と、いぶかしんでいらっしゃる方々のために、簡単な解説をしてみます。
SKFは、数多く出ているETFのひとつです。ETFは、Exchange Traded Fundの略称で、日本語では「株価指数連動型上場投資信託」とか、元の英語の2倍3倍の言葉を使ったような訳語になってますが、要するに、投資信託ではあるけれど通常の株式と同様に売買できるファンド、と考えればいいでしょう。
SKFの連動する指数は、ダウ金融指数(Dow Financial Index、DJUSFN)ですが、このETFの特徴は、「ダウ金融指数が下がるとSKFは二倍上がる」ところにあります。つまり、金融指数が一日に10パーセント下がったとすると、このETF は20パーセント上昇するのです。昨年9月来、株式市場が大幅に下げる中、この手のETF(SKFよりさらにレバレッジの高い、3倍ショートのETFも多数出ています)は一般投資家の間でも大変な人気になりました。
日本の情報の中では、ETFについて「通常の投資信託と比べると保有コストが安く流動性の高い商品ですから、長期投資に適しているとされています。」と解説しているサイトもあるようですが、これは間違いとまでいかなくとも、不十分な説明です。レバレッジのあるETF、つまり、連動する指数の動きの2倍、3倍のリターンを謳っているETFは、ロングであれショートであれ、長期投資にはまったく適していないのです。
SKFを例にとって見ましょう。ダウ金融指数は昨年の9月から40パーセント下げています。それなら、下げ幅の2倍上がるSKFはさぞかし儲けたことだろう、と思われるでしょう。昨年の9月時点で、SKFは110ドルでした。下げ幅の2倍の上昇なら、110ドルx80パーセント、SKFは200ドル近くになっているはず。ところが、SKFの先週の終値は46ドル。What gives? いったいどうなってるの?
疑問を解く鍵は、前述の説明の中の一語、「一日に」というところにあります。ダウ金融指数が一日に10パーセント下がるとSKFは確かに20%上がるのですが、翌日になるとまた「仕切りなおし」なのです。下の表をご覧ください。ダウ金融指数が2日目に10パーセント下がり、3日目に11パーセント上がったとします。指数は1日目の終値とほぼ同じレベルに戻ったわけですが、SKFの方はどうでしょうか。2日目に20パーセント上げたものの、3日目には22パーセント下げ、3日目の終値は1日目の終値よりも6パーセント減っています。
レバレッジのあるETFは、連動指数が連日上昇、あるいは下降している(昨年の10月、11月のような)状況では高利益が望めますが、いったん指数の上昇・下降傾向が逆行を始めたり、ひとところに停滞して上がり下がりを繰り返すようになると、「仕切りなおし」が災いして、ETFの価値は連動している指数の長期の動きが示唆する価値よりも低くなってしまうのです。
レバレッジ・ショートETFのベストな使い方は、短期の売買(長くても数日)に限ることのようです。昨年のように株式市場が連日大幅に下げる状態になれば、数週間保有しても大丈夫のようです(私の経験からですが)。
レバレッジ・ロングETFも同様で、株式市場が連日上げる、今年の3月、4月のような状態が続けば長期保有も可能かもしれません。しかし、こちらも、レバレッジのない金融ETF(XLF)が今年の初めのレベルに戻っているにもかかわらず、2倍レバレッジの金融ETF(UYG)は今年の初めのレベルの半分、3倍レバレッジの金融ETF(FAS)は3分の1に留まっていることからも、長期投資のツールではない、ということをしっかり認識しておいたほうがいいでしょう。(ちなみに、この3種類の金融ETFを比べたチャートをブログに載せていますので、ご覧ください。)