Saturday, December 31, 2011

福島県の原子力被害応急対策基金:商品券、自主避難者帰宅旅費補助、国内外への観光PR

福島民報2012年元日の記事です。福島県がこのようなことを行うのに反対な納税者はどうしたらよいのでしょう。基金の元金の出所は国です。国にはお金がありません。全国の納税者の現在および将来の税金を当てにした話です。

自主避難帰宅に旅費補助 県基金から70億円充当

東京電力福島第一原発事故の被災者救援に向け県が創設する「原子力被害応急対策基金」の全容が31日、明らかになった。総額は863億円を予定。全県民に対する商品券給付への助成に加え、強い要望があった自主避難者の帰宅旅費補助などに70億円程度を充当する方針。県内外で親子別々に生活するケースも多く、若い子育て世代の家計負担を軽減する狙いがある。

 県は2月定例県議会に基金設置条例案を提出する方針で、基金の全額を交付する国と最終調整している。現段階で見込んでいる主な事業は【表】の通り。

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が示した指針では、自主避難者の旅費全額が賠償対象に含まれておらず市町村から国、県に対応を求める声が上がっていた。応急対策基金では約70億円を確保し、放射線の影響を避けるため自宅を離れて暮らす原発事故の避難区域外の世帯に対し旅費を補助する考え。

 仕事を持つ夫が自宅に残り、妻と子どもが避難しているケースもあり、県は少子化が加速する中、子育て支援のためにも対策が必要と判断した。県によると、県外への自主避難は約2万5000人に上っているという。県内での生活を再開する人の就業相談などに応じる総合相談窓口を設ける。山形や新潟など避難者が多い隣県などにサポート拠点を設け、本県の情報を発信する。

■県が原子力被害応急対策基金で取り組む事業の概要

住民生活の早期復元 
・自主的避難者の一時帰宅費用支援や生活再建の相談窓口設置。県外避難者へのサポート拠点設置や地元情報の提供など
・子どもが安心して遊べる屋内施設整備や屋外での課外活動への補助

“ふくしま”の安全・安心の早期復元
・農林水産物、食品加工品、工業製品の放射能検査体制の整備
・観光の回復のための国内外でのPR活動支援
・イベント実施による県内産品の安全性PRや販路拡大支援

もう福島イベントはたくさん。

ちなみに、2011年で私がすっかりいやになった言葉:

風評被害
脱原発
安全・安心
「寄り添う」
福島県知事

Friday, December 30, 2011

2011年の終わりに: 音が「見える」 ヘンデル 『ハレルヤ』コーラス

散々な2011年でしたが、最後ぐらいにぎやかで派手で喜びにあふれた音楽で終わりたいと思い、ご紹介します。このビデオを作った方は、音符を視覚化して見せてくれるソフトを開発して、クラシック音楽を「見せて」くれます。いろいろな旋律がどのように織り成されているのか、見れます。

これをみると、音楽はなるほど「科学」として取られられていたはずだ、と思います。


ちなみに、この人の視覚化音楽で私が気に入っているのは、ベートーベンのフーガ。音で聞いていたときは非常に難解で面白くない、と思っていたのですが、目で見ると作曲家の思考過程まで見えるようで、最後まで興味深く見入ってしまいました。こちらです。

Thursday, December 29, 2011

国連世界気象機関レポート:『福島第1原発3号機は3月15日に2度目の爆発を起こした』

この情報は一体どこから出たのでしょう?

3号機の爆発は、東電・日本政府の発表では3月14日午前11時01分。後にも先にも、これ限りです。(東電の発表参照:6ページ目です。)3月21日に原因不明の灰色がかった煙、23日に黒色がかった煙が出た、との記載はありますが、爆発事象としては少なくとも公式には捉えてはいません。

ところが、世界気象機関(WMO)が全世界に8箇所運営している「地域特別気象中枢(Regional Specialized Meteorological Center, RSMC)」の一つ、RSMC北京が作成し、10月31日から11月4日にかけてオーストリアのウィーンで開催された”CBS Expert Team on Nuclear Emergency Response Activities”で公表された資料の中に、このような記載があるのです(資料8ページ目):

On 15 March, an explosion was heard in Unit 2 and damaged the pressure-suppression system, causing the leaks of radioactive cooling water. Shortly afterward, Unit 4 was damaged by an explosion and a large amount of radioactive materials was released into the atmosphere. At 11:00 (Japan Standard Time) JST on 15 March, Unit 3 explored again. At that time, due to the easterly winds and precipitation in and around Fukushima, the surrounding areas including Tokyo, Nagano, Sendai and other places detected high radiation, which matched well with the simulation results.

3月15日、2号機で爆発音が聞こえ、圧力抑制システムが破損し放射能を含む冷却水が漏出した。そのすぐ後、4号機が爆発によって損傷し大量の放射性物質が空気中に放出された。3月15日日本時間午前11時、3号機が再度爆発した。当時は東風で福島周辺に降雨があったため、東京、長野、仙台などの場所で高い放射線量を計測している。これはシミュレーションの結果とも合致している。

(”explored”はおそらく”exploded”、爆発した、のタイプミスと思われます。)

つまり、3号機は14日と15日の2度爆発し、15日の2度目の爆発の際には東風と降雨のために放射性物質が海側に流れずに陸に流れて降雨とともに広範囲に拡散し、各地の高線量となった、と言っているのです。

RSMC北京はどこからこの情報を入手したのでしょうか。国連の世界気象機関の下部機関が情報をでっち上げるとは考えにくいことです。同レポートの2ページ目と10ページ目に、その手がかりが若干あります。まず、10ページ目には、福島原発事故に関するIAEAからのデータ提出要求はRSMCオブニンスク (ロシア), RSMC東京(日本) と他のアジア諸国に行った、とありますが、2ページ目には、

In 2011, RSMC Beijing for EER [Environmental Emergency Response] is the chief RSMC in RAII [Asia], which is in charge of organizing the emergency response activities among RSMC Beijing, RSMC Tokyo and RSMC Obninsk and composition of the joint statements of RAII.

2011年、環境緊急事態対応のためのRSMCではRSMC北京がRAII地域[アジア]での統括であり、RSMC北京、RSMC東京、RSMCオブニンスク間の緊急事態対応活動をオーガナイズし、RAII地域の共同声明を執筆する担当である。

ということは、「3号機の爆発は2度あった」という記述も、RSMC東京とすり合わせて了解を得た上のこと、と考えられるのではないでしょうか。RSMC北京が誤解して誤情報を(タイプミスと一緒に)正式文書にしてしまい、RSMC東京も見落としてそのまま発表されてしまった、というまぬけな可能性も勿論あります。

また、考えてみれば当たり前の話ですが、2号機の圧力抑制室が破損して放射能汚染水が漏出した、というのも日本のメディアでははっきり読んだ覚えがありません。

9ヶ月経っても未だに事故がいつどのように起こり進展していったのかすら明確になっていない。国際機関が提出した資料には、正しいにせよ誤っているにせよ、今まで見たこともない情報が入っている。これで事態収束宣言とは、日本政府もつくづく大したものです。

資料は英語で、ここからダウンロードできます(ワードファイル)。

Wednesday, December 28, 2011

アラスカのアザラシの原因不明の病気、福島からの放射能の影響を調査

今年の7月から発見されていたアザラシの原因不明の病気、結局ウィルスなどは検出されず、科学者は福島第1原発事故由来の放射能が原因ではないかと見て、調査を開始した模様です。

元記事はこちら

ロイター通信(2011年12月27日)

SEATTLE — Scientists in Alaska are investigating whether local seals are being sickened by radiation from Japan's crippled Fukushima nuclear plant.

シアトル発-アラスカの科学者達は、アラスカのアザラシが日本の福島原発からの放射能で病気になっているかどうかを調査している。

Scores of ring seals have washed up on Alaska's Arctic coastline since July, suffering or killed by a mysterious disease marked by bleeding lesions on the hind flippers, irritated skin around the nose and eyes and patchy hair loss on the animals' fur coats.

病気の、あるいは死亡したワモンアザラシが7月から数十匹、アラスカの北極圏海岸に打ち上げられているが、これらのアザラシは原因不明の病気による後足ひれからの出血、鼻と目の周りの皮膚の炎症、毛皮の毛が抜ける、などの症状を見せている。

Biologists at first thought the seals were suffering from a virus, but they have so far been unable to identify one, and tests are now underway to find out if radiation is a factor.

最初、生物学者たちは何らかのウィルス性の病気だろうと考えていたが、そのウィルスを特定することは現在まで出来ておらず、放射能が原因の一つかどうかのテストが現在行われている。

"We recently received samples of seal tissue from diseased animals captured near St. Lawrence Island with a request to examine the material for radioactivity," said John Kelley, Professor Emeritus at the Institute of Marine Science at the University of Alaska Fairbanks.

「セント・ローレンス島の近くで捕獲された病気のアザラシから取った体組織のサンプルを受け取りました。放射能を調べてくれ、という要望です」、というのは、アラスカ大学フェアバンクス校の海洋科学研究所のジョン・ケリー名誉教授。

"There is concern expressed by some members of the local communities that there may be some relationship to the Fukushima nuclear reactor's damage," he said.

「地元の人々の間では、これは福島原発の事故と何らかの関係があるのではないか、という心配が出ている」、と教授は言う。

The results of the tests would not be available for "several weeks," Kelley said.

「テストの結果が出るのは早くても数週間後になる。」

Water tests have not picked up any evidence of elevated radiation in U.S. Pacific waters since the March earthquake and tsunami in Japan, which caused multiple fuel meltdowns at the Fukushima plant and forced tens of thousands of people to evacuate the surrounding area.

米国太平洋岸では、3月の日本での地震と津波以降、水の検査では特に通常より高い放射能は検出されていない。この地震と津波によって福島原発で複数のメルトダウンが起こり、周辺地域から数万人の人が避難を余儀なくされた。

Scientists from the National Oceanic and Atmospheric Administration and the U.S. Fish and Wildlife Service have been seeking the cause of the diseased seals for weeks, but have so far found no answers.

米国の海洋・大気庁(NOAA)、野生動物庁はここ数週間、病気のアザラシの原因究明に当たっているが、現在までのところ答は出ていない。

写真の解説によると、アザラシの症状は後ひれの出血、口内出血、抜け毛、鼻と目の周りの皮膚の炎症。このようなアザラシが、7月の下旬から打ち上げられるようになった、とのことです。写真を見る限り、抜け毛などという生易しいものではなく、毛がほとんど残っていない状態のように見えます。なんともかわいそうな姿です。

Saturday, December 24, 2011

カナダ医師会ジャーナル:「隠蔽の文化」と不十分な除染努力が「人倫にもとる」健康リスクをもたらしている日本、と日本政府の対応を酷評

カナダ医師会の公式雑誌、「カナダ医師会ジャーナル Canadian Medical Association Journal (CMAJ)」はピア・レビューの科学雑誌です。そこに、12月21日付けで、「冷温停止」を宣言した日本政府を厳しく批判する記事が載りました。

曰く、

  • 日本政府は平気な顔をして嘘をついてきた

  • 日本政府は住民が十分に健康被害について判断できるような情報を出していない

  • 日本政府の対応は、チェルノブイリ事故でのソ連政府の対応にはるかに劣る
  • 一般公衆の年間被曝限度20ミリシーベルトは人倫にもとる、とんでもない基準で、こんなことを自国民に許した政府は過去数十年で世界にいない

と、一言で言えば、「ぼろくそ」の批判です。機会がある毎に日本政府を褒めちぎる某国際機関とは大違い。上記の2点目は、実際IRCPの勧告違反でもあります。

更に、日本公衆衛生協会の多田羅浩三博士の11月の米国での発表を引用し、

「[政府の設定した被曝]レベルが大丈夫だ、と人々を説得するのは、大変に難しい」

と日本政府の本音もちらつかせたあと、冷温停止状態宣言された現在でも

「現時点では、長期にわたる健康被害を最小限にするための一番大事な公衆衛生上の方策は、避難区域を広げることだ。」

と専門家の言を引用しています。避難は今からでも少しも遅くないようです。

以下、記事大急ぎ私訳。(大筋は間違ってないはずです。)

元の英文記事はこちら。原題の"public health fallout"は、言うまでもなく「放射性降下物(死の灰)」、Radioactive falloutに掛けていますね。日本語では別の言葉になってしまいましたが。

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Public health fallout from Japanese quake
Lauren Vogel CMAJ
December 21, 2011

日本の震災が公衆衛生に及ぼした副次的影響
CMAJ ローレン・ヴォーゲル
2011年12月21日

A “culture of coverup” and inadequate cleanup efforts have combined to leave Japanese people exposed to “unconscionable” health risks nine months after last year’s meltdown of nuclear reactors at the Fukushima Dai-ichi power plant, health experts say.

「隠蔽の文化」と不十分な除染が相まって、福島第一原発の原子炉メルトダウンから9ヶ月経った今、日本人は「人倫にもとる」健康リスクにさらされている、と専門家らは言う。

Although the Japanese government has declared the plant virtually stable, some experts are calling for evacuation of people from a wider area, which they say is contaminated with radioactive fallout.

福島原発は事実上安定していると日本政府が宣言しているものの、死の灰がより広い範囲を汚染しておりそこから人々を避難させるべきである、とする専門家もいる。

They’re also calling for the Japanese government to reinstate internationally-approved radiation exposure limits for members of the public and are slagging government officials for “extreme lack of transparent, timely and comprehensive communication.”

彼らはまた、国際的に承認された公衆の放射線被曝限度に戻すよう日本政府に求め、「透明でタイムリーで包括的な情報の伝達が極度に欠如している」、と酷評している。。

But temperatures inside the Fukushima power station's three melted cores have achieved a “cold shutdown condition,” while the release of radioactive materials is “under control,” according to the International Atomic Energy Agency (www.iaea.org/newscenter/news/2011/coldshutdown.html). That means government may soon allow some of the more than 100 000 evacuees from the area around the plant to return to their homes. They were evacuated from the region after it was struck with an 8.9 magnitude earthquake and a tsunami last March 11.

しかし、福島原発の3つの溶けた炉心の温度は「冷温停止状態」を達成、放射性物質の漏洩も「制御されている」、と国際原子力機関(IAEA)は言う。これは、日本政府がまもなく原発周辺地域から避難した10万人以上の住民の一部の帰還を許すかもしれない、ということを意味する。住民は3月11日、マグニチュード8.9[実際は9.0に気象庁が訂正]の地震と津波が地域を襲ったあと、避難した。

Although the potential for further explosions with substantial releases of radioactivity into the atmosphere is certainly reduced, the plant is still badly damaged and leaking radiation, says Tilman Ruff, chair of the Medical Association for Prevention of Nuclear War, who visited the Fukushima prefecture in August. “There are major issues of contamination on the site. Aftershocks have been continuing and are expected to continue for many months, and some of those are quite large, potentially causing further damage to structures that are already unstable and weakened. And we know that there’s about 120 000 tons of highly contaminated water in the base of the plant, and there’s been significant and ongoing leakage into the ocean.”

これ以上の爆発で放射能の大気中への大量拡散が起こる可能性は確かに減少している。しかし、原発が激しく損傷しており放射能が漏出していることには変わりはない、とティルマン・ラフは言う。ラフは『核戦争防止医学協会(Medical Association for Prevention of Nuclear War)』の会長で、福島県を8月に訪れている。「現場の放射能汚染は大きな問題です。余震は続いており、今後何ヶ月も続くことが予想されていて、そのうちのいくつかは非常に大きく、既に不安定で弱った構造物に更にダメージを与える可能性もあります。原発の地階には約12万トンの高度汚染水が溜まっており、相当量の海への漏出が起きている。」

The full extent of contamination across the country is even less clear, says Ira Hefland, a member of the board of directors for Physicians for Social Responsibility. “We still don't know exactly what radiation doses people were exposed to [in the immediate aftermath of the disaster] or what ongoing doses people are being exposed to. Most of the information we're getting at this point is a series of contradictory statements where the government assures the people that everything's okay and private citizens doing their own radiation monitoring come up with higher readings than the government says they should be finding.”

