Saturday, September 24, 2011

神戸大学山内知也:福島市渡利地区、「除染はできていない」

神戸大学大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線物理、放射線計測)による9月20日付けの報告書は、福島県福島市渡利地区の除染の効果を調べたものですが、教授の結論は多分地区の方々、福島市民、福島県民および東日本の方々が聞きたくないことでしょう。

除染が出来てない、というだけでなく、今のやり方ではやってもほとんど無駄、やらないと天然濃縮で放射線が上がり、実際に除染、つまり放射能を除去する、ということがそこに人を住まわせたまま、住まいや景観を破壊することなしに可能なのかどうか、ということにも疑問を投げかけています。

以下に、報告書の概要部分をコピーします(強調は私):

『概要:2011年9月14日、福島市渡利地区において空間線量の計測を実施した。「除染」が行われたということであったが、6月の調査において最も高い線量を記録した側溝内堆積物には手が付けられておらず、地表面における空間線量は当時の2倍に上昇していた。「除染」のモデル地区としてある通学路がその対象になったが(「除染モデル事業実施区域」)、その報告によると平均して7割程度(約68%)にしか下がっておらず、空間線量も1〜2 μSv/hに高止まりしている。今回の調査においてもその通学路の周辺において20 μSv/hを超える非常に高い線量が地表面で計測された。コンクリートやそれに類する屋根の汚染は高圧水洗浄によっても除去できておらず、住宅室内における高い線量の原因になっている。除染の対象にはされなかった地域の水路や空き地、神社、個人宅地内の庭で高い線量が計測され、最も高い線量は地表で20 μSv/hを記録した。本来の意味での除染はできていない。』

除染が出来ていない、というだけでなく、山内教授は放射性物質の天然濃縮が行われ、逆に放射線量が上がっている、と言います。地区内の小倉寺稲荷山での前回測定を踏まえ、今回の調査で分かったことは、

『前回の計測でここは最も高い汚染土壌が採取された場所であり、それはキログラム当たり4万ベクレルを超えていた。またそのような土壌を採取した地表面での線量は7.7μSv/hや11.5 μSv/h を記録したのであったが、それから3ヶ月近くが経過した時点でそれらは20μSv/h を超えていた。ここでは除染は行われておらず、天然の濃縮が進行していた。降雨の度に近隣の山林から放射性セシウムが流入していると見られる。

更に悪いニュース。「学童保育教室」の建物の中のほうが玄関先よりも線量が高く、また床面より天井に行くほど線量が上がっている、とのこと。原因は高圧洗浄したはずの屋根。

『<学童保育教室>
学童保育が行われている建物の内部で、床面よりもはりの高さで、また天井の高さで、高くなればなるほど線量が高くなるという傾向が確認された。人の立つ高さで0.5 μSv/h であり、天然バックグランドの10 倍である。玄関での線量は室内よりも低いことが認められた。敷地外部の土壌汚染による線量増強以外の効果が作用していると考えられた。屋根の直上と庇の下の線量を計測すると屋根の線量がより高くなっており、コンクリート製の瓦の表面に付着した放射性セシウムが室内の線量増強をもたらしていることが確認された。屋根は面積が広く当然のこととして室内を覆っているために汚染の程度が相対的に低くても大きな効果を及ぼす。この屋根は高圧水洗浄をしたということであったが除染は出来ていなかった。』

教授は渡利地区で8月24日に行われた「除染モデル事業」を評価して、「まったく除染になっていない」、と言います:

『図3に「除染モデル事業」の実績を示した。除染とは放射能汚染を取り除くことであるが、実態として除去できていない。「除染」の前後で空間線量は平均して68%に低減したが、半分以下にもなっておらず、除染とは言えない。依然として子供らの通学路は1〜2μSv/hにあり、場所によっては 4 μSv/hに達したままである。除染作業の実態としては堆積した泥を取り除いたということに尽きる模様である。アスファルトやコンクリートが汚染しており、除染するにはこれらも取り除く必要がある。また、道路に面する住宅の庭やコンクリートブロックについても除染/取り除く必要がある(これは街の破壊を意味する)。』

コンクリート、アスファルト、屋根材に付着、吸着した放射性セシウムは高圧洗浄機では取れないようです。もっと早くやっていれば取れたのか、それとも元から強固に密着しているためにいずれにしてもだめだったのか。教授は、泥をすくうだけでは何もならない、コンクリート、アスファルトの汚染はそのままで残り、今後も堆積していくだろう、と言います。また、原理的に除染は広い範囲でやらないと効果は少ない、と言い、結論の最後の部分は深刻です:

『文字通りの「除染」は全く出来ていない。Cs-134 の半減期は2年、Cs-137 のそれは30年である。したがって、この汚染は容易には消えず、人の人生の長さに相当する。そのような土地に無防備な住民を住まわせてよいとはとうてい考えられない。

報告書には、具体的な測定の数字、グラフなどが出ています。是非お読みください。

また、報告書の中で教授は、高線量の通学路を先生に引率された児童数十名が何の防備も無く通り過ぎる様子、他の市で避難勧奨指定になるような線量の中で人々が何も知らず過ごしていることなどを淡々と記述しています。

南相馬市などは独自の除染を児玉教授の東大アイソトープセンターと協力してやっていますが、本当に線量が除染によって恒久的に下がるものなのか、山内教授の報告書を見ると悲観的になります。

4 comments:

  1. 福島をみまわしてみて下さい。
    自然だらけです。
    高濃度に汚染された地域は除染なんてむりです。
    除染出来ると信じて、軽装で除染してどんどん被ばくしていくのではないでしょうか。

    児玉教授を信じる事が出来ません。

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  2. 除染し始めるのが、遅すぎたんでしょうか。
    降って、すぐにやれは良かったのに。

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  3. 山内教授の話が素晴らしい
    やはりコンクリ、アスファルトに吸着してしまったセシウムは高圧洗浄機などでは取れないのだ
    除染など荒唐無稽な話である
    子供たちを今すぐ避難させろ!!!

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  4. 問題は、「1〜2μS/hの線量で、どれほどの健康影響が実際に出るのか?」である。自然放射線量の高い地域が世界中にある。とりわけ、ブラジル、イランなどが有名だ。日本にも三朝温泉なども自然放射線量が高い。

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