昨日お出ししたパート1に引き続き、フランスのCRIIRADの福島原発由来の放射能汚染についての暫定報告書の後半、お届けします。
放射能で汚染された穀物、野菜などは、単品でたとえ暫定値を下回っていても、合計すると積算の放射線量は年間許容量の1ミリシーベルトをはるかに超える、また、今後の万が一のための空中放射線モニターはろくに作動しておらず、福島県は新たに安定ヨウ素剤を住民に配布する予定もない、とのこと。
CRIIRADが報告する福島第1原発事故後の日本は、政府の対応を見る限り事故前の日本とあまり変わっていないようですね。まるで事故がなかったかのようです。
(元の英文の報告書はこちら。)
以下、以下、CRIIRAD報告書からの抜粋 日本語訳パート2
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備考
CRIIRADのチームが福島県滞在中に複数の農家から聞いた話では、政府は水田の土壌の汚染レベルがキロ当たり5,000ベクレルまでであれば作付けを「許容」するという案を示しているそうだ。汚染された水田から米自体に移行する放射性セシウムは全体の10%にすぎないというのがその根拠である。かりにそうだとすれば、その汚染地域で栽培される米の放射能量は穀物の暫定規制値であるキロ当たり500ベクレル以下となる。しかしCRIIRADが強調したいのは、あらゆる食品がそのレベルまで汚染されていたら、汚染食品を毎日1kg食べると年間被曝量は3ミリシーベルトとなり、がん死を許容できるかできないかを分ける基準値の3倍に達するという事実である。CRIIRADの今回の訪日の目的は、放射線に対する市民の理解を高めることにより、避難や除染や十分な補償について政府や東電とより有利な交渉ができるようにすることである。[「測定器47台プロジェクト」[放射線量計計測データの集計および公表を行なっている全国の有志による団体]47プロジェクトとCRIIRADが、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などのNGOと協力して様々なワークショップや講演、記者会見を開催したのはそのためだ。
食品サンプルの放射線測定を独自に実施したいという「測定器47台プロジェクト」の願いを受け、CRIIRADは特別な測定器(LB200)を持参して、5月29日に福島市内で測定ワークショップを実施した。このワークショップでは、参加者が各自好きな食品を一品ずつ持ち寄り、約30品目の食品(玉ねぎ、長ねぎ、鶏肉、アスパラガス、じゃがいも、えんどう豆、大豆、豆腐など)についてセシウムの放射線量を実際に測定した。結果は検出限界である30~40ベクレル/kgから200~300ベクレル/kgの間であった。これらの食品のほとんどは温室栽培されたと見られるので、茶葉、たけのこ、しいたけといった最も危険度の高い品目[つまり、野外で栽培されている作物]にも、汚染を防護する対策を拡大すべきである。たとえば、CRIIRADの技術者が福島市の渡利地区で「すぎな」(食べられる植物)を採取して測定したところ、セシウムが3,600ベクレル/kg含まれていた。
(3)福島第一原発からの新たな放射線放出に備えたモニタリング・ネットワークと準備が不十分
福島第一原発では、3基の原子炉と複数の使用済み燃料プールが甚大な損傷を受けている。
東電は原子炉を「安全な状態」に戻す期限を延ばし続けている。原発からは通常レベルをはるかに上回る放射性核種が大気中に放出され続けている。このような状況であれば、継続的な放射能の大気放出の影響を評価するためのモニタリング・ネットワークは高性能で、放出量が増加した場合には警報を発してくれるものと普通は予想する。
5月30日の東電記者会見の場で、CRIIRADの研究所長であるシャレイロン氏は原発周辺の空気汚染モニタリングの手順について質問した。東電の説明によると、モニタリング・ポストは原発西門の一箇所にしかなく、毎日20分程度使用されるだけだという。つまり、残り98.6%の時間は原発周辺の空気汚染レベルが測定されていないことになる。CRIIRADのような小さいNGOですらフランスの5箇所にモニタリング・ポストを設置しているのに、なぜ東電が一箇所しか設置できないのだろうか。東電の回答は、資金の問題ではなく測定器のフィルターを交換することの出来る作業員が不足しているため、というものだった。
福島県県庁[?]で、CRIIRADは県の緊急時対策担当者と面会した。空中放射線量の増加を早期発見するためにどのような測定装置を設置しているのかとCRIIRADが尋ねたところ、福島市内の空中線量モニターは原発事故によって汚染されたためにもう使用されていないとの回答があった。原発の周辺には空中線量を測定する装置のネットワークがあるが、自動操作できるものではなく、実際に誰かが行って手作業でフィルターを交換しなければならないという。そのような仕組みであるため、残念ながら測定は毎日15~20分しか行なわれていない。
