Tuesday, December 20, 2011

福島原発事故と米国金融危機の共通性: 規制の取り込み(Regulatory Capture)

東京茶とら猫さんのブログに出ている、日本政府の「冷温停止状態」宣言を文字通り嘲った、ドイツのドイチェ・ヴェレ(公共放送)アレクサンダー・フロイント(ドイチェ・ヴェレ、アジアデスク)による12月16日付け英語論評の日本語訳を読みました。

手放しのお喜びようだった米国政府高官とは立場がもちろん違いますが、原発廃止を決定しているドイツ。ジーメンスも原発事業から撤退を表明しており、原子力産業におもねった論評、記事を出す必要がなくなって本心を言いたい放題のような感があります。

曰く、

  • 日本からのニュースの見出しはたしかに耳障りがいい。フクシマは制御されている、破壊された原発は安定している、と。しかし、こうした言葉は現実をオブラートにくるんで表現しているだけだ。実際は、制御された状態などとはとうてい言えない。

  • 日本政府と東電にしてみればほかに手がないのかもしれない。彼らは冷温停止の話をして国民をなだめたいと考えている。だが、そううまくはいくまい。日本人は激怒している。

  • 原子力事故のせいで大勢の人が家を追われ、いまだに避難生活を余儀なくされている。多少の賠償金はもらえるだろうが、その金は東電から出るわけではなく、日本の納税者のポケットから出る。

  • 何ひとつ制御されていない。それが動かしがたい事実であり、多くの日本人はそのことを知っている。

そして、極めつけ。

自分たちの状況を「安定させ」、政府を「制御している」と胸を張れるのは、この原子力推進派の利益集団のほうである。

その通り。これを、英語では、Regulatory capture、規制側(政府)の取り込み、と言います。自分たちの利益になるように、政府規制機関と双方向の深いつながりをつけ、それを保ち、つながりのない競争相手に対して優位性を保ち、何かトラブルが起きたときは国の支援が仰げるように肝心なつぼを押さえておく。そのつぼとは、自分たちの会社、業界がつぶれてしまうと「国民に損害がでるから」という議論を持ち出して、国の税金をほぼ無制限に投入してもらうことを可能にすることです。

アメリカの金融業界でこれが特に顕著で、おかげで2008年にとうとうシステムが大爆発とメルトダウンを起こし、システムはつぶれました。(ゴールドマンサックスを初めとする投資会社がわざと潰した、という分析もあります。)しかし、政府と連邦準備銀行が米国のみならず世界中の大手銀行、金融会社に莫大な金(結局は米国民からむしりとる税金)を投入していわば死に体を生きているようにみせ、「ほら、金融システムは復旧した、もう安定しているから大丈夫」と言い、引き続いて国民の税金を死に体のシステムにつぎ込み、「だって銀行がないと困るでしょう?」と脅す。

そっくりでしょう?「ほら、福島原発は復旧した、安定しているから大丈夫。東電も国で支援。だって電気がないと困るでしょう?」

ドイチェ・ヴェレの論評全訳は茶とらブログでどうぞ。

1 comment:

  1. おはようございます。

    時々、寄せていただき、人の命を軽んじている日本政府は問題だなぁと思いつつもこちらや他のサイトで知ったことを身近な人に話すだけでもとできることをしているところです。

    ネットサーフをしていて次のようなものを見つけました。アメリカのことなので、すでにご存知かもしれないし、この記事が眉唾なのか、私にはわかりませんが、怖い内容でしたので、確認の意味も込めて、ご紹介させていただきます。

    お膝元の日本ではどうなのか、想像しただけでも恐ろしくなります。

    http://english.irib.ir/news/natural-disasters/item/84713-1000s-die-in-us-due-to-japan-n-crisis

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