せんし、非常に毒性の強いプルトニウムが放出されています。どれ​だけの量の放射性物質が海に流れ込んだのか、そしてそれはどこへ​向かっているのかについて私達はまったくわからない状態です。そ​ れに、日本は人口密度が高く、ベラルーシとは比較できません。ま​た、日本では飲料水は山で採集されています。山が放射性物質を含​んだ雲の拡散をせき止め、放射性物質は海岸沿いの狭い地域に溜ま​っています。9ヶ月で事故処理すると日本政府は言っていますが、​まったく馬鹿げています。そんなことは空約束に過ぎません。

デルテ・ジーデンドルフ女史は現在は退職した一般医で心理セラピ​スト。1990年よりチェルノブイリ事故で被曝したベラルーシの​村々を定期的に回り、特に被害者に対する医療体制の改善に力を尽​くして来た。ジーデンドルフ氏の組織は1991年以来、合計80​0人以上の子どもとその付添人を保養のためにドイツへ招待してい​る。組織が所在するディーツェンバッハ市とベラルーシのKost​jukowitschi市は姉妹都市となった。氏は国際組織「核​戦争防止国際医師会議」(IPPNW)の会員でもある。69歳。

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脳障害、と言うよりは遺伝子の障害なのですが、以前に見てちょっと驚いたグラフがあります。英語のWikipediaには、1986年4月に起きたチェルノブイリ事故の影響を示すグラフがいくつか出ていますが、その中に一つ、ベラルーシでのダウン症候群の発生増加のグラフです。1987年の1月に数値が跳ね上がっています。Wikiの記載によると、ドイツでも同様のことが起きたようです。

かの山下俊一教授が7月の15日に福島医大の副学長にご就任なさって、福島の医者の意見がころっと変わった、というTweetもありました。ベラルーシ、ウクライナと大差ないですね。

埼玉県の小学校の今年の行事 - 去年と変わらず

埼玉県のとある小学校の今年の年中行事を見る限り、メッセージは唯一つ:「何の心配もありません」

5月: 5年生による田植え体験(もちろん素足)

6月: 全校児童による校庭の草刈り

6月: プール開き (プール清掃担当は5,6年生)

6月: 地域安全マップ作成(3年生)。神社の「境内の後ろや公園のすみなど、どこに危険が隠れているかを一生懸命探していました」

7月:日光林間学校

週刊現代の調査では日光市の放射線量はかなり高かったですね。

Thursday, July 14, 2011

静岡県川勝知事、ニューヨークで静岡県茶をアピール

静岡茶の放射性物質検出の件で神経を尖らせているオクスフォード大学博士、静岡県川勝知事は、ニューヨークで「県内産地の乾燥茶葉の検査では放射性セシウムが基準値以下」だったことを説明」し、静岡茶をアピールしたそうです。

は?

フランスに輸出された静岡産の製茶からキロ当たり1000ベクレルを超える放射性セシウムが検出され、静岡市葵区藁科地区の製茶からも基準値を超えるセシウムが検出されているんですが、知事は平気で県内産のお茶は基準値以下とおっしゃる。それって、デマじゃないですか?

更に、(日本の)基準値以下とはいえ、全ての産地の製茶からセシウムが検出されています。アメリカで日本のお茶を販売している静岡の有名な会社に問い合わせたところ、「自社テストで確認しているので、放射性物質が入っている静岡茶は絶対売っていない」とのことでしたが、静岡のお茶で放射性物質が検出されていないお茶はないんです。

もっとも、アメリカ市民の大半は福島原発事故のことなど殆ど何も知らないか、気にも掛けないでしょうから、川勝知事がデマを飛ばしていても気がつきもしないでしょう。フランスと違って、検査もしていないんでしょうか。

ちなみに、アメリカの食品の放射性物質基準値は、キロ当たり170ベクレルです。それともEUのように福島事故後、この基準を緩くしたのでしょうか?要調査。まだ170ベクレルだとすると、静岡の産地の製茶で、これをパスするのはわずか4箇所だけです。(静岡市のデータご参照。)

朝日新聞7月15日記事:

茶葉の放射能汚染問題をめぐり、日本一の茶どころ静岡県の川勝平太知事が14日、ニューヨークで緑茶愛好家の集まりに参加し、静岡産のお茶の安全性をアピールした。

 日本のお茶の輸出先のうち、米国は46%を占める最大の市場。原発事故の影響を不安視する声を打ち消すため、和食ブームが盛んなニューヨークで直接、消費者に安全性を訴えたかったという。

 川勝知事は静岡県が原発事故があった福島県から離れていることや、県内産地の乾燥茶葉の検査では放射性セシウムが基準値以下だったことを説明。「静岡のお茶は安全なだけでなく健康にもいい」と訴えた。会場では、緑茶の様々な楽しみ方が紹介された。

 全米茶業協会のシムレイニー会長は会場で「日本の緑茶は世界に代わるものがない。教えてもらったデータを協会のホームページで公開すれば、震災後、鈍くなった売り上げも元に戻るだろう」と話した。(ニューヨーク=田中光)