国土の汚染の程度は更に不明だ、と言うのは『社会的責任を果たすための医師団』の役員の一人、イラ・ヘフランド。「人々が[原発事故直後に]どれほどの被曝にさらされたのか、引き続いてどれくらいの被曝をしているのか、私たちには未だにはっきり分からないのです。現時点で得ている情報の大半は矛盾したもので、一方では政府が何も問題はない、と国民を安心させ、もう一方では市民が自分たちで放射線測定をして、政府が発表する数値より高い数値を計測している、という具合です。」

Japanese officials in Tokyo have documented elevated levels of cesium — a radioactive material with a half-life of 30 years that can cause leukemia and other cancers — more than 200 kilometres away from the plant, equal to the levels in the 20 kilometre exclusion zone, says Robert Gould, another member of the board of directors for Physicians for Social Responsibility.

福島原発から200キロ以上離れた東京で、政府は高いレベルのセシウムを検出している、とロバート・グールドは言う。セシウムは半減期が30年の放射性物質で、白血病やその他のがんを引き起こす可能性がある。グールドも『社会的責任を果たすための医師団』の役員の一人だ。

International authorities have urged Japan to expand the exclusion zone around the plant to 80 kilometres but the government has instead opted to “define the problem out of existence” by raising the permissible level of radiation exposure for members of the public to 20 millisieverts per year, considerably higher than the international standard of one millisievert per year, Gould adds.

国際機関は日本政府に対して原発周辺の警戒区域を80キロに広げるよう勧告してきたが[アメリカ政府の避難勧告のことか?]、日本政府は逆に「問題は存在しないことにして」、一般公衆の年間被曝許容量を20ミリシーベルトに引き上げた。これは、国際基準の年間1ミリシーベルトよりはるかに高い値である、とグールドは付け加える。

This “arbitrary increase” in the maximum permissible dose of radiation is an “unconscionable” failure of government, contends Ruff. “Subject a class of 30 children to 20 millisieverts of radiation for five years and you're talking an increased risk of cancer to the order of about 1 in 30, which is completely unacceptable. I'm not aware of any other government in recent decades that's been willing to accept such a high level of radiation-related risk for its population.”

放射線被曝最高許容量の「恣意的な引き上げ」は政府の「人倫にもとる」大失態だ、とラフは強く主張する。「一クラス30人の子供たちを年間20ミリシーベルトの放射線に5年間さらすと、ガンのリスクが増加して30人のうち1人が発症することになる。これは全く受け入れられないものです。過去数十年、自国民に対するこのように高いレベルの放射線リスクを平気で受け入れた政府は他にないでしょう。

Following the 1986 nuclear disaster at the Chernobyl nuclear power plant in the Ukraine, “clear targets were set so that anybody anticipated to receive more than five millisieverts in a year were evacuated, no question,” Ruff explains. In areas with levels between one and five millisieverts, measures were taken to mitigate the risk of ingesting radioactive materials, including bans on local food consumption, and residents were offered the option of relocating. Exposures below one millisievert were still considered worth monitoring.

1986年ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の事故後、「明確な目標値が定められ、年間5ミリシーベルト以上被曝すると予想される人々全員を、有無を言わせず避難させた」、とラフは説明する。被曝レベルが1ミリから5ミリシーベルトの地域では、放射性物質を体内に取り込むリスクを少なくするため、地元で作った食物の消費を禁止を含めた数々の方策が取られ、住民は移住するオプションを与えられた。被曝量が1ミリシーベルト以下の場所でも、監視が必要とされた。

In comparison, the Japanese government has implemented a campaign to encourage the public to buy produce from the Fukushima area, Ruff added. “That response [in Chernobyl] 25 years ago in that much less technically sophisticated, much less open or democratic context, was, from a public health point of view, much more responsible than what’s being done in modern Japan this year.”

それに引き換え、日本政府がやったのは人々に福島の農作物を買うように勧めるキャンペーンだった、とラフは付け加える。「(チェルノブイリでの)25年前の対応は、現在よりずっと技術的にも進歩しておらず、開かれた、民主的な状態ではなかったにもかかわらず、現在の日本で行われているものよりも公衆衛生の観点から見るとずっとはるかに責任を持った[信頼できる]対応だった。」

Were Japan to impose similar strictures, officials would have to evacuate some 1800 square kilometres and impose restrictions on food produced in another 11 100 square kilometres, according to estimates of the contamination presented by Dr. Kozo Tatara for the Japan Public Health Association at the American Public Health Association's 139th annual meeting and exposition in November in Washington, District of Columbia.

日本が[チェルノブイリの時のソ連政府と]同様の規制を掛けるなら、政府は約1800平方キロの地域を避難地域として、さらに追加で1万1100平方キロの地域で作られる食物に制限を掛けなくてはならなくなる、というのが、日本公衆衛生協会の多田羅浩三博士が11月にワシントンDCで開かれた米国公衆衛生協会の第139年次総会で発表した汚染推定の結果である。

“It’s very difficult to persuade people that the level [of exposure set by the government] is okay,” Tatara told delegates to the meeting. He declined requests for an interview.

「[政府の設定した被曝]レベルが大丈夫だ、と人々を説得するのは、大変に難しいのです」、と多田羅博士は代表団に語った。博士はインタビューの要請を断っている。

The Japanese government is essentially contending that the higher dose is “not dangerous,” explains Hefland. “However, since the accident, it’s become clear the Japanese government was lying through its teeth, doing everything it possible could to minimize public concern, even when that meant denying the public information needed to make informed decisions, and probably still is.”

日本政府が実質的に主張しているのは、高い線量は「危険ではない」ということだ、とヘフランドは説明する。「しかし、事故以来、日本政府は平気で嘘をつき、できるだけのことをして人々の懸念を最小限に抑えることに腐心し、そのためには人々が詳しい情報に基づく判断を下すために必要な情報すら出さなかった、ということがはっきりしました。おそらく今でも出していないでしょう。」

“It's now clear they knew within a day or so there had been a meltdown at the plant, yet they didn't disclose that for weeks, and only with great prodding from the outside,” Hefland adds. “And at the same moment he was assuring people there was no public health disaster, the Prime Minister now concedes that he thought Tokyo would have to be evacuated but was doing nothing to bring that about.”

「原発でメルトダウンが起きていたことを1、2日の内に政府が知っていたことは、今となってははっきりしています。しかし、政府はそれを数週間にわたって公表しなかった。それも、外部から圧力が掛かってようやく公表したのです」、とヘフランドは付け加える。「健康に被害が出るようなことはない、と人々に言っている同じ時に、東京の住民を避難させなくてはいけないかもしれないと思っていたが実行するべく動くことはしなかった、と首相は今になって認めている。」

Ruff similarly charges that the government has mismanaged the file and provided the public with misinformation. As an example, he cites early reports that stable iodine had been distributed to children and had worked effectively, when, “in fact, iodine wasn't given to anyone.”

ラフも同様に、日本政府はファイルの管理を誤り、人々に誤った情報を出した、と批判する。その例としてラフが挙げるのは、安定ヨウ素剤が子供たちに配られ、効果的に作用した、という初期の報告。しかし、「実際にはヨウ素は誰にも与えられていなかったのです。」 [福島の三春町は唯一の例外です。]

Public distrust is at a level that communities have taken cleanup and monitoring efforts into their own hands as the government response to the crisis has been “woefully inadequate” and officials have been slow to respond to public reports of radioactive hotspots, Gould says. “That’s led to the cleanup of some affected areas, but there are also reports of people scattering contaminated soil willy-nilly in forests and areas surrounding those towns.”

政府への不信から、地域の人々は自ら除染や放射線モニターの仕事を行い、今回の危機に対する日本政府の反応は「嘆かわしいほどに不十分」であり、市民の放射能ホットスポットの報告にも対応が遅い、とグールドは言う。「報告から除染が行われた場所もあるが、一方で人々が汚染土を否応なしに山林や除染した町の周辺に捨てている、という報告もある。」

“In some places, you can see mounds of contaminated soil that have just been aggregated under blue tarps,” he adds.

「場所によっては、汚染土が青いシートに覆われて山と積まれている。」

Even with government assistance, there are limits to the decontamination that can be achieved, explains Hefland. “What do you do with the stuff? Do you scrape entire topsoil? How far down you have to go? And if you wash down the buildings, what do you do with the waste water?”

政府の援助があっても、除染には限りがある、とヘフランドは言う。「取り除いたものをどうするのか?表土を全部剥ぎ取るのか?どこまで取らなくてはいけないのか?建物を洗浄したら、その洗浄した後の水はどうするのか?”

As well, Ruff argues the government must examine the provision of compensation for voluntary evacuation from areas outside of the exclusion zone where there are high levels of radioactive contamination. Without such compensation, many families have no option but to stay, he says. “At this point, the single most important public health measure to minimize the health harm over the longterm is much wider evacuation.”

更に、政府は警戒地域以外で放射能汚染の高い地域から自主避難した人々に対する補償の条項を検討しなければならない、とラフは主張する。そのような補償なしには、多くの人々は留まる以外の選択肢がない、と言う。「現時点では、長期にわたる健康被害を最小限にするための一番大事な公衆衛生上の方策は、避難区域を広げることだ。」

The Japanese government did not respond to inquiries.

日本政府は[記事のための]問い合わせには応じなかった。

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ちなみに、日本産婦人科医会の3月19日の公式発表が、GeorgeBowWowさんのブログに載っています。「30キロ離れていれば安全、国からの情報は正確、100ミリシーベルト以下は何の影響もない」と、カナダ医師会とは正反対。それでも同じ医者なんですねえ。

Friday, December 23, 2011

福島民報: 全県民に商品券案、政府住民賠償「対象外」支援

12月23日付け福島民報の紙面、部分書きおこし。(画面がはっきりしないところもあるので、間違いはご容赦。)ざっと見たところ、オンラインでは出ていませんね。(画面はこのツイートから。)

全県民に商品券案、政府住民賠償「対象外」支援
基金420億円充当か

東京電力福島第一原発事故に伴う文部科学省の原子力損害賠償紛争審議会の新たな指針で賠償の対象外となった市町村が出ている問題で、枝野幸男経済産業相は22日、原子力被害応急対策基金の活用を含めた新たな支援措置を年明けの早い段階に示す考えを表明した。佐藤雄平知事との会談で、要請に応えた。政府関係者によると、県が設置を目指す同基金に予算を充当し、商品券を全県民に給付する方向で省庁間協議している。ただ、賠償指針との整合性をどう図るかなどの課題もあり、流動的な面もある。県は「検討材料の一つ」としながらも、あくまで賠償金の支払いを求める方針だ。

(中略)

政府関係者によると、政府は基金への予算充当を860億円程度と見込み、半額に当たる420億円を商品券発行に振り向ける方向で調整している利用は県内限定とし、地産地消と地域経済の活性化につなげる仕組みを目指している。財務省が新たな指針で自主避難の賠償対象外となった県民への現金給付に難色を示しているため、全県民一律の商品券で代替する案が浮上したという。

現金といっても「日本銀行券」というモノポリーゲームの紙幣なんですが、わざわざさらに胡散臭い県内限定の商品券。下手したら期間限定になりかねませんね。一定期間内に使わないと額面がだんだん減っていくことにして、早く消費させることを狙うなど、いろいろ手は考えているでしょう。

これがアメリカなら、次のようなことが起こります:

  1. 商品券はカード方式になる。(ビザ、マスターカード、JCB、アメックス、なんでもいいんです)

  2. このカードはそこから金を引き出すことは出来ず、商品、サービスの対価支払いにのみ使える。

  3. カードを発行するのは政府と深いつながりのある銀行。(その上、東電との取引があるか、東電の債券を大量に保有しているか、東電の株式保有で大損をしているか、そんな銀行が候補でしょう。)カード一枚の発行でいくら、という手数料が銀行に入り、カードが使用されるとやはり同様に手数料が入ってくる。銀行は大もうけ。

災害復興のためにパンダを呼び寄せる首相に商品券で原発事故賠償しようとする経済産業相。日本の未来は世界のジョーク。

Thursday, December 22, 2011

(OT)Commander Cody and the Lost Planet Airmen: Truckstop at the End of the World


トラックのCBラジオで「第3次世界大戦が始まった!」
核ミサイルは飛んでくるし
道路のアスファルトは溶けて川のように流れ出す

でもそんなことかまっちゃいられない
トラックの配達があるのさ。
地球が終わろうがなんだろうが。

Wednesday, December 21, 2011

OT: #名作のタイトルに一文字足すとよく分からなくなる ツイッター上の最新傑作

よく考え付くもんだと本当に感心します。涙なくして読めませんでした。(笑いすぎて腹筋が痛い。)

それからだ
おしんこ
東京電ム力
東京電イ力
東京電バ力
送狼男
フランダースの狼犬
古今亭和歌集
奥の細野道
長男はつらいよ
よこはま・たそがれき
俺は間男だ
げげゲイの鬼太郎
俺たちに明後日はない
ザトウ鯨市

「古今亭和歌集」が個人的には好みですが、「俺たちに明後日はない」にも、とんでもなく脱力しました。

追加:

因幡の白目うさぎ (気絶中)

「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」を仕切る人々: 経産省、文科省、東電、東芝、日立

経済産業省の12月21日報道発表に出ている中長期ロードマップの概要と詳細の中に、どこの誰が今後の30年とも40年とも続く廃炉プロセスを仕切るのかが出ていました。

経産省、環境省、文科省、保安院、東電、日本原子力研究開発機構、東芝、日立。

環境省を除いて、原発推進メンバーとほぼ一緒ですね。

(ところで1~4号機の廃炉、という書き方は気になりますね。5号機と6号機はどうする気なんでしょうか。7号機、8号機の増設計画は確かそのままで存在します。電気料金の値上げがいやなら再開、増設を認めろ、とか東電政府は言い出しかねませんね。)

まず、一番上に収まる機関、「政府・東京電力中長期対策会議」の面々8人:

共同議長:
枝野幸男 経済産業大臣 (東北大法学部)
細野豪志 原発事故収束・再発防止担当大臣(京大法学部)

副議長:
園田康博 内閣府大臣政務官 (ふくいちの処理済汚染水を飲んで見せた例の方です。日大法学部)
北神圭朗 経済産業大臣政務官 (旧大蔵省、農水省の官僚出身。京大法学部)
西澤俊夫 東京電力株式会社取締役社長 (京大経済学部。企画部出身)

(ここまで、技術系一人も居ない)

委員:
朝日弘 経済産業省大臣官房審議官 (出身大学等不明)
山本哲也 原子力安全・保安院首席統括安全審査官 (出身大学等不明)
相澤善吾 東京電力株式会社取締役副社長原子力・立地本部長 (東大工学部。東電では火力発電担当だった)

この会議の下で作業を推進するのは「研究開発推進本部」。一見変な名前だなと思われるかもしれませんが、実際完全にぶち壊れた原子炉を廃炉にする技術など存在せず、要するに技術の研究開発から行わなくてはいけないのです。

本部長:
北神圭朗 経済産業大臣政務官

副本部長:
園田康博 内閣府大臣政務官
神本美恵子 文部科学大臣政務官(福岡教育大教育学部。教職員組合執行部)

構成員:
朝日弘 経済産業省大臣官房審議官(エネルギー・環境担当)
相澤善吾 東京電力株式会社副社長原子力・立地本部長
加藤善一 文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当)
横溝英明 独立行政法人日本原子力研究開発機構理事
金山敏彦 独立行政法人産業技術総合研究所理事
岡村潔 株式会社東芝常務原子力事業部長
丸彰 株式会社日立製作所技監福島原子力発電所プロジェクト推進本部長
その他本部長が指名する者

中長期ロードマップの概要、詳細とも、経済産業省の報道ページにリンクが出ています。リンクの中には、今後必要とされる技術の研究開発計画もありますが、それをざっと見ると、要するに作業に必要な技術はすべて新規開発する必要があるようです。(できればの話ですが。)

この面子で30年、40年続くわけではなく、この役職に納まる人がメンバーになる、ということでしょう。

International Journal of Health Services誌掲載記事:福島原発事故の影響で米国の死亡者数1万4千人増加か

記事に関する12月19日付けのプレスリリースが、時々訪ねる金融サイト、MarketWatch/Wall Street Journalに出ていました

福島由来の放射性降下物の影響で、アメリカで事故後14週間の間の死亡率が上昇、1万4千人が福島由来の放射性降下物の影響で亡くなったかもしれない、という論文がピア・レビューの科学雑誌、International Journal of Health Services誌12月号に掲載された、と言うのです。

実は私は、論文の共著者である ジャネット・シャーマン博士に今年の6月にメールを出して、博士が当時発表していた同様の記事にある福島事故後の死亡率上昇はどの期間と比べたものなのか、と尋ねています。そのときの博士の答は、事故直前の期間と比べたものだ、ということでした。しかも、そのときは14週間ではなく4週間(前後あわせて8週間)のデータ、とのことでした。季節性などもあると思い、博士のデータが事故以前の同時期と比べたものでない限り、統計的にあまり有意な意味はないのではと思い、その時点ではブログには出しませんでした。

しかし、12月19日のプレスリリースを見る限り、博士と共著者のジョセフ・マンガノ氏は、福島事故から14週間のデータを、2010年の同時期のデータと比べているようです。

以下、プレスリリースの本文:

WASHINGTON, Dec. 19, 2011 /PRNewswire via COMTEX/ -- Impact Seen As Roughly Comparable to Radiation-Related Deaths After Chernobyl; Infants Are Hardest Hit, With Continuing Research Showing Even Higher Possible Death Count.

