Thursday, June 30, 2011

フランスのNGO、CRIIRAD日本調査団の暫定報告書日本語訳(パート1)

パート2出ました。)

5月の末から6月にかけてIAEA(国際原子力機関)の調査団が日本に来ていたのとほぼ同時期に、フランスのNGO、CRIIRAD(Commission de Recherche et d'Information Indépendantes sur la Radioactivité、放射能に関する独立研究情報委員会)も日本に調査団を送っていました。

IAEAが政府、東電、原子力産業界と会合を持ち、福島原発などを見学に行ったのとは対照的に、CRIIRADは、放射能被害地域の地方自治体、ボランティア団体などと協力して福島、茨城、東京などで実際に放射能測定を行い、住民に放射能測定方法を教えるワークショップを実施、といった具合に、民間レベルでの情報収集と情報拡散に努めた模様で、その結果を6月29日に暫定報告という形で発表しました。

また、IAEAが日本政府の対応を褒めちぎったのとは正反対で、政府の対応は不適切、不十分だったと非難、100ミリシーベルトまでは健康の害はない、とする政府(長崎大山下教授など)の「キャンペーン」をでたらめだ、と断言しています。

元の英文の報告書はこちら

以下、CRIIRAD報告書からの抜粋 日本語訳パート1:

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2011年5月24日~6月3日
CRIIRAD(放射能に関する独立研究情報委員会)日本調査団 暫定報告書

(前略)
今回の調査で得られた暫定的結果の主なものについては、すでに福島市(5/29に講演、5/30に記者会見)と東京(5/31と6/1に記者会見、6/1に会議出席、6/2に放射線モニタリングに関する講演とワークショップ)でのさまざまな公開イベントで発表してきた。それらの調査結果とわれわれの見解を以下にまとめる。

CRIIRADの研究所に持ち帰った土や食品のサンプルの分析が終わったら、数週間のうちにより詳細な科学報告書を発表する予定である。

(1)放射能の健康被害についての適切な情報と防護策が不足

3月12日、福島第一原発の原子炉と使用済み燃料プールは事故で損傷し、以後そこから膨大な量の放射性物質が空中と海中に放出されている。公式発表されたデータによると、空気中への放出が最も甚大だったのは3月12日から3月30日までの期間である。

日本政府は半径20km圏内に住む住民の避難を指示し、半径20~30km圏内の住民を屋内退避とした。しかしこの対策は不十分だったことが明らかになっている。

1. 20km圏外の住民についても、風向きと気象条件に応じて避難させるべきであった。風や放射性粒子が政府の施策に従ってくれるわけではない。

2. 屋内退避が有効なのは、空気の汚染が短期間で収まって放射線量が小さい場合に限られる。福島第一原発の場合、放射性物質の空中放出は数日にわたって継続した(しかも線量ははるかに低くなったとはいえ現在も続いている)。このような状況下では、屋内と屋外の空気が入れ替わることにより、屋内退避は有効とは言えない。屋内の空気も屋外の空気に匹敵するほど汚染されてしまう。

3. 安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれれるのを減らすため、とくに幼い子供の甲状腺がんリスクを低減させる効果がある。甲状腺がんのリスクについては、チェルノブイリ原発の事故以来よく知られている。効果を十分に発揮させるためには、放射能汚染が始まる数時間前に安定ヨウ素剤を服用する必要がある。日本では、安定ヨウ素剤の配布が適切に実施されなかった。CRIIRAD調査団が日本滞在中に得た証言から判断すると、いくつかの自治体はヨウ素剤の配布に踏み切った。たとえば三春町の町長は3月15日に住民へのヨウ素剤配布を決め、実際に飲むように指示した。福島県の当局はこの取り組みを非難した。いわき市では、担当者が3月12日からヨウ素剤の配布準備を進めていた。市は3月18日に住民へのヨウ素剤配布を実施したが、住民に対しては「当局の明確な指示があるまでは服用はしないように」と命じた。結局、ヨウ素剤の服用が指示されることはなかった。それ以外の地域(飯舘村など)で多量の被曝をした住民に対しては、今に至るまで安定ヨウ素剤は配布されていない。

4. 空中に放出された放射性物質は、放射性降下物として地面に落ち、食物連鎖を急速に汚染する。とりわけ汚染されやすいのが葉物野菜と牛乳だ。日本政府は3月18日になってようやく特別な食品検査プログラムを開始した。初回の検査では数種類の食品サンプルから多量の放射能汚染が確認された。たとえば、3月18日に茨城県で採取されたほうれん草からは、ヨウ素131が1kg当たり54,000ベクレル検出されている。CRIIRADの試算によれば、2~7歳の幼児がこのほうれん草を200g食べれば年間被曝許容量の1ミリシーベルトを超える被曝をする。その後発表された新たな検査結果によれば、飯舘村(福島第一原発から40km北西)で採取した草からキロ当たり250万ベクレルものヨウ素131が検出された。この地域の野菜の汚染レベルは間違いなくきわめて高いものである。注目してほしいのは、2~7歳の幼児の場合、そうした食物をたった5グラム食べるだけで1ミリシーベルトを超える被曝をするということだ。政府は3月12日の時点で迅速に、ガンマ線量計で放射性降下物が検出された高リスク地域(福島第一原発の北100kmにある女川や、南230kmにある東京も含む)の食物を食べないように勧告すべきであった。日本政府はそれをしないばかりか、そうした汚染食物を食べてもCTスキャンを1回受けるのと同程度しか被曝しないと主張した。


(2)汚染地域の住民に対する防護策が不十分

米国エネルギー省と日本の文部科学省が発表した公式の土壌汚染地図を見ると、半径20kmの避難区域圏外でも汚染レベルの高い地域がある。CRIIRADはいくつかの地点で地上1mの線量を計測した。その数値を自然放射線量と比較すると、日立(福島第一原発から南100km)で2~3倍以上、郡山(西60km)で9倍、福島市(北西60km)内の学校や公園を含む複数地域で20倍、飯舘村長泥地区で130倍だった。測定後1年間のあいだに、それぞれの地域でわずか12時間、4時間、等々を屋外で過ごすだけで、住民の被曝量は年間被曝許容量の1mSvを超える。しかも、セシウム134とセシウム137が放出するガンマ線は高エネルギーなので、家や学校やビルの外の土壌が汚染されていると、建物内部の線量も増加する。たとえば、CRIIRADが福島市内の一軒の民家で線量を計測したところ、居間の床上1mでは通常の線量の6倍、子供部屋の畳の上では4倍高かった。この家の場合、福島市内の他地域の線量も勘案すると、適切な防護策が講じられなければ子供たちの被曝量は1年間で約7~9ミリシーベルトに達するとCRIIRADは推定した。この試算は外部被曝だけを計算したもので、汚染食物を摂取したり土壌から放射線粒子を吸い込んだりして生じる内部被曝は含めていない。日本政府は避難の目安としてICRP勧告の年間20ミリシーベルトを採用している。だが、年間20ミリシーベルトという被曝許容量は、下記の理由によりあまりにも高すぎる。

1. ICRPは安全な基準値などないと考えている。将来的にがんで死亡するリスクは被曝量に比例し、「これを下回れば発がんしない」という閾(しきい)値は存在しない。福島第一原発の事故後最初の数日間から数週間のあいだにすでに高レベルの被曝をした人たち(大人も子供も)に対しては、以後の期間は被曝レベルを1ミリシーベルト未満に抑える必要がある。

2. にもかかわらず日本政府は、一般に許容される発がんリスクを20倍も高めるような線量を追加で被曝しても構わないと考えている。住民にこのリスクを受けれさせるため、政府は100ミリシーベルトまでは実際の健康影響がないとするデマを広めるキャンペーンを開始した。これはでたらめである。比較的最近の疫学研究からも、室内でラドンを吸い込むことによる被曝量と肺がんで死亡するリスクとのあいだに直接的な関連が確認されている。このリスクは年間被曝量がわずか2ミリシーベルトでも生じるものであり、これを下回れば発症しないという閾値は存在しない。

3. 年間20ミリシーベルトという基準値は主に外部被曝を念頭に置いて定められたものである。このことは、日本政府がこの数値を読み替えて1時間あたりの許容被曝量を毎時3.8マイクロシーベルト(外部被曝)と定めたことからも明らかである。これはきわめて高いレベルであり、自然放射線量(通常は約0.1マイクロシーベルト時)の約38倍に当たる。日本政府はこの数値を計算するのに、8時間を屋外で、16時間を屋内で過ごすことを前提としており、屋内の線量は屋外の線量に減衰率の0.4を掛けた数値としている。これで計算すると1日あたりの被曝量は54.7マイクロシーベルトとなり、年間被曝量は19.98ミリシーベルトになる。しかしこれ以外に、汚染された土を吸い込んだり、汚染された土を食べたり(とくに子供)、汚染地域で生産された汚染食物を食べたりする内部被曝の線量も加えなくてはならない。文科省は自身のウェブサイトに、子供が校庭にいるあいだの内部被曝の影響は全体の2.5%未満だと記載している。この値は、4月14日に13の学校の校庭で測定した数値を平均したものだが、これが正当な数値であるかどうかは独立機関の科学者によって検証する必要がある。

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パート2に続く


三春町町長さん、えらい!

いわき市は結局配らなかったんですね。福島県は市町村に配った安定ヨウ素剤を返せ、と言っている、という噂も聞きましたが。

(H/T 東京茶とら猫

少量被曝、天使の微笑み


これはすごい。少量の放射性物質を含んだ食品はプレミアが付き、福島は健康ブランドになる、と、この福島県のお医者様はおっしゃっています。そのほかの明るいプレゼンテーションは、こちらのサイトでご覧になれます。

---->http://e.oisyasan.ne.jp/asahi-cl/topics/radi.html

長崎大の山下教授がさぞ喜ばれるでしょう。

Wednesday, June 29, 2011

尿から微量の放射性物質 福島市の子供10人から 仏研究所「内部被曝の可能性」

産経新聞6月30日付け記事

福島県内の保護者らでつくる市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などは30日、福島第1原発事故の影響調査のため福島市内の6~16歳の男女10人の尿を検査した結果、全員から微量の放射性物質が検出されたと発表した。

 放射性セシウム134の最大値は8歳の女児で尿1リットル中1・13ベクレル、セシウム137の最大値は7歳男児で同1・30ベクレルだった。

 尿は5月下旬に採取し、チェルノブイリ原発事故で周辺の子供の被ばく量を調査した経験がある、フランスの放射線測定機関「アクロ研究所」に検査を依頼した。

 アクロのデービッド・ボアイエ理事長は記者会見で「福島市周辺の子供らに極めて高い確度で内部被ばくの可能性がある。事故前の数値はゼロだったと考えられる」と話した。

記事の中の「アクロ研究所」とは、Association pour le Contrôle de la Radioactivité dans l’Ouest、略してACROのことで、フランス政府の認証を受けた放射線測定の機関。先に、江東区の「江東区子供守る会」が江東区のスラッジプラント焼却灰飛散による周辺地域汚染を独自調査した際、更に確認のために測定を依頼したのがこの機関です。

米国ニューメキシコ州ロス・アラモス国立研究所に迫る山火事、敷地まで15メートル

この原子力研究所には、プルトニウムなどに汚染された放射性廃棄物がドラム缶に2万本、野ざらし同然になっています。布のテントのようなものをかぶせているだけとか。火に囲まれてしまうとこのドラム缶が膨張、爆発して、中身に火が付き、放射能が拡散しかねない、と心配されています。

アメリカABCニュース(6月29日)から抜粋:

ロス・アラモス原子力研究所に迫る山火事は既に6万1千エーカー(約2万5千ヘクタール)を焼き、米国環境庁は煙の中に放射性物質がないかを調べるために特別な飛行機を飛ばして測定している。これまでのところ、何も検出されていない。

研究所のチャールズ・マクミラン所長は、「研究所は安全です」とABCニュースにコメント。

研究所敷地内には、放射性廃棄物を詰めたドラム缶が少なくとも2万本あり、このドラム缶は建屋の中ではなく野外で、布製の施設におかれている。

研究所の50フィート(15メートル)まで火の手が迫っているとの情報もあり、住民の不安を取り除くため、ニューメキシコ州のスザナ・マルチネス知事は、「研究所を安全に保つことを最優先にしている、と自信を持って言います」と宣言。

(原文は、"I'm confident in saying that they are committed to making it safe".)

ロス・アラモスの住民1万2千人の殆どは月曜までに避難、研究所にも必要以外の研究員は残っていない。消防隊は、放射性廃棄物置き場まで火の手が行く可能性は低い、と見ている。

知事さんのお言葉ですが、自信を持って彼女が言えば火の手が収まるわけでもなく、研究所員や消防隊が安全を最優先したいと思ってもそうなるかはまったく別物なのですが、「自信」だの「安全」だのをちりばめたコメントを出せば、注意散漫な国民はそういうキーワードだけ聞きますからそれでいいのでしょう。

いずこもおなじ、なつのゆうぐれ。

Tuesday, June 28, 2011

ネブラスカ州フォート・カルフーン原発、福島を髣髴(ほうふつ)とさせる最新情報

情報が小出しに漏れてくる、「安全、心配ない、影響ない」の連呼など、日本政府、保安院、東電からよく学んでいるようです。

米国6月28日現在のフォート・カルフーン原発最新情報:

  1. 原発では、原子炉と使用済み燃料プールにホウ酸を入れている。「これはまったく通常のオペレーションだ」と原発の社長。(CNNニュース

  2. 先日の、原発内の施設は「防水(Waterproof)」になっている、というアメリカ原子力規制委員会の言は、やはり建物の周囲にめぐらせてあるアクアダムおよび土嚢で作った仮の堤防のことだった。(同CNN)

  3. アクアダムが決壊したのは、ブルドーザーを操作していた作業員が誤って穴を開けてしまったため。また、ダムが決壊した際に、非常用ディーゼル発動機用のガソリンが入った容器などが水に流されてしまった。

  4. 使用済み燃料のドライキャスクは、敷地内の洪水保護区域には入っていない。「密閉して、しっかりボルトで固定しているので安全。」(アイオワ・インデペンデント紙

  5. 原子炉は燃料交換のために停止しているが、原子炉内に燃料の3分の2以上が残ったまま、という、ネット上の「風評」。

1の、原子炉にホウ酸を入れている、と言うことは、最後の5の「風評」が風評でもなんでもなくて、本当だったことを示していると思われます。原子炉に核燃料がないなら、ホウ酸を入れた水で冷却する必要など、ないはずですから。この「風評」は、6月の10日過ぎにインターネットに出始めたとたん、こんなうそを広めるとはけしからん、という記事がすぐさま出、悪質なデマと言うことで落ち着いていました。まるで、福島第1原発は大丈夫、放射能は大したことはない、影響はない、を連発し、その線に沿わない情報を「風評」と称して押さえつけ続けた日本の3月下旬の政府、御用学者、御用マスコミと同じ。

2の、原発の建物が土嚢を積んで「防水」というアメリカ政府機関(原子力規制委員会)の発言も、何とも日本的。そういえば、東電は入浴剤をトレーサーに使っていたっけ。この「防水」が土嚢だったことを聞いたとき、なぜか東電の入浴剤を懐かしく思い出しました。

4番目の使用済み燃料のドライキャスクの話も、これは文字通り話半分なのです。ドライキャスクにしてあるのは地上部分。その地下40フィート(約12メートル)に使用済み燃料プールがあり、そこにはネブラスカ州の原発から出た20年分の使用済み燃料が保管されています。そこがほぼ一杯になってしまったので、しょうがなく地上部分にドライキャスク保管施設を作った、ということのようです。(Wikipedia)

本来この使用済み燃料は、ネバダ州のYucca Mountainに最終処理場を造ってそこに移管するはずでしたが、この計画を現在のオバマ政権が潰し、オマハ電力はフォート・カルフーン原発の施設で半永久的に保存する、と声明を出しています。原子力規制委員会は、ドライキャスクでの原発内の保存で何の問題もない、としています。

