Friday, January 13, 2012

ロイター(英語)記事全訳: 「フランスの原発付近で子どもの白血病発病率が2倍、調査で判明」

最初に英語のロイター記事を読み、その後で出たロイター日本の翻訳記事を読んで、あれ、何かごそっと抜けている、と思ったらツイッターの読者の方々からも同じ指摘。そこで、元の英語記事を訳してみました。

ロイターの日本語の記事からあからさまに抜けているのは、原発の立地、出力による白血病の発症の変化は無かった、ということと、ドイツで2007年に発表された同様の調査の結果ですが、そのほかにも細部がぼろぼろ落ちています。しかもロイターの訳者が統計用語を知らなかったことによると思われる誤訳つき。英語の記事を要約しただけ、と言うことなのでしょうが、ちょっと残念。

ウオールストリートジャーナルがヨウ素剤配布の記事でやったような、故意とも思える日本語記事からの情報欠落よりは若干ましでしょうか。

英語版ロイター通信2012年1月11日付け記事

記事:ミュリエル・ボセリ

1月11日パリ発(ロイター)-フランスの原発付近に住む子どもの白血病発病率はフランス国内のほかの地域の2倍であることが、健康と原子力安全に関するフランスの専門家による調査で明らかになった。

この調査結果は近々『国際がん雑誌(International Journal of Cancer)』に発表される予定だが、白血病(血液がんの一種)の高い発病率と原発近くに住むこととの間に因果関係を立証するまでには至っていない。

フランスは30年前から原子力発電を利用しており、電力の75パーセントを58基の原子炉でまかなうという、原子力への依存度が世界で最も高い国である。

フランスの保健研究機関、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)が実施したこの調査によれば、フランス国内の19箇所の原発で、半径5km圏内に住む15歳未満の子ども14人が2002年から2007年までの間に白血病の診断を受けている。

国内の他地域で同時期に白血病と診断されたのは合計2,753件であり、それと比べると原発付近の発病率は2倍に達する。

「この結果は徹底的に検証されていますし、統計的にも有意です」と、原子力安全に関するフランスの研究機関、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)で疫学研究所長を務めるドミニク・ローリエは言う。

INSERMはIRSNと共同で1990年から類似の調査を行なってきたが、原発付近の子どもの白血病発病率が高い事実を確認したことはこれまで一度もない。

「とはいえ、私たちが扱っているのは非常に小さい数字なので、結果は細心の注意を払って分析する必要があります」と、今回の調査の共同研究者の一人でもあるローリエは指摘する。

ローリエによれば、原発の立地が海のそばでも川のそばでも、また原発の出力がどれくらいであっても、発病のリスクに違いがないことを今回の調査結果は示している。

IRSNは、原発付近で確認された白血病の原因をもっと詳しく調べるべきだと提言するとともに、国際的な研究協力を開始したいとの意向を明らかにした。

「白血病は珍しい病気なので、もっと大規模な調査をすればより安定した結果が得られると思います」とローリエは語る。

昨年発表されたイギリスの35年に及ぶ調査では、原発付近の子どもの白血病発病リスクが高いとの証拠は得られなかった。

環境放射線の医学的側面に関する委員会(COMARE)の研究者チームが実施したこの調査からは、1696年から2004年までの間に原発から半径5km(3.1マイル)圏内の子どもが白血病を発症した例は20件しか確認されていない。

この発病率は、原発のない地域とほぼ同じであると研究者たちは述べている。

子どもが血液がんを発病するリスクと、原発付近に住むこととの間に、何らかの関連がないかどうかを調べる研究は世界中で行われてきた。

2007年に発表されたドイツの研究は、原発付近でリスクが大幅に高まることを示していた。しかしこの調査結果は、1990年から2005年までドイツ北部のクリュンメル原発付近で白血病が多発した原因不明の事例の影響を受けているのではないか、と英COMAREの研究チームは指摘する。

クリュンメル原発を除けば、ドイツの原発付近で子どもの白血病リスクが高いことを示す証拠は「きわめて薄弱だ」と同チームは語る。

(記事:ミュリエル・ボセル、編集:アレクサンドリア・セージおよびトム・ピアース)

(H/T東京茶とら猫


日本語版ロイターに出た記事

[パリ 11日 ロイター] 原子力発電所の近くに住むフランスの子どもたちは、白血病の発病率が通常の2倍であることが、同国の専門家の調査結果で明らかとなった。近くがん専門誌「International Journal of Cancer」に掲載される。

フランスの国立保健医学研究所(INSERM)が、2002―07年に国内の原発19カ所の5キロ圏内に住む15歳未満の子どもを調査したところ、14人が白血病と診断された。これは他の地域と比べて2倍の発病率だった。

共同で調査を行ったフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のドミニク・ローリエ氏は、この結果を統計的に重要だとした上で、さらに慎重な分析が必要だと指摘。また同氏は、多国間で大規模な共同調査を行えば、より確かな結果が得られるだろうと述べた。

フランスはエネルギーの原発依存度が最も高く、58基の原子力発電所を有しており、電力の75%を原発でまかなっている。

一方、昨年発表された英国の35年に及ぶ調査では、原発の近くに住む子どもにおける白血病の発病率は高いとの証拠は得られていない。

「統計的に重要」、は誤訳。原文は、”statistically significant”、統計上有意、という意味です。英語という言語だけ齧っていても意味がない好例。

1 comment:

  1. 記事を読んでいて、そもそも原発の5Km以内にこどもが住んでいるということにおどろきを感じます。原発の5Kmって、原子炉からの距離ですか?それとも敷地の端からの距離?

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