ワシントン発2011年12月19日・PRNewswire via COMTEX 福島事故の影響はチェルノブイリ事故後の放射能被曝に関連した死者数とほぼ同等か。幼児がもっとも影響を受け、今後の研究では死者数が更に増える可能性も

An estimated 14,000 excess deaths in the United States are linked to the radioactive fallout from the disaster at the Fukushima nuclear reactors in Japan, according to a major new article in the December 2011 edition of the International Journal of Health Services. This is the first peer-reviewed study published in a medical journal documenting the health hazards of Fukushima.

アメリカでの1万4千人の予想を超えた死者数は日本の福島原発事故による放射性降下物に由来するものである、とする新しい論文が、2011年12月号のInternational Journal of Health Services誌に掲載された。福島事故の健康への被害を詳細に記載して医学誌に掲載された、最初のピア・レビューの研究論文である。

Authors Joseph Mangano and Janette Sherman note that their estimate of 14,000 excess U.S. deaths in the 14 weeks after the Fukushima meltdowns is comparable to the 16,500 excess deaths in the 17 weeks after the Chernobyl meltdown in 1986.

著者のジョセフ・マンガノとジャネット・シャーマンによると、福島原発メルトダウンから14週間の間のアメリカでの予想を超えた死者数は彼らの推定で1万4千人、これは1986年チェルノブイリ原発のメルトダウンから17週間の間の同死者数1万6500人とほぼ同等である、という。

The rise in reported deaths after Fukushima was largest among U.S. infants under age one. The 2010-2011 increase for infant deaths in the spring was 1.8 percent, compared to a decrease of 8.37 percent in the preceding 14 weeks.

福島事故後に報告された死亡者数の上昇はアメリカの1歳児以下の幼児でもっとも大きかった。2011年春の幼児の死亡数は2010年と比較して1.8パーセントの上昇、それに引き換え福島事故直前14週間の死亡者数は8.37パーセントの減少を示している。

The IJHS article will be published Tuesday and will be available online as of 11 a.m. EST at http://www.radiation.org .

IJHS記事は火曜日に出版され、オンラインhttp://www.radiation.orgで東海岸時間午前11時から閲覧可能。

Just six days after the disastrous meltdowns struck four reactors at Fukushima on March 11, scientists detected the plume of toxic fallout had arrived over American shores. Subsequent measurements by the U.S. Environmental Protection Agency (EPA) found levels of radiation in air, water, and milk hundreds of times above normal across the U.S. The highest detected levels of Iodine-131 in precipitation in the U.S. were as follows (normal is about 2 picocuries I-131 per liter of water): Boise, ID (390); Kansas City (200); Salt Lake City (190); Jacksonville, FL (150); Olympia, WA (125); and Boston, MA (92).

3月11日に福島の4つの原子炉で壊滅的なメルトダウンがおきてわずか6日後[実際メルトダウンが起きたのは3基ですが]、科学者達は有害な放射性プルームがアメリカに到達したことを検知した。その後の米国環境保護庁(EPA)の測定で、アメリカ中で大気中、水、牛乳の放射能レベルが通常よりも数百倍のレベルになっていることが判明した。降雨中のヨウ素131の最高濃度は次の通り(通常の濃度は1リットル当たり2ピコキューリー[0.074ベクレル]): ボイジー、アイダホ州390、カンザスシティー200、ソルトレークシティー190、ジャクソンビル、フロリダ州150、オリンピア、ワシントン州125、ボストン、マサチューセッツ州92.

Epidemiologist Joseph Mangano, MPH MBA, said: "This study of Fukushima health hazards is the first to be published in a scientific journal. It raises concerns, and strongly suggests that health studies continue, to understand the true impact of Fukushima in Japan and around the world. Findings are important to the current debate of whether to build new reactors, and how long to keep aging ones in operation." Mangano is executive director, Radiation and Public Health Project, and the author of 27 peer-reviewed medical journal articles and letters.

疫学者のジョゼフ・マンガノ(公衆衛生学修士、経営学修士)は次のように語る。「福島の事故による健康被害の研究が科学雑誌に発表されるのは、これが初めてです。この研究は懸念を掻き立てるものであり、原発事故が日本と世界に及ぼす真の影響を理解するには健康調査を継続する必要があることを強く提案しています。今回の調査結果は、今議論されている新規原発の建設の是非や、老朽化しつつある既存の原発をあとどれくらい運転するかという問題にも重要な意味をもっています」。マンガノは「放射線と公衆衛生プロジェクト」のエグゼクティブ・ディレクター。ピア・レビューの医学雑誌に27件の論文やレター[速報性を重視した比較的短い論文]を発表している。

Internist and toxicologist Janette Sherman, MD, said: "Based on our continuing research, the actual death count here may be as high as 18,000, with influenza and pneumonia, which were up five-fold in the period in question as a cause of death. Deaths are seen across all ages, but we continue to find that infants are hardest hit because their tissues are rapidly multiplying, they have undeveloped immune systems, and the doses of radioisotopes are proportionally greater than for adults. "Dr. Sherman is an adjunct professor, Western Michigan University, and contributing editor of "Chernobyl - Consequences of the Catastrophe for People and the Environment" published by the NY Academy of Sciences in 2009, and author of "Chemical Exposure and Disease and Life's Delicate Balance - Causes and Prevention of Breast Cancer."

内科医で毒物学者のジャネット・シャーマン(医学博士)はこう話す。「私たちは今も調査を続けていますが、それによると実際の死者数は18,000人に達するかもしれません。増える分はインフルエンザと肺炎による死者です。この2つが原因となる死者数が問題の期間に5倍に増えていました。死亡はあらゆる年齢層に見られますが、最も強く影響を受けるのが乳児であることが引き続き確認されています。乳児は組織の細胞が急速に分裂しているうえ、免疫系も未発達です。また、大人と同じ量の放射性同位体を取り込んでも体重に対する割合が大きくなります」。シャーマン博士はウェスタンミシガン大学の非常勤教授。2009年にニューヨーク科学アカデミーから出版された『チェルノブイリ――大惨事が人々と環境に与えた影響』の編集者であり、『化学物質への曝露と病気と命の微妙なバランス――乳がんの原因と予防』[どちらも邦訳なし]の著者でもある。

The Centers for Disease Control and Prevention (CDC) issues weekly reports on numbers of deaths for 122 U.S. cities with a population over 100,000, or about 25-30 percent of the U.S. In the 14 weeks after Fukushima fallout arrived in the U.S. (March 20 to June 25), deaths reported to the CDC rose 4.46 percent from the same period in 2010, compared to just 2.34 percent in the 14 weeks prior. Estimated excess deaths during this period for the entire U.S. are about 14,000.

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、人口100,000人以上の全米122都市について毎週1回死者数の報告書を発表している。アメリカの総人口の25~30パーセントをカバーする人数が対象になっている。福島からの放射性降下物がアメリカに到達してから14週間(3月20日~6月25日)のあいだに、CDCに報告された死者数は前年同期より4.46パーセント増加した。放射性降下物が到達する前の14週間では、前年比死者数の増加は2.34パーセントに過ぎなかった。到達後14週間のあいだに、予想されるより増えた死者数を全米レベルで推計すると、約14,000人となる。

なお、論文は、このリンクでどうぞ。(PDFファイルです。)

ちなみに、この論文がリリースされた翌日の12月20日には、アメリカの権威ある科学雑誌といわれるサイエンティフィック・アメリカン誌がブログでこの論文を「いかさま研究だ」と、非常に感情的にこき下ろしています。ブログの著者マイケル・モイヤーの論点は2つにまとめられるでしょう。

  • まず、「福島の原子炉が最初に爆発してから6日でアメリカに到達したという放射能プルームなんてものはない」、という主張。その根拠として、米国環境保護庁(EPA)のデータがない、と言っています。

  • そして、全人口の2、3割しかカバーしないCDCのデータを基にして全米の追加の死亡者数を推定するのは統計的に正しくない、ということ。

一番目の論点(とも思えないような論点ですが)については、プルームは来てましたよ、としか言いようがありません。EPAのデータが少ない、と言うのは興味深い理由があって、EPAの観測ステーション、特に西海岸、カリフォルニアにあるステーションは半分以上、使えなかったのです。そのほとんどが、メンテナンスをしていなかったための故障。故障していたことすらEPAは知らなかったというお粗末さ。EPAは移動式の観測ステーションを持っていますが、福島事故後それをカリフォルニアに配置しようとする動きはなぜか立ち消え、ろくに測っていなかったのです。

その測定自体、測定器についているエアーフィルターを、経費節約のためにEPA職員ではなく市民ボランティアが測定器の場所まで出向いていってフィルターを外し、それを封筒に入れて、アトランタ州の分析所まで郵便で送り、検査結果が再び郵送でEPAの方に送られる、という、実は東電にも劣る悠長なプロセスなのです。(英語ブログに出した3月27日付けポストご参照。)

日、仏、ノルウェーなどの科学者が行った拡散シミュレーションを見れば、プルームが西海岸に届いたどころか全米を横断して太平洋に抜けていくさまを見ることが出来ますが、放射能プルームは単なるたちの悪い風評だと思いたい人たちにはまあ何を見せても「でっち上げのいかさま研究」になるのでしょう。サイエンティフィック・アメリカンのブログの著者もそのお一人でしょうか。

そういえば、3月、4月の時点で、カリフォルニア大学バークレー校の原子力工学部がカリフォルニアの有機牛乳(乳牛を放牧して草を食べさせて育てる)から通常のレベルをはるかに超えるヨウ素131、セシウム134、137、半減期の短いテルルなどを検出して発表した時、あちこちから非難され、そのデータは無視されていました。降雨、有機栽培のイチゴからも出ていました。

モイヤー氏の2点目、CDCのデータを使って全米の死亡者数を推測するのは有効なのか、無効なのか、については、私には直ちに判断できません。氏は、なぜ氏が無効と判断するかの確たる根拠を「CDCの調査は全米の人口の3割に満たない」こと以外にはろくに挙げていません。

全人口の2割から3割のサンプルからの推測は十分に有効だと私は思いますが、放射能は届いていない、と思い込みたい人にとってはどうあっても無効になるのでしょう。

私個人は、シャーマン博士の論文が正しいのか、正しくないのかよりも、その「反論」としてサイエンティフィック・アメリカンに出たブログ記事の感情的な反発の方により興味を覚えました。

Tuesday, December 20, 2011

福島原発事故と米国金融危機の共通性: 規制の取り込み(Regulatory Capture)

東京茶とら猫さんのブログに出ている、日本政府の「冷温停止状態」宣言を文字通り嘲った、ドイツのドイチェ・ヴェレ(公共放送)アレクサンダー・フロイント(ドイチェ・ヴェレ、アジアデスク)による12月16日付け英語論評の日本語訳を読みました。

手放しのお喜びようだった米国政府高官とは立場がもちろん違いますが、原発廃止を決定しているドイツ。ジーメンスも原発事業から撤退を表明しており、原子力産業におもねった論評、記事を出す必要がなくなって本心を言いたい放題のような感があります。

曰く、

  • 日本からのニュースの見出しはたしかに耳障りがいい。フクシマは制御されている、破壊された原発は安定している、と。しかし、こうした言葉は現実をオブラートにくるんで表現しているだけだ。実際は、制御された状態などとはとうてい言えない。

  • 日本政府と東電にしてみればほかに手がないのかもしれない。彼らは冷温停止の話をして国民をなだめたいと考えている。だが、そううまくはいくまい。日本人は激怒している。

  • 原子力事故のせいで大勢の人が家を追われ、いまだに避難生活を余儀なくされている。多少の賠償金はもらえるだろうが、その金は東電から出るわけではなく、日本の納税者のポケットから出る。

  • 何ひとつ制御されていない。それが動かしがたい事実であり、多くの日本人はそのことを知っている。

そして、極めつけ。

自分たちの状況を「安定させ」、政府を「制御している」と胸を張れるのは、この原子力推進派の利益集団のほうである。

その通り。これを、英語では、Regulatory capture、規制側(政府)の取り込み、と言います。自分たちの利益になるように、政府規制機関と双方向の深いつながりをつけ、それを保ち、つながりのない競争相手に対して優位性を保ち、何かトラブルが起きたときは国の支援が仰げるように肝心なつぼを押さえておく。そのつぼとは、自分たちの会社、業界がつぶれてしまうと「国民に損害がでるから」という議論を持ち出して、国の税金をほぼ無制限に投入してもらうことを可能にすることです。

アメリカの金融業界でこれが特に顕著で、おかげで2008年にとうとうシステムが大爆発とメルトダウンを起こし、システムはつぶれました。(ゴールドマンサックスを初めとする投資会社がわざと潰した、という分析もあります。)しかし、政府と連邦準備銀行が米国のみならず世界中の大手銀行、金融会社に莫大な金(結局は米国民からむしりとる税金)を投入していわば死に体を生きているようにみせ、「ほら、金融システムは復旧した、もう安定しているから大丈夫」と言い、引き続いて国民の税金を死に体のシステムにつぎ込み、「だって銀行がないと困るでしょう?」と脅す。

そっくりでしょう?「ほら、福島原発は復旧した、安定しているから大丈夫。東電も国で支援。だって電気がないと困るでしょう?」

ドイチェ・ヴェレの論評全訳は茶とらブログでどうぞ。

Saturday, December 17, 2011

支配者の傲慢:「冷温停止状態・事故収束」会見でNHKが中継をやめた部分のビデオの野田首相

ニコ生で見ていたネット市民の皆様は16日の会見を全部ご覧になれたでしょうが、ニュースをテレビ、大手新聞など従来のメディアに頼っている方々は、こんな質問が記者会見で出ていたことを知らないままなのでしょう。

(記者会見は、記者クラブの面々の質問が終わった時点でNHKは中継からスタジオ内の解説に切り替えた、というツイートを見たような気がしますが、再度探すことが出来ていません。さもありなん、とは思いますが。)(追記:ありました。これです。)


質問したのはフリーの神保哲生さん。

壇上で答える野田首相の表情を見て私が真っ先に思いついた言葉は、”Hubris”。

英語のレッスン: 支配者の傲慢= hubris

英語のWikipediaより:

Hubris, also hybris, means extreme haughtiness, pride or arrogance. Hubris often indicates a loss of contact with reality and an overestimation of one's own competence or capabilities, especially when the person exhibiting it is in a position of power.