5番目の、点検中の原子炉に核燃料が入っている、というのは、福島の5号機、6号機と同じですね。入っている、ということ自体ではなく、入っていることをすぐに開示しなかった、というところが。

しかし、前にも言いましたが、この洪水は上流のダムからの計画的な放水のために起こっているものです。十分に準備できていたはずですが、この体たらく。

何よりも残念なのが、日本政府、東電の対応と殆ど変わらないアメリカ政府、電力会社、原発関係者の対応です。日本の有様を見れば、とにかく大騒ぎしてできるだけ情報を出して、やりすぎでも良いから洪水の準備を軍隊を動員してでも行う、大したことがなかったらそれはそのときで、大したことがなくてよかったよかった、といっておけばよい。それなのに、アメリカの対応は日本と同じで、情報は押さえ、どうしても出てしまったらそれをうそだ、「風評」だ、と攻撃し、どうしてもばれてしまったら「心配ない、対策は万全だ」、と言い、その対策が失敗したら「最初から計算済み」と言い、万一惨事に至ったら「想定外」と言う。

フォート・カルフーン原発は惨事に至ってはいませんが、上流のダムは土のダムだそうで、一つ決壊すると連鎖反応的に決壊する可能性がある、とのことです。

フォート・カルフーン原発では、これ以上水位は上がらず、原子炉も使用済み燃料プールも安全、と言っています。電力が止まればそれまでなのは、福島と大差があるとも思えませんが。

CNNニュースビデオです。短いビデオの後半は、CNNのレポーターが「あれが破けたアクアダムか」とか、ぶつぶつ言っています。本来ビデオで出すつもりではなかったのでは。土嚢の向こう側へ水をくみ出す様子が見れます。それと、原発の社長。かなり神経質になってはいる、と見ました。

東電株主総会、6時間でやっと終了

Twitterで中継していたジャーナリストのTweetをまとめたものが出ています。

http://togetter.com/li/155198


『二番目の質問者は「原子炉内で死ね!」と怒鳴り、場内は騒然。東電内のプレスルームでは失笑が。』

というのは、岩上安身さんのTweet

私は「失笑」はしません。質問者の気持ちは、よく分かります。

東京江戸川区の家庭ごみ焼却工場の灰から高濃度放射性セシウム検出

産経新聞6月27日の記事

東京都と東京23区清掃一部事務組合は27日、一般家庭ゴミなどを処理する23区内の清掃工場のうち、江戸川清掃工場で発生した焼却灰から、1キロ グラムあたり8千ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたと発表した。同組合によると、灰はフィルターで集められ、運搬時などは密閉しているほか、施 設周辺の空間放射線量の測定結果からも、外部環境への影響はないとみている。

 都などによると、一般廃棄物の焼却灰の放射線量を測定したのは福島県をのぞく自治体では初めてとみられる。

  環境省は今月23日、「福島県内の災害廃棄物処理の方針」として、1キログラムあたり8千ベクレルを超える灰については一時保管とし、8千ベクレル以下に ついては一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)での埋め立てが可能とした。福島県外の指針は示されていないが、都はおおむねこの基準に沿って処理する 一方、国に、福島県外での取り扱い方法を策定するように要請した。

 清掃工場から発生する灰には、焼却後に焼却炉の中にたまる「主灰」と、焼却時にフィルターなどに集められる「飛灰」がある。

 今回、1キログラムあたり8千ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたのは江戸川清掃工場の飛灰で、9740ベクレル。同工場の主灰や、ほかの清掃工場の飛灰、主灰は8千ベクレルを下回った。

 このため、江戸川清掃工場の飛灰は当面、工場内の放射能を遮れる施設で一時保管される。それ以外の灰については、最終処分場に埋め立てるという。

 都では、今後も灰を継続して調査するとともに、多摩地域の市町村にも調査を要請する。

さて8000をどれだけ超えているのか?記事には書いてありませんが、東京23区清掃一部事務組合のサイトに行くと、調査結果がアップされています。

江戸川清掃工場の飛灰は、キロ当たり9740ベクレルの放射性セシウム(134と137の合計)が出ています。その他の工場でも、3000、4000、6000台の数字が出ているところが続出、半減期が8日のヨウ素131まで出ている工場も4箇所あります。(3ページ)


記事にもあるとおり8000ベクレルを超えていない主灰、飛灰は福島県に倣って埋め立て(なんで汚染の激しい県に倣うのか、よく分かりませんが)、超えた江戸川の飛灰は施設内の「灰貯蔵槽」に一時保管とのこと。格別放射能を遮断するようにも思われませんが、記事によると遮断することになっています。

また、産経の記事では「環境に影響はない」ことになっていますが、5ページ目の表を見ると、江戸川区の場合、焼却場の周辺の空中放射線量はかなり高くなっています。



江戸川清掃工場は千葉県との県境、川に面しており、すぐ隣には保育園、近くには小学校が2つあり、工場、住宅が混在する地域です。(グーグルマップ参照)


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3月11日の福島第1原発事故以来、空中放射線量は安全なレベルです、と言って東京都が測っていた新宿区百人町の屋上の測定値だけ出していた江戸川区でしたが、さすがに腰を多少は上げたようで、6月18日から区内独自検査を行うことにしたようです。

先に東京都が江戸川区4箇所で行った測定の結果は、都が出していた値の2倍以上の0.13マイクロシーベルト時を計測した箇所が2箇所、もう2箇所も都の値を上回っています。

それでも、江戸川区が使っている年間被曝量算定の式は、屋内(木造家屋)に入るだけで放射線が4割に減る、という前提で、測定結果は年間1ミリシーベルトには及びませんので健康に影響はありません、としています。

Monday, June 27, 2011

保安院がとっくに発表していた、放射性ストロンチウム、プルトニウムの大量空中放出量試算

去る6月6日、原子力安全保安院は「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」と言う題の文書を発表し、今まで福島第1原発から大気中に放出された放射性物質の量を4月に発表したときの2倍、77万から85万テラベクレルに引き上げましたが、その文書の中に、大気中に放出された物質の種類の一覧表が出ています。文書の13ページ目です。

これを見ると、放射性ストロンチウム、プルトニウムが大量に放出された、と保安院はモデル化しており、特に放射性ストロンチウムは2号機、3号機で、1号機とは1桁違う量が、プルトニウムはMOX燃料の3号機ではなく2号機で、他機とは2桁違う量が出た、とされています。

保安院が放射性物質の放出量を2倍にしたのは、2号機と3号機からの放出を少なく見積もっていたからだ、との説明でしたが、その低く見積もっていた中にはしっかりストロンチウムもプルトニウムも入っていたわけです。

ストロンチウム89
1号機:8.2x10の13乗(82,000,000,000,000)ベクレルまたは82テラベクレル
2号機:6.8x10の14乗(680,000,000,000,000)ベクレルまたは680テラベクレル
3号機:1.2x10の15乗(1,200,000,000,000,000)ベクレルまたは1200テラベクレル
合計:2.0x10の15乗(2,000,000,000,000,000)ベクレルまたは2000テラベクレル

ストロンチウム90
1号機:6.1x10の12乗(6,100,000,000,000)ベクレルまたは6.1テラベクレル
2号機:4.8x10の13乗(48,000,000,000,000)ベクレルまたは48テラベクレル
3号機:8.5x10の13乗(85,000,000,000,000)ベクレルまたは85テラベクレル
合計:1.4x10の14乗(140,000,000,000,000)ベクレルまたは140テラベクレル

プルトニウム241
1号機:3.5x10の10乗(35,000,000,000)ベクレルまたは350億ベクレル
2号機:1.2x10の12乗(1,200,000,000,000)ベクレルまたは1.2テラベクレル
3号機:1.6x10の10乗(16,000,000,000)ベクレルまたは160億ベクレル
合計:1.2x10の12乗(1,200,000,000,000)ベクレルまたは1.2テラベクレル
(合計は、2号機のプルトニウム241の放出が突出しているので、残りは切り捨てられていますね。)

プルトニウムは他にも238、239、240が出ており、いずれも2号機が突出して2桁違います。

保安院の計算は、溶けた燃料(と言っても他にも制御棒や炉内の計器などが溶けたものが混じっていますが)が原子炉圧力容器の下部で冷やされている、という前提でなされています。溶けた燃料がとっくに圧力容器からも、格納容器からも出てしまっている、ということになったら、どれだけこの計算が変わるのか、私には分かりません。

13ページ目のコピーです。赤線で囲ってあるのが、ストロンチウムとプルトニウムです。



週刊誌アエラには載ったそうですが、何の注目も引かなかったのは何故なのでしょう?

それと、忘れてならないのは、これは空中に飛散した分だけ。福島第1原発内に溜まっている高濃度汚染水11万トンの中には、72万テラベクレルの放射性物質(ヨウ素とセシウム)が入っています。大気に出たのとほぼ同量の放射性物質が水の中にあるのです。2号機の海側ピットの「亀裂」(というより、普通の放出パイプに見えましたが)からでた汚染水の放射性物質は確か4000テラベクレルちょっと。単純に全部合計すると、150万から160万テラベクレルとなり、チェルノブイリの10分の1から一挙に4分の1以下になります。

(H/T 九州東部のおじさん、東京茶とら猫)

Sunday, June 26, 2011

原発・放射能汚染報道:更新ごとに重要な情報が消えてゆく記事

以前は読売など大手新聞社でそのような事例をいくつも見ましたし、ご紹介もしましたが、共同通信でも起こっていることを遅ればせながら発見。

6月26日午後8時42分(リンクと文章はこのサイトからです)。赤字部分が、更新後の記事から消えた部分です:

『広島、福島の放射線研究者らが福島県飯舘村と川俣町の住民計15人の尿を検査したところ、全員から放射性セシウムを検出し、最大で約3ミリシーベルトの内部被ばくをしたとみられることが26日、分かった。

 『両町村は福島第1原発から30~40キロの距離。調査した広島大の鎌田七男名誉教授(放射線生物学)は「今後、汚染された野菜などを食べなければ心配はないが、この地区に住み続けるのは難しい」と指摘している。

 『鎌田名誉教授と医療生協わたり病院(福島市)の斎藤紀医師らが5月上旬と5月末の2回、両町村で4~77歳の住民15人から採尿し、原発事故後の行動を調査した。』

6月26日午後10時46分の、現在共同通信のサイトにある記事。どれだけの内部被曝をしたのか、検査対象の住民の年齢が削除され、そのかわりに新しい情報が巧みに入っています。青字が新しく付け加えられたところです。どうです、ニュアンスが変わるでしょう?政府は正しく、原発が収束しさえすれば住めて、大丈夫、というような。原発事故が収束しても積もって浸透した放射能はどうするんでしょう?また、更新バージョンでは、教授が政府の方針に理解を示したことになっていますが、実際したんでしょうか? 

『広島、福島の放射線研究者らが福島県飯舘村と川俣町の住民計15人の尿を検査したところ、全員から放射性セシウムが検出され、内部被ばくをしたとみられることが26日、分かった。

 『両町村は福島第1原発から30~40キロの距離。調査した広島大の鎌田七男(かまだ・ななお)名誉教授(放射線生物学)は「今後、汚染された野菜などを食べなければ心配はないが、原発事故が収束しなければこの地区に住み続けるのは難しい」として、これらの地域を計画的避難区域とした政府の方針に理解を示した。

ネブラスカ州フォート・カルフーン原発の仮設ゴム製ダムが作業員ミスにより収縮、敷地内60センチの浸水

原子炉建屋は防水になっており、また、建屋などに水が近づくには約2メートルの高さのもう一つのダムを超えなければならないので、まず大丈夫とのことです。

もう一つのダム(Berm)って、下の写真を見る限りもしかして単に土嚢のことかもしれませんが。

6月26日付け米国ロイター通信のニュース2つ付き合わせると、

米国ネブラスカ州で、ミズーリ川の計画洪水のため浸水の危機に瀕しているフォート・カルフーン(Fort Calhoun)原発で、6月26日日曜日の未明(現地時間午前1時25分)、作業員のミスにより2000フィート(約600メートル)に及ぶ仮設のゴム製のダム(膨らませて水を入れる、アクア・ダムと呼ばれるもの)から水が抜ける事故があり、そのため川の水が原発敷地内に入り込みました。

原発を運転するオマハ公共電力のスポークスマンによると、原子炉建屋などの施設には影響がなく、水が施設に到達するには7フィート(2メートル強)の高さのもう一つのダムを超えない限り心配はない、とのことです。

米国原子力規制委員会によると、カルフーン原発の建物は防水になっている、とのことです。ゴム製のダムが収縮して水が敷地内に入ったため、作業員が非常ディーゼル発電機を作動させましたが、通常の電力供給は同日午後には復旧しました。

どこかでいつも聞いているようなせりふですね。月曜日には、米国の原子力規制委員会のヤッコ委員長がネブラスカの原発2箇所を訪問するそうです。

また、ロイターの記事によると、クーパー原発の付近の住民は「まったく心配していない」、「これ以上水位が上がるとは思えない」、「原発の人たちから説明を聞いているので安心」、「避難する予定もない」とのことです。

元の英語記事リンク:

http://www.reuters.com/article/2011/06/26/us-usa-nuclear-plant-idUSTRE75P21X20110626

http://www.reuters.com/article/2011/06/26/us-flooding-nuclear-idUSTRE75P1VJ20110626


フォート・カルフーン原発は4月から燃料交換のために停止中、クーパー原発は現在も正常どおり稼動しています。フォート・カルフーン原発の使用済み燃料プールにはクーパー原発からの使用済み燃料も貯蔵している、とのことですが、この使用済み燃料プールは福島原発などとは違って地上にあるそうです。まあ、水があふれて建屋に入っても、使用済み燃料だけは確実に冷やせますね、きっと。あ、写真を見ると、ドライキャスクか。じゃあ冷やす必要もないのですね。安心安心。

下の写真は、フォート・カルフーン原発の洪水対策の写真とのことです。このフランスのサイトから。(H/T Dominique)








ドイツ気象局放射能拡散予測6月26日~28日

東北、北海道、シベリアまでかかりそうです。関東以西はまず安全のようです。

Saturday, June 25, 2011

福島第1原発沖3キロの海底土から放射性ストロンチウム検出

この東電の6月25日の記者会見発表を記事にしてサイトに乗せたのは、日本共産党の「赤旗」。他の大手の新聞(読売、朝日、毎日、産経)、東京新聞でさえ、オンラインでチェックした限りは出ていませんでした。

海底土からは既に広範囲にわたって(宮城沖から千葉沖まで)放射性セシウムが検出されていますが、ストロンチウムについては文科省は沈黙を続けていました。ストロンチウムは原発の敷地外の土壌、海水から既に検出されていますが、海底土から検出されたのはこれが初めてです。

6月26日付け赤旗記事

海底土にストロンチウム

福島第1沖合 初検出 通常の258倍


 東京電力は25日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)沖合2カ所の海底土から事故に伴って放出された放射性物質のストロンチウム89と同90が検出されたと発表しました。検出された量は、通常の値を大きく上回っていました。これまで、事故由来のストロンチウム89と同90は、同原発敷地内と周辺の土壌や植物、海水などから検出されていますが、海底土から検出されたのは初めてです。

 検出されたのは、いずれも福島県の南相馬市小高区沖合3キロメートルと、楢葉町岩沢海岸沖合3キロメートルの地点で6月2日に採取した海底土。小高区沖合3キロメートルの地点では、半減期(放射能が半分に減るのに要する期間)が約51日のストロンチウム89が海底土1キログラム当たり140ベクレル、半減期が約29年のストロンチウム90が同44ベクレル含まれていました。

 岩沢海岸沖合3キロメートルの地点では、ストロンチウム89が海底土1キログラム当たり42ベクレル、ストロンチウム90が同10ベクレル含まれていました。

 1999年度から2008年度にかけ福島第1原発周辺の海底土から検出されたストロンチウム90は海底土1キログラム当たり検出限界以下~0・17ベクレルの範囲でした。小高区沖合3キロメートルの海底土にはストロンチウム90が少なくとも約258倍含まれていたことになります。

