もともとの事実、報道から次第にかけ離れて、遂には大本の情報とは似ても似つかぬものになる「伝言ゲーム」の例を2つポストに出しましたが(こことここ)、今日はドイツのドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)までこの「伝言ゲーム」に参加していることに失望しました。(「ミスキャンパスを農水省が「食べて応援学生大使」にした」、という今年2月の脱力記事が、ドイチェ・ヴェレでは「農水省の後援で、福島の食べ物だけを食べた一番かわいい学生を選ぶコンテストがあった」に化けたと思われます。)最近この類が特に海外で余りに多く、いったいこれは何なんだろうかと思っています。(まあ、いい加減な英語記事を出す日本の新聞が一番悪いんですが。)
そんなときに私が気晴らしに逃げる場所は、日本、世界の多くの人々が「うそつきだ」、とそしる東京電力のサイト。特に気に入っているのは、写真・動画集のページです。最近このページは改良され、日にち別、テーマ別、号機別のメニューまで出来ています。
最近では、3号機使用済み燃料プールのビデオ、4号機使用済み燃料プールのビデオを興味深く見ていました。特に3号機は、あれは「核爆発だ」とか「即発臨界だ」というのが海外の専門家を含めた一種の定説になっていましたので、燃料集合体のハンドルが見えたときには、おや、と思いました。もっともプールの一部だけしかカメラは撮影できませんでしたので、そのほかの部分で専門家の方々がおっしゃるように「核爆発」、「即発臨界」が起きていた可能性もあるのでしょう。
今日は2号機のトーラス室のビデオが出ていました。2号機からはざるのように放射能が漏れている、と言うガンダーセン氏の言も聞いていたので(4月17日ラジオインタビュー)、どんなざるかと思ったら、目に見える部分ではほとんど損傷が見当りませんでした。
一見にしかずです。たとえ東電の資料であっても。(何しろ東電しか資料を出してこないし出せないからですが。)
それよりいっそう興味深かったのは、最新の資料として東電のページに上がっている、3号機の格納容器機器ハッチ調査の資料。
あまり注目が集まらなかったようですが、東電は去年の11月、3号機の原子炉建屋にパックボットを入れて、格納容器機器ハッチ前の溝の調査をしていました。パックボットに溝を撮影させ、溝に溜まった水をウェスでふき取らせていました。溝の線量は最高で毎時1.32シーベルト出ていました。(詳細は去年の11月16日のポストをご参照。)
つまり、汚染水が漏れていたのです。
このときはハッチが開いているかどうかの言及はありませんでしたが、私はハッチから水蒸気が漏れているのだと思いました。
それ以降、この件については続報が無く、いぶかしんでいたところ、4月19日に東電は自社社員2名を3号機の建屋に入れ、格納容器機器ハッチのシールドプラグ隙間からカメラを差し入れて内部の床を撮影したのです。
姑息なことに、隙間の写真は去年の11月、パックボットが取ったもの。この写真は11月の時点では未公開です。(こういうことをやるから東電は信用を落とすんですが...)
やはり隙間が開いていたのです。
去年の3月11日に地震が起きたとき、3号機は通常運転中でした。地震でスクラムがかかり、原子炉は停止しましたが、運転中の原子炉の格納容器のハッチのプラグが開いていたはずもありません。ということは、3号機の建屋が爆発したときの衝撃なのでしょうか?
ということは、あの爆発は「燃料プールの核爆発」ではなく、格納容器(ドライウェル)自体から、Ex-Vesselの爆発だったのでしょうか?
2012年4月19日の東電のプレス発表から(強調は私):
[目的]原子炉へ注入した冷却水が、原子炉建屋まで漏えいしている状況であり、原子炉建屋1階北東の原子炉格納容器機器ハッチからの漏えい状況を確認する。
[内容]
・過去の映像より、機器ハッチ前のシールドプラグと原子炉建屋の間に隙間があることを確認。
・シールドプラグと原子炉建屋の隙間からイメージスコープを挿入し、機器ハッチフランジの漏えい状況を確認。
[作業実績]
・作業時間:平成24年4月19日13:27 ~ 13:48(原子炉建屋に入域時間は約4分)
・作業員:当社社員2名(被ばく量最大:8.01mSv 計画:15mSv)
[原子炉格納容器機器ハッチの状況]
・原子炉格納容器機器ハッチフランジ部近傍の状況は確認でき、水が漏えいしていると思われる床面を確認。
・今回の調査結果については、今後、詳細に確認。
隙間:
乾燥床面:
水の漏洩と推定される床面:
原子炉建屋に4分で8ミリの被曝。単純に被曝量が付近の空間線量と一致していると考えても、毎時120ミリシーベルト。その約2倍の15ミリを計画していたと言うことは、やはり去年の11月の時点でパックボットが計測していた毎時200ミリシーベルト以上の線量を予想していたのでしょう。
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