Sunday, March 11, 2012

ほとんど意味不明の外務省制作コマーシャル”Japan Power of Harmony” (日本 和の力)


震災1周年を記念して外務省が海外向けに作った4本のコマーシャル、外務省のページによると、

東日本大震災による風評被害を解消し、日本のイメージ回復・向上につなげるため、日本及び東北の魅力を海外に向けて発信するテレビCMを作成しました

とのことですが、4本の内の”Japan Power of Harmony”というコマーシャルは明らかに世界のビジネスを対象としたもののようで、他のコマーシャルとは違って日本の技術力をアピールするべく(と外務省は言っています)、全編にナレーションが入っています。

これがなんというか...。英語の単語を確かに使っているんですが、とても英語で理解が出来ない。意味不明のすごい代物なので、ご紹介します。

コマーシャルは外務省のYoutubeチャンネルにあります。埋め込みをさせないという制限が付いているので、このリンクでご覧いただくしかありませんが、ナレーションの英文書き起こしは以下の通り:

Japan, a country of perseverance and spirit of harmony.
Spirit born from the severe nature of our nation.
And that reality has formed Japan, through endless innovation and cooperation.
"These innovation from my country of Japan will ultimately contribute to the entire health of our society, to the entire advancement of the human race."
Now, more than ever, the world is facing challenge.
And Japan offers our unique experience for everyone.
We know, we learned, power is created from the cooperation of people.
It's the power of harmony.
Together for a better future.
Japan.

最初にコマーシャルを見たとき、英語としては私にはなにがなんだかさっぱり分かりませんでした。背景にある日本語の想像はなんとなく出来ましたが、なんかへたくそな、学生レベルの英作文(日本語を英語にする、という意味)だなあ、というのが第一印象。何を誰に訴えたいのかをまるで考えないでただ訳文をつくった、という感じです。

さて、この英語は理に適った日本語になるんでしょうか?はっきり言って、無理です。羅列されている単語からなんとなくイメージをわかせることは出来るでしょうが、その手法はいかにも日本。論理的なメッセージを貴ぶ国際ビジネスに受けるとはとても思えません。

おそらく原文は外務省の政治家か官僚の書いた日本語か、訳の分からない英語。それを基にしてコマーシャルを作れ、と指示されて、原文を翻訳したか、訳の分からない英語を多少ましにしたかして英語のナレーションをつくって適当な画像をつけた、というところでしょうか。(あくまで私の推測。違うかもしれません。)

あえて日本語に翻訳してみます。(注意: まったく無意味の作業である可能性大。)まずタイトルの”Power of Harmony” を「和の力」と訳しましたが、これは聖徳太子の「和を以ってこれを貴しとする」、の和のつもりです。

Japan, a country of perseverance and spirit of harmony.
日本、辛抱強さと和の精神の国。

Spirit born, from the severe nature of our nation.
精神は、私たちの国の厳しい自然から生まれました。(という意図だとは思うんですが、英語だけを読むとそうではなく、「この精神は日本という国あるいは国民の性質が厳しいものであることから生まれました」みたいなことになってしまう。第一、日本の自然は厳しくなんか無いですよ、世界の各地に比べたら。物成りの良い、温帯です。)

And that reality has formed Japan,
そしてこの現実が日本を作り上げました。(どの現実だか全く意味不明)

through endless innovation and cooperation.
限りない技術革新と協力を通して。(まったく意味不明)

(ここで、コヤリ・ユキオさんという方が登場します。国際宇宙ステーションに資材を届ける補給機の宇宙航空研究開発機構プロジェクトマネージャーとの字幕が出ます。)

"These inventions from my country of Japan will ultimately contribute to the entire health of our society, to the entire advancement of the human race."
「私の国日本からの発明は、私たちの社会の健康に、全人類の進歩に、究極的に寄与します。」 (まったく意味不明。)

Now, more than ever, the world is facing challenge.
現在、前にもまして、世界は問題に直面しています。(世界の前に日本が直面している問題のほうがよほどすごいと思うんですが。)

And Japan offers our unique experience for everyone.
日本は、日本のユニークな経験をすべての人に分かち合います。(放射能のことみたいですね。皮肉。)

We know, we learned, power is created from the cooperation of people.
私たちは知っています。力は人々の協力で作られるのです。

It's the power of harmony.
和の力。

Together for a better future.
共によりよい未来に向かって。

Japan.
日本。

日本語にすると、単語を拾い見てなんとなく分かったような気になるでしょう? 英語だけ読んで、聞いている外国人には、おそらく、「なんとなくわかったようなわからないような、よく考えたらぜんぜん分からないし意味不明」だと思います。このコマーシャルを見て、「わあ、日本てすごい技術があるんだ!」「日本のイメージが良くなった」、などと感心する外国人がいるとしたら会ってみたい。(今英語ブログ読者に聞いています。)

