Monday, October 3, 2011

南相馬市の幼稚園除染:放射線量は下がったか?

東京大学アイソトープ総合センター(児玉龍彦教授)の協力で市内の除染作業を独自に進めている南相馬市ですが、厳しい現実は神戸大の山内教授が福島市渡利地区の除染を評価した結果とどうも同じことになりそうです。

つまり、除染は汚泥を取り除くにとどまり、放射能を取り除く、という本当の意味での「除染」は出来ていない。

南相馬市のサイトに、市職員が7月30日に行った石神第二幼稚園の除染作業について、除染前と除染後の評価をまとめた結果が載っています。

まず「除染作業調書」をみると、

  • 屋上の排水溝は33マイクロシーベルト時の高線量だった(7月30日の作業時点で既に除去済み)

  • 室内の放射線量は1cmより2mのほうが高い

  • 放射線量が下がった箇所は屋上の排水溝、滑り台の下

  • 建物の洗浄は放射線量の低減にはつながらなかった

  • アスファルト素材は高圧洗浄機による洗浄でも放射線量は下がらず

  • 近くの住民から除染作業の水しぶきが敷地内に掛かった、と苦情、連絡が徹底していなかった(というより事前に通知していなかった模様)



そして、実際の放射線量測定地図を見ると、

  • 除染前と除染後の放射線量に違いが見られるのは雨樋の下、排水溝など

  • 除染後、放射線量が上がった箇所(園庭中央、駐車場)

  • 大きな差がなかった箇所(園庭の遊戯具、室内)


室内の放射線量が変わらない、しかも50cm高よりも2m高の放射線量が高い、というのは、まさに山内教授が指摘されるとおり、コンクリートの屋根は高圧洗浄機を使っても除染できないので線量が下がらず、従って室内の、それも高いところの線量が下がらない、ということなのでしょう。

このときの除染はあくまで「緊急除染」ということで行われたはずですが、いわゆる「本格的な除染」というものが一体どのような作業なのかすら、現時点では模索中、というのが本当の所ではないでしょうか。この幼稚園に園児が通いだしているのかどうかは存じません。通っていないことを望みます。

原発20~30キロ圏内の避難準備地域は一斉解除になりました。「除染」とやらが出来ようが出来まいがお構いなしに、住民は帰還することが前提となっています。

国家財政が破綻している、ということは何とも情けないことです。肝心なときに使うお金が無いために、あの手この手で基準を作り基準をいじって本来安全でもなんでもないものを安全と呼び、人を原発の放射線管理区域よりも汚染された広い地域に住まわせ続ける。そのくせ国は、ない金をいくらでも使って(とりあえず5000億円)福島県の産業振興に努めるとか。

(ちなみに福島県の本年度予算は当初予算約9000億、補正予算をあわせると現在約1兆6千億円ほどです。10月3日に新たに2000億円計上されています。)

どうせ借金を重ねてつけを国民に回すのならば、住民の方々を避難させるのにお金を使ってもらいたいと思うのですが、それでは利権の取り合いも談合もできませんからね。面白みがないのでしょう。

3 comments:

  1. さっさと逃げた方が良いですね。もちろん、仕事や学校があって逃げられない人も多いんですが。

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  2. コンクリートやアスファルトに高圧洗浄が効果なし、というのは、個人で庭の除染をしている人ですら何ヶ月も前に分かっていた話で、伊達市などでは、電気カンナで削って吸引機で吸い取ってるんですよね。さらにいうと、チェルノブイリでの除染や廃炉作業から、除染の技術というのはそれなりに研究がされているので、素人の児玉先生が思いつきでやっても、大した効果が挙がらないのは当然でしょうね。
    だいたい、100メートルぐらい飛ぶγ線を出す放射性物質を水ではじき飛ばしたところで、飛ばした先の地面についていれば、周囲の空間線量に変化がないことは、ちょっと考えればわかることだと思うのですが……。
    水しぶきで周辺住民から苦情がきたことも考えると、児玉さんはちょっと思慮が浅い人なんだと思います。国会で吠えてた時も、具体的な案は何もなかったのでしょう。

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  3. 除染に関しておっしゃることは本当にごもっともです。児玉さんを素人、思慮が浅いとおっしゃるのは的外れだと思います。水しぶきで周辺住民から苦情が来たのは児玉さんの思慮の浅さではなく南相馬市の市役所の思慮の浅さでしょう。

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