Hubris、または hybrisと表記、とは、極端に高慢な、またはプライドが高い、または横柄なさま。しばしば現実からまったく乖離していることを示し、自身の能力、資格を自己過大評価していることを示す。特に当該人物が権力のある地位からこのような傲慢さを表わしているときに用いられる言葉。

まあ、横柄でこそありませんでしたが、慇懃無礼というのも無礼のうちです。現実と全く乖離した「冷温停止状態・事故収束」を平然と宣言できるのですから、よほどご自身に自信がおありなのでしょう。

野田首相だけではなく、政権内の閣僚の方々、前政権の方々、また日本だけでなく、アメリカでも(オバマ大統領など、もうPicture-perfectですが)、ヨーロッパでも、権力を持つ支配者層の同じ事例の枚挙には限りがありません。

会見で消費税について質問された記者の方がいて、なんだこれ?と思いましたが、あのように原発に何の関係もない質問を混ぜることで、福島第1原発事故が大したことではないのだ、単に他にも山積している案件の一つに過ぎないのだ、という印象を与えたかったのではないか、と勝手に深読みしていました。

Friday, December 16, 2011

鳩山元首相のネイチャー投稿記事: 再臨界、3号機核爆発、メルトスルー

これを、読売は、単に東電国有化の話に落としたわけです。翌日の12月16日に野田政権が「冷温停止状態・事故収束」を宣言する予定だったのですから、さぞ都合が悪かったことでしょう。そこで、一番今となっては害のない、3月4月時点での再臨界に若干触れた、ということなのではないでしょうか。

消えないうちに記録のためにコピーしておきます。

宇宙人、とあだ名されるらしい元首相ですが、原発事故に関してはしっかりしたことを書いていらっしゃるようです。(地下原発推進だけはおやめください。)

記事の住所はここ: http://www.natureasia.com/japan/nature/specials/earthquake/nature_comment_121511.php

オリジナルの英文記事は、購読者のみ。

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Nature 480, 313-314 (2011年12月15日号)
doi:10.1038/480313a

平智之と鳩山由紀夫は、福島第一原発事故の真相を科学者たちが究明するためには、これを政府の管理下に置くしかないと主張する。

平 智之、鳩山 由紀夫

2011年3月11日の地震と津波に続いて福島第一原子力発電所で発生した事故は、日本と世界の原子力の未来にとって、きわめて重大な出来事である。この深刻な事故に適切に対応するためには、そこで起きたことと今も起こり続けていることを正確に把握する必要がある。

事実関係を明らかにするためには、あらゆる可能性について証拠と反証を収集し、それらを公開しなければならない。これにより初めて、世界の人々は、東京電力が策定した事故収束計画を信頼し、あるいは、それをどのように修正すべきかを判断できるようになる。

なかでも重要なのは、最悪のシナリオが現実のものとなってしまったのかどうかを知ることだ。具体的には、損傷した炉心で持続的核分裂反応が再び始まり(再臨界)、さらなる核分裂生成物と熱損傷が生じた可能性はないのか、地震から数日後に原発で爆発が起きているが、これが核爆発で、破損した燃料棒から放射性金属がまき散らされた可能性はないのか、そして、溶融した燃料が原子炉格納容器の底を突き破り、環境汚染を引き起こすおそれはないのか、という問題である。

3月24日、有志の国会議員が最悪の事態に対応できる計画を策定することを目標とする「Bチーム」(政府の「Aチーム」に対する)を結成した。B チームは、結成を呼びかけた鳩山由紀夫(元首相)のほか、藤田幸久(財務副大臣)、川内博史(衆議院政治倫理審査会会長)、平智之らをメンバーとする。B チームが今後発表する報告書で行う勧告は、政府とも、原子力安全・保安院とも、東京電力とも独立の立場からのものとなる。

われわれのこれまでの調査は、カギとなる証拠が不足していることを示している。われわれはいまだに最悪のシナリオが実現してしまったのかどうかを知らない。それを明らかにするためには、福島第一原発を国有化して、独立の立場の科学者が原発に立ち入れるようにしなければならない。

再臨界の可能性

炉心内部で核分裂反応が進行している場合、さらなる核分裂生成物ができ、その熱により冷却・除染システムが損傷されるおそれがある。ある種の同位元素が検出されることが、再臨界が起きたことの証明になる。例えば、塩素の放射性同位体である38Clは、その安定同位体が中性子を吸収したときに生成するもので、半減期は約37分と非常に短い。したがって、38Clの存在は、その時点における核分裂反応を示唆している。

福島第一原発で38Clが検出されたのかどうかについては、報告に混乱がある。3月26日の原子力安全・保安院の報告では、東京電力が2日前に1号機の地下で採取した溜まり水から38Clが検出されたということだった。1号機への海水(塩化ナトリウムを含む)注入はそれ以前より続けられていた。4月1日には、同じ原子力安全・保安院が、東京電力による核種分析に疑問を呈した。放射性ナトリウム(24Na)もまたサンプルに含まれるはずだという。しかし、一部の科学者は、たとえ24Naが検出されなくても、38Clが検出されることがありうると主張している。4月20日、東京電力は以前の報告を撤回し、38Clも24Na も検出されなかったと発表したが、その分析に用いたデータは公表しなかった。われわれBチームは、原子力安全・保安院を通じて東京電力のデータ(ゲルマニウム半導体検出器によるもの)を入手し、再度、分析を行った。その結果、当初の報告に近い濃度(160万ベクレル/ml)の38Clが存在していたという結論に達した。われわれは、原子力安全・保安院と東京電力がこの検出を疑問視したことは根拠を欠くと考える。

もう1つの根拠が、ウランやプルトニウムが核分裂を起こすときに生成される、半減期が9時間のキセノン135(135Xe)である。11月1日、東京電力は2号機で135Xeを検出した。しかし、原子力安全・保安院は、それが微量であることを理由に、この135Xeは停止した原子炉内の燃料が自発的核分裂を起こしたことで生じたものと推定され、持続的核分裂反応によるものとは限らないとした。したがって、再臨界に関する証拠は、いまだ決定的なものではない。

核爆発の可能性

原発で起きた一連の爆発の原因は何かという疑問にも答える必要がある。それらは当初、水素爆発によるもの、すなわち、燃料棒を覆う合金と炉心の水蒸気との間で高温の化学反応が起きた結果であると報告されていた。しかしこれに関しても、未解決のままである。ほかに考えられる可能性は、核爆発か、別の種類のガスの爆発である。

爆発により、どれだけの量の、どのような種類の放射性物質がまき散らされ、どこまで拡散していったのか、そして、3号機のプールに貯蔵されている使用済み核燃料がどのような状態にあるのかを明らかにするためには、核爆発が起きたかどうかがわかっていることが不可欠である。2つの観察事実からは、核爆発がもっともらしいと思われる。1つは、ウランより重い数種類の金属が、原発から数十kmも離れた地点で検出されたこと。もう1つは、3号機の建屋上部の鉄骨がどうやら溶けたためにねじ曲がっていることである。

文部科学省の報告によると、重金属元素キュリウム242(242Cm)が原発から最大3km離れた地点で、プルトニウム238(238Pu)が原発から最大45km離れた地点で検出されている。これらはいずれも猛毒であり、摂取すれば内部被曝を引き起こす。242Cmの半減期(約163日)が短いことと原発周辺の238Puの蓄積が通常よりはるかに多いことから、文部科学省は、これらは過去の大気中核実験の放射性降下物ではなく、福島第一原発から放出されたものと考えられると結論付けた。その場合、破損した使用済み燃料棒が現場周辺に散乱している可能性があり、非常に危険である。

これらの元素は、より軽いセシウムやヨウ素のように放射性プルーム(放射性雲)にのって運ばれることはないため、非常に大きな力で吹き飛ばされたと考えられる。水素爆発に、重金属元素をこれほど遠くまで拡散させる威力があるのかどうかは不明である。また、水素爆発は、鋼鉄を溶かすほどの高温を発生させなかったであろう。東京電力は当初、3号機の爆発により白煙が発生したと発表していたが、再調査により、煙は黒かったことがわかっており、ただの水素爆発ではそのような色にはならないと考えられている。したがって、核爆発であった可能性がある。ほかの爆発性ガスが発生していたかを検討することも、同じくらい重要である。

メルトダウンの可能性

溶融した核燃料が、原子炉格納容器の底のコンクリートをどの程度侵食したかも未確認である。これが重要なのは、東京電力が、炉心を水で満たして放射線を吸収し、核燃料を取り出すことを計画しているからである。格納容器の底のコンクリートにひびが入っている場合、放射性物質が地下水に入ってしまう可能性がある。

政府は最近まで、そのような事態にはなっていないと考えていた。6月7日にIAEAに提出した報告書では、溶融した燃料の大半は原子炉圧力容器の下部で冷却されており、圧力容器に漏れ出した燃料はわずかしかないとされている。

しかし、2週間前、東京電力は、溶融燃料が1号機下のコンクリートの4分の3を侵食したこと、ほか2つの原子炉の基礎も損傷している可能性があることを発表した。しかし、ここでも注意が必要である。炉心内部の核燃料の状態を実際に観察した者はいないのだ。そのため、燃料の流出の程度はいまだはっきりしていない。

福島第一原発を国有化して介入せよ

事故処理の当事者が「現実は違う」と楽観的だとしても、福島第一原発の解決 — 半世紀にわたり放射能汚染を封じ込める方法から炉心や溶融燃料を処分する方法まで — は最悪のシナリオに基づかなければならない。未解明の事実は多いが、やらなければならないとわれわれが考えていることが2つある。

1つは、情報がオープンな形で収集されるために、福島第一原子力発電所を国有化しなければならない。事実は、どんなに困難なものであっても、国民に知らせなければならない。さらに、政府にこの事故の検証と補償を行う義務があることからも、国有化は不可避である。

Bチームは、8月に東京電力に対して原発のマニュアルを請求したが、それを入手するだけでもたいへんな苦労をした。これは、事故の情報がどのように規制されているかを示す一例である。東京電力は当初、委員会にマニュアルを提出することを拒否した。9月にようやく提出したときには、多くの語句(カギとなる温度や実際の手順)が黒く塗りつぶされていた。東京電力は、それらが自社の知的財産であると主張したのである。東京電力が全マニュアルを公表したのは6ヶ月も経過してからであった。Bチームは、東京電力が地震後(津波がくる前)に、緊急炉心冷却システムの一部のスイッチを切ったり入れたりしていた理由を知るためにはマニュアルが重要だと見ていた。緊急システムがいつ破壊されたかを明らかにするためである。

もう1つは、さまざまな分野の科学者が協同して分析にあたれるように、特別な科学評議会を設置しなければならないということだ。これにより、原子力産業界の技術者の一部にみられる致命的な楽観論を打ち破ることができるだろう。たとえ最悪の事態になっていたとしても、このような評議会を通じて、廃炉、除染、放射性廃棄物の地層処分施設の建設に必要な新しい技術を確立することができるだろう。

※この記事は、英文記事の参考訳であり、平議員により編集されたものです。

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米ビジネスウィーク誌: 米国エネルギー省副長官 『日本政府は福島の廃炉と管理に米国の支援を要請した』

米国のナイズ国務省副長官の、

今後必要となる大がかりな放射性物質の除染作業について、「多くのアメリカの企業が関心を示しており、アメリカ政府も支援を申し出ている」

という12月16日付けNHKニュースは英語ブログにコピーしましたが、冷温停止という野田政権の晴れの舞台(皮肉です、念のため)のお祝いに来日していたのは国務副長官だけではありませんでした。

米国のビジネスウィーク・ブルームバーグ誌の12月16日付けの記事の中で、こんな言及が。

Cold War weapons production in the U.S. left the country with “a significant nuclear cleanup legacy, including high- level waste, contaminated soil and groundwater,” Daniel Poneman, the U.S. Deputy Secretary at the Department of Energy, said in Tokyo yesterday.

冷戦時代の兵器製造で、アメリカには「高汚染廃棄物、汚染土、汚染地下水など、相当な量の核物質のクリーンアップが残されている」、と、ダニエル・ポネマン米国エネルギー省副長官は昨日東京で述べている。

The Hanford Site in Washington State and the Savannah River Site in South Carolina have more than 90 million gallons of liquid waste in tanks the government is working to convert into more stable forms that do not threaten the environment, he said.

ワシントン州のハンフォード、南カロライナ州のサバンナリバーには、9千万ガロン(34万トン強)以上の液体廃棄物があり、米国政府はこれをより安定した形にして環境への驚異を取り除くべく作業を行っている、と副長官は言う。

Japan's government has requested support from the U.S. to decommission the Fukushima Dai-Ichi plant as well as managing the site from an environmental perspective, he said.

副長官によると、日本政府は福島第1原発の廃炉、および環境保護の観点から原発敷地を管理するための米国の支援を既に要請した、とのことである。

原発事故発生直後、アメリカを含めた世界中の原子力専門家、機関からオファーされた援助を実質上断った日本政府。9ヶ月経って「冷温停止状態宣言」をして、過去、現在、未来において原発から漏洩する汚染水はないことにしても、原発の現状が変わるわけではありません。変わるのは、宣言によっておおっぴらに金儲けに走れること。廃炉、除染、インフラ。事故を初期に何としてでも終わらせなかったおかげで、今や多くの人々、多くの企業が国境を超えて儲けることが出来ます。

支払うのは日本国民ということになります。

Thursday, December 15, 2011

ニューヨークタイムズ紙:「冷温停止宣言の裏の疑問」

除染に割れる日本』の記事を書いた同じ記者が、日本政府が16日に宣言する予定の「冷温停止」について、記事を書いています。九州大学の工藤和彦教授の言葉を引用し、「こんな不安定な状態を冷温停止などと呼んでよいのだろうか」と正確な疑問を投げかけています。

以下、大急ぎ私訳。(後で姑息に直すかもしれません。)

元の英文記事はこちら

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ニューヨークタイムズ
マーティン・ファクラー
2011年12月14日

Japan May Declare Control of Reactors, Over Serious Doubts
日本政府が原子炉制御成功を宣言しても、その裏には重大な疑問

TOKYO — Nine months after the devastating earthquake and tsunami knocked out cooling systems at the Fukushima Daiichi nuclear plant, causing a meltdown at three units, the Tokyo government is expected to declare soon that it has finally regained control of the plant’s overheating reactors.

東京発-壊滅的な地震と津波が福島第1原発の原子炉冷却システムを破壊し、3つの原子炉でメルトダウンを起こしてから9ヶ月、日本政府は近々、原発の過熱した原子炉を再び制御することに成功した、と宣言すると見られている。

But even before it has been made, the announcement is facing serious doubts from experts.

しかし、そのような宣言が出る前から、専門家は深い疑念を表明している。

On Friday, a disaster-response task force headed by Prime Minister Yoshihiko Noda will vote on whether to announce that the plant’s three damaged reactors have been put into the equivalent of a “cold shutdown,” a technical term normally used to describe intact reactors with fuel cores that are in a safe and stable condition. Experts say that if it does announce a shutdown, as many expect, it will simply reflect the government’s effort to fulfill a pledge to restore the plant’s cooling system by year’s end and, according to some experts, not the true situation.

金曜日に、野田佳彦首相率いる災害対策本部は、福島原発の壊れた3つの原子炉が「冷温停止」と同様の状態になったと発表するかどうかを採決する予定だ。冷温停止とは技術用語で、通常は壊れていない原子炉で炉心が安全に安定している状態を指す。専門家は、政府が予想されるように冷温停止を宣言するとすれば、それは原発の冷却システムを年内に復旧するという約束を守ろうとする政府の努力を反映しているだけで、真の原発の状態を表したものではない、と言う。

If the task force declares a cold shutdown, the next step will be moving the spent fuel rods in nearby cooling pools to more secure storage, and eventually opening the reactors themselves.

対策本部が冷温停止を宣言すると、次のステップは使用済み燃料をより安全に貯蔵するために共用冷却プールに移し、いずれは原子炉自体を開けることになる。

However, many experts fear that the government is declaring victory only to appease growing public anger over the accident, and that it may deflect attention from remaining threats to the reactors’ safety. One of those — a large aftershock to the magnitude 9 earthquake on March 11, which could knock out the jury-rigged new cooling system that the plant’s operator hastily built after the accident — is considered a strong possibility by many seismologists.

しかし、多くの専門家が恐れるのは、政府の勝利宣言は事故についての国民の怒りを和らげるためだけのもので、原子炉の安全性を脅かす危険から注意をそらすのではないか、ということである。そんな危険の一つ-3月11日のマグニチュード9の地震の余震で、福島原発の運転者である東電が事故後に応急措置として急いで構築した新しい冷却システムが損傷してしまう -は、可能性が大きいものとして多くの地震学者が指摘する。

They also said the term cold shutdown might give an exaggerated impression of stability to severely damaged reactors with fuel cores that have not only melted down, but melted through the inner containment vessels and bored into the floor of their concrete outer containment structures.

専門家はまた、冷温停止という言葉自体、壊れた原子炉が安定しているかのような印象を与えかねない、と言う。壊れた原子炉の燃料炉心はメルトダウンを起こしただけでなく、圧力容器を溶融貫通して圧力容器の外側の格納容器のコンクリート製の構造物の床を侵食しているのだ。

“The government wants to reassure the people that everything is under control, and do this by the end of this year,” said Kazuhiko Kudo, a professor of nuclear engineering at Kyushu University. “But what I want to know is, are they really ready to say this?”

「政府は、すべては制御されている、と言って人々を安心させたい。それで年末までにそうする、といっている」、というのは、九州大学原子力工学科の工藤和彦教授。「私が知りたいのは、本当にそんなこと言ってしまっていいのか、ということです」

Perhaps to give itself some wiggle room, the government is expected to use vague terminology, announcing that the three damaged reactors are in a “state of cold shutdown.” Experts say that in real terms, this will amount to a claim that the reactors’ temperatures can now be kept safely below the boiling point of water, and that their melted cores are no longer at risk of resuming the atomic chain reaction that could allow them to again heat up uncontrollably.