 ストロンチウムはカルシウムと性質が似ていて、魚などが摂取すると骨などに蓄積します。ストロンチウム90は半減期が長く、食物連鎖などで濃縮されたものを人間が体内に取り入れた場合、骨がんなどの原因になることが懸念されています。

 福島第1原発からは、タービン建屋地下などにたまった高濃度放射能汚染水が4月と5月に海へ流出しており、その中には大量のストロンチウム90が含まれていたことがわかっています。2カ所の海底土に限らず、さらに範囲を広げて調査を行う必要があります。

Thursday, June 23, 2011

NHK:福島県、0歳児から中学生までの子供全員に線量計配布へ

ただし、これは「ガラスバッジ」。放射線の量が計測でき、放射線量の高いところでは警告音を発することの出来る「線量計」ではありません。悲しいことに、NHKのニュースでは、お母さんの一人は福島県が配布するのは後者だと思っていらっしゃるようです。

NHKオンラインの6月24日付けニュースです。

原発事故による子どもへの放射線の影響を防ごうと、福島県は、県内の0歳児から中学校までの子どもおよそ28万人を対象に線量計を配布することを決めました。

福島県は23日、原発事故による子どもへの放射線の影響を防ぐため、「子どもを守る緊急プロジェク ト」という取り組みを始める方針を決めました。この中で、県内の0歳児から中学校までの園児や児童・生徒などおよそ28万人を対象に、積算線量計を配布す るとしています。また、校庭などの表面の土の入れ替えや、校舎にエアコンなどの空調設備を設置する市町村への助成なども盛り込まれています。子どもへの線量計の配布は、福島県内ではすでに福島市や伊達市、それに川俣町が、小中学校や幼稚園などに通う子どもに配布したり、配布を決めたりしていますが、県では こうした市町村については必要な経費を助成することにしています。福島県の方針について、線量計の配布が行われていない郡山市の小学生の女の子の母親は、 「線量計は欲しいと思っていましたが、高くて買えなかったので、とてもありがたいです」と話していました。

このお母さんには残念ですが、この「線量計」は外界の放射線を測ってくれるものではありません。福島市、伊達市、川俣町が園児、生徒に着用させるものと同じものだとしたら(多分同じでしょう、ニュースをみると)、これは「線量計」ではなく、「ガラスバッジ」と呼ばれるものです。本来、放射線管理区域で働く人々のためのものです。

日本では千代田テクノルという、東京文京区に本社を持つ会社が製造しています。こういうものです。川俣町で配られたのを見ると、GI型のバッジのようです。

多分お母さんが高くて買えなかったのは、放射線の高いところに行くと警告音を発し、実際に何マイクロシーベルトか計測できる、このような線量計でしょう。確かに数万円から、10万円を超えるものもあります。

ガラスバッジはせいぜい一つ3000円程度、見てもそこに数字が表示されるわけではなく、放射線の高いところに行っても警告音ひとつ鳴るわけではなく、ただ積算外部被曝量を記録するためのものです。一定期間後(通常は1ヶ月)回収され、製造会社がデータを取り出し報告書を作り、報告書をお客様、この場合は福島県に提出する。県や自治体がそれを学校に通達するのかどうか、学校がそれを保護者に伝えるのかどうか、NHKからの短いニュースでは分かりません。

このバッジをつけて放射線の影響をどう防げるのか、NHKに聞いて見たいものです。これは、被曝量を記録するものです。被曝を防ぐものではありません。

お母さん、ありがたがる必要はどこにもありません。

もうひとりのお母さんは、「そんなもの配ってもらうよりも放射能そのものをどうにかしてもらったほうが。」

その通り。ただし、国や県、東電がどうにかできるとも思われませんが。記録だけはとっておこう、というわけでしょうか。

この福島児童への線量計、否、グラスバッジについては、「院長」先生も既にブログでお書きになっています。

Wednesday, June 22, 2011

オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)放射性ヨウ素拡散予測は中止に

ノルウェー気象庁に続いて、オーストリアのZAMGも放射能拡散予測のアニメを中止。どうも出ていない、と思っていたら、6月の初めでやめていたようです。

ZAMGのフクシマページに出ているメッセージによると、

「日本の空中放射線量が減少しているので、福島周辺の気象予想、放射能拡散予測は中断させていただきます。また状況が変われば、すぐに再開します。これまで私たちのサービスを信頼してくださってありがとうございました。ZAMG福島タスクフォース」

とのことです。

事故から3ヶ月以上経ち、放射線は地上に堆積した放射性核種から出ています。高崎ステーションで検出する空中に飛散している核種を計測しても、日本における放射能汚染の実態は分からないのは確かでしょう。

とはいえ、ずっと3月から頼りにしていたのに、ついにZAMGにも見捨てられたようなさびしい気がするのは私だけでしょうか。

残るはドイツ気象局のみ。彼らの6月23日から25日の予測です。23、24日は太平洋側に出ますが、25日は内陸にかかっています。

『何を今更』シリーズ:九大・東大、放射性物質が海を越え米欧に達した状況再現

ノルウェー気象局、オーストリアZAMG気象研究所、ドイツ気象局が福島第1原発直後の3月から「包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)」の世界の観測地点からのデータを基に出していた放射能拡散予測図とそっくりな予測図を、九州大学と東京大学がスーパーコンピュータを使って計算、モデル化し、6月22日に公表したそうです。

「研究グループは今回の手法を使えば、原発事故の際の放射性物質の動きを広範囲にわたり予測するのに役立つとみている。」

何を今更。3ヶ月遅いって。こんな手遅れニュースが今更ニュースになったのは、要するに「日本の大学の研究所がスパコンでやったからすごい」からなんでしょうか?

6月22日付け日経新聞記事より:

九州大学と東京大学は東京電力福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質が、太平洋を越えて海外に達した様子を計算モデルを使って再現し22日発 表した。放射性物質は東日本を通過した低気圧に伴う上昇気流で高層に巻き上げられ、偏西風に乗って東へ運ばれた。地表付近では原発近くで南東の風が吹き、 北西方向に放射性物質が広がった。

研究グループは今回の手法を使えば、原発事故の際の放射性物質の動きを広範囲にわたり予測するのに役立つとみている。

福島第1原発からは3月14~16日に起きた水素爆発などにより放射線物質が大気中に放出され、空気中の微小なちりなどに付いて広がったとみられる。研究グループは気象庁や米海洋大気局(NOAA)の気象データをもとに、大気汚染予測の手法を応用し、九大のスーパーコンピューターで放射性物質の拡散の仕方や濃度を解析した。


再掲:年間自然放射線量2.4ミリシーベルトの欺瞞

ずっと昔(ちょうど2ヶ月前)に出したポストですが、最近の内外の記事でいまだにいわゆる日本の放射線『専門家』が日本の自然放射線量は年間2.4ミリシーベルトだ、と普通人に言い聞かせているのが目に留まったので、再掲します。

日本の自然放射線量は、外部被曝、内部被曝合計で年間平均1.4ミリシーベルトです。それに加えて、法律で、被害よりも利益のほうが上回ると思われるので、医療用などの放射線被曝を年間1ミリシーベルトまでは認めよう、というものです。この追加の1ミリシーベルトは、レントゲンなどを取らなければ被曝もしないわけで、任意の被曝をここまでは我慢できる範囲だと認める、ということでしょう。

しかも、この年1.4ミリシーベルトも日本国内で大きなばらつきがあり、主に地層の違いで東北、関東ではこれより低い地域が多く、関西、四国、九州はこれより高い地域が多くなります。

今までずっと年間1ミリシーベルトの自然放射線量の土地で適応して暮らしてきた人たちが、専門家がそう言うから今年の3月以降は年間10ミリシーベルトまで、100ミリシーベルトでも大丈夫、というのは、立派な根拠があるんでしょうね。知りたいものです。

以下、再掲の4月22日付けブログポスト。
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何時の頃からか、多分福島第1原発から「低濃度」汚染水(ちっとも低濃度じゃなかったんですが)を排出しだした頃から、年間自然放射線量が「2.4ミリ シーベルト」と報道されるのがもっぱらとなっているようです。汚染水垂れ流しを発表した東電、また、枝野官房長官の言にも、「汚染された魚、海草を1年間 食べ続けても600マイクロシーベルト、年間自然放射線量の4分の1にしかならない」、つまり、年間自然放射線量は2.4ミリシーベルトということになり ます。

ちょっと待て。確か日本の年間自然放射線量はもっと低かったはず。でも、現在、テレビ、新聞のニュースでは年間2.4シーベルトを普通でも浴びる、と当たり前のように言っています。

ところが、よくよく見ると、これは「世界平均」なのです。

そこで、日本の年間自然放射線量を探してネットをさまよったところ、中部大学武田先生の言で1.5ミリシーベルト、更に検索で、茨城県つくば市の放射線科学センターにたどり着きました。

結論から言うと、日本平均年間自然放射線量は1.4ミリシーベルト

センターの出している、「暮らしの中の放射線」41ページには、こうあります:

「自然放射線の量

「人 間が一年間に被ばくする自然放射の量はどのくらいでしょうか。1988年国連科学委員会の報告では全世界で人類が平均的に被ばくしている自然放射線は下の 図のように推定されています。全世界平均では年間2.4ミリシーベルトですが、日本における値は1.4ミリシーベルト(1988年10月推定値)となって います。」

日本の年間自然放射線量は1.4ミリシーベルト、世界平均のわずか58パーセントの放射線量なのです。センターによると、

「大地からのガンマ線が高いところとして、外国ではインドのケララ地方やブラジルの一部が知られています。この地域では年間数十ミリシーベルト程度と、なんと日本の数十倍もの値が報告されています。」
日本がこのような地域を含む世界各国の値と合算されて平均値にすると、世界平均で年間2.4ミリシーベルトとなる、というわけです。

日本平均の1.4ミリシーベルトという値は、宇宙線を含む外部被曝と食物、空気などから体内摂取する内部被曝の両方を含みます。内部被曝が全体の3分の2、 外部被曝が3分の1という内訳のようです。放射能(ラドンなど)を吸い込むことによる内部被曝が全体の5割強を占めています。

世界平均ではなくて日本平均でみると、600マイクロシーベルト相当の放射線を福島第1原発で汚染された魚、海草で取り込んだとすると、年間自然放射線量の4分の1、25パーセントではなく、43パーセントです。

ところが、この1.4ミリシーベルトですら、東北、関東の地域にとっては多分高すぎるのです。センターによると:

「自然放射線の量は地域によってどのくらい差があるのでしょう。日本各地の宇宙線と大地からの放射線の量を下の図で見てみましょう。これには、ラドンなどの内 部被ばくは含まれていません。関西や中国地方は放射性同位元素を多く含む花崗岩地帯が多いので大地からのガンマ線の量が多く、逆に、関東平野は火山灰地の ためガンマ線の量は少なくなって
います。」

あああまったく。どうせここまでやるんだったらラドンも含めてよ!0.99ミリシーベルト以下、と言うのも、どれくらい以下なのか、分からないじゃないですか、まったく。

そこで、もう一箇所チェック。各都道府県別の自然外部被曝の数字を見つけて、それを3倍して全体の数字を比べて見ようという試みですが、果たして。

「文部科学省/放射線計測協会が簡易放射線測定装置「はかるくん」を貸し出して全国の自然放射線の計測を行い都道府県別の平均値が公表されている」、というリンクは日本地質学会からです。

放射線計測協会「はかるくん」の測定結果は、

福 島県を見ると、0.037マイクロシーベルト/時です。一年で、0.037x24x365で、324.12マイクロシーベルトになります。これを自然外部 被曝として、全体の年間自然放射線量はこれの3倍とすると、972.36マイクロシーベルト、または0.972ミリシーベルトとなります。

高いのは岐阜県、0.055マイクロシーベルト/時。同じように年間自然外部被曝量を計算すると、0.055x24x365で、481.8マイクロシーベルト、これを3倍して、1.45ミリシーベルト。

更に、日本地質学会の計算した日本の自然放射線量(地 上1メートルとあるので、自然外部被曝分の放射線量だと思われます)は「はかるくん」の実測より更にばらつきは大きく、少ないところで0.00581マイ クログレイ時(マイクロシーベルトと同等、との但し書き)、これは年間相当でわずか50.9マイクログレイ(マイクロシーベルト)の自然外部被曝量。多い ところは0.127マイクログレイ時、年間相当で1.113ミリグレイ(ミリシーベルト)の自然外部被曝。つまり、外部被曝だけでも日本の中で20倍以上 も差が出るのです。

全体の年間自然放射線量をここでも単純に自然外部被曝量の3倍とすると、少ないところで年間152.7マイクロシーベルトまたは0.153ミリシーベルト、多いところで3.339ミリシーベルトとなります。

概して東日本、東北は低めの値、関西四国九州は高めの値です。

これをひとくくりにして、日本の平均自然放射線量はは1.4ミリシーベルトとしているわけです。

ただでさえはるかに日本より高い世界の平均年間自然放射線量を基にして、現在の日本での許容量を推し量ろうとするのは、多分間違いでしょう。日本の自然放射線量はもともと世界平均の6割以下、日本の中でも地域差が激しいのです。

放射線を浴びると放射線への耐性が付く(Hormesis、ホルミシス効果)という考えを提唱する研究者もいますが、多くの研究者に指示されている学説とは言い難いようです。

まあ、こんな「学説」もあるようですから、ホルミシス効果もあるに違いありません。(皮肉です、念のため。)

「放 射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。これは明確な動物実験でわかっています。酒飲みの方が幸か不幸か、放射線 の影響少ないんですね。決して飲めということではありませんよ。笑いが皆様方の放射線恐怖症を取り除きます。(長崎大学大学院医歯薬学科薬学総合研究科長 山下俊一、福島市2011年3月21日14時- 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」講演会)」

Monday, June 20, 2011

「測ってガイガー」サイト

ガイガーカウンターを持っていない人が、持っている人に放射線の測定を頼むことの出来るサイトです。

http://hakatte.jp/

サイトには最近の計測値も出ています。

6月21日3時計測 千葉県市川市東菅野1丁目 0.18μSv/h by sonntag
6月21日3時計測 千葉県市川市菅野6丁目 0.12μSv/h by sonntag
6月21日1時計測 千葉県松戸市小金清志町2丁目 0.12μSv/h by sonntag
6月15日20時計測 東京都目黒区大橋2丁目 0.11μSv/h by hakase
6月21日0時計測 東京都世田谷区経堂1丁目 0.08μSv/h by kenichio
6月21日1時計測 千葉県松戸市小金原7丁目 0.24μSv/h by sonntag
6月21日1時計測 千葉県柏市増尾8丁目 0.14μSv/h by sonntag
6月21日0時計測 千葉県松戸市六実6丁目 0.18μSv/h by sonntag
6月9日17時計測 東京都文京区音羽2丁目 0.13μSv/h by okuma
6月8日18時計測 東京都台東区上野公園 0.23μSv/h by okuma

福島の放射性がれき、混ぜて燃やせば怖くない

と、どうも環境省は決定したようです。

朝日新聞の記事だけ見たのでは分からないのですが、さっと流している読売に出ていました。

まず概略を朝日から:

環境省は19日、福島第一原発の事故の影響で放射性物質が付着したおそれのある福島県内のがれきの処理方針をまとめた。汚染物質を除く設備を備えた焼却炉で処理し、焼却灰は放射性セシウムが1キログラム当たり8千ベクレル以下であれば埋め立て処分できるなどとしている。

 同省は、今週中にも福島県に通知する方針。がれき処理を中断している市町村は、早ければ今月中にも処理を再開するとみられる。

 会津地域と、中通り地域の10町村については、環境省などの調査で放射線量が他県と変わらないとして、通常の処理を認めている。福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域と一部20キロ圏外にある計画的避難区域については、処理方針が固まっていない。

