Thursday, December 29, 2011

国連世界気象機関レポート:『福島第1原発3号機は3月15日に2度目の爆発を起こした』

この情報は一体どこから出たのでしょう?

3号機の爆発は、東電・日本政府の発表では3月14日午前11時01分。後にも先にも、これ限りです。(東電の発表参照:6ページ目です。)3月21日に原因不明の灰色がかった煙、23日に黒色がかった煙が出た、との記載はありますが、爆発事象としては少なくとも公式には捉えてはいません。

ところが、世界気象機関(WMO)が全世界に8箇所運営している「地域特別気象中枢(Regional Specialized Meteorological Center, RSMC)」の一つ、RSMC北京が作成し、10月31日から11月4日にかけてオーストリアのウィーンで開催された”CBS Expert Team on Nuclear Emergency Response Activities”で公表された資料の中に、このような記載があるのです(資料8ページ目):

On 15 March, an explosion was heard in Unit 2 and damaged the pressure-suppression system, causing the leaks of radioactive cooling water. Shortly afterward, Unit 4 was damaged by an explosion and a large amount of radioactive materials was released into the atmosphere. At 11:00 (Japan Standard Time) JST on 15 March, Unit 3 explored again. At that time, due to the easterly winds and precipitation in and around Fukushima, the surrounding areas including Tokyo, Nagano, Sendai and other places detected high radiation, which matched well with the simulation results.

3月15日、2号機で爆発音が聞こえ、圧力抑制システムが破損し放射能を含む冷却水が漏出した。そのすぐ後、4号機が爆発によって損傷し大量の放射性物質が空気中に放出された。3月15日日本時間午前11時、3号機が再度爆発した。当時は東風で福島周辺に降雨があったため、東京、長野、仙台などの場所で高い放射線量を計測している。これはシミュレーションの結果とも合致している。

(”explored”はおそらく”exploded”、爆発した、のタイプミスと思われます。)

つまり、3号機は14日と15日の2度爆発し、15日の2度目の爆発の際には東風と降雨のために放射性物質が海側に流れずに陸に流れて降雨とともに広範囲に拡散し、各地の高線量となった、と言っているのです。

RSMC北京はどこからこの情報を入手したのでしょうか。国連の世界気象機関の下部機関が情報をでっち上げるとは考えにくいことです。同レポートの2ページ目と10ページ目に、その手がかりが若干あります。まず、10ページ目には、福島原発事故に関するIAEAからのデータ提出要求はRSMCオブニンスク (ロシア), RSMC東京(日本) と他のアジア諸国に行った、とありますが、2ページ目には、

In 2011, RSMC Beijing for EER [Environmental Emergency Response] is the chief RSMC in RAII [Asia], which is in charge of organizing the emergency response activities among RSMC Beijing, RSMC Tokyo and RSMC Obninsk and composition of the joint statements of RAII.

2011年、環境緊急事態対応のためのRSMCではRSMC北京がRAII地域[アジア]での統括であり、RSMC北京、RSMC東京、RSMCオブニンスク間の緊急事態対応活動をオーガナイズし、RAII地域の共同声明を執筆する担当である。

ということは、「3号機の爆発は2度あった」という記述も、RSMC東京とすり合わせて了解を得た上のこと、と考えられるのではないでしょうか。RSMC北京が誤解して誤情報を(タイプミスと一緒に)正式文書にしてしまい、RSMC東京も見落としてそのまま発表されてしまった、というまぬけな可能性も勿論あります。

また、考えてみれば当たり前の話ですが、2号機の圧力抑制室が破損して放射能汚染水が漏出した、というのも日本のメディアでははっきり読んだ覚えがありません。

9ヶ月経っても未だに事故がいつどのように起こり進展していったのかすら明確になっていない。国際機関が提出した資料には、正しいにせよ誤っているにせよ、今まで見たこともない情報が入っている。これで事態収束宣言とは、日本政府もつくづく大したものです。

資料は英語で、ここからダウンロードできます(ワードファイル)。

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