記事に付随していた写真を見る限り、参加した人たちはあまりうれしそうな顔はしてませんね。

Wednesday, July 13, 2011

英ガーディアン紙:福島原発に日本中から原発ジプシーが集まる

英国ガーディアン紙Justin McCurry、7月13日付け記事 "Fukushima cleanup recruits 'nuclear gypsies' from across Japan" の全訳(リンクは元の英文の記事に行きます)。おおまかな筋で間違いはないと思いますが、急いで訳したもので間違いがあったらごめんなさい。あくまで私訳です。

高給と義務感に惹かれ、何千人もの技術者、作業員が福島へ

太陽がようやく昇り始めたいわき湯本、白いT-シャツと水色の作業ズボンをはいた男たちが目をしばたかせながら、エアコンの効いた快適な部屋から日本の夏の猛烈な湿気の中へと出てくる。

チェルノブイリ事故以来の世界最悪の原子力危機が始まってから四ヶ月、東北の温泉地であるこの町は、ここから30マイル離れた福島第1原発の修復活動に従事するために集まってきた2000人の男たちが滞在する寮となっている。

いわき湯本は企業日本の縮図とも言える。町の新しい住人は、長年の経験を持つ技術者やエンジニア、そして、彼らを支えるのは日本中から高額の賃金に引かれて集まってきた何百人もの労働者である。

そんな一人が、Rune Ariyoshi さん、崇拝するジョー・ストラマーに似せたオールバックの髪ともみ上げの、背の高い、痩せた47歳のトラック運転手である。

週に5日、Runeさんは「原発ジプシー」としての重労働に従事する。「原発ジプシー」とは、作家堀江邦夫氏が日本の原発のもっとも汚れた、もっとも危険な作業に従事する労働者たちに付けた名前である。

業界は、1970年代の原発建設ブーム以来、定期点検、修理などを臨時作業員に頼ってきた。今でも1970年代と同じように、日本社会の一番下層にいる人間は、危険な作業環境で殆ど訓練も経験もないままわずかな賃金で働く。「原発で働くのが危ないなんて、思ったこともない」とRuneさんは記者に語る。日給1万2千円の一日の仕事を終えた後だ。「賃金は自分のやるような作業に見合ってると思う。他でトラックを運転してたときよりは高いからね。」

作業員募集の広告を雑誌で見て、彼は6月の始めに福島にやってきた。彼の73歳の母親は、息子が福島で働いているとは知っているものの、まさか一日の半分を日本史上最悪の原子力事故の起きた場所で過ごしているとはつゆも知らない。

離婚経験の有るRuneさんは、週に2日、休みがとれる。そんなときは福島に隣接した茨城県に住む息子たちに会いに行く。「子供たちにここの仕事のことを話したとき、最初に言われたのは『放射能を浴びないで』だった。子供たちは心配しているが、それでも、ちょっとかっこいいな、とも思っているようだ。」

作業開始後1ヶ月過ぎの被曝量は5ミリシーベルトだ、と彼は言う。世界平均自然放射線被曝量2.4ミリシーベルトの2倍以上である。原子炉建屋内で働く東電のエンジニアたちは年間250ミリシーベルトまでの被曝を許されているが、Runeさんを雇った会社は社員には30ミリシーベルト、Runeさんのような臨時作業員には15ミリシーベルトまでの被曝限度を設定している。

「まあ限度になるまでにあと2ヶ月かな。でも、例外を認めてくれて、もう少し長く働かせてくれるといいなと思うよ」、と彼は言う。

翌朝5時45分、バスは既に待機している。Runeさんはホテルから出てくる。部屋は他の5人の作業員とシェアしている。

これからJ-ビレッジまで45分のバスの旅だ。J-ビレッジはサッカーのトレーニング施設で、ここで一日の作業についての説明を受け、放射線防護服、マスク、ゴーグル、手袋をつけ、常に携帯が義務付けられているガラス箱に入った放射線測定メーターを持つ。

午前8時、2つある90分のシフトの第一番目が始まる。シフトの間には同じような長さの休憩が挟まっている。放射線被曝と暑さのために、仕事は昼を過ぎた頃に終了となる。

Runeさんのおかげで、福島第1原発内の作業状況について、普通知ることの出来ないことが分かった。

最初のシフトを終えて休憩に入るときは、綿の手袋を外してから2番目の部屋へのドアを開ける。その部屋では2つはめたゴム手袋を外し、下着姿になる。3番目の部屋では、放射線のチェックを受ける。OKなら新しいユニフォームと下着を与えられる。同じプロセスが、2番目のシフトの後も繰り返される。

「今は本当に暑いので休憩も多く取らなくてはいけないから、1月までには終わらないと思うよ」、と彼が言うのは、東電が自らに課した、原子炉を安定させる期限のことである。「それでも、進歩はしているよ。汚染水の処理とか。」

彼の所属するチームは25人、原発の6つの原子炉のうち3つがメルトダウンを起した事故当初の混乱の中で、1号機から4号機の周辺にうち捨てられた消防士の制服2万3千着を取り除いて仕舞う作業を行っている。グループの一つが制服を集めるとRuneさんがトラックで運び、もう一つのグループがそれを仕分けして梱包し、処理のために別の場所に移す。

「東電のエンジニアや技術者とは接触がない」、と彼は言う。「うちの会社は6次下請けぐらいだからね。」

記者が話を聞いた誰もが、原子炉の安定冷却、冷温停止を1月までに行う、という期限を東電が守れるとは思っていない。

4月、東電は4月中に放射能漏れを低減させて1月までに冷温停止を実現する、と述べた。しかしこの工程表は、東電が(来週の)火曜日に最新の工程表を発表するときに修正されるものと予想されている。