担当者にもうひとつ尋ねたのは、放射性ヨウ素が新たに大放出される場合に備えてせめて安定ヨウ素剤を住民や学校に配布したのかどうか、である。そうしておけば、汚染が通告されたら住民はすぐにヨウ素剤を飲むことができる。県の担当者は、その種の決定は国が下すものなので、そのような計画はない、と答えた。
さらに担当者は、原発からの放射性ヨウ素で被曝するよりも、安定ヨウ素剤の副作用のほうがはるかに深刻だと言ったが、その情報をどこから得たのかは語らなかった。CRIIRADはそれに対し、チェルノブイリの事故を受けてポーランド政府は国民に安定ヨウ素剤を配布したが、大きな副作用は確認されていない、と伝えた。
(4)CHIRIIRADから日本国民の皆さんへのお詫び
チェルノブイリ原発の事故から25年、原子力発電を行なう国家と電力会社は、原発事故の影響を低減させるために様々な手を尽くして迅速に対応できるようになっているのだろう、と普通は思う。しかし福島第1原発の事故で明らかなように、日本のような近代国家であってもそうはなっていない。事故が起きて汚染が広域に拡大すると、政府には自国の国民の安全を確保する能力もない。住民は次のよう
なきわめて難しい二者択一を迫られる。
1. 政府から「許容レベル」と宣言された汚染地域に留まる
2. 受けた被害や転居の費用や新しい仕事に対する十分な補償も得られないまま、汚染のない(または少ない)地域に逃れる
また、CRIIRADはフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の姿勢について日本国民の皆さんにお詫びしたい。IRSNは3月17日に発表した試算の中で、福島原発[?]の近くに住む子供の被曝量は50ミリシーベルト未満に留まると述べた。50ミリシーベルトは、日本で一時避難を勧告する基準値である。幸い、日本政府は半径20km圏内の住民の避難を決めた。けっして十分とはいえないものの、少なくとも一部の住民の安全を守ることはできた。IRSNは国の機関であるが、フランスでも原発事故が起きた場合に住民の健康保護にかかわる判断をここに任せていいのかどうか、CRIIRADは強い懸念を抱いている。
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(H/T 東京茶とら猫)
ちなみに、CRIIRADが非難しているISRNのレポートは、この3月22日発表の、「2011年3月12日より福島第一原子炉から放出された放射能雲大気中拡散シミュレーション」のことと思われます。CRIIRADは非難していますが、この時点で甲状腺等価被曝量の試算を公表していたのは世界中でISRNぐらいでした。私はこのシミュレーションの一歳児の甲状腺等価被曝量の動画を見たのが、ISRNが発表した直後ぐらいだったと思います。その当時出ていたニュース(「大丈夫、安全」)とはかけ離れたシミュレーション画面だったので、驚いて何度も見直した記憶があります。関東をはるかに越えて被曝範囲が広がっています。(上記リンクの3ページ目。)
ISRNは海洋汚染のシミュレーションも、東電が「低レベル」汚染水を海洋投棄する前に、いち早く行っていました。(これはフランス語だけだったと思います。)日本人にはあまりなじみがない研究所のようなので、情報が拡散しなかったようなのは残念です。(すいません、と私も謝っておきます。たしかリンクはしたことはしたんですが。そういえば3月の末ごろは、放射能が高い、という情報を出すと「おまえはうそつきだ」とかいうコメントが残されていた時期でしたね。)
他にも日本語でレポートが出ていますので、遅まきながらですが、ご覧ください。日本政府が今更のように小出しにしているデータは、ISRNではもう3月の時点で出ています。
http://www.irsn.fr/EN/news/Pages/201103_seism-in-japan.aspx
また、英語版のレポートでは、日本の原子力安全保安院が6月6日になってやっと出した福島第1原発から放出した放射性核種の種類と量を、3月22日の時点で推測しています。プルトニウム、ストロンチウムはありませんが。
ということで、非難するとしたら、この情報が拡散しなかった、ということを非難した方が当たっているような気はします。
もっと非難すべきは、同様の情報を持っていてひたすら隠した、日本政府でしょう。
Saturday, July 2, 2011
フランスのNGO、CRIIRAD日本調査団の暫定報告書日本語訳(パート2)
Thursday, June 30, 2011
フランスのNGO、CRIIRAD日本調査団の暫定報告書日本語訳(パート1)
(パート2出ました。)
