Thursday, January 12, 2012

ほとんど誰も注目しなかった福島第2原発の記事:保安院、東電に東日本大震災で破損した機器などの復旧計画を策定し提出するよう求める

え、破損した機器?

共同ニュースが2012年1月11日付けで出した下記のニュースを記事にしたところは、ざっと全国紙のアーカイブを見たところではどこも無く、毎日新聞の英語版が翌日の12日に共同ニュース記事として掲載していましたが日本語版には無し。

経済産業省原子力安全・保安院は11日、昨年12月に「原子力緊急事態宣言」が解除された福島第2原発について、東京電力に、東日本大震災で破損した機器などの復旧計画を策定して月内をめどに報告するよう指示した。運転再開ではなく、安定した冷却状態を保つためとしている。

 保安院によると、同原発は安定した冷温停止の状態にあるが、津波被害を受けた非常用発電機や使用済み燃料プールの複数ある冷却設備の一部が使えない状態。建屋の扉にも津波で破損した後、鉄板などで応急措置をしただけのものがある。計画にはこうした機器や設備の補修などが盛り込まれる見通し。

  保安院原子力防災課の松岡建志(まつおか・けんじ)課長は記者会見で「冷温停止の状態をより着実にし、安全が確保されることを期待している」と指摘。その上で「再稼働できるレベルにまで復旧を求めるものではない」と強調した。福島県や地元自治体にも、運転再開に向けた動きではないことを説明したという。

朝日新聞は時事通信の記事として2行ほどの記事を出していましたが、その後自社記事に差し替えています:

経済産業省原子力安全・保安院は11日、東京電力福島第二原発の復旧計画を作成し、提出するよう東電に指示した。保安院は「(今回の指示は)冷温停止を着実に維持するためのもので、再稼働を目標にした指示ではない」としている。

 第二原発1~4号機は大震災発生時に自動停止した。外部からの電源は確保されていたが、1、2、4号機は炉を冷やす設備が津波で流された。昨年3月15日までに機器の交換や仮設ケーブルを敷くことで冷却機能を回復させ、炉内の温度が100度以下になる冷温停止になった。

 保安院の指示は、国の原子力災害対策本部が昨年12月26日に同原発の原子力緊急事態宣言を解除したのに伴うもの。未復旧となっている一部の非常用ディーゼル発電機や核燃料プール冷却設備の復旧や仮設ケーブルの補強などを盛り込み今月中の提出を求めている。

つまり、今回の指示は原子力緊急事態宣言を解除したためで、冷温停止を着実にするためのものである、ということですが、多少の疑問が出ます。

原子力緊急事態宣言を解除するまで復旧作業ができないなどということはありうるのでしょうか?

復旧が求められている機器をこの2つの記事から拾うと、

  • 非常用ディーゼル発電機の復旧

  • 核燃料プール冷却設備の復旧

  • 仮設ケーブルの補強

  • 建屋の扉

核燃料プール冷却設備の復旧を除いては、いつでも出来そうな作業のように思えます。

保安院が(表向きに)東電に対して出した書類はこれ。実際にどこをどう直すのか、という具体的なことは一切言っていません。文書の2ページ目は以下の通り:

1.福島第二原子力発電所の一部については、仮設設備となっており、これらの設備について適切な維持管理を行うこと。また、計画的に仮設設備の依存度を下げること。

2.残留熱除去系の一部等の安全設備が復旧していないことから、それらが復旧するまでの間、状況に応じて適切な維持管理を行うこと。また、自然災害等に備えて、更なる安全確保に万全を期すこと。

3.作業員の安全を含め安全管理を徹底すること。

4.冷温停止に至るまでに、通常時とは異なる圧力・温度等の履歴があったことを踏まえ、施設に対するこれらの影響を検討すること。

具体的な話は、「残留熱除去系の一部等の安全設備」ということだけです

一連の形式としては、まず官邸から原子力安全委員会に対して、東京電力福島第二原子力発電所に係る原子力緊急事態解除宣言を解除する件について意見を求め、数日後検討後委員会はOKを出し、官邸は経済産業省・保安院に東電に指示を出すよう要請、保安院が東電に指示をだす、という、平安時代の奏上のようなことをやっています。