管直人首相は今週、廃炉のための作業に着手するまでに10年かかるかもしれない、と述べた。

3月11日の大事故の発生後、東電は大手建設会社、保守会社に協力を求めた。これらの会社は更に600社に及ぶ関係会社から作業員を募集した。この600社は、経験、信用の面でそれぞれ差がある。

これからしばらくの間、いわき湯本の町は3つのまったく異なった共同体によって成り立っていることになる。約3万人の住民、2千人の原発作業員、そして福島第1原発付近の町や村から避難してきた千人の人々。

多くの臨時作業員の存在、そして男性の数が圧倒的に多いことが、衛生、安全の規則が守られていないのではないかという危惧につながっている。

レストランの経営者はこぼす。夕方原発から帰ってくる作業員で、まだ現場のユニホームを着て現場で履くブーツまで履いている作業員がいる、と。

町の観光の売り物は温泉と山の景色だったが、原発事故以来観光客がめっきり減った。

「作業員と町の住民の交流はあまりありませんね」、といわき市職員のTakahashi Katsueさんは言う。「旅館のご主人たちは何ヶ月も先まで予約で一杯で喜んでいますが、だんだん不安になってきています。これからどれだけ続くのか。原発周辺から避難してきた人たちもいます。だれもここへ観光旅行に来なくなるのでは。」

Sasaki Toshiyukiさんは北海道の建設会社の従業員、いわき湯本を仮の住まいにする臨時作業員の中では高給取りの部類だ。

彼は通常の月給35万円の2倍をもらって、3号機の前にあるがれきを片付ける作業をしている。放射能飛散を防ぐための巨大な鉄製のシュラウドを建設するための700トンクレーンの到着に向けての準備作業である。

「原子炉建屋に入ることは許可されていません。一日働くのはせいぜい1、2時間」、とSasakiさんは地元のレストランで冷たいビールを飲みながら話す。「被曝量が年間40ミリシーベルトに達したら、やめなくちゃならない。」

Sasakiさんは他の重機運転員と同様、仕事中はクレーンの(運転室の)中や掘削機のキャビンの中で作業をする。危険なまでに放射能の高いがれきを撤去する、唯一の方法だ。

彼はこれまでいくつかの原発の建設に従事してきたが、原発を大災害から救い出した経験はない。それでも、被曝測定値が許す限り、福島で働くつもりだ、と言う。

「みんなものすごく気をつけてますよ」と彼は言う。「線量計がシフトの間に一定のレベルに達したら、現場から出なくてはいけない。でもまだそんなことは起こっていません。」

彼の会社のスタッフがみんな彼のように楽観的なわけではない。会社の従業員の半分は、家族の反対で福島第1原発で働くことを拒否している。

記者に話をしてくれた人々全てが、もっとも差し迫った健康の危険は放射能ではなく、マスク、ゴーグル、防護服を装着して、足首、手首、首をテープで密閉して何時間も過ごすことだ、という。「放射能は別に平気だけど、暑さで具合が悪くなるのが心配だ」と、大阪から来た34歳の男性は言う。「防護服を着るととんでもなく暑い。何人か現場で具合が悪くなった人たちを知っているよ。」

一方、食事は、東電と政府が作業員に十分な食べ物や飲み物を提供していないと非難された最初の頃よりは改善された。昼飯はたいていレトルトパックのカレーライス、ボトルの水とお茶、チューブから吸い出すゼリー状のビタミンサプリメント、それにお菓子のパック。

「でも、休憩時間にゆっくりできるだけの場所はないね。」原発から600マイル離れた九州から福島にやってきたRuneさんは言う。「それでも、前に比べたらトイレの数は増えたし、飲み物も増えたし、リラックス出来る場所も増えた。」

福島の危機が終わったとき、東電のエンジニア、自衛隊、消防隊の面々に栄誉が行くのは当然であろう。津波が襲った後の深刻な放射能漏れ、爆発する原子炉と戦ったのは彼らだ。

だが、Runeさんは、津波の後に残った荒廃を片付けた(彼のような)男たちには、少なくとも公の場では賞賛は殆どないだろう、と思っている。

「自分のような人間は、義務感もあったけれど、ここへ来たのは金を稼ぐためだ」、と彼は言う。「無職だったから来た者もいる。普通の仕事が続かなかったから来た者もいる。今まで、誰もチャンスを与えてくれなかったんだ。」

週刊現代:「世界遺産」中尊寺金色堂もスーパーホットスポットだった

スーパーホットスポット、日本語読みの英語単語をあえて訳すと、「超・高放射線量地点」。

週刊現代が全国1000地点の独自調査を発表しています。出来るだけ放射線の低そうなところを選んで(校庭のど真ん中など)測定しているらしい自治体、政府機関とは対照的に、週刊現代は放射線の高そうなところを探して測っています。

7月14日付け「現代ビジネス・経済の死角」より(計測単位はマイクロシーベルト時):