おそらく多少の余地を残すためだろうが、日本政府はあいまいな表現を使い、3基の破壊された原子炉は「冷温停止状態」にある、と宣言すると思われる。実際上は原子炉の温度を水の沸点以下に安全に保つことが出来るようになり、溶融した炉心が再び原子核連鎖反応を起こして再び原子炉の温度が制御不能の状態で上がってしまう危険性はすでにない、という主張に過ぎない、と専門家たちは言う。

And indeed, experts credit the operator, the Tokyo Electric Power Company, or Tepco, with making progress in regaining control of the damaged reactors. They say the plant’s makeshift new cooling system, built with the help of American, French and Japanese companies, has managed to cool the reactors’ cores, including the molten fuel attached to the outer containment vessels.

専門家は確かに、壊れた原子炉を再び制御するための東京電力による作業が進んでいる、と評価している。福島第1原発のにわか造りの原子炉冷却システムは米国、フランス、日本の企業の協力で造られたが、今のところ炉心を冷やすことが出来ている、と評価している。

Experts also say a new shedlike structure built over the heavily damaged Unit 1 reactor building has helped cap the plant’s radiation leaks into the atmosphere. The building was one of three reactor buildings destroyed in hydrogen explosions in March that scattered dangerous particles over a wide swath of northeastern Japan.

また彼らは、大破した1号機の原子炉建屋を覆う小屋のような構造物が原発からの放射能の大気中への拡散を抑えている、と言う。1号機建屋は3月の水素爆発で破壊された3つの原子炉建屋の一つで、この爆発のために東日本、北日本の広範囲にわたって危険な放射性粒子が拡散した。

Still, experts say the term is usually reserved for healthy reactors, to indicate that they are safe enough that their containment vessels can be opened up and their fuel rods taken out. But they warn it may take far longer than even the government’s projected three years to begin cleaning up the melted fuel in Fukushima Daiichi’s damaged reactors. This has led some experts to say that proclaiming a cold shutdown may actually be deceptive, suggesting the Fukushima plant is closer to getting cleaned up than it actually is.

それでも専門家たちは、[冷温停止という]用語は通常は健全な原子炉に対して使うもので、原子炉が十分に安全で格納容器を開いて中の燃料棒を取り出すことが出来る状態を示すものである、と言う。しかし、福島第1原発の壊れた原子炉から溶融した燃料を取り出すには、日本政府が予定する3年よりもよほど長い期間が必要かもしれない、と警告する。一部の専門家は、冷温停止の宣言は福島原発があたかも収束に近づいているというような誤解を招きかねない、と言う。

“Claiming a cold shutdown does not have much meaning for damaged reactors like those at Fukushima Daiichi,” said Noboru Nakao, a nuclear engineering consultant at International Access Corporation.

「福島第1原発の原子炉のような壊れた原子炉に対して冷温停止を宣言しても、さほどの意味はない」と言うのは、International Access Corporationの原子力工学コンサルタントの中尾昇だ。

In fact, experts point out, damaged fuel cores have yet to be removed from plants that suffered meltdowns decades ago. In the case of Chernobyl, Soviet officials simply entombed the damaged reactor in a concrete sarcophagus after the explosion there in 1986. Some experts said talk of a cold shutdown deflected attention from the more pressing problem of further releases of radioactive contamination into the environment. In particular, they said there was still a danger to the nearby Pacific Ocean from the 90,000 tons of contaminated water that sit in the basements of the shattered reactor buildings, or are stored in fields of silver tanks on the plant’s grounds.

実際、数十年前にメルトダウンした原発からでさえ損傷した炉心を取り出せていないのだ、と専門家は指摘する。チェルノブイリ事故の場合、1986年の爆発後ソ連政府は損傷した原子炉をコンクリの石棺で固めただけである。冷温停止の話は環境の放射能汚染というより深刻な問題から人々の注意をそらしている、という専門家もいる。特に、建屋の地下に溜まっている、あるいは原発の敷地内に保管されている9万トンの汚染水が太平洋に漏出する危険がまだある、と言う。

“At this point, I would be more worried about the contamination than what’s happening inside the reactors,” said Murray E. Jennex, an expert on nuclear containment at San Diego State University.

「現時点では、原子炉の中がどうなっているかよりも汚染の状況の方が心配だ」、というのはMurray E. Jennex、サンディエゴ州立大学の原子力封じ込めの専門家である。

Mr. Jennex said he believed the government’s claim that the reactors themselves were now stable, and particularly that the resumption of the heat-producing chain reaction called fission was no longer possible. While the discovery last month of the chemical xenon, a byproduct of fission, in one of Fukushima Daiichi’s reactors briefly raised alarms that a chain reaction had restarted, Mr. Jennex said enough of the radioactive fuel had decayed since the accident in March to make that unlikely.

原子炉自体が安定している、という日本政府の主張、、特に、核分裂と呼ばれる熱を発生する連鎖反応の再発はすでに不可能である、という主張は信用する、とJennex氏は言う。福島第1原発の原子炉の一つで先月、核分裂の副生物であるキセノンガスが検出され、連鎖反応が再開したのではないかとの危惧があったが、Jennex氏は、3月の事故から既に十分な量の核燃料[内の放射性物質]が崩壊しているので、それはまずないだろう、としている。

Other experts disagreed. Kyushu University’s Mr. Kudo said that the restart of fission, a phenomenon known as recriticality, could not be ruled out until the reactors could be opened, allowing for an examination of the melted fuel. But he and other experts said their biggest fear was that another earthquake or tsunami could knock out Tepco’s makeshift cooling system. They noted that it was not built to earthquake safety standards, and relied on water purifiers and other vulnerable equipment connected to the reactors by more than a mile and a half of rubber hoses.

それに反対する専門家もいる。九州大学の工藤教授は、核分裂の再開、これは再臨界と呼ばれる現象だが、原子炉を開いて中の溶融燃料を調査できるようになるまでは、その可能性を除外することは出来ない、と言う。しかし、教授を含めた専門家の一番の危惧は、地震や津波が再び襲って、東電の間に合わせの原子炉冷却システムを使用不能にしてしまう可能性である。冷却システムは地震安全基準に従って造られたものではない、と彼らは指摘する。このシステムは、原子炉と2キロ以上の長さの[プラスチックの]ホースでつながっている水の浄化装置やその他の脆弱な装置に頼っているのだ。

“All it would take is one more earthquake or tsunami to set Fukushima Daiichi back to square one,” Mr. Kudo said. “Can we really call this precarious situation a cold shutdown?”

「地震か津波が一つ来ただけで、福島第1原発はまた振り出しに戻ってしまいます」、と工藤教授は言う。「このような危ない状態を、冷温停止、と本当に呼べるのでしょうか?」

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Tuesday, December 13, 2011

毎日新聞:「警戒区域に独り 井戸水とろうそくで生活」富岡町の松村直登さんインタビュー(APに遅れること3ヶ月半、BBCに遅れること3ヶ月)

12月中に福島第2原発周辺の避難区域(それでも福島第1原発20キロ圏内の警戒区域=立ち入り禁止区域ですが)が解除される、とのニュースが流れましたが、その中の富岡町に事故後もずっと住み続けている松村直登さんに、ようやく日本のマスコミもインタビューしたようです。

ただし、富岡町に入ってインタビューしたAPやBBCなど海外のメディアとは違って、松村さんに警戒区域外に出てもらってからインタビューしたそうです。

毎日新聞12月14日付けの記事ですが、毎日のリンクはわりとすぐに消えるので、記録にコピーしてお届けします。

東京電力福島第1原発事故で立ち入りが規制されている警戒区域(半径20キロ圏内)の福島県富岡町で、農業、松村直登さん(52)が自宅に一人とどまり続けている。警戒区域の外で毎日新聞のインタビューに応じた松村さんは「命を守るために法律で避難させていることは理解できる。しかし、何十年も避難するぐらいだったら、自分は短い間でも生まれ育った富岡で過ごしたい」と語った。【沢田勇】

◇「非難はわかるが短い間でも富岡で過ごしたい」

 松村さん宅は原発の南西約12キロに位置。富岡町内の残留者は一人だけという。震災から約1カ月後、松村さんも同県郡山市内に一時避難した。だが、すし詰め状態で避難所に横たわる被災者を見て「自分には無理だ」と思い、3日ほどで自宅に戻った。「『自分勝手だ』と非難があることも分かっている。罰金ならいくらでも払う。でも自宅に帰ることが犯罪なのか。おれたちは被害者なのに」

 自宅は電気、水道などライフラインが寸断されたままだ。だが、自家用車に使うガソリンなどの燃料は火災を心配する町民が「使って」と提供してくれた。食料は備蓄のコメや缶詰。風呂は井戸水をまきで沸かし、夜はろうそくをともす。「東京のために発電してたのにさ、今じゃ電灯の一つもつかないんだからな」。午後7時には布団に入りラジオに耳を傾ける。

 町内にさまよう数十匹のイヌやネコ、牛約400頭、飼育施設から逃げ出したダチョウなどに、動物愛護団体から送られた餌を毎日数時間かけ、与え歩く。「町に戻った自分にできること」という。

 同居していた両親は静岡県内に避難しているが、避難後に母(80)は認知症になった。伯母は避難先の病院を転々とするうち体調を崩して亡くなった。

 「フクシマ」の現実を世界の人に知ってもらいたいと、英BBCなど欧米メディアの取材に積極的に応じてきた。「人間が作った機械に完璧なものはない。『夢のエネルギー』なんて幻想だ」。怒りを込めて訴えてきた。

 松村さんは線量計を持っておらず、これまでの被ばく線量が分からない。今のところ健康に問題はないという。震災後数カ月は畑の野菜や木に実っていたビワを食べた。「痛くもかゆくもないってことは怖いことだよ」と内部被ばくの不安がよぎる。

 しかし、健康被害が出たとしても「地元を離れる気はない」という。「一日も早く除染が終わって、みんなが帰ってくるのを見届けたい。警戒区域の中にいないとできないこともあると思う。みんなが帰って来られるように自分なりに努力したい」

 ◇4市町村に8人 難しい強制退去

 警戒区域のある9市町村に取材したところ、13日現在、4市町村の区域内に少なくとも8人がとどまっている。内訳は松村直登さんのほか、田村市の60代男性、川内村の50代と80代の女性計2人、楢葉町の男女各2人の高齢者ら。

 原子力災害対策特別措置法に基づいて設定された警戒区域は立ち入り禁止で、違反者には10万円以下の罰金を科したり、拘留できる。

 だが、川内村は「避難を説得してきたが(残留の)意思が非常に固い。食料がない場所に放っておけない」として2週間に1回、女性2人に食料を届けているという。

 国の原子力災害現地対策本部は「強制退去させることも可能だが、住み慣れた土地にとどまりたいという住民を無理やり追い出すのは難しい」。福島県警広報室は「検問所を設け警戒区域への進入を防ぐのが任務。住民を発見した場合は避難を呼びかけ、自治体に伝えてきた」と言う。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(86年)では「サマショール」(わがままな人)と呼ばれながら立ち入り禁止地域に住み続けた住民がいた。

やはり現地に入ったわけではないので、緊張感、臨場感はありませんね。あまり記事として得るところはありませんが、日本のマスコミがやっとインタビューした、というところに意義があるかもしれません。

ちなみに、APは8月、BBCは9月、レポーターを現地に入れて、松村さんと話をしています。

英語ですが、APのビデオをお出ししておきます。松村さんいわく、「おれ、絶対負けない」。インパクトは毎日の記事よりはるかに強いです。このビデオは、8月31日に出ました。英語のブログには9月2日付けのポストで出しました。

ビデオを見たときの私の反応: あっぱれ。

危険は重々承知で、それでも居たければそれは松村さんの選択です。他人、ましてや一番肝心なときに情報を隠した無能な政府がどうのこうの指図する話ではありません。



BBCは9月13日付けの記事で、やはりレポーターを富岡町に入れて松村さんと会った際の状況を記事にしています。例によって例のごとく、ちゃんとブックマークして翻訳して出すはずが、後3分の1のところで中座していて、結局出し損ねた記事でした。訳したところまでで関連の強い箇所だけですが、お出ししましょう。今更ですが。BBCのサイトにはビデオが出ていますので、あわせてご覧ください。

BBCのレポーターは、所によっては毎時30マイクロシーベルトの放射線量を計測している、と言っています。そんなところに、住民を帰そう、と日本政府は言っているわけです。

Inside Japan's nuclear ghost zone
日本の核のゴーストゾーンへ入る

Nothing stirs in the empty heart of Tomioka, a community of 16,000 now reduced to the eerie status of a ghost town after the nuclear disaster at Fukushima.

富岡町の中心部。何も動くものがない。1万6千人が住んでいた町は、福島原発事故以来、ゴーストタウン、死の町と化している。

The shops of the main street are deserted, motorbikes and cars are abandoned, weeds push through gaps in the concrete.

目抜き通りの店には誰もいず、バイクや車が放置され、コンクリの割れ目から雑草が生えている。

Vending machines selling drinks and snacks - always popular in Japan - stand unlit and silent.

飲料、スナックを売る自動販売機 -日本では人気がある-は電気が消えたまま。

Tomioka lies just inside the 20km exclusion zone that was hurriedly enforced last March when a radioactive cloud escaped from the stricken power plant.

富岡町は20キロ圏内の警戒避難区域のすぐ内側にある。この警戒避難区域は今年の3月、事故にあった原発から放射能雲が放出された時に急いで設定されたものだ。

In the rush to flee, doors were left wide open. Windows and roofs shattered by the earthquake and tsunami are still not repaired. A bicycle leans against a lamp-post.

人々が急いで逃げたため、扉は開け放されたまま。地震と津波で壊れた窓や屋根は修理されないままである。自転車が該当に寄りかかって立っている。

We are making the visit after reassurances from scientists and other journalists that radiation levels had fallen in this particular area.

私たちがこの地域を尋ねることにしたのは、科学者や他のジャーナリストたちがこの地域の線量は下がっている、と請け合ったからである。

The worst of the contamination was blown northwest of Fukushima while Tomioka lies to the south.

もっともひどい汚染は福島第1原発の北西部に流れたが、富岡町は原発の南に位置している。

Nevertheless we equip ourselves with overalls, boots, gloves and face-masks, all designed to minimise contact with the dust that is likely to be the main source of radioactivity.

それでも、私たちはつなぎの防護服を身に付け、ブーツを履き手袋、フェースマスクを付け、おそらく一番の放射能汚染源であろう塵、ほこりに接するのを出来るだけ避けられるようにした。

The public and media are banned from entering the zone but as we approach a police checkpoint we are not stopped.

一般人、メディアは警戒区域に入ることを禁じられている。しかし私たちが警察のチェックポイントに近づいても、止められはしなかった。

Radiation checks
放射線チェック

We continually operate a Geiger counter - and though the radiation level rises slightly once we cross into the zone, it is even lower than we had expected.

私たちはガイガーカウンターでずっと測定していた。放射線レベルは警戒区域に入ると若干上昇はしたが、予期していたよりも低かった。

For the record, during the course of a three-hour visit - which we kept deliberately short to minimise the risks - the rate averages about three microsieverts per hour.

3時間の滞在-リスクを最小限に抑えるために意図的に短くした-で、線量は平均で毎時3マイクロシーベルトだった。

We estimate our total dose to be roughly half that of a typical chest X-ray.

被曝量は、普通の胸部エックス線撮影のおよそ半分ぐらいだろうと我々は推定した。

Our guide is a local farmer, Naoto Matsumura, eager for the world to see how his community has suffered.

私たちを案内するのは地元の農家の松村直登さん。松村さんは、自分たちの町がどんなに苦しんでいるか、世界中の人に知ってもらいたい、と言う。

Although he was part of the initial exodus after the accident, he could not bear life in a refugee centre and soon moved back to his farm, refusing orders to leave.

事故後、松本さんは他の住民と共に町から出たものの、避難所の生活に耐え切れず、自分の農場に戻り、離れろ、という指示を無視している。

He's the last citizen to remain but he believes that it's his duty to do whatever he can to keep Tomoika going as a community.

町の最後の住人だ。それでも彼は、富岡町をコミュニティとして保っていくためにできるだけのことをするのが自分の義務だ、と信じている。

"We want this place to be safe again," he tells me, as we drive through quiet streets and past overgrown paddy-fields.

