Saturday, March 17, 2012

文部科学省がヨウ素129の分布状況調査をしている理由はなんだろう?

(アップデート3月17日: もうひとつ、可能性のある理由を見つけました。最新のポストでお読みください。)

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ツイッターでどなたかのツイッターをたどってこのブログに行き着き、そこから文部科学省が2012年1月24日に発表した「福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布状況等調査について」という資料に行き着きました。

そこで私の目を引いたのは、プルトニウム241ではなく、ヨウ素129という核種。文部科学省の上記資料(2ページ目)によると、

2.2 ヨウ素土壌濃度マップの精緻化について
第一次調査において採取した土壌試料(100試料程度を予定)について、現在、ヨウ素129の核種分析を実施中。

とあります。

ヨウ素129という核種は耳慣れない核種でしたので、英語Wikiを調べてみました。

半減期1570万年、弱いベータ線、ガンマ線を出し、キセノン129に崩壊する。
天然にも微量存在するが、ほとんどはウラン、プルトニウムの核分裂によって生成される。

どうもピンと来ません。そこで更に読んでみると、

冷却された使用済み燃料中のヨウ素の6分の5はヨウ素129である。(残りの6分の1は安定ヨウ素127。)

え?そこで、Iodine-129、Spent Fuel Poolと検索を掛けてみたら、「ハイレベルの核廃棄物管理(High-level radioactive waste management)」という項目が出てきました。つまり、

ヨウ素129(半減期1570万年)はテクネチウム99(半減期22万年)とともに、使用済み燃料が数千年保存されたあとの放射能の大半を占める。また、使用済み燃料で非常に厄介なのは、超ウラン元素であるネプツニウム237(半減期200万年)、プルトニウム239(半減期2万4000年)。これらの高放射能核廃棄物を安全に生態系から隔離するには、高度な管理が必要になる。

更に検索を掛けると、米国のInstitute for Energy and Environmental SciencesのArjun Makhijani氏が米国東海岸時間2011年3月13日午後9時の時点で書いた「福島第1原発事故のこれまでに判明した事実、分析と今後に起き得る可能性」という5ページほどの報告書が引っかかりました。その3ページ目に、

While the quantity of short-lived radionuclides, notably iodine-131, would be much smaller, the consequences for the long term could be more dire due to long-lived radionuclides such as cesium-137, strontium-90, iodine-129, and plutonium-239. These radionuclides are generally present in much larger quantities in spent fuel pools than in the reactor itself. In light of that, it is remarkable how little has been said by the Japanese authorities about this problem.

ヨウ素131など、短命の放射性核種の量は[福島のほうがチェルノブイリより]少ないだろうが、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの長命な放射性核種の存在のために長期的には問題がより大きい。これらの放射性核種は、原子炉の中よりも使用済み燃料プールにより多い量で存在する。それを考えると、日本の関係者が使用済み燃料プールの問題についてほとんど触れていない、というのは驚きである。

斜め読みですが、この報告書が注目しているのは、使用済み燃料プールがどうなっているか、ということに尽きるようです。報告書が書かれた時点ではまだ3号機は爆発していませんから、研究者が気にしていたのは1号機の使用済み燃料プールです。米国原子力委員会の報告書でも、事故の初期に米国が最も注目していたのが使用済み燃料プールであったことが分かっています。

文部科学省が今になってヨウ素129の土壌分布状況を調査している、ということは、やはり使用済み燃料プールからの放射性物質の拡散の可能性を考えているのではないでしょうか、と、素人考えで妄想しています。

それにしても、使った後の燃料を100万年単位(ヨウ素129に至っては1570万年)で管理しなければならないような発電システムは、元からやるべきでなかったシステム、ということでしょう。

4 comments:

  1. 英文資料の指摘は、興味深いですね。
    チェルノでも、初期の被爆によらない甲状腺異常は、セシウム137ではなくヨウ素129の可能性がある、ということと理解しました。

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    1. チェルノブイリでは原子炉そのものが爆発しました。原子炉内の燃料にヨウ素129は少ないようですから、実際どれだけチェルノブイリでこの核種が出たのか、あるいは出たのかどうか、不明です。調べてみようと思います。

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  2. こちらの方(ヨウ素129長期的影響説)で少し進展したので、勝手にメモ:

    生物濃縮の率がすごいらしい。空気ではなく、土壌からはどうだろうか?

    「内部被爆の脅威」(肥田舜太郎・鎌仲ひとみ、筑摩書房、2005.6月)

    「ヨウ素131は甲状腺に集まり、甲状腺機能障害、甲状腺癌を引き起こす。このヨウ素に関しては空気中から植物体内に200~1000万倍にも濃縮されることが分かっている。ミルクの中には62万倍に濃縮される。」82ページ

    土壌中のヨウ素は、微生物活動で、水系に溶け出しやすいらしい。ウクライナ周辺より雨の多い所だと、動きが変化するのだろうか?

    XANESを用いた水田土壌中のヨウ素の非破壊形態分析とその溶脱機構
    http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/publish/niaesnews/072/news07209.pdf

    「水田土壌でヨウ素濃度が低いのは、湛水期に、微生物活動により酸素が消費されて土壌が還元状態になることが原因でした。土壌に保持されやすいヨウ素酸イオンが分子状ヨウ素を経て土壌に保持されにくいヨウ化物イオンへ還元され、土壌水に溶脱してしまいます。」10ページ

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