平泉駅前ロータリーの街路樹の下で、本誌記者はガイガーカウンター(線量計)のスイッチを入れた。

 0.47、0.54、0.65・・・。

金色堂前の植え込みを計測した。

 0.88---。

 住宅地なら、避難を考えたほうがよいレベルの線量だ。他の場所も高い。

・参道入り口  0.75
・釈迦堂前  0.45
・阿弥陀堂前  0.36
・能楽殿前  0.64
・本堂前  0.57
・参道駐車場  0.77

この事実を駅前の商店主に知らせると、心底驚いた顔をした。

「ウソでしょう。だってここは福島(第一原発)から150km以上離れてるんだよ。ここより近い山形や米沢、仙台市内だって線量は高くないのに、平泉が高いなんてありえない」

 本誌とて、せっかくの世界遺産ブームに水を差すために来たわけではない。だが、世界に知られる観光地になったからこそ、汚染されている事実に目をつぶることもまた、できない。

 表を参照してほしいが、近くの栗駒山いわかがみ平で2.17、奥州市で1.35という驚くべき値が出ているからなおさらだ。

で、その表と言うのがこれ。(クリックすると新しいウィンドウに出ます。)


この程度の低線量で大騒ぎして福島県民に失礼だ」と東北大の名誉教授が先日言い放った柏市は、

駅前ロータリーのアスファルト地上1mが0.51。地表面が0.75。十分に高いが、線量計が激しくアラーム音を発したのは、近くの側溝を計測した時だ。

 1.09、1.32と数値が上がっていき、最高で1.68、10回計測した平均値も1.47と、軽々と1を超えてしまった。画面には真っ赤な「DANGEROUS(危険)」の文字が躍る。

週刊現代は、このような高線量地点の存在を説明するのに、群馬大学の早川由紀夫教授(火山学)のモデルを出しています。火山学者に放射能拡散が分かるのか、と思われる向きには、火山灰の飛散予測が出来る方なら、原子炉の専門家が放射能内部被曝の一般大衆への影響の有無を討論するよりもよっぽど信憑性がある気がしますがいかがなもんでしょう。

ふたたび週刊現代より:

その疑問を科学的に解明した人物がいる。群馬大学の早川由紀夫教授、専門は火山学だ。火山灰の拡散メカニズムをもとに、福島第一原発から出た放射性物質の動きを研究している。左に掲げたのが、早川教授が作成した「放射能拡散マップ」だ。元になっているデータは国や各自治体が発表した線量である。



 

よく見てほしい。千葉の東葛地域を汚染したのは北からではなく、太平洋越えのルートだった。早川教授が解説する。

「このルートが発生したのは3月21日午前。福島から海沿いに水戸方面に南下し、柏や流山にホットスポットをつくった」

 だが、まだ疑問がある。途中の水戸市や鉾田市よりなぜ東葛が高いのか。早川教授が続ける。

「原因は雨です。3月21日、北から放射性物質を運んできた風と、南からの湿った風がここでぶつかって、放射能を含む雨を降らせたんです。その翌日に採取された東京都の水道水(松戸市に隣接する葛飾区の金町浄水場)から放射性物質が多く検出されたことも、これで説明がつく」

 図にはいくつかの矢印が記されている。矢印の方向に進む、ナメクジの足跡のようなこの帯こそが、東日本にホットスポットを作った「放射能の足跡」なのだという。早川教授がそれぞれに説明を加える。

データを分析すると、福島第一原発からの放射性物質の大量放出は、大きく4回あったとわかりました。

 最初が3月12日の夜。南相馬から太平洋を北上して時計と反対回りに女川を経由し一関市に向かった。平泉を汚染したのはこのルートです。

 2回目が3月15日の午前中。いわき市→水戸市と南下し、そこから3方向に分かれている。宇都宮方向に向かったもの、群馬方向に向かったもの、首都圏に南下したもの。軽井沢周辺を汚染したのはこの時の群馬ルートです」

 そして最悪の放出が起きたのが、3号機の建屋が爆発した翌日の、3月15日夕方からだった。

「原発から北西方面に進み飯舘村などを徹底的に汚染し、そこから時計と反対回りで福島、二本松、郡山、那須、最終的には日光まで流れていきました」

 このルートが、現在SPEEDIなどで公開されているもので、多くの国民はこのルートしかないと思っている。

 実際はそうではなく、これが3回目。4回目の大放出が、前述した3月21日の、海越えで東葛を汚染したルートだった。

 恐ろしいのは「原発からいつ放射性物質が大量発生したか、誰もわかっていなかった」という事実だ。

「多くの人は爆発が直接の原因で放射能が拡がったと思っているが、それは違います。イメージで言うと、爆発などで施設のどこかに穴などの不具合が生じ、ある時シューッと漏れ出す、という感じだと思う。

 その証拠に、最悪の放出が始まった3月15日の夕方には、爆発的事象は起きていないのです」

 これが何を意味するか。今後、爆発がなくても再び大量放出される危険性は十分にあるということだ。表面的に原発が落ち着いたからといって、けっして安心できないのである。

『恐ろしいのは「原発からいつ放射性物質が大量発生したか、誰もわかっていなかった」という事実だ。』と現代は言いますが、それは違うでしょう。

文科省が5月も半ばになってからこっそり出していた3月25日のWSPEEDIの予測図(ヨウ素131の積算表面沈着量、どこに放射能が飛んだか、目安になります)でもちゃんと分かります。図の中の、緑色の部分を良くご覧ください。早川教授の予測とよく合致しています。


政府も、政府の学者も、もちろん東電も、知っていたのです。黙っていただけです。

キロ当たり2万8100ベクレルのセシウム含む灰30トンが秋田県に、流山から列車で搬入

そのセシウムの量は埋めてもいい8000ベクレルをはるかに超えているんですが...。普通の、民間の一般廃棄物処理場に送っていいんですか?