「この町がまた安全な場所になってもらいたいんですよ、みんな」、と彼は言う。私たちの車は静まり返った通りを抜け、植物の多い茂った水田の脇を走る。

"We need gas, electricity and water. But the old people still want to come back, even my mother and father. Their wish is to die here.

「ガスも電気も水もない。でも年寄りたちはまた戻って来たいんです。私の両親も。両親の望みはここで死ぬことなんです。」

"Now it's just me taking care of the animals."

「それが今は私が家畜の世話をしているだけ。」

The fate of the livestock is one immediate challenge. Dozens of cattle broke free after the evacuation and now roam wild.

家畜はどうなったのか。何十頭もの家畜が住民の避難後に外へ出、今や自由に歩き回っている。

Pigs and farmed boar also escaped and are living a feral existence - I see one litter of very young animals who have only known life inside the nuclear zone.

豚、飼育されていたいのししなども今や野生化している。私はこの核の避難地域での生しか知らない、生まれたばかりの家畜を見ている。

But others remained trapped - their owners fled in too much of a hurry to release them - and they have since starved to death.

逃げ出せなかった家畜もいる。飼い主があわてて避難したため家畜を話してやることが出来なかったのだ。このような家畜は既に飢え死にしていた。

Mr Mastumura leads us to a large cattle farm. Beef from this area used to be highly prized for its taste and quality.

松村さんは私たちを大きな畜産農家に案内する。この地域産の牛肉は味と品質で高い評価を受けていた。

'Failing' residents

見捨てられた住民

Wrecked by the quake and over-run by massive spiders' webs, the sheds now make for a very grim scene.

地震で壊れ、クモの巣だらけになった牛舎で、恐ろしい光景に出くわす。

At one end of a row of pens, I see the decomposed bodies of a cow and her calf. In all, 60 cattle perished here.

並ぶ囲いの最後の方に、母牛と子牛の腐敗した体が見える。全部で60頭の牛がこの牛舎で死んだ。

Mr Matsumura believes the authorities have failed the people of the area - which is why he's taken the risk of bringing us in.

松本さんは、政府がこの地域の人々を見捨てた、と感じている。私たちを案内したのもそれが理由だ。

As we keep watch on the Geiger counter, the radiation level, as expected, is generally higher down on the ground, very occasionally peaking at around 30 microsieverts an hour.

ガイガーカウンターを見ると、予想したとおり地上に近いところでは概して放射線レベルが高い。まれに毎時30マイクロシーベルトあたりの値が出る。

On a very rapid visit like ours, these rates are by no means threatening. But I ask our guide if he worries about living in this environment.

私たちのようにごく短い間の滞在では、このレベルは危険なものでは決して無い。しかし、私は案内してくれた松村さんに聞いてみる。このような場所で暮らしていて不安は無いのか。

"I refuse to think about it," he says, joking that his chain-smoking may be more dangerous.

「考えないようにしてますよ」、と彼は言う。タバコの吸いすぎのほうがよっぽど危ない、と冗談を飛ばす。

There may be others willing to join him but the exclusion order is unlikely to be lifted - even in this area - for a while yet.

彼のように村に戻って生活したい人は他にもいるかもしれない。しかし、警戒区域が解除される見込みは、富岡町のような場所でも、当分の間は無いだろう。

BBCも、いくらなんでも日本政府が12月中に富岡町の避難解除を外そうとは思わなかったでしょう。

Sunday, December 11, 2011

ニューヨークタイムズ紙 『除染に割れる日本』 記事全訳

12月6日付け記事、”Japan Split on Hope for Vast Radiation Cleanup”の全訳(私訳)です。



ニューヨークタイムズ
マーティン・ファクラー
12月6日

FUTABA, Japan — Futaba is a modern-day ghost town — not a boomtown gone bust, not even entirely a victim of the devastating earthquake and tsunami that leveled other parts of Japan’s northeast coast.

(双葉町) 双葉町は現代のゴーストタウンだ。ブームが去った後のゴーストタウンではなく、壊滅的な地震と日本の北東部の海岸を襲った津波との犠牲者とも言い切れない。

Its traditional wooden homes have begun to sag and collapse since they were abandoned in March by residents fleeing the nuclear plant on the edge of town that began spiraling toward disaster. Roofs possibly damaged by the earth’s shaking have let rain seep in, starting the rot that is eating at the houses from the inside.

伝統的な木造家屋は傾き、壊れ始めている。町のはずれにある原子力発電所が大惨事の様相を呈し出し、3月に住民が逃げ出したのだ。おそらく地震のゆれで損傷した屋根から雨水が入り込み、腐食が家々を内側から蝕んでいる。

The roadway arch at the entrance to the empty town almost seems a taunt. It reads:

“Nuclear energy: a correct understanding brings a prosperous lifestyle.”

誰もいない町の入り口にかかるアーチは、まるであざ笑っているかのようだ。そこに書いてあるのは、

「原子力 正しい理解で 豊かな暮らし」

Those who fled Futaba are among the nearly 90,000 people evacuated from a 12-mile zone around the Fukushima Daiichi plant and another area to the northwest contaminated when a plume from the plant scattered radioactive cesium and iodine.

双葉町から避難した人々を含めて、福島第1原発から20キロ圏内の地域と北西方向から9万人近い人々が避難した。原発からの放射能プルームが放射性セシウムとヨウ素を撒き散らして土地を汚染したのである。

Now, Japan is drawing up plans for a cleanup that is both monumental and unprecedented, in the hopes that those displaced can go home.

今、日本は除染の計画を立てている。この除染はとてつもなく大規模で、世界に前例がない。強制避難した人々が帰還できることを望んで行うのだ。

The debate over whether to repopulate the area, if trial cleanups prove effective, has become a proxy for a larger battle over the future of Japan. Supporters see rehabilitating the area as a chance to showcase the country’s formidable determination and superior technical skills — proof that Japan is still a great power.

この地域に住民を戻すかどうかの議論、ただし除染が有効だと証明されたらの話だが、この議論は日本の将来を巡るより大きな戦いのいわば代理戦争となっている。住民の帰還を支持する人々は、住民の帰還を、日本の強い決心と優れた技術を示す絶好のチャンス、と見ている。日本が今でも世界有数の国であることの証明、というわけだ。

For them, the cleanup is a perfect metaphor for Japan’s rebirth.

これらの人々にとって、除染は日本の再生をあらわすのにぴったりの比喩なのである。

Critics counter that the effort to clean Fukushima Prefecture could end up as perhaps the biggest of Japan’s white-elephant public works projects — and yet another example of post-disaster Japan reverting to the wasteful ways that have crippled economic growth for two decades.

これに異を唱える人々は、福島県を除染しようとする試みは、日本の公共事業の中でも一番の「無用の長物」となりかねない、と警鐘を鳴らす。そればかりか、過去20年間日本の経済成長を妨げてきた無駄遣いを、災害後の日本がまたも行うことになる、という。

So far, the government is following a pattern set since the nuclear accident, dismissing dangers, often prematurely, and laboring to minimize the scope of the catastrophe. Already, the trial cleanups have stalled: the government failed to anticipate communities’ reluctance to store tons of soil to be scraped from contaminated yards and fields.

今までのところ、日本政府は原発事故以来のパターンを崩さない。危険を軽視し、災害の規模を小さく見せようと努力する。既に、除染のテストは立ち往生している。汚染された庭や畑から取り除かれた土を保管するのに地域住民が抵抗しようとは、政府は予期できなかったのだ。

And a radiation specialist who tested the results of an extensive local cleanup in a nearby city found that exposure levels remained above international safety standards for long-term habitation.

(双葉町)近在の市で行った広範囲の除染の結果を調べた放射線専門家によると、除染後の放射線被曝レベルでも長期居住の国際的な安全基準を上回っていた。

Even a vocal supporter of repatriation suggests that the government has not yet leveled with its people about the seriousness of their predicament.

住民の帰還を公に支持する人さえ、日本政府は事態の深刻さを国民に率直に伝えていない、と考えている。

“I believe it is possible to save Fukushima,” said the supporter, Tatsuhiko Kodama, director of the Radioisotope Center at the University of Tokyo. “But many evacuated residents must accept that it won’t happen in their lifetimes.”

「私は福島を救うことは可能だと考えています」、というのはそんな支持者の一人、東京大学アイソトープセンター所長の児玉龍彦氏だ。「ただし、避難した住民の多くは、それが生涯の内には叶わない、ということを受け入れる必要があります。」

To judge the huge scale of what Japan is contemplating, consider that experts say residents can return home safely only after thousands of buildings are scrubbed of radioactive particles and much of the topsoil from an area the size of Connecticut is replaced.

日本が計画している除染がいかに大規模なものかを理解するには、専門家達の言を考えてみよう。彼らは、何千もの建物から放射性物質を洗い落として、コネチカット州と同じ広さの場所から大部分の表土を入れ替えて初めて、住民は安全に帰宅できる、というのだ。

Even forested mountains will probably need to be decontaminated, which might necessitate clear-cutting and literally scraping them clean.

山林もおそらく除染する必要がある。そうなると、木をすべて切り倒して文字通りきれいに掻き出す必要があるかもしれない。

The Soviet Union did not attempt such a cleanup after the Chernobyl accident of 1986, the only nuclear disaster larger than that at Fukushima Daiichi. The government instead relocated about 300,000 people, abandoning vast tracts of farmland.

1986年のチェルノブイリ事故後、ソ連はこのような[大規模な]除染を試みなかった。チェルノブイリ事故は福島第一原発事故よりも大きい、唯一の事故だ。ソ連邦政府は除染をする代わりに30万人の人々を移住させ、広大な農地を放棄した。

Many Japanese officials believe that they do not have that luxury; the area contaminated above an international safety standard for the general public covers more than an estimated 3 percent of the landmass of this densely populated nation.

日本政府の人々の多くは、ソ連のような余裕は自分たちにはない、と信じている。一般公衆のための国際的安全基準を上回る汚染の地域は、人口密度の高いこの国の地面の3パーセント以上を占めているのだ。

“We are different from Chernobyl,” said Toshitsuna Watanabe, 64, the mayor of Okuma, one of the towns that was evacuated. “We are determined to go back. Japan has the will and the technology to do this.”

「日本はチェルノブイリとは違う」、と言うのは大熊町の渡辺利綱町長(64歳)。大熊町は避難区域に指定された自治体の一つ。「私たちは必ず戻ります。日本はそうする意思と技術を持っています。」

Such resolve reflects, in part, a deep attachment to home for rural Japanese like Mr. Watanabe, whose family has lived in Okuma for 19 generations. Their heartfelt appeals to go back have won wide sympathy across Japan, making it hard for people to oppose their wishes.

このような決意は、一つには地方に住む日本人が家に対して持つ強い愛着心に根ざしている。渡辺町長の一族は大熊町に19世代にわたって住み続けてきた。これらの人々の家に帰りたいという心からの訴えは日本中で広い共感を得ており、この訴えに異を唱えることは難しい。

But quiet resistance has begun to grow, both among those who were displaced and those who fear the country will need to sacrifice too much without guarantees that a multibillion-dollar cleanup will provide enough protection.

しかし、家を追われた人々の間で、また、数兆円掛けた除染で十分に安全になるという保証もないまま、国として犠牲にするものが大きすぎると考える人々の間で、静かな抵抗が次第に強くなっている。

Soothing pronouncements by local governments and academics about the eventual ability to live safely near the ruined plant can seem to be based on little more than hope.

壊れた原発のそばでもいつかはきっと安全に暮らせるようになりますよ、という地方自治体や学者たちの言葉は、ほとんどそうであって欲しいという希望に基づいているに過ぎない。

No one knows how much exposure to low doses of radiation causes a significant risk of premature death. That means Japanese living in contaminated areas are likely to become the subjects of future studies — the second time in seven decades that Japanese have become a test case for the effects of radiation exposure, after the bombings of Hiroshima and Nagasaki.

低線量放射線をどれくらい浴びたら死期が早まるリスクが高くなるのかは明らかになっていない。つまり、汚染地域に住む日本人はおそらく未来の研究の被験者になるということだ。広島と長崎に原爆が落とされて以来、日本人が放射線被曝の影響を知るためのテストケースになるのは70年間でこれが2度目である。

The national government has declared itself responsible for cleaning up only the towns in the evacuation zone; local governments have already begun cleaning cities and towns outside that area.

国は避難区域内の除染しかしないと明言している。避難区域外については各自治体がすでに除染を始めている。

Inside the 12-mile ring, which includes Futaba, the Environmental Ministry has pledged to reduce radiation levels by half within two years — a relatively easy goal because short-lived isotopes will deteriorate. The bigger question is how long it will take to reach the ultimate goal of bringing levels down to about 1 millisievert per year, the annual limit for the general public from artificial sources of radiation that is recommended by the International Commission on Radiological Protection. That is a much more daunting task given that it will require removing cesium 137, an isotope that will remain radioactive for decades.

双葉町を含む20km圏内については、2年以内に線量を半減させると環境省が約束した。短寿命の放射線同位体が崩壊するので、これは比較的容易に達成できるだろう。もっと大きな問題は、最終目標である年間約1mSv程度にまで線量を下げるのにどれだけ時間がかかるかだ。1mSvは国際放射線防護委員会が推奨する「一般大衆の人工放射線源からの年間被曝許容限度」である。数十年間にわたって放射能を持ち続けるセシウム137を除去しなければならないことを思うと、これははるかに困難な課題である。

Trial cleanups have been delayed for months by the search for a storage site for enough contaminated dirt to fill 33 domed football stadiums. Even evacuated communities have refused to accept it.

試験的な除染の開始は数ヶ月遅れている。ドーム型のアメフト競技場[後楽園ドーム球場の、ということでしょう]33杯分の汚染土を貯蔵する土地が見つからないためであり、避難区域内の自治体でさえ受け入れを拒んでいる。


And Tomoya Yamauchi, the radiation expert from Kobe University who performed tests in Fukushima City after extensive remediation efforts, found that radiation levels inside homes had dropped by only about 25 percent. That left parts of the city with levels of radiation four times higher than the recommended maximum exposure.

神戸大学の放射線の専門家、山内知也は、大規模な除染が行なわれたあとで福島市を調査し、住宅内の放射線量が25%しか下がっていないのを確認した。結局、除染をしてもICRPの被曝許容限度の4倍も線量の高い場所が市内にはいくつも残っている。

“We can only conclude that these efforts have so far been a failure,” he said.

「こうした除染活動は今のところ失敗としかいいようがない」と山内は指摘する。

Minamisoma, a small city whose center sits about 15 miles from the nuclear plant, is a good place to get a sense of the likely limitations of decontamination efforts.

南相馬市は原発から約25kmに市の中心がある小さな市だが、除染には限界があるだろうことを実感するには適した場所といえる。

The city has cleaned dozens of schools, parks and sports facilities in hopes of enticing back the 30,000 of its 70,000 residents who have yet to return since the accident. On a recent morning, a small army of bulldozers and dump trucks were resurfacing a high school soccer field and baseball diamond with a layer of reddish brown dirt. Workers buried the old topsoil in a deep hole in a corner of the soccer field. The crew’s overseer, Masahiro Sakura, said readings at the field had dropped substantially, but he remains anxious because many parts of the city were not expected to be decontaminated for at least two years.

これまで南相馬市は何十箇所もの学校や公園、スポーツ施設の除染活動を行ない、市民70,000人のうち事故後に避難したままの30,000人をなんとか呼び戻そうとしている。少し前の朝、とある高校に数台のブルドーザーとダンプトラックが現れ、サッカー場と野球場の表土を入れ替えて新たに赤茶色の土で覆う作業を行なった。古い表土は、サッカー場の片隅に深い穴を掘ってそこに埋める。作業を監督していたサクラ・マサヒロは、運動場の線量が大幅に下がったといいながらも、不安を拭えずにいる。少なくともあと2年は除染の予定のない場所が市内にたくさん残っているためだ。

These days, he lets his three young daughters outdoors only to go to school and play in a resurfaced park. “Is it realistic to live like this?” he asked.

最近では、3人の幼い娘を外に出すのは通学のときと、表土を入れ替えた公園で遊ばせるときだけだ。「こんな暮らし方には無理があるのではないか」とサクラは悩む。

The challenges are sure to be more intense inside the 12-mile zone, where radiation levels in some places have reached nearly 510 millisieverts a year, 25 times above the cutoff for evacuation.

