Tuesday, March 20, 2012

【記録】保安院が握り潰した東電の放射能拡散予測

福島第1原発事故による放射能拡散のシミュレーションについては、文部科学省が握りつぶしたSPEEDIだけでなく、東京電力が事故当日の2011年3月11日から独自に放射能拡散予測を行い、シミュレーションの結果を経済産業大臣(当時の海江田万里)、福島県知事(当時も今も佐藤雄平)、大熊町町長、双葉町町長宛てにファックスで流し続けていたことは英語ブログで昨年の6月に取り上げましたが、保安院がそのことを認めて理由まで述べていたことは知りませんでした。(日本語ブログでもNHKの番組の紹介をして取り上げたと思うのですが、自分のブログの検索がうまくかかりません...。)

保安院がその情報を使いもしなかった理由がふるっているので、記録に残そうと思います。

その理由とは、

予測は保安院でなく、東電の考えだったため(あえて公表しなかった)

ふざけるな。

事故当事者の民間が何を言おうとも関係ない、と言うわけです。東電の拡散予測は福島第1原発の吉田所長の名前で出され、拡散予測マップのほかに手書きで住民の被曝予想、希ガス放出総量予測(約60万テラベクレル)が書いてありました。

保安院のふざけた答弁(あの西山審議官です)を報道した、今は消えてしまった毎日新聞2011年6月26日の記事を、このブログで見つけました:

東日本大震災:福島第1原発事故 拡散予測、公表せず 保安院、東電のベント前報告
 
東京電力福島第1原発1~3号機で、原子炉格納容器を守るため圧力を下げる『ベント(排気)』をする前に、東電が原発周辺への放射性物質の拡散予測をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院に報告したにもかかわらず、一般には知らされていなかったことが25日、分かった。

住民が避難行動する際の一助になった可能性もあるため、事故の原因究明や検証をする政府の『事故調査・検証委員会』でも検証されそうだ。

拡散予測は、保安院が24日夜にホームページ上で公開した、計約1万1000枚の資料に含まれていた。

文書は、原子力災害対策特措法に基づき、3月11日の福島原発事故発生直後から送られたもので、同日は5月末までの分が公開された。

これによると、同原発1~3号機でベントをする前に、東電は燃料が損傷するなど重大事故が発生したと仮定。風向きや風速などを考慮しながら、1、3、5、24時間後に放射性物質の希ガスやヨウ素が拡散する状況などを予測した。

東電は結果を保安院や福島県、同県大熊町、双葉町の4カ所にそれぞれファクスで送付していた

一般に公表しなかった理由について、保安院の西山英彦審議官は、

予測は保安院でなく、東電の考えだったため(あえて公表しなかった)。公表すべきだったかは、検証される必要がある』と語った。

(毎日新聞 2011年6月26日)


東電の本店と福島第1原発が事故対応の真っ只中で発信していた情報は、保安院のサイトに今も出ています。ここです→http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/plant/1/230617-1-2.pdf

これは、その資料の一ページ目です。吉田所長の手書きのようです。

去年の3月、東電が資料を出さない、けしからん、と管前首相、政府が騒いでいましたが、何のことはない、出てきた中でもしかしたら一番重要な情報だった東電からの放射能拡散予測を握りつぶしたのは、ほかならぬ政府でした。

今年3月21日付けの東京新聞には、福島県が、文部科学省がSPEEDIを委託している原子力安全技術センターから、SPEEDIのシミュレーション結果を2011年3月11日からメールで受け取っていたにもかかわらず、担当がメールを削除していた、という信じられないニュースが出ています。東京新聞も記事がすぐ消えるので、こちらもコピーしておきます。

一番肝心な時期のシミュレーションを無いことにして、知らぬ顔をして被害者面を下げていたのですねえあの知事は。福島県は事故当初から、文部科学省のSPEEDI、保安院のシミュレーション、東電のシミュレーションを全部、受け取っていたことになります。

福島県が拡散予測消去 当夜から受信5日分

東京電力福島第一原発の事故で、福島県が昨年三月十一日の事故当夜から放射性物質拡散の予測データをメールで入手しながら、十五日朝までの分をなくしていたことが県への取材で分かった。この間に1、3、4号機で相次いで爆発が起きたが、県は原発周辺の自治体にデータを示していない。県の担当者は「(データの)容量が大きすぎて、消してしまった」と話している。

 文部科学省の委託で放射性物質の拡散を予測するシステム(SPEEDI=スピーディ)を運用する原子力安全技術センター(東京)によると、センターは震災当日の昨年三月十一日午後四時四十分、文科省の指示を受け福島第一原発から放射性ヨウ素が毎時一ベクレル放出されたとの仮定で試算を開始。一時間ごとに文科省や経済産業省原子力安全・保安院にデータを送った。

 国の現地対策拠点となったオフサイトセンター(OFC、福島県大熊町)と福島県にも送る予定だったが、震災で回線が壊れたため送れなかった。

 だが、メールの回線ならば送れることが分かり、十一日深夜、OFCに隣接する県原子力センターからの送信依頼を受け、予測データの画像を県側にメールで送信。十二日深夜には県庁の災害対策本部にも同様に送り始め、一時間ごとに結果を更新し続けた。

 ところが、県の担当者によると、十五日朝までメールの着信に気づかず、それまでに届いていたメールは消してしまったという。

 県は「予測は役に立たない」として、その後も送られたデータを公表せず、市町村にも知らせなかった。

 これらとは別に、県は十三日午前十時半ごろ、保安院からもファクスで拡散予測を受け取っていた。こちらも十二~十三日早朝までのデータだったため、「既に過去のもので、正確ではない」として公表しなかった。

 県の担当者は「送られてきたデータは二十キロ圏の範囲で、既に圏内の住民は避難した後だった。本来は国が公表すべきデータだが、結果として、住民が被ばくしたのは事実で、早めにお知らせすればよかった」と釈明した。

「データの容量が大きすぎて」って、いまどきどんなコンピュータ使ってるんでしょう福島県は。余りにいい加減なものを知らない言い訳です。

担当者は名前を公表され、重刑に問われるべき代物だと思います。保安院も同じこと。

残念ながら粘り気が欠けている日本は、これを「スルー」するんでしょうか?

4 comments:

  1. スルーしてはいけませんよね。。。日本人、お行儀がよすぎる。。もっと怒らないといけないと思います。
    それと、管元首相は、孤立無援状態だったから、やはり情報が上がってこなかったのでは、、と。別に擁護するわけではありませんが。

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    1. 管さんは上がってくるのを待たないで、出せ、と一言目の前の官僚に言えばよかったのです。「目の前にいたのに向こうは何も言わなかった」などど弁解しているようですが。

      向こうから自主的に持ってくるのが当たり前だ、とでも思っていたとしたら、それこそ物を知らない。官僚は命令がないと動かない。

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    2. あらかじめSPEEDIの存在を知っていれば「出せ」と言えるけど、「そういうものがある」ことすら知らされていなかったのでは、どうしようもないです。

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    3. 国と原発立地自治体で毎年行う原子力防災訓練は、SPEEDIのデータを基に避難区域を決めることが訓練の中に入っています。訓練には、首相以下、関係閣僚、官僚、すべて参加します。

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