 焼却灰に処理基準を設けて処理を進めるのは、これ以外の27市町村。「セシウムの放出をほぼ100%防げる」という除去設備を既に備えた県内の施設でが れきを焼却する。焼却灰は、8千ベクレル以下であれば埋め立て場所を記録するなどして県内の最終処分場に埋め立てる。8千ベクレルを超えれば最終処分場な どで一時保管する。その後の処理は未定だが、同省は福島県内に新設する最終処分場に埋め立てる方向で検討している。

 除去設備に付いた灰は、セシウムが濃縮されやすい性質を持っているため、すべて一時保管する。コンクリート片などの不燃物は、埋め立て処分する。実際の処分にあたっては焼却灰や排水などを測定して、安全性を確認するという。

ところが読売のこの一言:

同省では、がれきと他の廃棄物を混ぜて燃やした場合、この基準を超えるケースは少ないと見ており、大半の焼却灰は埋め立てられることになった。

混ぜるんです。基準を超えさせないように。

政府はこの手をあらゆる放射能汚染に使うつもりなのでしょう。まず基準を緩く作り、基準をはるかに下回るものと混ぜて、全体を基準以下にして、「安全宣言」を出す。

なしくずしにこんなことをやっていると、本当に汚染列島になってしまいます。

Sunday, June 19, 2011

テレビ朝日「もんじゅドキュメンタリー」


増殖炉事故 [もんじゅ] 現場で何が・・・内部取材 by sean2010jp

フランスで検出の放射性セシウム茶、県は「静岡産とは限らない」と強弁

フランスで、静岡からのお茶から1000ベクレル・キロを超える放射性セシウムを検出したニュースはこのブログでもいち早くお知らせし、静岡県の反応については英語ブログに出しましたが、そこに寄せられたコメントで、あ、と思ったコメントが一つあったので、皆様にもお知らせしようと思います。

静岡県の反応は、6月18日付け朝日新聞にあるように、まずオクスフォード博士である川勝平太知事が、「仮に製茶の数値が1千ベクレルだとしても飲用茶にすれば10ベクレル程度になる。飲んでもまったく問題ないと考える」とのコメント、更に、県の経済産業部が、「フランスで検査対象となった茶の最終加工地が「静岡」だった可能性はあるものの、県内では他県産や海外産の茶葉を加工して出荷する場合もあり、茶葉自体がどこで生産されたものかはまだ分からない」とのコメント。

この県のコメントについて、英語ブログの読者が、

「まったく粗末な言い訳。おまけに、今まで「静岡茶」と言って世界に売ってきたお茶が実はそうじゃなかった、と公然と認めているわけだ。それって詐欺じゃないか?」

放射能の「風評」(実際放射能が出ているんですが)を打ち消すためには詐欺を認めることもやぶさかでない(というか気がついていない)静岡県でした。

Saturday, June 18, 2011

福島第1原発2号機原子炉建屋の二重扉が開きます

日本時間の6月19日午後8時から6月20日午前4時まで。

東電のTweetより:

■お知らせ■本日(6/19)、福島第一原子力発電所2号機原子炉建屋内の作業環境改善と二重扉の開放について発表しました。扉の開放にあたっては午後8時頃より、建屋内の放射性物質濃度を測定し外部への影響が十分に低いことを確認した上で着手します。

東電が6月11日から行っていた換気装置による2号機建屋の換気は、空気中の放射性物質を10分の1に下げるという当初の目的をほとんどまったく達していないようですが、そこは1号機の時と同様、お構いなし。そんなところに注目している人はもうほとんどいないのでしょう。記者会見にもほとんど記者がいないという噂も聞きます。

しつこく注目している私は、東電の19日の記者会見資料でこんなものを見つけました。(英語ブログに出したものなので、英語のラベルを付け足してあります。)ご覧の通り、作業員を被曝させて換気設備をつけた割には、放射性物質の量(ヨウ素、セシウム)は6月11日から大して変わっていません。


扉を開けることによって蒸気と湿気を逃がし、作業環境を整える、という説明ですが、私には、できるだけ放射性物質を含んだ建屋内の空気を外に出す、というのが主目的のような気がします。夜の、外気の温度が出来るだけ低いときに扉を開ければ、中の暑い空気が温度差でうまく外に出てくれるからです。1号機と違って建屋の天井が抜けていないので、より時間がかかるかもしれませんが。

5月の1号機の時は河野太郎議員のコメント(「大量の放射性物質が」云々)もあってちょっとした騒ぎでしたが、今回は悪なれした、というところでしょうか。ただ、2号機は、圧力制御室(Suppression Chamber)が(小)爆発で破損しており、2号機由来の汚染水も常に高濃度であることを考えると、1号機よりは危ないような気はします。まあ、危ないと言っても、原発敷地内にいる作業員にとっては、ということですが。

日刊ゲンダイ、東京23区の放射線量を200箇所で測定、東部で高線量

日刊ゲンダイ、えらい!

元立教大学理学部教授の佐々木研一氏のアドバイスに沿って、地上1メートルと0メートルで測定した結果出てきた線量は、先日の共産党都議会団がやった調査でも出ていた通り、東部の区で高いレベルです。実際、共産党の調査より更に高い値が出ています。

例:

  • 金町浄水場脇の民家の庭から車道側溝に水を流している排水口では、1.41マイクロシーベルト

  • 水元公園では地上1メートルで毎時0.30マイクロシーベルト前後

  • 江戸川区では春江第2児童公園の植え込み下の地面では毎時1マイクロシーベルト前後

    (この江戸川区の公園脇の区立保育園は、区の許可がないとだめだから、と言って、心配した記者が保育園の線量を計測しようかという申し出を拒否したようです。)

  • 江東区の有明コロシアム敷地内の排水パイプ下では、今回の調査で最大となる毎時2.91マイクロシーベルト

0.30マイクロシーベルト時の場所に24時間、1年いると(まあいないでしょうが)、0.30x24時間x365日で年間積算量は2.628ミリシーベルトとなります。

1マイクロシーベルト時の場所では、1x24時間x365日で8.76ミリシーベルト。

法定年間被曝許容量の1ミリシーベルトから逆算すると、0.1142マイクロシーベルト時を超えると法定年間被曝量1ミリシーベルトを超えてしまいます。

それと皆様、「ホットスポット」と言われてピンと来る方々は大丈夫ですが、なんのことかと首をひねる方々に説明してあげてください。この「ホット」と言うのは、放射能が高い、という意味です。

「ホットスポット」=「高放射能で汚染されている特定の場所」

6月17日付け日刊ゲンダイ

都内170カ所で放射線量を測ってみた

日刊ゲンダイ本誌が独自調査 弟1弾

●最高値は有明の2.91マイクロシーベルト

 福島第1原発事故から3カ月余り。ついに、佐賀県唐津市内で採取した松葉から微量の放射性物質セシウムが検出された。県の環境センターは福島原発事故の影響とみているという。

 予想をはるかに超えて、放射能は広がっている。となると、東京都はどうなのか。15日になってようやく、都は本格的な放射線量の測定を始めたが、日刊ゲンダイ本紙はそれに先立ち、23区内の200カ所以上で放射線量を測ってみた。

 調査は今月12、13日。ガイガーカウンターを持ち、被災地取材も経験している取材記者3人と日刊ゲンダイ本紙編集部で一斉調査し、データを集計。その後、それぞれのガイガーカウンターで同じラジウムボールの線量を測り、誤差を修正して、表にまとめた。似たような値で場所が近い場合は削除し、最終的に170カ所のデータにした。

 測定にあたりルールを統一するため、元立教大学理学部教授の佐々木研一氏にアドバイスを求めた。

「地表と1メートルの2地点で測定するのが一般的です。ちなみに、地表と1メートル地点の数値が2倍程度の違いであれば、その土地は均一に汚染されている。5倍程度違うようであれば、その場所の直下が汚染されていると考えられます。測定は、ひとつの場所でまず1分かざし、その後3分間で出た最高値、最低値、一番頻繁に出た数値から平均値を出すといいでしょう。普通に生活しているうえで被曝(ひばく)する可能性のある場所と、放射線量が集まりやすい場所を調べます。ポイントは、庭などの排水溝の出入り口、雨樋(あまどい)の最初に地面に触れるところ、道路であれば側溝。泥は乾いているほうがより事実に近い数字が出ます。また、公園の水のたまり場、粘土質が見えるところも測るべきです」

 今回の調査方法と場所の選定は、このアドバイスに沿った。

●ホットスポットがあちこちに

 さて、表を見ていただきたい。都内でも放射線量が高いのが葛飾区だ。水元公園では地上1メートルで毎時0.30マイクロシーベルト前後。東屋下の縁石では毎時0.74マイクロシーベルト。金町浄水場脇の民家の庭から車道側溝に水を流している排水口では、1.41マイクロシーベルトを記録した。

 葛飾区役所は、区内数カ所の公園で地上1メートル付近の放射線量を測定。「毎時0.12~0.28マイクロシーベルトで健康に影響を与えるレベルではない」と“安全宣言”を出しているが、実際には、区の発表の最大20倍の放射線を放出する土があるのだ。

 こうしたホットスポットは測ってみなければ分からない。ただちに健康に影響が出る値ではないにせよ、その値を知っておくことは大事だ。

「それなのに、保育園などで測定を拒否するところも目立ちました。江戸川区では春江第2児童公園の植え込み下の地面では毎時1マイクロシーベルト前後を記録。すぐ前にある区立保育園が心配になりましたが、区の許可がないと対応できないとかで、門前払い。記者の名刺すら受け取らなかった。江東区の有明コロシアム敷地内の排水パイプ下では、今回の調査で最大となる毎時2.91マイクロシーベルトを記録した。パイプに割れ目があったので、放射性物質を含んだ雨水が地面に直接流れたのでしょうか」(江東、江戸川、葛飾区などを担当したフリーライター・藤倉善郎氏)

 文京、足立、荒川区などを担当したフリーライター・渋井哲也氏はこう総括した。

「地表上でもっとも高かったのは、足立区足立2丁目の民家。地上1メートルでは、0.12マイクロシーベルトだったのに、0メートルでは2マイクロシーベルトを超えて驚きました。荒川区の児童館近くの側溝も空間線量との差がハッキリ出ました。地上1メートルでは0.1マイクロシーベルトだったのに、地表では0.57マイクロシーベルト。子どもが遊ぶポイントだけに、今後も継続調査したい」

●文科省のデータよりも大きい数値続出

 こうした地域と比較して、放射線量が低かったのが練馬、中野、杉並などの西部地区だ。
「西部の放射線量の数値は0.1~0.16マイクロシーベルトで全体的に低かった」(フリーライター・西牟田靖氏)

 文部科学省は毎日、新宿区のデータを発表している。平均0.06マイクロシーベルト前後だが、実際はそれより多いところが大半なのだ。日刊ゲンダイ本紙は今後、調査を継続する。今回測れなかった郊外も測ってみたい。読者の情報もお待ちしています。





Friday, June 17, 2011

フランス当局、輸入静岡茶から1038ベクレル/キロのセシウム検出

日本の政府、自治体の数字は、さてどこまで信用していいのか。

フランスに輸入された静岡県産のお茶から規制の2倍以上、キロ当たり1038ベクレルのセシウムが、パリの空港の検疫で発見された、ということです。私の英語ブログ読者数人からのリンク情報です。

元のAFPの記事はこれ(フランス語)です:http://www.20minutes.fr/article/743313/the-vert-japonais-radioactif-intercepte-aeroport-roissy

私のフランス語はいい加減なので、グーグルの英語翻訳と元のフランス語から訳しましたが、大きな間違いはないと思います。(あったらすいません!)

6月17日AFP

日本の緑茶から放射性物質検出、パリのロワシー空港(シャルル・ドゴール空港のこと)検疫で: 製品は既に隔離済み、専門家による処分の対象となる

安全許容基準の2倍の放射性セシウムを含む日本の緑茶がパリのロワシー(シャルル・ドゴール)空港の検疫で金曜日[6月17日]に発見された。フランスの当局、Direction générale de la concurrence, de la consommation et de la répression des fraudes (DGCCRF)は、この緑茶は廃棄処分となる、と発表。

静岡県中部産の緑茶162キロで、福島の事故以降にフランスが始めた検査システムで初めて、放射性物質が検出された。

セシウム汚染が基準以上

DGCCRFによる分析によると、セシウムがキロ当り1038ベクレル検出された。これは、この種の製品でヨーロッパで許容される最大レベルであるキロ当たり500ベクレルを超えている。

緑茶は既に隔離されており、専門家によって処分される。

DGCCRFは、今後静岡県からの全ての植物(由来の製品?)の検査を行い、また、欧州委員会に静岡県を欧州連合(EU)の日本からの輸入規制リストに加えるよう提言する、と発表した。

Thursday, June 16, 2011

米ボストン・グローブ紙:日本の、地震・津波からの驚異の復興

米国の新聞ボストン・グローブ紙に、日本の「驚異の復興」の写真が載っています。私の英語ブログの読者、フランスのHeliosさんからのリンクです。

コメント欄は、「わずか3ヶ月で素晴らしい!」と世界中から絶賛の声で埋まっています。(まあ、私のブログを読んでいないことは確かですね。)

さて、日本の読者の皆さんの見知る現状と、どれだけ合っているのでしょうか?お聞かせ願えれば幸いです。

日本では案外、自国の写真を見ることも少ないような気もします。(福島第1原発の事故写真、あるいは震災後の写真など、日本のメディアよりも外国の「風評をあおる」新聞(例えばイギリスのデイリー・メール紙)などの方が、格段に良い写真を出していました。)

後半の写真をいくつかお出ししておきます。これを見て、「わずか3ヶ月で驚異の復興」になったのだと思います。前半の写真はまあ見なかったことにして...。リンク先には、写真が29枚、出ています。(顔も見たくない、という方々のためにご注意:9番目は管首相のアップです。)





東京新聞6月16日付け記事:「福島・郡山の子供たちに今何が起きているのか」

「鼻血、下痢、倦怠感 - 放射線と関係不明」

東京新聞、出田阿生記者のレポートです。

英語ポストに出した記事ですが、Twitterをお使いにならない読者の方々のために、日本語ポストでも画像を出しておきます。

記事は、こちらのブログで見つけました。

click to view
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脱力系反原発:「源八おじさんとタマ」シリーズ

これは第4弾、原発の人が「原子力発電所は安全です...」と繰り返しメガホンで言っていると、タマが怒って巨大化し...