20km圏内の除染はもっと大変だろう。場所によっては年間510mSv近くという、避難基準の25倍もの放射線量があるのだ。

Already, the proposed repatriation has opened rifts among those who have been displaced. The 11,500 displaced residents of Okuma — many of whom now live in rows of prefabricated homes 60 miles inland — are enduring just such a divide.

すでに、住民を帰還させる提案をめぐって避難者のあいだには亀裂が生じている。11,500人いた住民の多くが100km近く内陸の仮設住宅で暮らす大熊町でもそうした分裂が起きている。

The mayor, Mr. Watanabe, has directed the town to draw up its own plan to return to its original location within three to five years by building a new town on farmland in Okuma’s less contaminated western edge.

大熊町の渡辺町長は、大熊町でも汚染の少ない西端の農地に新たな町を建設して、そこに3年から5年のあいだに戻る計画を立てるように町に指示した。

Although Mr. Watanabe won a recent election, his challenger found significant support among residents with small children for his plan to relocate to a different part of Japan. Mitsue Ikeda, one supporter, said she would never go home, especially after a medical exam showed that her 8-year-old son, Yuma, had ingested cesium.

最近行なわれた町長選では渡辺が勝利したものの、まったく別の地域に移住する計画を掲げた対抗馬は幼い子供をもつ住民のあいだでかなりの支持を集めた。そうした支持者のひとり、イケダ・ミツエは絶対に戻らないと語る。とくに、自分の8歳の息子がセシウムに内部被曝していることが検査でわかった今となっては。

“It’s too dangerous,” Ms. Ikeda, 47, said. “How are we supposed to live, by wearing face masks all the time?”

「危険すぎます」と47歳のイケダは話す。「ずっとマスクをつけたままどうやって暮らせというんです?」

She, like many other evacuees, berated the government, saying it was fixated on cleaning up to avoid paying compensation.

イケダもほかの大勢の避難者と同様、政府が除染に固執するのは賠償金を支払いたくないからだと厳しく非難する。

Many older residents, by contrast, said they should be allowed to return.

一方、高齢の住民は戻ることを認めてほしいと訴える。

“Smoking cigarettes is more dangerous than radiation,” said Eiichi Tsukamoto, 70, who worked at the Daiichi plant for 40 years as a repairman. “We can make Okuma a model to the world of how to restore a community after a nuclear accident.”

「放射能よりタバコを吸うほうが危険ですよ」と語るのは、ツカモト・エイイチ、70歳。福島第一原発で40年間修理工として働いていた。「大熊町は、原子力事故のあとで町を再生する方法を世界に示すモデルケースになれます」

But even Mr. Kodama, the radiation expert who supports a government cleanup, said such a victory would be hollow, and short-lived if young people did not return. He suggested that the government start rebuilding communities by rebuilding trust eroded over months of official evasion.

しかし、政府の除染活動を支持する放射線の専門家、児玉でさえ、若い人たちが戻らなければそうした勝利は無意味で長続きしないと指摘する。もう何ヶ月ものあいだ責任を回避してきたために政府に対する信頼は薄れており、その信頼を回復することが地域社会再生への道だと児玉は語る。

“Saving Fukushima requires not just money and effort, but also faith,” he said. “There is no point if only older people go back.”

「福島を救うのに必要なのはお金や努力だけではありません。信頼も大事です。高齢者ばかりが戻っても意味がありません」

This article has been revised to reflect the following correction:

本記事は、下記修正事項を反映するために改訂されている。

Correction: December 9, 2011

An earlier version of this article said the evacuation zone covered more than 3 percent of Japan’s landmass; in fact it is the area contaminated above an international safety standard for the general public that covers roughly 3 percent of the country’s landmass.

修正:2011年12月9日

改訂前の本記事では、避難区域の面積が日本の陸地総面積の3%に相当すると記されていた。実際には、一般大衆に対する国際安全基準を上回る汚染地域の面積が日本の陸地総面積の3%である。

大人の放射能に向き合い行動する姿勢で子どもたちに安心感を与えられるのか

安心感だけでよいのか。

ツイッター上のクリスマス仕様でピンクの大福と化しているSavechild.netさんからのリンクで、「つながろう柏!あかるい未来プロジェクト」というボランティアサイトに行きました。

柏の子どもたちを放射能汚染から守る会」が、中心メンバーの方々が柏から転出して実質消滅したのは10月の初旬のことでしたが、その後に出来た会のようです。

「会の想い」ということでサイトの冒頭に出ている文章に、以前米国ABCニュースが報じた福島県南相馬市の除染ボランティアの方のお話を彷彿とさせる箇所があり、気になったのでコピーしておきます。

共通点?『放射能と共存する姿勢、放射能に立ち向かうという姿勢が大事』。

会の想い(ある柏のお母さんの発言より)

小学3年、中学3年の子供の母親です。放射能のお話を聞いていただきたく手を挙げました。
ただし、何かをしてくれなどの要求やしがらみの多い皆様に本日この場でご意見伺いたくて話すのではありません。
今日はただ聞いて考えていただきたいのです。

震災の後放射能の問題がおこり残念ながら柏はホットスポットと言われ有名になりました。
そんな中危険を唱える科学者もいればプルトニウムを飲んでも大丈夫と言う大学教授もいて情報が錯綜しています。
そんな状況の中で市民が不安に思うのは当たり前です。
でもそんな不安な気持ちを分かち合う自由さえ今の柏では無いように思います。
私がママ友と話したいと思ってもお天気の話をするように気軽に相談しあえる環境がありません。

しかし今この状況で一番落胆しているのは子供達でしょう。
しがらみの無い子供達はけっこうあからさまに話しているようです。給食でサツマイモが出て大丈夫だろうか?食べるのやめようか?と
学校で先生から何も説明がなく運動場に積まれた土が何なのか?と
「良い高校に入るためには」とか「お前たちの為を思って」と指導してくれる先生がどうして放射線をなくすアクションは起こしてくれないんだと子供は言います。
もしここで私たち大人が市、町会、学校などが協力して放射能に向き合い行動する姿勢を示したならば
子供達に守ってもらえているという実感を与えられるかもしれません。

私たち自身も不安が全く消えるわけでは無くても、情報を公開してみんなで立ち向かおうとし、一人で悩まない環境が出来たら
この町で柏で住み続ける勇気が前を向く気持ちが持てるのではないでしょうか?
町会でも学校でも除染他協力要請があれば少なくとも我が家は協力する気持ちがあります。
私は子供の寝顔を見ながら思うのです。この子が私と同じ年齢になった時笑って暮らしていてくれるだろうかと
折しも昨日ある町会さんが有志の方の力を借りて通学路の計測活動をしたようです。
子供の目線でと子供のスピードなど色々計測測定方法も模索しているようでガイドラインを作ってくれています。
市も市民と協力してやっていこうという方向になってきたようです。
放射能は広範囲で降りました。校長先生も町会長さんもみんなが被害者です。
子供が心配と言いましたが私は子供を産んでいない若い先生なども心配です。
ホットスポットと注目された柏をピンチではなく一致団結して防犯力や防災力も向上できるチャンスと考えませんか?
引っ越ししてきたくなる街づくりを目指しませんか?
一緒に考えてください。よろしくお願いします。

ちなみに、柏では、キロ当たり27万ベクレルを超える放射性セシウムが土壌から検出されています。

Friday, December 9, 2011

放射能汚染を避けて沖縄に脱出した家族をオーストラリアのThe Age紙がインタビュー

「あの日の放射線量がどれだけ高かったかを知ったとき、そしてうちの子が粒子を吸い込んで外部被曝だけでなく内部被曝もしたかもしれないと気づいたとき、なぜ誰も危ないと言ってくれなかったのかとものすごく腹が立ちました。事故そのものよりも、そちらのほうがよほど私にはショックでした。」

オーストラリアのThe Age紙に、福島第1原発事故からの放射能を避けて東京から沖縄に脱出した人たちにインタビューした記事が掲載されました。

以下、東京茶とら猫さんのご好意の翻訳をお届けします。記事の中でインタビューされている竹野内真理さんは翻訳家で、このブログでもご紹介した肥田舜太郎さんとご一緒に、『人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために』(ラルフ・グロイブ, アーネスト・スターングラス著)を翻訳なさっています。

もとの英文記事はこちら

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沖縄への脱出

オーストラリア The Age
ジェーン・バラクラフ
2011年12月6日


放射線量の高いホットスポットが東京にも現れ、国中が放射能汚染にあえぐなか、一部の日本人は福島からの放射性降下物を避けるために沖縄に逃れている。だがすでに手遅れなのだろうか。

日本で史上最大の地震が発生して巨大な津波が福島の海岸を繰り返し襲い、東京電力福島第一原子力発電所が放射能まみれの残骸と成り果てたその3日後、竹野内真理は赤ん坊を背負って東京の東部を必死に自転車で走っていた。

竹野内は東京生まれの翻訳家。わずかな時間でぎりぎりまで用事を片付けたあと、1歳の息子を連れて沖縄に逃げた。沖縄は日本の最南端の県であり、事故の起きた福島からは2000km離れている。空港に向かう途中、予約を入れておいた歯科医の治療に息子を連れて駆け込んだ。

竹野内も、ほかの数百万人の人々も、東京の上空に放射能の雲がかかっていることを知らなかった。3基の原子炉ではすでに全面的なメルトダウンが起きていた。ウランの詰まった燃料棒は過熱して融け、それが3月12日と14日に爆発を引き起
こした。

「かすかに風の吹く晴れた日でした。あの子を背負って自転車を漕いでいるときに、顔に当たった風のことは一生忘れないでしょう」と竹野内は振り返る。

竹野内と息子のジョーが本土を離れる前に外にいた3時間は、放射能の雲が最も濃くなった時間帯だった。竹野内が自転車で走っていたのは東京の世田谷区。その世田谷区で東京都が採集した空気の分析結果によると、ジョーが浴びた放射線量は平常時の背景放射線量の145倍に達する。

京都大学の測定によれば、放出の続く原発から20~30km圏で住民が自主的に避難したホットスポットと、東京の数値は同程度だった。

「できるものなら時間を巻き戻したい」と竹野内は語る。「本当は朝の便で発つ予定だったのに、電話を修理したり歯の治療を終えたりといった用事を済ませたかったから午後3時の便に変更したんです。今思えばそんなことは沖縄でもできたのに。でも、あのときは東京は安全な距離だと聞かされていたから」

当時、東電は大規模な炉心溶融で放射能が漏れている可能性を過小評価していた。政府のスポークスマンのひとりはのちに、パニックを防ぐために当初は事故の規模を過小に発表していたことを認めた。政府が正式に3基のメルトダウンを認めるのはようやく6月になってからである。

しかし、爆発後に警戒感がなかったために、竹野内とジョーは半日余計に東京に留まり、放射性降下物を避けることができなかった。その降下物は、風雨や雪の残酷な気まぐれで少しずつまき散らされ、家に、畑に、野原に降り積もり、やがて竹野内の家の近くの校庭も汚した。

足立区の小学校では、自治体が定める安全基準値の16倍の放射線量が配水管の泥から検出された。これは、3月以降次々に現れたホットスポットのほんの一例にすぎない。

首都圏の南では、横浜の住民がストロンチウム90(骨がんとの関連が指摘される物質)を含む土砂を見つけた。その濃度は、福島で確認されている最高レベルの2倍。冷戦時代の核実験の名残りより10倍以上高い。

だが、放射能不安の一番大きな原因物質はセシウム137である。セシウム137は環境中に何十年も留まり、一定量以上の被曝をすると発がんリスクが高まるおそれがある。福島原発からのセシウム137の総放出量は、1986年のチェルノブイリ原
発事故時の約42%であると、最近発表されたノルウェーの研究は指摘する。

包括的核実験禁止条約に基づく世界各地のモニタリングステーションからデータを集めたこの研究によると、セシウム137の放出量は日本政府の公式発表の2倍以上になっている。日本政府発表の数値は、諸外国や海に流れた放射性物質が考慮されていなかったからである。

公式発表の数字にはここ数ヶ月間の放出量も含まれていない。破壊された原発はいまだに安定しておらず、融けた燃料が地面を侵食しないように懸命の作業が続けられている。

爆発当初の放射性降下物は、その約2割が最終的に地面に落ちたと見られている。田舎のみならず、人口の密集した都市の地面にも。

柏市では、ある公園の近くで1日当たりの地面付近の空間線量が非常に高く、個人の年間平均自然被曝量の2分の1以上の値になっている。これは、3月下旬にセシウムを含む大雨が何度か降ったためとされている。

竹野内はこうしたホットスポット問題が表面化する前に避難したものの、やはり自分の子供の健康を心配している。取り返しのつかないダメージを負ったのではないかと気がかりでならないのだ。

「大人に対してはもちろん、低線量被曝が幼い子供にどんな影響を及ぼすかは、世界中のどんな医者にもわからないんです。なのにどうして政府は、東京では健康リスクはない、と言えるのでしょう」と竹野内は言う。

3月11日の前日、竹野内は偶然にも「ペトカウ効果」に関する本の翻訳の仕上げをしていた。ペトカウ効果とは、低レベル放射能でも不治の病を引き起こす可能性があるとする仮説で、賛否両論ある。

低線量放射線の影響については科学者の間でも意見が一致していない。しかし、チェルノブイリの被害住民のあいだでは白血病、甲状腺がん、ダウン症、先天性欠損症が多発した。この唯一福島と同等以上の原子力事故を起こしたチェルノブイリで明らかになったこうしたリスクは、ある程度は日本にも当てはまると考えられる。

「あの日の放射線量がどれだけ高かったかを知ったとき、そしてうちの子が粒子を吸い込んで外部被曝だけでなく内部被曝もしたかもしれないと気づいたとき、なぜ誰も危ないと言ってくれなかったのかとものすごく腹が立ちました。事故そのものよりも、そちらのほうがよほど私にはショックでした。事故は前から予測されていたことでしたから」

地震が引き金となって日本の原発が停止するという予測を竹野内が知ったのは、10年前のこと。アメリカの原子力安全問題の専門家が開いたシンポジウムでのことだった。以来、原子力事故が起きたら沖縄に逃げて永住しようと心に決めていた。

東北地方を自然災害と原子力災害が襲ってから数日のうちに、竹野内は東京の住まいを引き払い、那覇のワンルームマンションに移り住んだ。那覇は、沖縄県民150万人の半数以上が集中する都市である。

沖縄はかつて貿易で栄えた王国であり、独自の文化と言語をもつ。東シナ海に位置し、台湾から九州にかけて連なる亜熱帯の島々で構成され、夏には日本のみならず台湾や中国からも観光客が訪れる人気の土地である。

竹野内が新たに腰を落ち着けたのは、那覇中心部にある久茂地地区。久茂地はバックパッカーや地元の活動家が集まる場所だ。地区の目抜き通りでは、今や日常茶飯事となった米軍基地反対デモの周囲を警官が穏やかにパトロールする。そしてこの地には新たなスローガンが生まれた。「脱原発」である。

最近行なわれた脱原発デモには、おもに本土から避難してきた人々200人以上が参加した。これはごく一部にすぎず、全体では今年3月から8月にかけて17,521人が本土から沖縄に移住している。前年の同時期と比べると12.3%の増加だ。

沖縄県は、日本で原発のない地域の中でもっとも大きい。

沖縄最大の島である沖縄本島には美しい浜辺が連なり、スローフードの文化が根いて、音楽や芸術が盛んな場所である。毎年、数千人の移住者を引き付けている。ところがつい最近になって、福島原発の事故以前には沖縄への移住など考えてもみなかった親たちが放射能を心配して沖縄に移り住むようになった。

竹野内が住む那覇の低家賃マンションには、本土の各地から避難してきた人たちがほかに30人暮らしている。ほとんどが幼い子供を連れた母親で、誰もが同じ不安を抱えている。彼女たちの話題は奇妙な発疹のこと、高熱のこと、鼻血のこと。そして政府と原子力産業の「絶対に許せない」怠慢のことだ。

3月11日の津波で仙台の自宅を失ったタナカ・ユリコは、福島県北西部との県境に近い仮設住宅に住んでいたが、そこを出る決心をする。子供にとって安全な場所だとは思えなかったからだ。しかも、4歳の息子の発疹がなかなか治らないのを心配していた。

「8月に発疹が出てから治らず、腕や手にまで跡が残っています。医者はステロイドの軟膏をくれましたが、かえって悪くなっただけでした」とタナカは語る。「同じ地域に住んでいた友人の子供にも、今年の中頃から似たような発疹が出ました」