5月の末から6月にかけてIAEA(国際原子力機関)の調査団が日本に来ていたのとほぼ同時期に、フランスのNGO、CRIIRAD(Commission de Recherche et d'Information Indépendantes sur la Radioactivité、放射能に関する独立研究情報委員会)も日本に調査団を送っていました。
IAEAが政府、東電、原子力産業界と会合を持ち、福島原発などを見学に行ったのとは対照的に、CRIIRADは、放射能被害地域の地方自治体、ボランティア団体などと協力して福島、茨城、東京などで実際に放射能測定を行い、住民に放射能測定方法を教えるワークショップを実施、といった具合に、民間レベルでの情報収集と情報拡散に努めた模様で、その結果を6月29日に暫定報告という形で発表しました。
また、IAEAが日本政府の対応を褒めちぎったのとは正反対で、政府の対応は不適切、不十分だったと非難、100ミリシーベルトまでは健康の害はない、とする政府(長崎大山下教授など)の「キャンペーン」をでたらめだ、と断言しています。
元の英文の報告書はこちら。
以下、CRIIRAD報告書からの抜粋 日本語訳パート1:
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2011年5月24日~6月3日
CRIIRAD(放射能に関する独立研究情報委員会)日本調査団 暫定報告書
(前略)
今回の調査で得られた暫定的結果の主なものについては、すでに福島市(5/29に講演、5/30に記者会見)と東京(5/31と6/1に記者会見、6/1に会議出席、6/2に放射線モニタリングに関する講演とワークショップ)でのさまざまな公開イベントで発表してきた。それらの調査結果とわれわれの見解を以下にまとめる。
CRIIRADの研究所に持ち帰った土や食品のサンプルの分析が終わったら、数週間のうちにより詳細な科学報告書を発表する予定である。
(1)放射能の健康被害についての適切な情報と防護策が不足
3月12日、福島第一原発の原子炉と使用済み燃料プールは事故で損傷し、以後そこから膨大な量の放射性物質が空中と海中に放出されている。公式発表されたデータによると、空気中への放出が最も甚大だったのは3月12日から3月30日までの期間である。
日本政府は半径20km圏内に住む住民の避難を指示し、半径20~30km圏内の住民を屋内退避とした。しかしこの対策は不十分だったことが明らかになっている。
1. 20km圏外の住民についても、風向きと気象条件に応じて避難させるべきであった。風や放射性粒子が政府の施策に従ってくれるわけではない。
2. 屋内退避が有効なのは、空気の汚染が短期間で収まって放射線量が小さい場合に限られる。福島第一原発の場合、放射性物質の空中放出は数日にわたって継続した(しかも線量ははるかに低くなったとはいえ現在も続いている)。このような状況下では、屋内と屋外の空気が入れ替わることにより、屋内退避は有効とは言えない。屋内の空気も屋外の空気に匹敵するほど汚染されてしまう。
3. 安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれれるのを減らすため、とくに幼い子供の甲状腺がんリスクを低減させる効果がある。甲状腺がんのリスクについては、チェルノブイリ原発の事故以来よく知られている。効果を十分に発揮させるためには、放射能汚染が始まる数時間前に安定ヨウ素剤を服用する必要がある。日本では、安定ヨウ素剤の配布が適切に実施されなかった。CRIIRAD調査団が日本滞在中に得た証言から判断すると、いくつかの自治体はヨウ素剤の配布に踏み切った。たとえば三春町の町長は3月15日に住民へのヨウ素剤配布を決め、実際に飲むように指示した。福島県の当局はこの取り組みを非難した。いわき市では、担当者が3月12日からヨウ素剤の配布準備を進めていた。市は3月18日に住民へのヨウ素剤配布を実施したが、住民に対しては「当局の明確な指示があるまでは服用はしないように」と命じた。結局、ヨウ素剤の服用が指示されることはなかった。それ以外の地域(飯舘村など)で多量の被曝をした住民に対しては、今に至るまで安定ヨウ素剤は配布されていない。