金を使ったんでしょうがその割にはちゃちな画像で、画像に何の脈絡もない。

さてこれは電通か博報堂か。

広告のコピーのあまりのひどさに、これは大臣クラスの政治家の発案であるような気がします。英語ブログ読者の一人のコメントは、

「あまりにひどくて、かえって可笑し味がある。1980年代の安っぽいコマーシャルを見ているようだ。」

まあそんなところが妥当でしょうか。1985年プラザ合意が及ぼした経済への悪影響を軽減すべく始めた低金利政策が生み出した不動産バブルがはじけるまでの1980年代は、日本の多くの人々が裕福に感じた最後の年だったかも知れません。

9 comments:

  1. リンク先でCMを見ましたが、見ている最中、背筋がゾクゾクしました、恥ずかしさで(笑)。ほとんど、VOW!(宝島社の書籍で、アジア諸国で見られる変な「日本語」が沢山お笑いネタになっています)の逆バージョンですね。この意味不明な英語を、仕事とはいえ真顔でナレーションしなければならなかったこの英語圏のナレーターも、大変だったでしょう。もっとも、一番大変なのは、こんなのをレセプションだ何だで、要人達にご披露しなければならない、欧米の日本大使館でしょうが。。。

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    1. Youtubeのビデオを見ると、ビデオを嫌いだ、という人が圧倒的に多いですから、推して知るべしですね。これを世界のテレビコマーシャルで流すという発想が分かりません。流す前に実際に外国人に見せて、反応を見ればよかったのに。(日本にいる外国人ではなく、外国にいる外国人。)

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  2. 広告屋として見て、これプレゼン以下で、企画のラフだわ。こんな感じにしましょうって言って予算貰う最初の一歩のまま。
    節約大好きな課長とかが、自分の友達のWEB屋に作らせてしまった感じ。昨今の企業なんかで広告担当まで、人材派遣から来てるとか有るとありがちにそうゆう、チンケなマイクロ利権で、小学生が作るような広告が、高額で表に出るなんてのがある。
    特に公務員なんか世間知らずなので、ここまで落ちたのかと言う感じはある。高額なクリエイティブを片っ端から首切った結果や、安ければOKで落札させた結果昨今の広告はこの手の物増えてる。たぶんディレクターが英語出来ないのに、異様にプライド高く(そのくせどっかのかっぱらって来ただけだが)国の仕事取って有頂天な感じが見えるように思う。
    最近の日本は、安かろう悪かろうの国になってしまった。

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  3. 思い出した。今年度末だから、予算消化大会で、何でもいいから適当に予算使っちゃってくれーって、官僚が言って来る時期だわ。その予算があまりに半端だった結果だな。或いは公開入札して、完全に失敗してるのに、入札に入れた担当の地位の問題で、誰も「ダメ」って言えない。
    まあ、原発事故の時の「怖くて言えませんでした」と同じ構造だと思う。

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  4. これまんま受験英語って感じですね。受験生に英作文作らせるとこうなります。自分も有名私大(笑)出身ですが、この英語ナレーションの意味が理解出来きてしまいました。で、ネイティブの人が感じる不自然さに気がつかない。。情けない事に。つまり同類の人が作ったのだと思います。官僚なり電通クリエイティブなり。日本人向けのCMなら通用したのでしょうが、国家予算つかって未熟さ露呈させちゃってますね。

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  5. 日本語を解さないアメリカ人に見せました。不自然を通り越して、理解不能、まるっきり分からないそうです。何を言おうとしているにせよ、これは「ゴミクズ」だと言ってました。

    これで誰かが金をもらった、そのことだけが大事なんだろう、と言ってました。

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  6. 貴方は偉い。自分にはこれを訳す勇気は無い。ほとんど禁忌な内容で、不気味過ぎて触れたくない感覚がある。外国人が如何に感じるか以前に病的な空気が漂っている。これも被曝の影響だろうか?
    冗談ではなく、深刻になってしまった。

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  7. 世界の誰にも届かない、自分だけを騙し納得させるための内容。
    皇国史観しかり、この民族は昔からこの手が多過ぎる。

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  8. こういうサイトも有ります。

    http://311.langrich.com/
    311について英語で発信することを勧めるサイトです。

    「特定の単語を使って」でピンときましたが、
    やはり、前ポストの「助け合いジャパン」も一枚噛んでいます。

    アルファ・ブロガー「ちきりん」さんのサイトで知りました。彼女も応援しておられるそうです。。。。

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