ええっと、キロ当たり2万8100ベクレル、1トンは1000キロ、30トンで3万キロ。30トンの灰の中に、6億5400万ベクレルのセシウムが入っている???灰はどういう状態で輸送されたんでしょうか?

東北を放射能のゴミ捨て場にするんですか?

スポニチ7月12日記事

秋田県などは12日、千葉県流山市のごみ焼却処理施設で1キログラム当たり8千ベクレルの基準値を上回る2万8100ベクレルの放射性セシウムが検出された焼却灰30トンが、最終処分のため秋田県大館市に搬入されたと明らかにした。

 焼却灰は貨物列車でJR大館駅に搬入。県は駅周辺の空間放射線量を測定し、今後の対応を検討する。

 秋田県などによると、焼却灰は9日、流山市から委託を受けている大館市の民間廃棄物処理場に向けて搬出された。大館市は11日に流山市から「焼却灰から基準値を超えるセシウムが検出された」と連絡を受けたとしている。

Tuesday, July 12, 2011

厚労省の言う「全頭検査」は既に肉になった牛のことだった

シープルからブラックシープルへの脱却を目指す「東京茶とら猫」さんの今日の突撃電話攻勢はまたも農水省に。

・厚労省が発表した「全頭検査」とは、と場に運ばれてきて肉になった牛の全頭検査ということ。[昨日も確認したとおり「肉になったら厚労省」なので]。これまでは、数頭に一頭を無作為に選ぶというサンプリング検査をしてきたが、それを全頭についてやるということ。

・農水省はこれまでも計画的避難地域と緊急避難準備区域については、出荷・移動される全頭について、体表面の放射線測定と、内部被曝の有無確認のための聞き取り調査を行なってきている。

・これまで、内部被曝確認の聞き取りで問題が生じたケースは一例もなかった。

・ただ、今回、内部被曝が明らかになったので、内部被曝の有無をどう確認していくかについて、聞き取り調査の徹底や、科学的検査方法の導入なども含め、厚労省と協議して行く予定とのこと。

ということは、相変わらず福島から牛は出る。

Monday, July 11, 2011

厚生省、福島県内地域限定の牛の全頭検査を検討

ちょっと待った!

7月9日のポストにも出しましたが、農林水産省のマニュアルによると、計画避難区域、緊急避難準備区域から出荷、移動する家畜は全て検査することになっています。ほらこの通り。

A8.計画的避難区域からの家畜の移送に当たっては、全ての家畜について、ブラッシングまたは水洗した上で放射線測定器でスクリーニングを行い、放射線量 が100,000 cpm以下であることを確認の上、移送してください。放射線量が100,000 cpmを超える場合は適宜除染をしてください。除染の方法については、Q9及びQ10を参照してください。

緊急時避難区域からの家畜の移送の場合も、当面の間は、当該地域から移出される家畜の受入先への配慮と畜産物の安心感の醸成のため、放射線測定器でスクリーニングを行い、放射線量が100,000 cpm以下であることを確認の上、移送してください。

それが、今更のように「地域を限定して全頭調査」???農水省に任せてはおけない、厚生省にやらせろ、ということなのでしょうか?

今まで農水省はどんな調査をしていたんでしょうか?市町村一箇所の畑一箇所から1つ取ったサンプルを検査しているだけの農作物と同じで、農家1軒で1頭放射線測定して、あと何頭出荷しようが移動しようが検査した1頭がOKなら全部OK、というのが私の推測。

緊急時避難区域の記載部分では「全ての家畜について」という言及がないのがミソでしょうね。多分、農水省の役人はそれを楯にとって、「全頭検査とは言っていない」と言うのでしょうが、役人(と政治家)以外の普通の人がこれを読んだら、10人に9人は「緊急時避難区域でも計画避難区域と同じように、安全のために全部検査しておくのだな」と理解すると思います。

時事通信(7月12日):

細川律夫厚生労働相は12日の閣議後記者会見で、福島県南相馬市の農家が出荷した肉牛から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された問題に関連し「地域を区切って全頭的な検査も考えなければならない」と述べた。関係省庁などと協議し、福島県内で地域を絞った上で牛の放射性物質の全頭検査を検討する考えを示したものだ。

厚生省の言い草を見る限り、農水省は計画避難区域でも全頭検査していなかったような様子ですが、農水省は自分たちで作ったマニュアルに平気で違反していたわけでしょうか。

ああ忘れていた。日本というところは、表のマニュアルと裏のマニュアルがある国なのでした。しかも裏のマニュアルにもレベルがいくつかあって、真のマニュアルに到達するには組織の奥義に精通する必要がある、と。農水省の場合も、このマニュアルは表向き。実際に運用したのは裏マニュアルなんでしょう。

さて厚生省の裏マニュアルは?表マニュアルを考案する段階で既に「地域を絞った上で」といっているのですから、裏はざるのように漏れるでしょう。

海江田経済産業相「町長に与えた恥に責任を取る」(読売新聞)