4. 空中に放出された放射性物質は、放射性降下物として地面に落ち、食物連鎖を急速に汚染する。とりわけ汚染されやすいのが葉物野菜と牛乳だ。日本政府は3月18日になってようやく特別な食品検査プログラムを開始した。初回の検査では数種類の食品サンプルから多量の放射能汚染が確認された。たとえば、3月18日に茨城県で採取されたほうれん草からは、ヨウ素131が1kg当たり54,000ベクレル検出されている。CRIIRADの試算によれば、2~7歳の幼児がこのほうれん草を200g食べれば年間被曝許容量の1ミリシーベルトを超える被曝をする。その後発表された新たな検査結果によれば、飯舘村(福島第一原発から40km北西)で採取した草からキロ当たり250万ベクレルものヨウ素131が検出された。この地域の野菜の汚染レベルは間違いなくきわめて高いものである。注目してほしいのは、2~7歳の幼児の場合、そうした食物をたった5グラム食べるだけで1ミリシーベルトを超える被曝をするということだ。政府は3月12日の時点で迅速に、ガンマ線量計で放射性降下物が検出された高リスク地域(福島第一原発の北100kmにある女川や、南230kmにある東京も含む)の食物を食べないように勧告すべきであった。日本政府はそれをしないばかりか、そうした汚染食物を食べてもCTスキャンを1回受けるのと同程度しか被曝しないと主張した。
(2)汚染地域の住民に対する防護策が不十分
米国エネルギー省と日本の文部科学省が発表した公式の土壌汚染地図を見ると、半径20kmの避難区域圏外でも汚染レベルの高い地域がある。CRIIRADはいくつかの地点で地上1mの線量を計測した。その数値を自然放射線量と比較すると、日立(福島第一原発から南100km)で2~3倍以上、郡山(西60km)で9倍、福島市(北西60km)内の学校や公園を含む複数地域で20倍、飯舘村長泥地区で130倍だった。測定後1年間のあいだに、それぞれの地域でわずか12時間、4時間、等々を屋外で過ごすだけで、住民の被曝量は年間被曝許容量の1mSvを超える。しかも、セシウム134とセシウム137が放出するガンマ線は高エネルギーなので、家や学校やビルの外の土壌が汚染されていると、建物内部の線量も増加する。たとえば、CRIIRADが福島市内の一軒の民家で線量を計測したところ、居間の床上1mでは通常の線量の6倍、子供部屋の畳の上では4倍高かった。この家の場合、福島市内の他地域の線量も勘案すると、適切な防護策が講じられなければ子供たちの被曝量は1年間で約7~9ミリシーベルトに達するとCRIIRADは推定した。この試算は外部被曝だけを計算したもので、汚染食物を摂取したり土壌から放射線粒子を吸い込んだりして生じる内部被曝は含めていない。日本政府は避難の目安としてICRP勧告の年間20ミリシーベルトを採用している。だが、年間20ミリシーベルトという被曝許容量は、下記の理由によりあまりにも高すぎる。
1. ICRPは安全な基準値などないと考えている。将来的にがんで死亡するリスクは被曝量に比例し、「これを下回れば発がんしない」という閾(しきい)値は存在しない。福島第一原発の事故後最初の数日間から数週間のあいだにすでに高レベルの被曝をした人たち(大人も子供も)に対しては、以後の期間は被曝レベルを1ミリシーベルト未満に抑える必要がある。
2. にもかかわらず日本政府は、一般に許容される発がんリスクを20倍も高めるような線量を追加で被曝しても構わないと考えている。住民にこのリスクを受けれさせるため、政府は100ミリシーベルトまでは実際の健康影響がないとするデマを広めるキャンペーンを開始した。これはでたらめである。比較的最近の疫学研究からも、室内でラドンを吸い込むことによる被曝量と肺がんで死亡するリスクとのあいだに直接的な関連が確認されている。このリスクは年間被曝量がわずか2ミリシーベルトでも生じるものであり、これを下回れば発症しないという閾値は存在しない。
3. 年間20ミリシーベルトという基準値は主に外部被曝を念頭に置いて定められたものである。このことは、日本政府がこの数値を読み替えて1時間あたりの許容被曝量を毎時3.8マイクロシーベルト(外部被曝)と定めたことからも明らかである。これはきわめて高いレベルであり、自然放射線量(通常は約0.1マイクロシーベルト時)の約38倍に当たる。日本政府はこの数値を計算するのに、8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすことを前提としており、屋内の線量は屋外の線量に減衰率の0.4を掛けた数値としている。これで計算すると1日あたりの被曝量は54.7マイクロシーベルトとなり、年間被曝量は19.98ミリシーベルトになる。しかしこれ以外に、汚染された土を吸い込んだり、汚染された土を食べたり(とくに子供)、汚染地域で生産された汚染食物を食べたりする内部被曝の線量も加えなくてはならない。文科省は自身のウェブサイトに、子供が校庭にいるあいだの内部被曝の影響は全体の2.5%未満だと記載している。この値は、4月14日に13の学校の校庭で測定した数値を平均したものだが、これが正当な数値であるかどうかは独立機関の科学者によって検証する必要がある。
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(パート2に続く)
三春町町長さん、えらい!
いわき市は結局配らなかったんですね。福島県は市町村に配った安定ヨウ素剤を返せ、と言っている、という噂も聞きましたが。
(H/T 東京茶とら猫)