今回の福島第1原発事故前に作られたとは思えないほど、予言的、とは東京茶とら猫さん。



ちなみに、シリーズは1から5まであります。

源八おじさんとタマ001
http://www.youtube.com/watch?v=OzGnBFNU1bI

源八おじさんとタマ002
http://www.youtube.com/watch?v=RBw_nfQ_glQ&feature=related

源八おじさんとタマ003
http://www.youtube.com/watch?v=pFUKKLkN1nE&feature=related

源八おじさんとタマ004
http://www.youtube.com/watch?v=QpLPFXG1bLg&feature=related

源八おじさんとタマ005
http://www.youtube.com/watch?v=ExkDeqHl_tc&feature=related

Tuesday, June 14, 2011

浜岡原発、水素爆発防止対策万全!建屋天井に穴をあけるためのドリル、カッター準備

応急措置とはいえ、これで浜岡原発の再開の目処が立ちましたね。(皮肉です、念のため。)

朝日新聞によると、「事故時に作業員5人が電気ドリルやカッターを使って約2時間で穴を開ける態勢をとる。穴開け作業は、非常用の冷却装置が作動中で水素が発生する前に完了させるという」ことです。つまり、水素爆発対策として新しく電気ドリル、カッターを用意する、ということなのでしょう。非常用冷却装置、ちゃんと動くといいですね。

福島の場合、冷却装置も何も、圧力容器はすでに地震の段階で損傷していたのですが、その点は考慮していないようですね。

中部電力のプレスリリースはこちらです

朝日新聞6月15日付け記事

中部電力は14日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)で炉心が損傷する「過酷事故」が起きた場合の対策を新たにまとめ、経済産業省の原子力安全・保安院に提出した。東京電力福島第一原発の事故を受けた緊急安全対策の一環で、水素爆発対策などを盛り込んだ。

 福島第一原発の事故では、津波ですべての電源が失われて炉心を冷やせなくなり、大量の水素が原子炉建屋内にたまって爆発につながった。

 このため、浜岡原発の新たな対策では、水素の漏れ出しに備えて、建屋の屋上に60センチ四方の穴を2カ所開け、漏れ出した水素を外部に放出することにした。水素には放射性物質が混じっているが、爆発によって広い範囲に飛び散るよりは、影響が抑えられるという。

 中期的には常設の排気装置や水素の検知器を設置する計画だが、完成するのは来年夏ごろになる。

 それまでの間の応急措置として、事故時に作業員5人が電気ドリルやカッターを使って約2時間で穴を開ける態勢をとる。穴開け作業は、非常用の冷却装置が作動中で水素が発生する前に完了させるという。7月末までに1~5号機分の工具を配備する。

 このほか、過酷事故で作業員が放射線量の高い場所に立ち入る際に着用するタングステン製の防護服10着を購入。中央制御室に放射性物質が入り込むのを防ぐ空調設備用の発電機も導入する。

 また、津波や爆発で敷地内に散らばるがれきを取り除くため、重機を配備した。電源を失った場合の連絡手段には、乾電池式のトランシーバーや衛星携帯電話機を使う。

 保安院は今後、立ち入り検査などをして、中部電の対策を評価する。

新潟県柏崎市内の牛乳から微量のセシウム検出

「今まで比較的安全だった北陸、東北の日本海側が気になります。」と書いた途端に出てしまった。

もちろん微量ですので健康に問題はありません、と保安院や官房長官、政府諸省はおっしゃると思いますので、ご安心ください。

検査を行った東電の松本さんは、「改めて事故の大きさを認識している」とのこと。

記事にもあるように、この検査は東電が柏崎刈羽原発周辺の自治体との協定で行っているもので、柏崎刈羽原発サイトによると4半期に1度の検査。サイトに載っている最新の放射能測定データは2年前のものです。

ちなみに、原乳からセシウムが出たという柏崎長鳥はこんなところです。

毎日新聞6月14日付け記事

東京電力は14日、新潟県柏崎市内で採取した牛乳から微量の放射性セシウムを検出したと発表した。検出量は原乳1リットルあたり最大0.046ベク レルで、内閣府原子力安全委員会の指針が定める摂取制限の約4000分の1の値という。柏崎刈羽原発からは放射性物質の漏えいはなく、東電は福島第1原発 から飛散したものとみている。

 5月12日に柏崎市長鳥と同市北条の2カ所で採取した牛乳を測定したところ、セシウム134が1リットル当たり0~0.025ベクレル、セシウム 137が同0.021~0.025ベクレル検出された。東電は柏崎刈羽原発の周辺自治体との安全協定に基づき、定期的に放射性物質の調査を実施している。

 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「改めて事故の大きさを認識している。他の農作物や福島県内でも測定を検討したい」としている。

ドイツ気象局放射能拡散予測6月14日~16日

太平洋側からの風で、本州の多くの地域がかぶりそうです。今まで比較的安全だった北陸、東北の日本海側が気になります。

Monday, June 13, 2011

フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセン:「高放射能粒子は体内に 取り込まれるとほぼ検出不能」

Hot Particles From Japan to Seattle Virtually Undetectable when Inhaled or Swallowed from Fairewinds Associates on Vimeo.

今回は目新しい情報はありませんが、先日のクリス・マーテンソン氏とのインタビューでも話題になっていた高放射能粒子について更に言及しています。先日のインタビューとは異なって、シアトルの住民が4月に吸引していた高放射能粒子が1日5つ、と氏は言っています。東京が10なら海を越したシアトルでは5つ、というのは妥当と言えば妥当です。(インタビューでは相手がいることもあり、情報を言い間違えることもあるでしょう。)


福島の住民は東京の住民の30倍から40倍の高放射能粒子を吸い込んでいる、とガンダーセン氏は言います。

それと、言われてみれば当たり前なんですが、「体の外側から肺の上にガイガーカウンターをかざしても、体内に高放射能粒子が取り込まれているかどうかはわからない、高放射能粒子が出す放射線は体の外には出ない。」

日本政府はやっとストロンチウムが広域に拡散したことを認めだしましたが、他の核種、特にプルトニウム、アメリシウム、キュリウムといった非常に放射能の強い核種については口を閉ざしています。アメリカまで飛んできているのですが...。

以下、インタビュー日本語訳(H/T東京茶とら猫

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フェアウィンズアソシエーツ、アーニー・ガンダーセン:高放射能粒子は体内に取り込まれるとほぼ検出不能

こんにちは、フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。東京電力が福島第一原発から放出された放射線量の推計値を修正したために、先週はメディアで様々な議論がなされました。また、高放射能粒子が日本全国で発見され、これも大きな議論を呼んでいます。今日はこの2つの出来事を結びつけ、その意味するところをお話ししたいと思います。

まず、東電は事故後一週間で放出された放射線の総量を計算し直し、当初予想していた量の二倍だったことに気づきました。予想をはるかに超える膨大な量が放出されていたわけです。

しかし、新しく増えた分のほとんどはホット・パーティクルと呼ばれる高放射能粒子です。なぜそうなったかというと、核燃料は融けるとすぐに気体状の放射性物質をすべて放出します。この気体はキセノンとクリプトンで、希ガスと呼ばれる種類であり、ほかの物質と反応することはありません。気体は住民の周囲を取り巻き、住民にガンマ線を浴びせます。この希ガスの放出量に関しては計算が単純なので、東電の新たな推計値でも変化はありません。では何が変わったのかといえば、放出された高放射能粒子の量が予想をはるかに上回っていたことに気づいたのです。

事故の際に放射線計がすべて粉々に吹き飛ばされたのを思い出してください。それでも彼らは、放射性物質の約98%はまだ原子炉内に留まっていると想定していました。しかし、今回新たに判明した放射性物質は高放射能粒子という形態をとっています。具体的にいうと、セシウム、ストロンチウム、プルトニウム、ウラン、コバルト60などで、ほかにもたくさんの種類があります。

人が屋外に出て希ガスの雲に入った場合は、放射線計で探知することができます。希ガスが浴びせるのはガンマ線だからです。ところが、高放射性粒子の中に入った場合、粒子の数がよほど多くないかぎり一個一個の粒子を検出するのは非常に困難です。検出されないからといって危険性が低いわけではありません。独立機関の研究者が日本の車のエアフィルターを調べたところ、東京の平均的な都民は4月中、毎日約10個の高放射能粒子を吸い込んでいたことがわかりました。同じ研究者によれば、福島県民は東京都民の30~40倍の高放射能粒子を吸い込んでいると見られています。

私が驚いたのは、アメリカ西海岸のシアトルのエアフィルターからも、住民が4月のあいだ毎日約5個の高放射能粒子を体内に取り込んでいたとわかったことです。これはどういう意味でしょうか。高放射能粒子が最終的に肺に入ったり、腸に入ったり、筋肉に入ったり、骨に入ったりする、ということです。体内に取り込まれた高放射能粒子は、非常に狭い範囲の体組織に絶え間なく放射線を浴びせます。

これはサルの肺の写真です。肺に高放射能粒子が入り込んでいます。高放射能粒子がサルの肺に絶え間なく放射線を浴びせた結果、非常に局所的な損傷が生じていることに注目してください。絶えず組織を刺激する物質が存在すると、体は戦います。たいていは体が勝つのですが、ときに高放射能粒子ががんを引き起こすことがあります。そうなればもちろん非常に憂慮すべき事態です。

体の外側から肺の上にガイガーカウンターをかざしても、体内に高放射能粒子が取り込まれているかどうかはわかりません。高放射能粒子が出す放射線は体の外には出ないからです。ただひたすら体内組織の狭い範囲にダメージを与えます。それでもエアフィルターの調査から見て、体内に取り込まれているのは確かです。

私は16歳くらいの頃から、よく車の修理をしました。ですが、もしも今私が日本で車の修理をするとしたら、車のエアフィルターを取り外すときに手袋をはめてガスマスクをつけるでしょう。そのフィルターに放射性物質が付着しているのがわかっているからです。それが独立機関の研究者たちの調査結果です。

最後にお話ししたいのは、「口の中に金属の味がする」という報告が日本から届いている点です。原発事故のあとで金属の味が確認されるのは今回が初めてではありません。スリーマイル島原発の近隣住民も[事故後に]金属の味を感じ、チェルノブイリ原発の近隣住民も金属の味を感じました。また、がんの放射線治療を受けた患者も金属の味を感じます。これは経験談なので科学的に測定するのはきわめて難しいのですが、今回日本で金属の味が報告されたことによって、スリーマイル島やチェルノブイリでの経験談が事実だったことが裏づけられたと思います。

では今夜はこの辺で。来週の木曜日、6月13日に、私はボストン公立図書館で午後6時から8時まで講演を行ないます。テーマは「福島の事故はアメリカでも起こりうるのか」です。私のほかに、「憂慮する科学者同盟」(Union of Concerned Scientists) のデビッド・ロックバウム博士や、疫学者のリチャード・クラップ博士も参加します。もし皆さんがマサチューセッツ近辺にいらっしゃるなら、お越しいただければ幸いです。

ありがとうございました。またお目にかかりましょう。

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Sunday, June 12, 2011

宇都宮市内の中学校も全校生徒で茶摘実習をやっていた

栃木県宇都宮市の市の公式サイトに出ていたのを、偶然見つけました。

茶摘を実施した5月17日には、栃木より福島からはるかに離れた神奈川で既に茶葉から基準値以上のセシウムが検出され、前日の16日には茨城県のさしま茶からもやはり基準値以上検出されていました。茨城県のさしま茶茶摘実習は坂東市の小学3年生でしたね。

宇都宮市立国本中学校は全校生徒330名、うち、1年生が111名です。

実施にあたり、計測した、とありますが、放射性セシウムが基準値を超えて検出されたにもかかわらず茶摘、手もみの実習をやらせたように読めるのですが、どうなのでしょうか。飲まなければいいのでしょうか?学校の先生方は年中行事を滞りなくこなすことがより大切なのでしょうか?

以下、宇都宮市のウェブサイトより:

国本中学校の校内の恒例行事である「茶摘み体験」の実施にあたり、茶葉の放射性物質について調査したところ、放射性セシウムが食品衛生法の暫定基準値(500ベクレル/kg)を超えて検出されました。なお、生徒の飲料には使用せず、廃棄処分しました。
  • 調査日(茶葉の採取)
    平成23年5月17日(火曜日)
  • 採取場所
    国本中学校校庭
  • 結果
    放射性セシウム
    (Cs-137)330ベクレル/kg
    (Cs-134)280ベクレル/kg
    合計610ベクレル/kg
    放射性ヨウ素
    (I-131)不検出

生徒の活動日時
 平成23年5月17日
 1校時=全校生による茶摘み体験。
 2から5校時=1年生による手もみ作業。

今後の対応
 茶摘み体験で摘んだ茶葉は、廃棄処分します。

その他
 生徒の飲料には使用していません。
 国本中学校以外で、茶摘み体験を行っている学校はありません。

問い合わせ
学校教育課
電話番号:028-632-2722

福島第1原発地下水から放射性ストロンチウム検出、「ストロンチウムは海で薄まり魚には蓄積しない」と西山審議官

東電の6月12日の記者会見発表資料です。

1号機と2号機のサブドレンから放射性ストロンチウム89と90を初検出、また、1号機から4号機の取水口近辺、2号機と3号機のシルトフェンスの内側からも検出。サンプルはいずれも5月の半ばに採取したものだそうです。

朝日新聞によると、保安院の西山審議官は「ストロンチウムは海で薄まり、魚にどんどん蓄積するものではない。」という、科学的根拠と反する風評を流したようです。

東電の発表(まあ朝日の記事でもいいんですが)を見ると、サブドレンから検出した数字の単位は1立方センチ当たりのベクレル、海水から検出した数字は1リットルあたりのベクレル、と単位を変えています。

サブドレン:


この数字を不精をせずに1リットルあたりに換算(1000を掛ける)すると、

1号機サブドレン
ストロンチウム89: 78ベクレル
ストロンチウム90: 22ベクレル

2号機サブドレン:
ストロンチウム89: 19000ベクレル
ストロンチウム90: 6300ベクレル

2号機サブドレンから検出されたストロンチウムは2号機、3号機のシルトフェンス内側から検出されたストロンチウムの数字と同様のレベルになってきます。法律で許容されている濃度限度はリットル当りストロンチウム89が300ベクレル、ストロンチウム90が30ベクレルですから、2号機のサブドレンから出たストロンチウム89は限度の63倍強、90は210倍強となります。

取水口、シルトフェンス内:

Saturday, June 11, 2011

ニューヨークタイムズ:「日本で反原発の声」

6月11日付けで米国ニューヨークタイムズ紙に載った、6.11脱原発デモの記事の日本語訳です。淡々とデモの様子を記述していますが、最後に「こんなことして何が変わると思ってんのかしら、単純」という、21歳の若い女性のシニカルなコメントで締めくくっています。

100基以上の原発を保有し、現職の左派のグリーンであるはずの大統領も積極的に原発を全世界に売り込んでいる手前、アメリカの御用新聞ニューヨークタイムズとしても反原発のデモの報道は本当はやりたくないんでしょう。それでも、2万人、という主催者の数字をちゃんと出すだけ、一部の日本の新聞よりはよほどましです。

デモに参加した人たちは、必ずしも21歳のお嬢さんが言うように「何かを変えようとして」デモに参加したわけではないような気がします。私が3月11日の震災、福島原発事故以来、ブログを書いて情報を発信しなければいけない、という半ば強迫観念に襲われているのと似たようなことで、とにかく今何か行動しないと、という気持ちの方々もいらっしゃるのでは。

チュニジアでも、エジプトでも、リビアでも、「もう沢山だ」と思った市民が「何をしても何も変わらない」と思っていた市民を凌駕して、実際に大変革を引き起こしました。リビアは残念なことに石油と天然ガスが豊富だったためにヨーロッパとアメリカの軍事介入を引き起こして悲惨なことになっていますが、「もう沢山」と思う市民は中東のイエメン、バーレーン、シリアにも広がっています。あちらでは、メガホンを持った警官と小競り合いどころか、国家元首の命令でマシンガン、ミサイルを市民の列にぶっ放す軍隊と衝突しています。日本はまだまだ平和です。

オリジナルの英語の記事はこちら。

(h/t 東京茶とら猫

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日本で反原発の声

記事:タブチ・ヒロコ
2011年6月11日ニューヨークタイムズ

東京――太鼓を叩き、花を振る。破壊的な大津波で原発危機が始まってからちょうど3ヶ月目の土曜日、東京をはじめ日本各地の主要都市で反原発を訴えるデモ行進が行なわれた。

数週間前、福島第一原発の被害と放射性物質の放出量が予想よりはるかにひどかったことが明らかになってから、政府の事故対応に対して市民の怒りが噴き出している。子供の健康を心配する母親や、生活に打撃を受けた農家や漁師たちは、菅内閣にとりわけ鋭い批判の矛先を向けてきた。

また震災をきっかけに、日本がこのまま過度に原発に依存し続けていいのかどうか、全国レベルでの議論も巻き起こっている。なにしろ日本はこれまで何度も大地震に見舞われているうえ、原子力産業に対する市民の不信感には根深いものがあるからだ。菅氏が唯一民衆の支持を得たのは、津波対策を強化するまで浜岡原発の運転停止を命じたことだけだろう。しかし最近では、迷走を続ける国会で政争に明け暮れている姿を見て、国民の幻滅はよりいっそう大きくなっている。

「原発に依存することがいかに危険かをわれわれは知った。今こそ変化を起こすときだ」とデモ主催者の一人である松本哉氏は東京中心部の広場で群集に語りかける。主催者たちの推定によれば、最終的にこの広場に約20,000人が集まった。