どうも釈然としないのはなぜでしょう。

業界と癒着して原発を日本のみならず世界的に推進、挙句の果てに福島第1原発のような事故を引き起こしてしかもそれに対処できず、情報を操作し放射能被害の実態を今も隠し続ける経済産業省の大臣は、「玄海町の町長(実家の建設会社岸本組は九電から十数億円の受注、おっとそれどころじゃない、54億円!)に恥をかかせた、責任を取る」とのコメント。

九電との関係で濡れ手に粟の商売をしてきた玄海町の町長が政府の「ストレステスト」やらに立腹したので、恥をかかせて申し訳ない、大臣辞めます、ということですか?国民がどんな被害をこうむろうと、関係ないんですね。やっぱり。

読売の記事(7月12日)を見ると、玄海町の町長さんの恥をそそぐために辞任することが古来の日本文化のような書かれ方をされています。え?

海江田経済産業相は11日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、九州電力玄海原子力発電所の再稼働問題を巡り辞任の意向を示唆した理由について、米国の文化人類学者ルース・ベネディクトが代表作「菊と刀」で日本文化を「恥の文化」と分析したことを引き合いに、「(玄海)町長に与えた恥に責任を取らないといけない(と考えた)」と説明した。

 菅首相は8日の衆院本会議で公明党議員から同書に関連づけて「恥知らずな史上最低の首相だ」として退陣を迫られた経緯があり、民主党内からは、「恥知らずと言われても辞任しない首相へのあてつけではないか」との見方が出ている。

管政権・日本政府の事故対処(の欠如)で、世界的に日本と日本人が大恥をかいていることなど、考えてもいないんでしょうね。

わらからキロ当たり7万5千ベクレル放射性セシウム検出

予想通り、やはりとんでもない値でした。

NHKニュース7月11日午後2時49分:

福島県南相馬市から出荷された肉牛から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題で、福島県が飼育農家から採取した餌のわらから、国の目安を 大幅に超える1キログラム当たりおよそ7万5000ベクレルの放射性セシウムが検出されたことが分かりました。わらは原発事故のあと、屋外にあったものと みられ、県が引き続き調査しています。

小佐古教授はウオールストリートジャーナルのインタビューで、「秋になるとパニックがおこる」とおっしゃっていましたが、夏の時点で起きそうな、いやな予感がします。

まったく偶然ですが、柏市の清掃工場の焼却灰から出たセシウムの濃度(7万800ベクレル)とほぼ同じ。柏市のは、燃やして濃縮した結果ですが、南相馬市のわらは単に外に置いておいただけ。しかもこの地区は、福島原発から20キロ~30キロ圏ではありますが、計画避難区域ではなく、緊急時の避難をお願いするかもしれません、という区域にあります。

日本はいったいどれだけ汚染してしまったのでしょうか。

Sunday, July 10, 2011

牛の餌からセシウム数万ベクレル

共同通信(日本語)7月11日(1時23分)

福島県南相馬市の牛から放射性セシウムが検出された問題で、餌のわらから1キログラム当たり数万ベクレルのセシウムが検出されたことが11日、県への取材で分かった。県によると、わらは福島第1原発事故発生時、屋外で管理されていたという。

 県は、牛が汚染されたわらを摂取、内部被ばくしたとみて調べている。食肉処理後の牛からは最大3200ベクレルを検出していた。

 大塚耕平厚生労働副大臣は、民放の番組に出演し「原因を調べた上で、全頭検査が必要なら、国民の食の安心のためにやらざるを得ない」との見解を示した。国は3月、屋外で保管していた飼料を家畜に与えないよう通達していた。

数万と言われましても、2万から9万まで幅は広いんですが、はっきり数字を出さないところを見るとよほど高いんでしょうか?

ちなみに、シープル脱却を目指す「東京茶とら猫」さんが今回は農水省に直撃、牛の検査法の不備を聞きただしています。

なんでも、

  • いったん肉になればそれは厚生省の管轄なので、農水省は関知しない。

  • 作った基準通りテストをしていれば間違いないと思った。

という、学校を優等生で卒業して官庁に就職した人ですねえ、というお答え。詳しくは、茶とらさんのサイトでどうぞ。

ドイツ気象局放射能拡散予測7月10日~12日

10日、11日とうまい具合に太平洋側に出てくれますが(アメリカ西海岸の皆様、ジェット気流に載りますのでご注意)、12日は東北、北海道にしっかりかかってしまいます。

佐賀県庁に玄海原発再稼働反対の抗議行動

県庁内に突入。県庁職員と押し合い。怒号が飛ぶ。山本太郎さんも参加。

岩上安身さんのチャンネルで現在生中継。あ、たった今OFFになってしまった。

http://www.ustream.tv/channel/iwj-saga1#utm_campaign=twitter.com&utm_source=8481306&utm_medium=social

佐賀県の県知事は姑息にも住民から自らをこのように隔離していました。(H/T 院長先生

柏市委託の専門家:柏市民の大騒ぎを見て「福島県民はどう思うだろうか」

もう驚くだのあきれるだのを通り越して怒り心頭です。血圧が一挙に上がった気がする。

一般可燃ごみの焼却場から実はキロ当たり7万ベクレル以上(1万ベクレルの騒ぎではなく)の放射性セシウムが出ていたことを認めた千葉県柏市は、「東葛6市(松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市)における空間放射線量測定を行い、その結果に基づく専門家による見解を公表」しています。

