原子力安全委員会8月1日の定例会議で報告された資料の1つを見てみました。水産庁が調査、試算したものですが、それによると、福島沿岸部、沖合30キロともに、福島第1原発事故後の、原発周辺海域での漁師の皆さんの被曝はほとんどが外部被曝、しかもその大半は漁網から出るベータ線とガンマ線による被曝、との試算結果が出ています。
実効線量試算は最初のモニタリング期間(4月29日~5月4日)が最高で、1.43ミリシーベルト年。以降はほぼ横ばいで、最新の7月4日~14日では5月上旬レベルに近い0.91ミリシーベルト年。
更に資料のページをめくると、放射性物質(ヨウ素131、セシウム134、セシウム137)別に、具体的に何からどれくらい被曝するか、の試算が出ています。試算は沿岸部、沖合い30キロともに同じ値ですので、沿岸部データから数字を拾ってみます。
まず、0.91ミリシーベルト年の被曝の大半はセシウムからの0.73、内訳は、
ヨウ素131: 0.13
セシウム134: 0.52
セシウム137: 0.21
空間被曝: 0.04
経口被曝: 0.01
このうち、漁網からの被曝を合計すると、0.828、内訳は
船上: 0.476
陸上: 0.352
また、漁網被曝の核種別内訳は、
ヨウ素131: 0.126
セシウム134: 0.504
セシウム137: 0.198
半減期が約2年のセシウム134からの被曝が約6割になっています。
漁網からの被曝の線種はほとんどガンマ線で、内訳は
ガンマ線: 0.814
ベータ線: 0.014
資料の8ページ以降を見る限り、福島近海、沖合いの海から検出される放射性物質の値はNDかせいぜい2桁(Bq/リットル)。海に打っては引き上げる、を繰り返す網が、海中のセシウムを吸収して高線量になる、と言うことでしょうか?また、陸上での網からの被曝、つまり、網の手入れなどをするだけでこれだけ被曝する、という試算をしていることになります。
上の数字を取った資料の画面は以下の通り。全22ページの資料はこちら。
水産庁によると、年間被曝量は試算で0.91ミリシーベルト、年間の公衆被曝許容量の1ミリシーベルトを下回る(ので安全と言いたいのでしょうが)、とのことですが、考えてみればこの公衆被曝許容量は医学的に必要な、あるいは医学的な恩恵が個人にとって放射線の危険を凌駕する被曝、つまりX線、CTスキャンなど、また、飛行機に乗って高めの放射線に被曝する、などを想定しているわけで、普通に働いていて被曝してよい限度などではありません。
ただし、資料には、試算だけでなく線量計での実測値も出ています。(漁師さんにガラスバッジでもつけさせたんでしょうか?)実測値は試算値の0.91ミリシーベルトを大幅に下回り、0.17ミリシーベルト、となっています。
試算値が実測値とかけ離れているのは、会議の速記録によると、海水の放射能測定で検出限界(ND)と出たものでも10ベクレル/リットル、としているため、と説明されています。2つの値がかけ離れていることに、別にどの委員も驚いてもいないようで、結局は実測値が低いんだからいいじゃないか、ということのようです。検出限界を下げるように、という要望を出すに留まっています。
長々とポストにしましたが、時間と金を掛けている割には結構いい加減な試算ですねえ。
しかし自分の船の漁網から被曝する漁師さんも災難ですが、そんな海域に回遊している、あるいは生息している、魚も災難。それを知らずに食べてしまっているかもしれない国民も災難。(最後のポイントについては、お出しした広瀬隆さんの7月15日の記者会見ポストをご覧ください。氏によると、福島沖で獲れた魚が九州に水揚げされ、西日本の人たちが安心して食べている、とのこと。)
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