「そうだ、日本は変われるんだ!」と松本が叫ぶと、群衆はそれに呼応して叫び返し、こぶしを突き上げた。

東京のみならず全国のさまざまな都市が連動して実施された6.11のデモ。支持者は次のように指摘する。今回のデモで特筆すべきは参加者の規模ではなく、秩序と従順が重んじられる国でそもそもこのようなデモが行なわれたこと自体だ、と。

「少なくとも最近は日本人が大きなデモを実施したことはありません」と語るのは、環境保護団体グリーンピースジャパンの事務局長である佐藤潤一氏。彼自身、デモを主催したものの参加者が十分に集まらないという経験を何度もしてきたという。「今日本人は、自分たちの声を聞いてもらうための最初の一歩を踏み出しつつあるのです」

参加者の多くが、デモに参加するのは初めてだと語る。

「私が参加したのは自分の子供のためです。」三歳の娘を連れたイシイ・アキさんは話す。「水も安全で空気もきれいだった以前の暮らしを取り戻したい。それだけです。」彼女の娘は「また外で遊ばせて」と書かれたプラカードを持っていた。

米と野菜を作る農家のフジモト・ヒロマサさんも、デモに参加するのは初めてだと語る。「土や水のことが心配でたまりません。その思いをみんなに伝えたいのです。今では片手に農具、片手にガイガーカウンターを持って農作業をしています。」

「こんなの絶対におかしいですよ」と彼は言葉を継いだ。

デモは日本らしく整然と始まった。開始時には主催者が「皆さん、ちゃんとしたマナーを忘れずに」と呼びかけ、参加者はきちんと列を作って並ぶ。が、群集は次第にマナーを忘れてくる。

東京の各地を練り歩いたデモ隊がとある広場に集結したときには、警官と揉める場面もあった。名乗ることを拒否した一人の警官は、デモ隊はこの広場で集会する許可を取っていないと声高に説明する。

「すぐに解散しなさい!」と警官隊はメガホンで叫ぶ。

「うるさい、消えろ!」と若い男性が怒鳴り返す。

しかし、午後9時ごろには警官が力づくで割って入って解散させた。深刻な事態には至らなかったものの、押したり突いたりといったちょっとした小競り合いはあった。

それでも、主催者の一人である松本氏は意気軒昂とした表情を浮かべる。「これほど大勢の人が参加すると誰が予想したでしょう? 日本は新しい段階に入りつつあるんだと思います。」

だが、通行人からは冷めた声も聞かれた。

「あの人たちに本当に何かできるのかな」と語るのは、ボーイフレンドと買い物に来てデモの様子を見物していた21歳のイシイ・アイリさん。「楽しそうだけど、あれで何かが変わると思っているんなら、ちょっと単純よね。」

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ドイツ気象局:放射能拡散予測6月12日~14日

今までこのブログで出していたオーストリアのZAMGからの放射能拡散予測のファイルが出ていないので、代わりにドイツ気象局の予測アニメーションをお届けします。地上250メートルの高さでの飛散予測、とのことです。

12日、13日は福島の北と太平洋側に出ますが、14日から風向きが変わり、太平洋から関東にぐるっと回って来始めるところで終わっています。

下野新聞:栃木県内の浄水場「発生土」中の放射性物質減少

下野新聞に6月11日付けで出ていた記事です。栃木県内2箇所の浄水場の「発生土」、原水の精製後に脱水処理した土砂から出ている放射性物質の分量が減った、という記事ですが、え、出ていたんですか?というレベルの方々(私を含む)のために、お出しします。下水処理場ではなく、浄水場です。念のため。

結構高い数値です。

減った、というのは
松田新田浄水場の発生土のことですが、どこまで減ったのか、数字は記事にはありません。

なお、上水自体からは放射性ヨウ素、セシウムは検出限界以下とのことです。

下野新聞6月11日記事

宇都宮市は10日、今里町の松田新田浄水場と、日光市瀬川の今市浄水場で保管する発生土の放射性物質測定結果を発表した。

 宇都宮市配水管理センターによると、ヨウ素131と、セシウム134、137について松田新田で5月10、18、30日、今市で同23日に測定した。

 松田新田はヨウ素が10日時点で1キロ当たり240ベクレルだったが、18、30日は不検出。セシウム134は10日で7900ベクレル、137 が8500ベクレルで、その後は減少している。今市ではヨウ素は検出されず、セシウム134は1万7千ベクレル、137が1万9千ベクレルだった

 発生土は原水の精製後に脱水処理した土砂を指し、鬼怒川水系の両施設は浄水場内に保管している。国は規制基準値を示していないが、同センターは「周辺環境への影響はない」としている。

Friday, June 10, 2011

中部大学武田邦彦:「国民がより多く被曝するように」した政府の避難勧告

中部大学武田邦彦教授の6月9日付けのブログです。

福島第1原発が爆発した際の「放射線の強さは距離の二乗に比例するので、遠くに逃げれば良い」という政府の避難勧告が反って避難住民をよけいに被曝させることになった、と言い、「わざと国民がより多く被曝するように指導した」とまで言っています。

放射線の強さは距離の二乗云々、と言うのは、福島第1原発が目視できる場合のみ、光としての放射線についてのみ。それを、遠くへ逃げれば大丈夫、と国民には言い、その実SPEEDIやWSPEEDIでしっかり放射性物質の飛散予測をほぼ事故の初めから正確に出していた政府。遠くに逃げても無事ではすまないことをちゃんと承知していながら、誤情報を流したことになります。国民の放射能に関する無知をいいことに。

武田教授は更に、「万が一、今回の事故で病気の人がでたら、政府と安全委員会は「傷害罪」ではないか?」とまで問いかけています。

以下、教授のブログ(強調は私です):

原発事故中間まとめ(4) 「悪意」か? 私たちの政府

3月11日、福島原発が時々刻々、破壊に向かっているとき、発電所と政府は共に国民に事実を知らせなかった。

1) 発電所長は消防に通報しなかった、

2) 政府は国民に危険を知らせなかった。

しかし、この二つならまだ「準備不足」とか、「普通に見られる隠蔽体質」とも言えるが、逃げる方向について政府が発表したとき、私は「まさか!」と耳を失った。

原子力の専門家ならすべての人が知っていることなので、「悪意」としか考えられないが、本当だろうか?

・・・・・・

「放射線」というのは「光」だから、自分の目で福島原発が見えなくなったら、「福島原発から直接来る放射線は来ない」。

だから「被曝する」のは「放射性チリ」からだ。

原発が爆発するとき、原発の建物は「天井方向に抜ける」ように設計されている.

これは爆発の可能性のある建物を設計するときの常道で、「爆発のエネルギーが原子炉や人のいる下の方に行かないように」という配慮である。

福島原発の水素爆発でも、屋根が抜けてまっすぐ上に100メートルほど煙(放射性チリ)が舞い上がった.

もし、そのまま無風の「状態」が続けば、吹き上がった放射性チリの「粒」はそよそよとそのまま原子炉建屋の中に帰って行っただろう.

でも、現実には無風の状態がそれほど長く続くわけではない.上空にまっすぐ上がった放射性チリは、風に流されて徐々に西北(一部は南)に向かった。

その時、政府は驚くべき発表をしたのである。それは、

「放射線の強さは距離の二乗に比例するので、遠くに逃げれば良い」

ということであり、それを受けてNHKのテレビでは東大教授が、

「10キロ地点から20キロ地点に逃げると、被曝量は4分の1になります」

と解説をしていた。「かけ算」をせずに1時間1ミリシーベルトを「レントゲンの600分の1」などと言っていた時代だ.

それを真に受けた多くの人たちは、

「原発から遠くに逃げろ」

と思ったのは当然である.

これほど簡単なことを間違えるはずはないから、どうも「悪意の政府」、「鬼の東大教授」のように見える。

なぜなら、「正しいことが判っていて、わざと国民がより多く被曝するように指導した」からだ。

原発の事故では「原発を背にして、遠くに逃げる」のはダメである。


この図を見て欲しい.

福島原発が爆発すると、そこからの放射性物質は風で流れる.どちらの方向でも同じだが、もし「西北」の方に流れたとしよう。

その時に、政府が「原発から遠ざかれ!」と言った。

国民はまさか政府が悪意を抱いているとは思わないので、原発を背にして逃げた。

でも、図のAさんは風下に当たっていたから、逃げれば逃げるほど原発から襲ってくる放射性物質の中にいた。事実、逃げたところで粒が上空から降ってきたので、もと居た場所より多く被曝した。

Bさんも、Cさんも風下には当たっていなかったので、逃げる必要はなかったが、政府を信じて逃げた。

そうして、Bさんは郡山まで逃げ、そこで迂回してきた放射性チリで被曝し、元のところの方が低かった。

・・・・・・・・・

つまり、

1) 風下に当たっている人は、原発から遠ざかれば遠ざかるほど、長時間被曝する、

2) 「横に」10キロも逃げれば、被曝しない.つまり「原発から遠ざかる」のではなく、直角に逃げろということだ、

3) 風下の当たっていない人は遠ざかっても関係がない、

ということが判る。

私が最初のころ、火山の噴煙の動きを貼りつけて「風下はダメだ」と言い、気象庁に「風の向きを予報してくれ!」と叫んだのはこのことだ。

気象庁は知らない顔をしていた。彼らも放射性チリの流れを知っていて、言わなかったのかも知れない.

・・・・・・・・・

もちろん、原子力安全委員会、原子力保安院は知っていた。専門家集団であり、普段から原発のシビアーアクシデント(大事故)を考えに考えているのだ。

こんなことを知らなければ職務が遂行できない.私は彼らが知っていたことを知っている。

ということは、国民がより多く被曝するように「放射線は半径の二乗で・・・」と言い、「遠ざかれ」と言ったと思わざるを得ない。

事実、それを信じた首長さんは住民を連れて原発から遠ざかろうとして、さらに被曝した。

何ということだろう!

万が一、今回の事故で病気の人がでたら、政府と安全委員会は「傷害罪」ではないか? あちらに逃げれば火傷をすると知っていて、その方向に逃げるように指示する人などいるだろうか?

何でこんなに大きな間違いをして、平気なのだろうか? 今からでも修正しておけば、今後も役立つのに、なぜ謝罪しないのだろうか? 

・・・・・・

今回の事件は、多くの面で、「一体、政府とは何か?」、「知識とはなにか?」を訴えているように思える.

6.11脱原発100万人アクション・ライブ

岩上安身さんの中継。

あああエンベッドが出来ない!

リンクはこれ: http://www.ustream.tv/channel/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88-%E5%B2%A9%E4%B8%8A%E5%AE%89%E8%BA%AB%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8Bustream


あとは、個々のイベントをここでも。

http://chukeisimin.info/611/

フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセンインタビュー:「福島原発事故はわれわれが考えるよりはるかに危険」パート4

アーニー・ガンダーセン氏とクリス・マーテンソン氏とのインタビュー、最終のパート4です。

土壌汚染、輸出品の放射能汚染、どう対応できるのか。土壌汚染はあまりに範囲が広すぎて、ちょっとやそっとの対応では間に合いそうもない、と氏は示唆しています。

また、4月時点でアメリカ西海岸ワシントン州シアトルに、高放射線粒子が飛来していて、平均的市民が一日に10個当たり吸っていた、という研究があるそうです。プルトニウム、ストロンチウム、アメリシウム、テルル、セシウム、さあどれのことやら。

3月、4月の時点で毎日見ていた、オーストリアZAMGの放射性ヨウ素飛散予測では、アメリカのアラスカ、ワシントン、ノースダコタ、カリフォルニアのあたりにかなり降っていましたね。

(私もしっかり被曝。)

パート1パート2パート3もお見逃しなく。)

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マーテンソン:除染というのは、表面的なものであればこすって洗い落とせばよさそうですが、土壌のレベルまで汚染されてしまったらチェルノブイリと同じようにするしかないのではありませんか? 土の上層部を何インチか削り取って手押し車で運び、どこかに積み上げる。ほかにやりようがあるでしょうか。

ガンダーセン:いえ、ほかにはありません。基本的にはどこかに捨てることになります。誰かの近所に行くわけです。ですがセシウムは非常に水に溶けやすいので、時間とともに土の奥深くに染み込んでいきます。ゼオライトを使った研究によると、ゼオライトを土の上に敷き詰めれば、染み込んだセシウムを再び吸い出すことが出来る可能性がありそうです。ただ、数百平方メートルという範囲が対象になるわけですから、[学校の]理科の実験の域は超えていますね。

マ:先ほど東京から車のエアフィルターが送られてきたという話をされていましたが、私はまだ少しショックを受けています。そういうものが受け取れるということに。ある程度の放射能汚染とともにやって来たわけですよね。これは私がここしばらく注目している問題でもあるんですが、今回の事故が日本以外の国の実質経済にどれくらい影響を与えるかを考えてみたいんです。日本は非常に重要な製造、産業の拠点であり、サプライチェーンの重要な部分を担っています。もっと時間がたてば悪影響を軽減する手立てが見つかるかもしれませんが、今のところは必須の機能が日本にたくさん集まっているのが現実です。この先、こういった放射能汚染の証拠が次々に見つかるようなことになれば、日本の輸出入バランスがどうなるかが気がかりです。あ、汚泥から出た。エアフィルターから見つかった、という具合に。どこから出てきてもおかしくないわけです。どうお考えですか? 現時点でサプライチェーンにどんな支障が生じる可能性があるのか、すべてについて放射能汚染の検査をしなくてはならない状況で輸出入プロセスをどう管理するのか。今現在、どんな問題に直面しているのか。

ガ:そうですね、私が少し驚いたのは、ヒラリー・クリントンが日本側に、日本産の食料や野菜の輸入を奨励すると約束したことです。食物連鎖については先ほどお話しした通りです。大型の工業製品、たとえば自動車、トランジスター、コンピューターといったものについては問題ないと私は思っています。ただ、そういった製品が入ってくる箱については少し心配です。とはいえ、船積み会社もその辺は十分に目を光らせるだろうと思います。入っている箱のせいでテレビが汚染された、などという目には絶対に遭いたくないでしょうから。大手企業は三菱やソニーや日立の製品については警戒して、監視を怠らないと思います。中規模・小規模の企業の場合、たとえば日本から輸入した陶器の壺といったようなものについても、政府が何らかの監視の目を光らせてくれるといいのですが。さもないと安心して買い物ができなくなります。

マ:わかりました。最後にまとめとして、日本やアメリカ西海岸、あるいはどの地域でもいいのですが、そこに住むリスナーのためにお聞きしたいことがあります。もしも余震が来て4号機が倒れたら、どうすればいいですか。すでに日本の皆さんへのアドバイスはお伺いしました。できれば飛行機に乗ってすぐそこを離れる、できるだけ遠くへ行く、風向きを見て風上の方向へ逃げる、など。では、アメリカにいてそういう事態が起きたのを知ったら、どうしたらいいでしょうか。

ガ:私は西海岸で空中線量をモニタリングしている研究者数名と連絡を取り合っています。たとえば4月、シアトルの平均的な市民が吸い込んだ高放射能粒子の数は1日当たり10個です。

マ:なんですって? 知りませんでした。

ガ:報告がきちんとした科学論文にまとめられるまでには時間がかかりますからね。普通の人間は、1日に10立方メートルの空気を吸います。シアトルで10立方メートルの空気を調べたところ、それだけの高放射能粒子が検出されたというわけです。それは4月のことで、今は5月末ですから、状況は良くなっていますが。それでも、4号機に新たな事故が起きなくてもシアトルのエアフィルターには高放射能粒子が10個引っかかっているわけです。誰もが南半球に逃げてリオデジャネイロの別荘で暮らせるわけではありません。放射能は北半球に留まるので、リアジェット[小型ジェット機]を持っている人は逃げ出せるでしょうが、ですから、もしそういう事態になったら、まずは窓を閉めておくことです。私なら、外に出る場合はかならず何らかの呼吸用フィルターを装着しますね。放射能の雲が消えたと確信できるまでは、走ることも運動もやめます。今そうしろと言っているのではありません。最悪の事態が起きたら、の話です。もし4号機が倒れたら私は窓を閉め、エアコンをつけ、エアコンのフィルターを頻繁に交換し、モップで水拭き掃除をし、HEPAフィルター付きの空気清浄機を置き、高放射能粒子をなるべく吸い込まないようにします。ガイガーカウンターで計測できるような放射能の雲に包まれるわけではありません。西海岸で注意すべきは高放射能粒子です。対策はHEPAフィルターと、粒子を吸い込まないことです。

医療の問題も出てくる可能性があります。今、マギー[フェアウィンズ代表でアーニーの妻]と私は数名の医師と協力して、高放射能粒子を吸い込んだ場合に体外への排出を促す方法を研究しています。ですが、まだちょっと時期尚早なので、今は深く立ち入らないようにしたいと思います。

マ:わかりました。今のお話はすべて最悪の事態が起きた場合であって、現時点で私たちがすべきは福島から目を離さないこと、というわけですね。重要なのは、事態がまだ終わっていないということです。これからもずっと注目し続けなければなりません。ですが、それは簡単ではありません。メディアはこの手の問題を息長く追うのが苦手ですから。あなたのお考えでは、福島の状況は現在進行形であり、これからもまだ思わぬ事態が起こりうる。3号機で水蒸気爆発が起きるかもしれないし、4号機が倒れるかもしれない。この2つは、私たちがとくに警戒を続けなければならないリスクである。ほかに付け加えたいことはおありになりますか?