柏市のサイトに出ている、7月8日付けの専門家の見解の中で、中村尚司東北大学名誉教授のこの発言にご注目ください。

「関東の他の地区と比べても例えば、茨城県北部はこれより高いところもあり、もっと数値の高い福島県民はこの騒ぎをどう思うだろうか。」

そして、「東葛地区のような低い線量」と言い放った後、更に教授は、この程度で除染だのと騒ぐのは金の無駄、とおっしゃっています。

「多大の人員と費用を掛けて、年間1mSV以下にすることは無駄な努力

「いずれにしても、このようなことに多額の費用を掛けるのは問題だと思います。」

福島県民がどう思うかって?きっと、このセンセイのコメントを読んだら怒るに違いありません。もうすぐ福島県民になられる長崎大の山下俊一教授は喜ばれることでしょうが。

毎時0.65~0.80マイクロシーベルトを計測する地域が低線量なら、全国の原発から放射線管理区域(毎時換算すると0.60マイクロシーベルト)なども一切なくして、原発内に保育所でも開設したらいかがでしょうね。教授が名誉所長にでもおなりになって。

このほかにも血圧を上げるコメントがいくつもありますが、日本の自然放射線量が2.4ミリシーベルト/年だ、と大嘘を平気で言っています。(正解は1.4ミリシーベルト/年。)また、今一番心配すべきなのは外部被曝であって、内部被曝ではない、セシウムは飛ばない、とも。(プルトニウムを飲んでも安全、と言った東大教授よりはましなのか?)

報告書には教授の略歴が出ています。

昭和14年奈良県生まれ、京都大学工学部博士号、東京大学原子核研究所助教授を経て、昭和61年東北大学サイクロトン・ラジオアイソトープ研究所教授等、平成15年退官、現在、3民間会社の技術顧問を勤め、また、文科省原子力災害対策支援本部に大きくかかわっていらっしゃるようです。

以下に、教授の2ページの「専門家意見」をお出しします。画像をクリックすると多少大きくなります。読みにくい場合は、柏市掲載のPDFはこちらです。赤線強調は私です。



1ページ目で、今後は測定回数も場所も減らせ、ともおっしゃってますね。金の無駄、ということでしょうか。

Saturday, July 9, 2011

農林水産省推奨、福島の牛除染方法

農林水産省の、「計画的避難区域及び緊急時避難準備区域における家畜の取扱い等について」という文書の中に、どうやって牛の放射能汚染の有無を調べるのか、Q&A形式で記載されています。実際このように福島県で行われているようです。

ざっとまとめると、手順は

  1. 家畜をブラッシングまたは水洗いする。
  2. 放射線測定器で測定。
  3. 放射線量が100,000cpmを超えなければ移送OK。
  4. 超えていたら、除染する。これを、100,000cpm以下になるまで繰り返す。
  5. シャンプーで洗うと効果的。
  6. 除染に使った水は処理なしでOK。

豚も同じ手順なのでしょうか。文書は「家畜」と言っていますので、同じではないかと思われますが、はっきりしたことは分かりません。鶏に関しては、まったく情報なし。

(どう考えても、農水省が率先して日本食の世界無形文化遺産認定を目指すのはやめておいたほうがいいと思いますが。)


以下、「計画的避難区域及び緊急時避難準備区域における家畜の取扱い等について」の質問と答え8から10まで:

Q8.両区域において飼養していた家畜を両区域外に持ち出す場合、具体的にどのような作業が必要ですか。

A8.計画的避難区域からの家畜の移送に当たっては、全ての家畜について、ブラッシングまたは水洗した上で放射線測定器でスクリーニングを行い、放射線量が100,000 cpm以下であることを確認の上、移送してください。放射線量が100,000 cpmを超える場合は適宜除染をしてください。除染の方法については、Q9及びQ10を参照してください。

なお、作業をするときには、同区域での外出時の注意と同様の対応をしてください(参考:[1]作業時間を可能な限り短縮する、[2]長袖・長ズボンの作業着を着用し、帽子、ゴーグル、マスク(花粉対策用マスクが望ましい)、手袋、長靴等を使って肌の露出を防ぐ、[3]雨に直接当たらないようにする、[4] 作業後は着衣等を全て洗濯又は洗浄し速やかに入浴する、など。)

緊急時避難区域からの家畜の移送の場合も、当面の間は、当該地域から移出される家畜の受入先への配慮と畜産物の安心感の醸成のため、放射線測定器でスクリーニングを行い、放射線量が100,000 cpm以下であることを確認の上、移送してください。放射線量が100,000 cpmを超える場合は適宜除染をしてください。除染の方法については、Q9及びQ10を参照してください。

なお、緊急時避難準備区域では、作業時の服装は通常の作業の服装で差し支えありません。土ぼこり等が多い作業の場合は、マスク(花粉対策用マスクが望ましい)等を着用されるとよいでしょう。

(注)100,000 cpmとは、放射線測定器が1分間当たり10万回放射線を検出することを表し、今回検査に用いる直径約5cmの測定器で、対象物から10cm離して測定する場合、1マイクロシーベルト毎時(1μSv/h)に相当します。