それが福島からの放射性降下物のせいかどうかは証明が難しいものの、タナカは大事をとって沖縄に移住することを決めた。

クボタ・ミナホも沖縄本島に逃げてきたひとりだ。事故のニュースを聞いた瞬間、自分の人生が変わったと語る。クボタは2児の母。以前は福島第一原発の存在すら知らなかった。

クボタは原発から190km南の茨城県水戸市に住んでいた。7歳になる息子のダイトが外で遊んでいるとき、ラジオをつけると原発で一連の爆発が起きたことを知る。

「とにかく泣きました」とクボタは振り返る。「それからダイトの首に発疹ができたんです」

4週間後、すでに日本を離れることを考え始めていた頃、まだ赤ん坊の下の息子が初めて鼻血を出した。「日本のできるだけ遠いところに行こうと決めました。でも、夫を説得するのに2ヶ月かかってしまった。夫は『自分たちにはどうしようもないことなんだから、そんなに心配しても仕方がない』って言うんです」

近所の人や友人の多くが福島の話題を「タブー」にしているのと同じように、クボタの夫も放射能の話をするのをいやがった。

過度のセシウムが検出されて牛乳が回収される騒ぎがあったあと、クボタは学校に行って息子に牛乳を飲ませないでくれと頼んだ。学校はその要請を無視した。

「結局、息子がアレルギーだという作り話をしたら、ようやく牛乳を飲ませるのをやめてくれました」

クボタは避難する以外に「選択肢がなかった」と話す。「福島の事故のせいで病気になった人の統計に、いつか自分の子供が仲間入りするのかどうか。それをただ黙って見ているのはごめんです」

一方、いくつかのNGOは、一部の人たちの体調不良と福島の放射性降下物との関連を指摘している。

3月に大量のヨウ素131に被曝して避難していない福島の子供130人を検査したところ、10人に甲状腺異常が見つかった。

6月に、原発から60kmの地域で実施した戸別訪問調査からは、大勢の住民が長引く鼻血や下痢に悩まされているのがわかった。同じ症状は東京でも確認されている。

自身も広島の被爆者であり、チェルノブイリや広島の被害者向けに非営利の病院を運営している肥田舜太郎博士は、今年の中頃に単発のクリニックを開いて50人の患者を診察した。

「青あざ、鼻血、高熱、下痢、骨の痛み、極度の疲労といった症状が見られました」と肥田は語る。

こうした症状は、広島の原爆による放射性降下物に被曝した人々にも程度の差はあれ現れていた。広島の原爆にはセシウムやヨウ素はもちろんだが、高濃度のストロンチウム90も含まれていた。広島の被爆者に見られた長期的な影響としては、悪性腫瘍、脊椎の不具合、先天性欠損症、白血病、乳がん、甲状腺機能障害、放射線白内障、肝疾患、心疾患などがある。

放射線による複数の症状がクリニックで確認されたのを受け、肥田は東京の放射線を心配している。世界保健機関は、日本国民の健康がただちに脅かされることないと言うが、肥田は沖縄に逃げた人たちを決して被害妄想とは呼べないと考えている。

「これは個人が選ぶ問題です。何に優先順位を置き、健康リスクをどう認識するかは、人それぞれですから。ですが、放射性降下物による色々な影響を見てきて、すぐに現れる症状もあれば遅れて現れる症状もあるのを知っている者として、私はどちらかというと用心に越したことはないという立場です」

竹野内は、広島の被爆者に関する肥田の本で翻訳を手伝ったことがある。息子が、沖縄に着いてから2ヶ月で8回目の38度を超す熱を出したとき、彼女は肥田に電話をした。

「先生はこうおっしゃいました。すでに本土を離れているし、3月15日に放射能を浴びた時間はもう元に戻せないのだから、今はとにかくお子さんを愛し続けてあげて、沖縄で普通の暮らしを送らせてやるようにすることが一番です、と」

(ジェーン・バラクラフは、日本を拠点にするオーストラリアのフリー・ジャーナリスト。)


(写真キャプション、上から)

沖縄・波の上ビーチに集う避難者たち

竹野内真理と息子のジョー

コンサートで避難者のために歌うシンガーソングライターのUA

避難した子供たちが核危機に関するドキュメンタリーに出演

福島第一原子力発電所

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Thursday, December 8, 2011

ニューヨークタイムズ紙: 除染に割れる日本

(12月11日アップデート: 全訳もだしました。ここです。)

記事(12月6日付け)を読むより何より、冒頭の写真を見ればすべてを察することが出来るような気がしました。

これ(除染)は無理だ。

相馬の農業高校の校庭、と説明書が付いています。


記事を読み始めて半ばくらいに、除染に関して大熊町の渡辺町長のコメントがありました。

The Soviet Union did not attempt such a cleanup after the Chernobyl accident of 1986, the only nuclear disaster larger than that at Fukushima Daiichi. The government instead relocated about 300,000 people, abandoning vast tracts of farmland.

1986年のチェルノブイリ事故後、ソ連はこのような[大規模な]クリーンアップ[除染]を試みなかった。チェルノブイリ事故は福島第一原発事故よりも大きい、唯一の事故だ。ソ連邦政府はクリーンアップをする代わりに30万人の人々を移住させ、広大な農地を放棄した。

Many Japanese officials believe that they do not have that luxury; the evacuation zone covers more than 3 percent of the landmass of this densely populated nation.

日本政府の人々の多くは、ソ連のような余裕は自分たちにはない、と信じている。避難区域は人口密度の高いこの国の地面の3パーセント以上を占めているのだ。

“We are different from Chernobyl,” said Toshitsuna Watanabe, 64, the mayor of Okuma, one of the towns that was evacuated. “We are determined to go back. Japan has the will and the technology to do this.”

「日本はチェルノブイリとは違う」、と言うのは大熊町の渡辺利綱町長(64歳)。大熊町は避難区域に指定された自治体の一つ。「私たちは必ず戻ります。日本はそうする意思と技術を持っています。」

チェルノブイリ事故のときも、トラクターやシャベルはあったでしょうし、鎌、鍬もあったでしょう。窓ガラスを拭く雑巾とスプレー、マスクと手袋、ゴム長靴もあったと思います。高圧洗浄機もあったかな。さて、ソ連になくて日本に今あるその除染技術、なんでしょうか?

記事には、東大の児玉教授のコメントも出ています。

And a radiation specialist who tested the results of an extensive local cleanup in a nearby city found that exposure levels remained above international safety standards for long-term habitation.

(双葉町)近在の市で行った広範囲の除染の結果を調べた放射線専門家によると、除染後の放射線被曝レベルでも長期居住の国際的な安全基準を上回っていた。

Even a vocal supporter of repatriation suggests that the government has not yet leveled with its people about the seriousness of their predicament.

住民の帰還を支持する人さえ、日本政府は事態の深刻さを国民に率直に伝えていない、と考えている。

“I believe it is possible to save Fukushima,” said the supporter, Tatsuhiko Kodama, director of the Radioisotope Center at the University of Tokyo. “But many evacuated residents must accept that it won’t happen in their lifetimes.”

「私は福島を救うことは可能だと考えています」、というのはそんな支持者の一人、東京大学アイソトープセンター所長の児玉龍彦氏だ。「ただし、避難した住民の多くは、それが生涯の内には叶わない、ということを受け入れる必要があります。」

やっぱり。児玉教授は以前も米国ABCニュースで同様なこと(「場所によっては50年は帰れない」)をおっしゃっていましたが、日本のメディアでも同じことをしっかりおっしゃっているのでしょうか。それとも、日本では、がんばって除染すれば帰れます、ということを、期間を明確にしないでおっしゃっているのか。フォローしていないので詳しくは存じませんが、ちょっと気になります。

ニューヨークタイムズの記事はよくまとまっています。全部訳したらまたお出ししたいと思います。

Wednesday, December 7, 2011

JR東日本『行くぜ東北』キャンペーンポスターのそっくりさん発見

まあ、そっくりというより、面差しが似ている、と言う感じかも知れませんが。

JR東日本のキャンペーンポスターの画像を英文ブログに出したところ、早速外国人読者の方から「これを思い出した!」と画像が送られてきました。

私は、色使い、デザインといい、どうも1930年代レトロだなあとなぜか思っていたのですが、読者の方が送ってくださったのは、共産全体主義のソ連のポスター。色使いこそ違いますが、色をストライプ状にアレンジしてあるところ、五亡星を使っていることなど、似てますねえ。

JR:





ソ連ポスター:

宮城県女川町の災害(放射性)がれき、東京への搬出開始

もうなしくずしな訳ですね。もう抗議をする都民もいないんでしょうか。(まあ抗議をしても無駄のようですが。)

以前にもポストで出しましたが、女川町からの放射性がれきは23区と多摩地域の清掃工場で焼却されます。そして、焼却灰は埋め立てまたはエコセメントに利用されます。

がれきはすべて可燃物。東京へ向けて、仙台市内の貨物ターミナルを9日に出発、品川区と大田区の清掃工場へ運ばれてから住民説明会を形ばかり開催し、焼却。

放射性セシウムの量は1キロあたり69ベクレルだったそうです。焼却するとこれが33倍に濃縮されるとのことですから、キロ当たり2277ベクレルの放射性セシウム灰の出来上がり。低いとは言い難い数字です。

読売新聞12月7日付け記事

宮城県女川町で7日、東日本大震災で生じたがれきを、受け入れ先の東京都に向けて搬出する作業が始まった。

 この日は町から委託された業者が、仮置き場に野積みされたがれきから、都が受け入れ対象とした木材などの可燃物を選別。放射線量測定で異常のないことを確認して、重機でコンテナに積んだ。コンテナはトラックで仙台市内の貨物ターミナルに運ばれ、9日に東京へ出発する。

 県によると、女川町には44万トン以上のがれきがあり、都が受け入れるのは約10万トン。品川区と大田区の処理施設で受け入れ、放射性物質検査などで安全性を確認した後、住民説明会を実施。来年2月から本格的に搬入を開始する。

 搬出されたがれきは東京湾の埋め立て地で最終処分する。都は2013年度末までに岩手、宮城両県から約50万トンを受け入れる方針を示している。

河北新報12月3日付け記事

宮城県は2日、東京都が受け入れを決めた宮城県女川町の災害廃棄物の搬出作業を7日に開始すると発表した。搬出量は2013年3月まで計約10万トンを見込んでいる。

 県震災廃棄物対策課によると、分別された木くずなど試験焼却用の可燃物140トンを今月中に大田、品川両区の清掃工場に運ぶ。女川町内の仮置き場からコンテナに積み、JR貨物で輸送。10日に都内に到着する予定。

 搬出する廃棄物の放射線量検査は、同町の選別作業場で空間線量を測るほか、廃棄物を積んだコンテナごとに行う。

 町が8月に実施した検査では、木質がれきの放射性セシウム濃度は1キログラム当たり69ベクレル。焼却した場合でも、国が埋め立て処分を可能とした基準値(1キログラム当たり8000ベクレル)を下回るという。

 都は13年度末までに岩手、宮城両県のがれき計50万トンを処理する方針。既に宮古市のがれきを受け入れている。宮城県内で発生したがれきを東北6県以外で処理するのは今回が初めて。

そんなに「安全」だというなら、なぜ現地で処分しないのか、私にはまるで分かりません。

都民に残された抗議行動は、東京都から出て行くことぐらいなんでしょうか。

Monday, December 5, 2011

明治の粉ミルクに入ったセシウムは3月14日~20日にかけての空気から

どうも原料じゃないらしいですね。

日本経済新聞12月6日付け記事

食品大手の明治は6日、生後9カ月以降の乳児向け粉ミルク「明治ステップ」(850グラム入り缶)から、最大1キログラム当たり30.8ベクレルの放射性セシウムが検出されたと明らかにした。4月以降、全国のドラッグストアなどで販売しており、同一期間に生産した約40万缶を同日から無償交換する。賞味期限が「2012年10月」と記されている製品が該当する。

 乳製品の国の暫定規制値(1キログラム当たり200ベクレル)は下回っていた。

 同社によると、無償交換する40万缶は、埼玉県春日部市の工場で3月14~20日に牛乳を乾燥させる工程を経た製品。原料の牛乳には、3月 11日以前に加工された北海道産などを使用していた。同社は、大量の空気を当てる過程で、東京電力福島第1原子力発電所事故で放出された大気中の放射性セシウムが混ざったとみている

 同製品は、生後9~12カ月の乳児に飲ませる場合、200ミリリットルの湯に粉ミルク約30グラムを溶かして使う。40万缶のうち、既に消費者に販売された数は現在調査中としている。

 同社は東日本大震災以降、月1回のペースで同工場の粉ミルクに放射性物質が含まれていないかを調べており、今回の検査は今月3日に実施。これまでは同社製品から放射性物質が検出されたことはなかったという。

よりによって最悪の期間に、何も知らずに明治は粉ミルクを作るべく牛乳に大量の空気を当てていたのです。

  • 3月14日: 福島第1原発3号機爆発(午前11時1分)

  • 3月15日: 4号機爆発(午前6時。当初の発表では、「火事」で多少燃えたぐらいの印象でしたね。)2号機の圧力抑制室に重大な損傷(午前6時過ぎ)、大量の放射能放出

  • 3月16日: 4号機で火災

  • 3月21日: 3号機から謎の黒煙。東日本の各地で、急激に放射線量が上昇。

もっとも、明治だけでなく、政府・東電、原子力関連の政府機関、専門家を除いては、誰も知らせてもらえませんでした。その理由は後付けでいろいろ出ています。

  • パニックを恐れた

  • 観測データを出してはいけないと上司に禁じられた

また、理由ではないですが、このとき、またこれ以降のデータをしっかりとって、海外の科学雑誌に投稿するための論文の準備に余念がなかった研究者の方々もおられます。

結果、東日本の多くの方々が不必要な被曝をし、明治は放射性セシウムが入った粉ミルクを作ってしまったわけです。それを購入して既にお子様に与えてしまった親御さんもいらっしゃることでしょう。ひどい話です。そんな中、前官房長官は「直ちに影響はない」を連発していたのです。まったくひどい話です。世界にも比類のない、ひどい話です。

さて、原料の牛乳が汚染されている現在、粉ミルクのセシウムはどうなっているんでしょうか。空気中に飛散するセシウムの量は激減しています。

ご参考までに、文科省が発表した限りでの、3月に埼玉に降った放射性降下物の種類と量は、このポストに表の画像を出してありますので、どうぞ。ニオビウム、銀、テルルなどが出ています。

福島県南相馬市の小学校の除染風景: 父兄による雑巾がけ

南相馬市は東大の児玉龍彦教授と協力して学校、幼稚園などの除染を進めていた、というのが私の認識でしたが、「除染バブル」を政府が作り出す中、やっぱりしゃしゃり出てきた文部科学省、日本原子力研究開発機構。南相馬市の小学校で、父兄に「除染」をやらせている風景が、読売新聞の福島地方版に出ていました。

さて、どんなハイテク技術でしょうか?

え?雑巾がけ?(ああ空しい。)


読売新聞福島版12月4日付け記事

東京電力福島第一原子力発電所の北21キロ・メートルにある南相馬市原町区の市立太田小学校(林弘美校長)で3日、放射線量を低減させるため、専門家の指導を受けて地元住民らが除染作業に取り組んだ。

 文部科学省が学校の除染を支援する事業の一環で、今回が初めての実施。指導には日本原子力研究開発機構の放射線専門家があたった。

 参加した地元住民ら約130人は、「ほこりが飛び散らないよう一方向に拭いてください」などのアドバイスを受けながら、教室の壁や床、窓ガラスなどを雑巾で拭いていった。

 同小は、立ち入り禁止の警戒区域内にある学校を除くと、市内で最も原発に近い学校。震災と原発事故の影響で児童の約3分の2が避難し、残った児童44人は市内の別の小学校で授業を受けている。校舎の改修が終わる来年1月に授業を再開する予定で、今月17日にも大規模な除染作業を行う。

 除染に参加した同市原町区の板倉徳広さん(62)は、「孫たちが安心して勉強できる環境をつくりたい」と話していた。

何かやった気になる、と言うのが大切なことなんでしょう。放射性物質をその辺にこすり付けているだけのような気がしますが。

日本原子力研究開発機構の専門家が良く知る「除染」は、きちんとした放射線管理下にある施設で高濃度の放射性物質が少量漏れてしまった場合の除染ではないかと推察しますが、放射線管理も何もなく、低濃度の放射性物質が限りなく漏れている状態での除染は経験があるのでしょうか。