ガ:いいえ。長く険しい道のりになります。

マ:そうですね。どうもありがとうございました、アーニー。素晴らしいお話を伺うことができました。あなたの活動に興味を持ってもっと詳しく知りたい場合は、どこに行けばいいのでしょう。

ガ:フェアウィンズのwww.fairewinds.comが私たちのウェブサイトです。fairの後に「e」が入りますのでお忘れなく。マギーと私は無償で活動しています。ボランティア活動ですね。うちのコンピューターの達人が作業を続けられるように寄付のボタンもついていますが、非営利事業です。

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ということで、アーニー・ガンダーセン氏のインタビュー、お届けしました。

(ちなみに、このブログも無償で活動しております。寄付ボタンもサイトの右肩についております。)

Wednesday, June 8, 2011

東京の放射能汚染:ストロンチウム、ジルコニウム、テルビウム、イットリウム、ランタン...

このブログで出したアーニー・ガンダーセン氏のインタビュー(パート1パート2パート3、まだ続きます)の中に、「東京で走っていた車のエアフィルターを送ってもらったのを分析したら、ストロンチウム、セシウム、アメリシウムを検出した」という言及がありましたが(パート2)、英語のブログの「福島市でストロンチウム検出」の記事のコメント欄にこんなメッセージを寄せてくれた方がいらっしゃいます。

This info was sent to me late May: "We tested an air filter from a car in Tokyo. It full of particles of strontium, metallic zirconium and Zr alloys, iron and steel encrusted with terbium, yttrium, lanthanum, and neodymium. There are bismuth/rhenium particles. One nearly pure strontium particle is crusted with sodium chloride, a k a seawater."

5月末に受け取った情報:「東京の車のエアフィルターを一個テストしたところ、ストロンチウム、ジルコニウム、ジルカロイの粒子、また、テルビウム、イットリウム、ランタン、ネオジムにコートされた鉄や鋼鉄の粒子で一杯だった。ビスムス/レニウムの粒子もあった。ほぼ純粋なストロンチウムの粒子が一つ、塩化ナトリウム(つまり海水)にコートされて発見された。」

ジルコニウム、ジルカロイは、核燃料被覆管の材料です。

出元はアーニー・ガンダーセン氏だとのことです。私が直接見たわけではないので、とりあえず「風評」としてお扱いください。

東京の放射能汚染はすでに二次汚染段階

英語のブログに、東京都大田区の「南部スラッジプラント」で計測された、福島県飯舘村並みの空中放射線量の記事を出しましたが、同じく東京都、江東区の「東部スラッジプラント」は汚泥の焼却によって周辺地域に放射性セシウムを撒き散らしているようです。東京東部の空中放射線量は東京の他の地域に比べて高い値をずっと示してきましたが、汚泥処理プラントから無制限に出ていたセシウムの影響だとは。

「江東こども守る会」が独自調査を行わなければ、誰も何も言わず、そっと高放射能汚泥を燃やし続けていたんでしょうか。そうなんでしょうね。

(H/T東京茶とら猫 南部と東部のスラッジプラントについてのポストが出ています。)

東京新聞6月8日付け記事

江東区の保護者でつくる「江東こども守る会」は七日、都庁で記者会見し、都の汚泥処理施設「東部スラッジプラント」(同区新砂三)近くのグラウンドの土から高濃度の放射性セシウムを検出したとする独自調査の結果を発表した。

 調査は、同会が神戸大大学院の山内知也教授(放射線計測学)と実施。検出されたセシウムは一平方メートル当たり二三万ベクレルで、放射線障害防止法で、放射線管理区域からの持ち出しが制限される汚染基準の約六倍という。また、プラント周辺と同区の荒川、旧中川沿いでは、放射線量が毎時〇・二マイク ロシーベルトを超える地点が多くあった。山内教授は「値が高い地域の位置と風向きを考慮すると、下水を通じてプラントに集まった放射性物質が処理過程で再 び大気中に放出されている可能性が高い」と主張。同会は同日、プラントの稼働停止と調査などを求め、都に要望書を提出した。

記事中の山内教授の報告書はこちら

報告書からの結論抜粋:

5月21日と22日の測定結果に基づいて:

・江東区内では荒川や旧中川沿いで汚染レベルが高いという傾向が確認された。最も高い汚染が確認されたのは東部スラッジプラントの近傍であって、下水を通じて集められた放射能が汚泥の処理工程を通じて再度大気環境中に放出される結果になっていることが指摘できる。

・すなわち、ホットスポットは3月15日当時に生じたのではなく、今現在も「再生産」され続けていると見られる。5月25日の測定は、卓越風が東部スラッジプラントから荒川を遡上する方向に吹いているという事実に照らして、根本的な放射能汚染源は東京電力福島第1原発であるとしても、放射能汚染の拡大は既に2次的なレベルに進行しており、下水を通じで集められた放射能が東部スラッジプラントから再び放出されることによって、東京近郊のホットスポットが生産され続けているという見方を支持するものである。(報告書第1報「放射線量について」より)

測定結果のまとめと評価

・江東区内のうち荒川沿いにある、「東部スラッジプラント北グラウンド」及び「大島小松川公園わんさか広場」の土壌汚染を調べたところ、それぞれ、2,300Bq/kg及び 1,500 Bq/kgという高い汚染が確認された。これらは東部スラッジプラントの風下に位置する。・試料は10 cm四方から採取したので、セシウムが深いところに浸透していないとすれば、2,300 Bq/kgは230 kBq/m2(23 Bq/cm2)に、1,500 Bq/kgは150 kBq/m2(15 Bq/cm2)に相当する。放射線施設内の人が触れる物の表面密度限度は40Bq/cm2とされているが、その1/10を超えて汚染した物(4 Bq/cm2)はみだりに管理区域から持ち出さないことが求められている。

・子供達が野球などで泥まみれになりながら汗を流し、人々が憩いを求めて集う場所の土壌として相応しい物では決してない。早急な環境の改善が必要である。

Tuesday, June 7, 2011

フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセンインタビュー:「福島原発事故はわれわれが考えるよりはるかに危険」パート3

まだまだ続く、アーニー・ガンダーセン氏のクリス・マーテンソン氏とのインタビュー。(パート1パート2もお読みのがしなく。パート4も出ました。)

福島第1原発事故による太平洋の放射能汚染は、すでにチェルノブイリ事故による黒海の放射能汚染の10倍。もっとも、チェルノブイリと違って、福島第1原発は太平洋岸に建っているので当然と言えば当然ですが。

なお、インタビュー・パート3の中で、マーテンソン氏は”Radiation”は外部被曝、”Contamination”は内部被曝、として区別されているようですが、そのような用法は不明にして発見することは出来ませんでした。Radiationは単に放射線を指し、Radioactive contamination、「放射線(能)汚染」と言う場合、その放射線が意図しない、望ましくない場合に汚染という言葉を使う、と英語のWikiにはあります。氏の発言を聞く限り、何か勘違いしているような気がしますが、内容を見るとそのように氏は使っているようなので、そのように訳しました。

以下、パート3。あと1、2のポストで全てカバーできるかな。(h/t 東京茶とら猫

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アーニー・ガンダーセン独占インタビュー:事態が悪化したら自分の身は自分で守ろう

マ:まずお伺いしたいのは、放射線による外部被曝の危険性と放射性粒子による内部被曝の危険性の違いです。これについてはかなりの混乱が見られ、メディアもあまり役に立ちません。ご説明いただけますか?

ガ:放射性物質には3種類あります。1つはガンマ線。原子炉が爆発した時、まずキセノンとクリプトンのガスの雲が大量に放出されました。どちらも希ガスで、皮膚などと反応することはありませんが、ガンマ線を放出します。ガイガーカウンターを持ち歩いて線量を測っていた人たちが得た数値は、基本的にガンマ線の雲を体の外から浴びている線量を示していました。ガンマ線も怖いですが、体全体に拡散します。私がもっと怖いと思うのは、放射性物質が崩壊するときに出るもう2種類の粒子、アルファ粒子とベータ粒子です。どちらも遠くまでは移動しませんが、ガンマ線よりはるかに多量のエネルギーをもっています。これらが皮膚に付着しているだけなら問題はありません。洗い流して今までどおり暮らしていけばいいのです。ですが、体内に取り込まれると特定の臓器に向かい、非常に小さな範囲の組織に大量の放射線を浴びせるので、がんを引き起こす可能性があります。これを私たちは高放射能粒子と呼んでいます。

これらの粒子はすべて放射性ですが、人体への影響の話をするときは、これらの粒子のどれかが臓器に付着してその臓器を攻撃し始めることを指す場合がほとんどです。

マ:つまり放射線には3種類あるわけですね? まずはアルファ粒子でこれは粒子、次にベータ粒子があってこれも粒子、そしてガンマ線がある。ただ単に「放射線の話をしよう」と言うのは、「車の話をしよう」というのと同じ、というわけでしょうか。一口に車といってもランボルギーニやVWやムスタングなど色々な種類がある。だから放射線についても種類があることや、放射線のレベルについて、私たちも理解しておく必要がありますね。放射線レベルというのは、全身に何レム浴びるかを示したものだと理解しています。アルファ粒子が何レム、ベータ粒子が何レム、ガンマ線が何レムというのは、それだけの量を全身で浴びますよということですね。レントゲンを撮ってX線――これもまた別種類の放射線ですが――を浴びるようなもの。それがひとつ。けれども、放射性粒子が人体の組織内で放射線を出してしまうと問題がおきる。たとえば10ミクロンの粒子を吸い込んだとして、それがたまたま放射性粒子だとしたら、それは肺の絨毛に入り込み、そこに付着する可能性がある。そして粒子のまわりのごくごく狭い領域を攻撃し、その攻撃は放射性が失われるまで、または何らかの方法で体外に排出されるまで続く。

つまり、外側からの外部被曝で亡くなるケースは非常に稀だということですね。外部被曝で死亡させるには、膨大な量を全身に浴びせる必要がある。ところが人体に入る内部被曝の場合は話がまったく違ってくる。内部被曝の場合は、放射線量で言えば非常に低いレベルでも命取りになりうる。毒殺されたレトビネンコのことを思い出しますね。彼はロシアの反体制活動家で、2006年にロンドンでごく少量のポロニウム210を投与され殺害されました。この物質はアルファ粒子を出します。彼が食べた物の中に何らかの方法でポロニウムが入っていて、最終的には彼を殺してしまった。たしか非常に短い期間で死に至ったと思います。9日か10日。ですから皆さんに本当に考えていただきたいのは、放射能を出す物質を体内に入れてはいけないということです。

そのためにはどうすればいいのでしょうか。もしもアーニー、あなたが今東京かその近郊に住んでいるとしたら、あなたはどういう行動を取りますか?

ガ:東京に限らず、アメリカの西海岸も含めたほうがいいでしょうね。同じ粒子が検出されていますから。さて東京についてのあなたのご質問ですが、東京にお住まいの方にアドバイスをするとしたら、玄関で靴を脱いで、ほこりは濡らして取ることです。ほこりを払ってはいけません。私たちの最近の調査からは、家の中の汚染レベルのほうが家の外より高いことがわかっています。過去2ヶ月のあいだに放射性物質が屋内に運ばれ続け、そのまま留まっているからです。ほこりを払ってしまったら、ほこりに付いている放射性物質をぜんぶ空中に撒き散らすことになります。それからHEPAフィルターのついた空気清浄機を買って、フィルターを頻繁に交換することをお勧めします。HEPAフィルターは粒子をとらえる能力が高いのです。それから、部屋のエアコンやカーエアコンのフィルターを新しいのと交換するといいでしょう。過去数ヶ月分の粒子が溜まっていますし、季節的にも交換にはちょうどいい時期です。あとは、解体作業は絶対に行なわないこと。家の本体から張り出した部分を取り壊すなどもってのほかです。中に何が入っているかもわからないままにほこりを舞い上げてしまい、吸い込んで内部被曝するおそれがあります。

最後にもうひとつ。4号機から目を離さないこと。もしも地震が起きて4号機が倒れたら、政府が何を言おうと信じてはいけません。それはもう科学が想像すらしたことのない領域なのです。飛行機に乗って東京を出るときです。

マ:あれこれ悩むな、すぐに動け、ですね。食べ物についてはどうでしょう。これは大きな問題ですし、アメリカ西海岸の人たちにも問題になってくる可能性があります。放射性粒子が食物連鎖に入り込む可能性はあるんでしょうか。たとえば牛乳を通じて。牛は大量の草を食べて、それがごく少量の乳になります。その過程で、草や葉野菜に含まれていたものはぜんぶ濃縮されます。草や葉野菜には放射性同位体が付着しやすいんですよね。セシウムが入り込む可能性がありますし、ヨウ素がまだ漂っていれば間違いなく入るでしょう。ヨウ素はもう出ていないはずなのに、どうやらそうはなっていないようです。食べ物に対してはどう対処したらいいでしょうか。何かを体内に一番取り込みやすいのは、物を食べることですからね。

ガ:牛乳に多く入り込むとしたらヨウ素ですね。すでに事故から80日が経過していますから、ほとんどのヨウ素はもう消えていていいはずです。放射性ヨウ素の半減期は8日ですし、大ざっぱに言って半減期を10倍した期間がたてばほぼなくなりますから。でもヨウ素は検出され続けています。これは奇妙なことであり、先ほどの再臨界の話とつながってきます。ですから日本の友人には、6月中旬までは牛乳や乳製品を避けるように勧めています。野菜をよく洗うのはとても大事なことです。それから太平洋で獲れた魚は避けること。福島から相当離れたところで獲れたと確実にわかっているなら話は別ですが。福島から100マイル[約160km]程度の沖合いだとしたら、食べようなどと考えるのもだめです。この状況は時間がたつにつれてひどくなっていくと思います。グリーンピースが独自に測定した数字を見れば、時間とともに悪くなっているのがわかります。日本海は別です。日本海の魚であれば安心して食べていいでしょう。でも、太平洋側で獲れたとわかっているなら、食べないことです。

[これはひょっとしたら実際には難しいかもしれません。東北近海で捕獲された魚でも中部、西日本の漁港で水揚げされれば中部、西日本産の魚に「化ける」かもしれませんし。訳者]

海の場合、重要な放射性同位体は2つです。1つはセシウム。これは筋肉に溜まる性質があり、魚肉はもちろん筋肉ですから、魚を食べればセシウムが体内に溜まるおそれがあります。もう1つはストロンチウムです。ストロンチウムは魚の骨に溜まります。ですから魚の骨を使った珍味を味わわないかぎり、魚を通じてストロンチウムに被曝するとは考えられません。ですが、生物濃縮というプロセスを通じて、最終的には食物連鎖の頂点にいるマグロやサケといった魚にこうした物質が入り込みます。大きな魚になればなるほど、放射性物質は濃縮されています。私が気がかりなのは、米食品医薬品局(FDA)がアメリカにやって来る魚のモニタリングを行なっていないことです。遅かれ早かれマグロがどこかにやって来て放射能警報を鳴らし、みんながマグロをダーティ・ボム(いわば、放射能汚染爆弾)扱いする日が来るからです。今はまだマグロは太平洋を越えていませんが、2013年までには西海岸で水の汚染と、食物連鎖の頂点にいる魚の汚染が問題になると私は考えています。

マ:太平洋は広大な海なので、汚染は拡散して薄まるという話をよく聞きます。でも、その話は今あなたがおっしゃった生物濃縮の問題を考慮していませんね。放射性同位元素の多くは体にとって必須の元素と似ているために、私たちの体はそれらを選択的に取り込んでしまいます。それは微生物も同じで、その微生物がもっと大きな生物に食べられ、それがまたさらに大きな生物に、と続いていくわけです。これは私たちにとっても初耳の話ではありません。水銀が生物濃縮しやすいのは知られていますし、いろいろな中毒も生物濃縮を通じて起きます。これを放射性粒子の濃度に置き換えて考えればいいわけですね。先ほど、チェルノブイリ事故時の黒海より太平洋のほうが放射能汚染がひどいという話をされていましたが、どれくらいの汚染物質が太平洋に流れ込んだとお考えですか?