Q9.家畜の除染はどのようにすればよいですか。

A9.家畜の全身を大量の流水により洗ってください。微温湯を用い、洗剤(家畜用が入手できなければ人間用のシャンプーでよい)をつけてブラシで洗えばより効果的です。洗浄後に放射線量を測定し、100,000 cpm以下になるまで除染を繰り返してください。

除染を行った場合は、念のため作業者と、使用した車両のタイヤ等についても100,000 cpmを超える汚染がないか確認してください。汚染があれば、作業衣を着替える、付着した泥などを除去する、水洗する、等の除染を行ってください。


Q10.家畜の除染はどこで行えばよいですか。

A10.放射線量が100,000 cpmを超えた場合の家畜の除染は、その家畜が飼養されていた農場内で行ってください。農場内で除染に用いた水については特段の処理を必要としません。できれば、自己所有地に集中的に埋設してください。


(追加)Twitterのメッセージの鋭い指摘:

牛は反芻するし口の周りはいつも濡れている、一般的に動物は舌で毛繕いする。濃密な大気汚染環境にさらされた動物たちの内部被曝は、人間よりもかなり多いと見るべきだと思う。

Friday, July 8, 2011

内部被曝を外から測れるものなのか?福島の子供と牛

先日、3月末の時点で福島の子供1000人を検査したら45%が内部被曝をしていたが、原子力安全委員会は「問題なし」と判断、が、7月4日にNHKの記者が質問して東京新聞が記事にするまで黙っていた、というニュースをシリーズでお届けしましたが(ここここここ)、今日は南相馬市から出荷された牛の肉から放射性セシウムがすでに緩い国の暫定基準値をはるかに超えて検出された、というニュース。牛は内部被曝していたのです。

まず、

産経新聞7月8日記事

東京都は8日、福島県南相馬市産の牛肉から食品衛生法の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)の約5倍に当たる2300ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。牛肉から基準値を超えたセシウムが検出されたのは初めて。

 福島県は、南相馬市に対し出荷自粛を要請。また、厚生労働省は、福島県や隣接県に対して牛肉検査態勢の強化を求めた。

 検出されたのは、南相馬市の緊急時避難準備区域内の農家から、都立芝浦と場に搬入された牛11頭のうちの1頭。

 福島県内では食品などについての検査が追いつかないため、厚労省の依頼で都が検査。残りの10頭についての検査結果は、9日午後にも判明する。

 この牛肉については、都の施設内で管理されており、一般に流通する可能性はないという。これまで、ほかの自治体などでも同じような検査はされていることから、放射性物質が検出された牛肉については、市場には流通していないとみられる。

ただ、都などによると、これらの牛は、体表面が放射性物質に汚染されていないかや育成過程がどうだったかについては、農林水産省の指針に基づいて、出荷段階でチェックされていたという。チェック体制が適切だったかどうか、今後、課題になりそうだ。

 ある自治体関係者は「出荷前のチェックでは問題ないということで、モニタリング検査していた。今後、農水省などが事前の検査態勢などを見直す必要があるのではないか」と話した。

さて、他もさることながら、最後から2つ目の段落にご注目。農水省の検査とは、「体表面が放射性物質に汚染されていないか」を測るだけ、つまり、牛に放射線測定器をかざして外部を測った、ということです。

さらに、7月9日付けの朝日新聞で、11頭全てからセシウムが検出され、最高はなんとキロ当たり3200ベクレル、最低でも1530ベクレル、更に同じ農家から5月と6月に出荷された牛の肉は一切検査されず市場に流通した、とのこと。

一方、福島の子供の記事の2つ目で引用した3月25日付け朝日新聞の記事のこの部分:

『調査は24日に行われ、のどの付近から数ミリの距離で検出器を使って放射線量を測定した。』

原子力安全委員会によると、検査は

『「緊急被ばく医療ポケットブック」(平成17年3月 財団法人原子力安全研究協会)の「頸部甲状腺に沈着した放射線ヨウ素の測定」に基づき、NaIシンチレーション式サーベイメータを用いて実施した』

ということを丸山安全調査管理官が丁寧な口調で説明されています。(2つ目のポスト)

このNaIシンチレーション式サーベイメータは、ガンマ線のみ測ります。このようなものです。(日本原子力研究開発機構サイトより)

牛と子供を一緒には出来ないでしょうし、セシウムとヨウ素では測り方が違うのかもしれないし、一概に言えませんが、どちらも内部被曝を外から測っただけ。それで、「心配ない」宣言をしてしまっていいんでしょうか?

牛の場合は、福島の牛集団避難の記事(朝日4月19日付け)に、

「基準値を上回った場合は、牛の体に付着した放射性物質を洗い落とすなどしてから再検査し、基準値を下回れば、移送対象に含める」

とありました。

子供の甲状腺はまあのどを洗ったぐらいでは放射能は落ちないでしょうし、そのような外からの測定で十分なのかもしれません。が、他の核種、セシウム、ストロンチウム、更に毒性の強い核種などはどうするのでしょうか?

牛は幸か不幸かすでに牛肉になった時点で東京都がたまたま依頼されて検査し、放射性セシウムの存在が分かりましたが、子供はそうは行きません。