日本の会社に勤めたことのある方ならお分かりになるでしょうが、実際はこれはおそらく全く逆で、東電がここを修理したい、と保安院と以前から相談しており、保安院もおそらく以前から原子力安全委員会と話をしており、それが大体纏まった時点で保安院が形式を整えるために経済産業省を通じて官邸に上げ、官邸は形式を整えるために原子力安全委員会に諮り、委員会は数日資料などを手元において形式を整えた後、よろしいでしょう、と官邸に答え、OKが保安院に行き、東電にOKが行く。あくまで私の想像ですが。

実際の修理箇所はさてどこなのか。この保安院の指示に先立つこと2日の1月9日、岩上安身さんのIWJ大阪のUTREAMチャンネルで、専門家を招いた市民の勉強会をやっていましたが、その中で東大の井野博満名誉教授が、福島第2原発の格納容器は壊れており、東電、保安院はこれを修理したがっている、と発言されていました。津波ではなくおそらく地震で壊れた、とのこと。

これでしょうか、修理の実体は?

修理の箇所として、特別に政府の指示が必要な箇所が公文書に明記されているとは思えないため、勝手に深読みしています。

原子力安全委員会の12月26日の定例会議の資料をちょっと読んで見ることにします。

6 comments:

  1. ポスト内容を最後のほうに至るまで『福島第1』のことだと思い込んで読んでいました。タイトルにもちゃんと『第2』と明記されているのに…。思い込みというのは怖いもんです。
    こういった自分自身の陥った“勘違い”を考えると、『ふくいち』の損傷が壊滅的であるがゆえに、一般的な認識は「福島『第2』は震災での被害は修復可能な“軽微なもの”」のようにイメージされているのではないかと思いました。
    「『思い込み』『勘違い』を誘発させる」というのは情報コントロールの1パターンなんですけどねぇ…。

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  2. 分かります分かります。修復可能な軽微な部分しか、おそらく表には出てこないだろうと思います。扉だの、仮設ケーブルだの。ふくいちほどぶち壊れてしまうと隠しようもあまりなくなっていますが。

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  3. 『非常用ディーゼル発電機』に関して。原発の展示用模型の製作に携わったという知人から聞いた話ですが、普通イメージされる『ディーゼル発電機』とはまったく違うシロモノだそうです。星形12気筒(?)だかで複数の過給器が装備されたモノ(かなり詳細に教えてもらったんですが…残念ながらメモひとつとってなかったので曖昧です…すみません。)で、どちらかというと『ガスタービンエンジン』の方がイメージは近いそうです。

    知人曰く「総括原価方式のために思いつく装備をすべて搭載させた結果のようだ」とのこと。
    まあ、道路工事現場で見かけるようなモノの発電能力じゃ、ああいった巨大プラントの非常用電力供給はしきれないのだろうとは思いますが…。

    『総括原価方式』がおおっぴらに問題視されだした現在、この意図的にコストをかけた補機の修復は東電にとっても“お荷物”になっているのかもしれません。

    ちょっとポスト内容とはチグハグなコメントなんですが、ご参考になれば…。

    P.S.
    昨年来、『あのEXなんたらのウルトラマンブログ』…と仙台方面の知人などに紹介したところ、情報源として非常に重宝しているそうです。大変な労をさいていただき、私も感謝の念にたえません。

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  4. 情報、ありがとうございます。原発用の非常用ディーゼル発電機の出力と言うのはどれくらいなんでしょうね。ちょっと調べてみます。

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  5. 原発用のディーゼル発電機をGoogle検索してみました。
    http://blog.tomoyuki.biz/article/43809065.html
    ↑ココにかなり便利なデータリンクがありました。

    http://www.fapig.com/kawasaki/kawasaki_dl.html
    これだとすると、最小出力ので3,450kw/hのモノです。

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  6. youtubeのarevamirpalさんの映像アーカイブを拝見してドッキリしてます。
    http://www.youtube.com/user/arevamirpal

    12月の『無人瓦礫処理』などは日本国内のメディアでは一切報道していないものです。
    現在、日本国内では『ふくいちライブカメラ』『TBS/JNN福島第一原発情報カメラ』以外は
    画像情報は実質的に流れていません。

    「今何が行われているのか?」が判ることによって原発を継続するにせよ廃止するにせよ、
    『次のステップ』に行くためには、こういった情報の公開は必須だと思います。
    (動画アップの関係者に迷惑がかからない限りは…です。)
    もし見当違いなものでしたら…無視してください(^_^;)

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