ガ:先ほどの調査結果はウッズホール海洋生物学研究所のもので、もちろんここは信用ある科学研究機関です。彼らは10倍以上の汚染だと言っています。たしかに太平洋は広大です。でも10倍というのはまだ現時点での話であり、私たちがまだ危機を脱していないことを忘れないでください。チェルノブイリが終わった時点より10倍多く、しかも福島からの放射能の放出にはまだ終わりが見えません。なのにすでに10倍なのですから、心配です。50マイル[約80km]の沖合いで捕獲れた4~5インチ[約10~12cm]の小魚から、すでに許容量の10~50倍のセシウムが検出されています。もちろんその小魚はもっと大きな魚に食べられて、食物連鎖のはしごを上がっていくわけです。これは憂慮すべき事態です。海草はヨウ素を吸収するようですが、私がつい最近知ったところによれば、セシウムも吸収するのです。私はこれまで、90日たてばヨウ素はなくなるから海草は心配しなくていいと言ってきました。でもセシウムも吸収すると分かった今はそこまで確信がもてません。

マ:でも、幸い米環境保護局(EPA)は厳密な検査を実施しているんですよね?

ガ:政府の言うことに間違いはありません。

[ちなみに、EPAの検査はボランティアに頼る検査で、そのボランティアもEPAの下請け会社(ブッシュ大統領の下で働いていた人が設立した会社)に雇われているようです。5月の中旬から、食品の放射能検査などは元の通り、3ヶ月に1度の検査に戻されました。訳者]

マ:ああ、そうですね、あいにく信用できません。ともあれ海の汚染は福島の事故が残す環境への遺産のひとつですね。そうだ、言い忘れていました。色々調べているときに見つけた説なのですが、殻のある海の生物、とくにカニなどの甲殻類は殻に多量のセシウムを溜め込むそうです。セシウム汚染の件には甲殻類も付け加えたほうがいいかもしれません。

個人的な考えですが、もしも私が日本に住んでいたら、太平洋産の魚介類はすべて避けるでしょうね。あなたもおっしゃった通り、現時点ではそれが賢い判断のように思います。本当に信頼できる徹底的な監視体制が整うまでは、私自身は何事も疑ってかかりたいと思います。では、今原発の近くに住む住民や、原発の敷地内に居住する作業員は、どんな健康被害に直面するおそれがあるのかをお話いただけますか?

ガ:福島からは北と西に大きな放射能の雲が流れました。50マイル[約80km]も離れたところまでです。これだけの汚染を安価な方法できれいにするのは無理でしょう。原発から北西50マイルの地点では、セシウム濃度がチェルノブイリの立入禁止区域より高いのです。事故当時、風がおもに海側に吹いていたのは本当に幸運でした。煎じ詰めれば、日本政府がどれくらいの費用をかける気があるかの問題だと思います。半径20km圏内に住民が戻ってこられるとは思えません。とくに20km圏内の北西地域は無理でしょう。農業や畜産業も問題を抱えます。牛はこの先何年もセシウムを取り込み続けるからです。ドイツを見てください。チェルノブイリの事故から30年近くたっているのに、キノコを食べるドイツのイノシシはいまだにセシウムに汚染されています。一世代で消えてなくなる問題ではないのです。問題は相当長い期間居座り続けます。

費用については問題が2つあります。実際、結局はお金の話になるのです。原発の敷地を除染するにはたぶん300~500億ドル[約2兆4,000億円~4兆円]程度かかるでしょう。1基のクリーンな原子炉を廃炉にするには通常10億ドル[約800億円]かかります。しかし福島の場合どの原子炉にも、融けた燃料の塊が底に落ちているわけです。そういう状況でどれくらい費用がかかるのか、試算した人は今までにいません。しかもこれは原発の敷地だけの話です。東電に支払いきれるとは思えないので、この300~500億ドルは国の負担になります。これに加えて、内陸部の除染に軽く1000億ドル[約8兆円]はかかるでしょうね。

この費用の問題を私のウェブサイトに掲載したところ、「まさか、そんなに高くつくはずがない」という声が寄せられました。もちろんそれほどの金額になるには長い時間がかかりますし、津波被害からの復興費用も一部この試算に混じっているかもしれません。でも、原発から20~30km圏内の除染に1000億ドル以上かかったとしても、私は少しも驚きませんね。現実にありうる数字です。

Monday, June 6, 2011

フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセンインタビュー:「福島原発事故はわれわれが考えるよりはるかに危険」パート2

引き続き、アーニー・ガンダーセン氏がクリス・マーテンソン氏と行ったインタビューの日本語訳をお届けします。長いですが、あとまだ2、3のポストでは終わらないような...。プリントアウトして、ゆっくりお読みになることをお勧めします。(h/t 東京茶とら猫)

パート1もお忘れなく。パート3パート4出ました。)

東京で走っていた車のフィルターから、ストロンチウム、セシウム、アメリシウムが出ていたそうです。

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マ:3号機が爆発したときに「おや?」と思ったのは、1号機の爆発のときとはまったく違ったからです。3号機のときは、強力なエネルギーが集中して上に向かったように見えました。あれがあなたのおっしゃる「即発臨界」というものですか?

ガ:はい、私はあれが「即発臨界」だったと考えています。即発臨界による爆発は、専門用語で「デトネーション(爆轟)」と呼ばれて区別されています。いずれにしても大きな爆発です。3号機の爆発は激しいものであり、私は放射性粒子が飛び散った距離から見て爆発の炎がどれくらいの速度だったはずかを計算してみましたが、爆発による衝撃波の速度は時速1,000マイル[時速約1,600km]を超えていなくてはなりません。それがデトネーションです。デトネーションでは衝撃波自体が途方もない破壊力をもっています。もしも3号機の原子炉の底に溜まった燃料が下に落ちて水蒸気爆発を起こせば、同じようなデトネーションが再び繰り返されるわけです。

マ:どう考えても良い話ではありませんね。もしもそういう懸念があるのだとしたら、何か打つ手はあるんでしょうか。非常に難しいんじゃないかと思うんです。再臨界の「呼吸」が続いているために余分な熱が発生している、まあどういう理由にせよ炉心が非常に高温になっているとしたら、注水を続けて運を天に任せる以外に何ができるんでしょうか。

ガ:その2つ以外にやるべきことがもう1つあります。水で覆い尽くすことです。圧力釜の外側も内側も水で満たせば、今よりもっと冷却することができ、圧力容器の大事故を防ぐことができます。ですが、現時点では、十分に水を満たすことは希望にすぎません。それに1つ心配なのが、これは4号機にも関係してくるんですが、余震の問題です。原子炉に水を入れすぎると重くなりますが、原子炉というのは重い状態で、余分な水が何十トンも入った状態で揺れるようなつくりになっていません。ですから、もしも大きな余震が来たら、3号機と4号機は非常に危険な状態になります。スマトラ大地震を思い出してください。3、4年前にマグニチュード9を超える地震があり、その最大の余震が来たのは3ヶ月後でした。余震のマグニチュードは8.6です。ということは、3.11の地震からすでに2ヶ月以上が過ぎているとはいえ、スマトラの例に照らせば、まだ大きな余震が起きる可能性はあるわけです。

マ:なるほど。では4号機も同じ危険にさらされているわけですね? 4号機では燃料棒は取り出されていてプールの水に浸かっていたと記憶しています。現時点での4号機の問題とは何でしょうか。

ガ:おっしゃる通り、4号機では原子炉は運転されていませんでした。燃料はすべて取り出され、使用済み燃料プールに入れられていました。つまり、燃料が格納されていなかった、ということです。使用済み燃料プールは外側から丸見えの状態です。上空にヘリコプターを飛ばした確認では、吹き飛んだ建屋の隙間から使用済み燃料プールに入っている燃料が見えます。4号機が停止したのは昨年の11月だったので、使用済み燃料はまだかなり高い温度を保っています。プールにはまだ多量の崩壊熱が残っているのです。ニューヨーク州にあるブルックヘブン国立研究所が1997年に行った研究によれば、燃料プールの水が蒸発して火がつくと、187,000人の死者が出るおそれがあります。これは非常に憂慮すべき事態であり、もしかしたら福島第一原発で一番恐れなければならない問題かもしれません。最近、NRCの委員長が語ったところによれば、彼が事故後に在日アメリカ人に対して原発から50マイル[約80km]以上離れるように指示したのは、4号機に火がついて、むき出しの燃料プールからプルトニウムやウラン、セシウム、ストロンチウムが気化するのを恐れたからです。ブルックヘブンの研究を信じるなら、10万人以上の死者が出てもおかしくないからです。

マ:死者というのは被曝によって将来的にがんを発症するということですか?それともすぐに死に至る?

ガ:高放射能粒子によって将来的にがんを発症するということです。

マ:つまり4つのユニットがあって、いずれもそれぞれの危機に直面しており、すべてから放射線が出て環境が汚染された。まずお聞きしたいのは、本当のところどれくらいの放射性物質が放出されたのでしょうか。それから、かなりの量が海に流れ出ていると思うのですが、どれくらいの量が出て、それらは今どこにあるのでしょう。現時点で原発施設の周囲にどれくらいの汚染物質が存在するのか。そして台風シーズンが来たらどんなことが起き、どんな困難が予想されるのか。

ガ:私はこれまで、今回の福島の事故はチェルノブイリよりひどいと言い続けてきましたし、その考えは今後も変わりません。事故後の2、3週間で膨大な量の放射性物質が放出されました。もしも風が内陸に向かって吹いていたら、日本は滅びていたかもしれません。それくらい大量の放射性物質が出たわけですが、幸運にも太平洋のほうに流れていきました。もしも日本を横断する形に流れていたら、日本はふたつに分断されていたでしょう。ですが、今では風向きが変わって南に向かっています。東京の方角です。今私が心配しているのは大きな余震が起きて4号機が倒れること。もしそうなったら、日本の友人の皆さん、逃げなさい。そんな事態になったらこれまでの科学はいっさい通用しません。核燃料が地面に落ちて放射能を出している状態など、誰も分析したことはないのです。

原発からは蒸気が立ち上っているのが見えますが、夏になってしだいに熱くなると蒸気が減ったように見えるはずです。でもそれは蒸気が出ていないわけではなく、見えないだけです。事故が起きたのは3月でまだ寒かったために、蒸気が見やすかったのです。原発からはまだ大量の放射性物質が出ています。最初の2週間ほどではありませんが、それでもかなりの量です。おもにセシウムとストロンチウムが南に向かっていきます。台風が来ても来なくても同じこと。風向きによって今は南に流れていきます。これから気をつけなければならないのは、ガイガーカウンターで測れるような総被曝量ではなく、高放射能粒子です。

マ:すでに東京でも放射能汚染を示すデータが得られているという記事を読んで驚きました。私にはかなり高いように思える数値です。土壌から3,000~4,000ベクレルとか、汚泥の焼却灰から170,000ベクレルとか。でもこの高いほうの数値は焼却灰の数値ですから、焼却炉なり、何らかの焼却プロセスを経ているわけですよね。これは相当ショッキングなレベルだと思います。風向きが南に変わり、こんなに高い数値が出るほどの汚染物質がこれほど離れたところまで達するなんて、ぜんぜん知りませんでした。どれくらいの量が、どうやって、いつ東京まで行ったのか、自分がよくわかっていなかったことに戸惑いました。こうした数値は3月には出ていたのに、4月下旬になるまで公表されなかった。この種の情報は把握していらっしゃいましたか? この数値をどう解釈されますか?

ガ:情報は把握していました。私もあなたと同じくらい戸惑っています。個人の方々からフェアウィンズ宛に、東京を走る車のエアフィルターが送られてきたんですが、それは放射線量を測るのにうってつけの方法だとわかりました。フィルターは高放射能粒子をたくさんつかまえているからです。自動車の車体工場か何かを経営している方からフィルターが7個送られてきて、そのうち5つには問題がありませんでしたが、2つは信じがたいほど放射能に汚染されていました。このことからわかるのは、放射能の雲は均一に広がるのではないということです。あまり溜まらない場所もあれば、たくさん溜まる場所もある。福島より北の地域についても同じです。しかし東京の場合、公表されている公式な測定結果がなんであれ、放射能の雲の最悪の状況を反映していないように思います。私はスリーマイル島でも同じ経験をしました。放射能の雲は曲がりくねって流れたり、雲が大きな放射線計の数百メートル脇を通ったために検知されなかったりということはあるものです。意外ではありません。数値に現れないから存在しないのではなく、ただ単に検知されなかっただけなのです。

マ:たしかに流体力学とはそういうものですね。コップの水に染料を一滴垂らして、その染料が渦を巻きながら動いていくのを見ていると、染料が濃い場所と薄い場所ができます。それと同じです。それにチェルノブイリ事故のあとでベラーシやウクライナなどがどう汚染されたかを見た人なら知っているように、チェルノブイリを中心に大きな円ができるわけではないんです。放射能の溜まる場所があちこちに現れるという、非常に非常に複雑な地図ができます。たぶん私が驚いたのは、それほど大量の放射能がそんな南で溜まる可能性があるという危険信号をどこからも聞いていなかったからでしょう。でも実際はそうだったわけです。じつに興味深いですね。

ガ:何が起きたかというと、放射能の雲は海に出たあと、南向きに曲がって、それからさらに西向きに曲がったのです。ちょうどフックのような形ですね。放射能の雲は海に出てから、沖の風で南に運ばれ、それから西に運ばれて東京に達した。その雲に含まれていた粒子が車のエアフィルターに詰まっていました。ストロンチウム、セシウム、そしてアメリシウムです。燃料が損傷した証拠です。

マ:それはたしか韓国にまで達したのと同じ雲ですね。そのとき韓国では一部の学校を休校にしました。ちょうど雨だったので、多量の放射性物質が降ってきていたからです。たしかにフックのように大きく南に曲がってから西に曲がらないと、韓国には届きません。一連の流れのなかでそうなったわけですね。しかもその雲には非常に高い放射性を帯びた粒子が含まれていた。そういえば最初のうち、私が一番怖かったのは2号機です。妙に落ち着いて見えるのがかえって怖かった。横に小さな穴が開いていて、そこから四六時中、絶え間なく蒸気が出ていました。でも蒸気に何が入っているかわかっていたので、これは相当に放射線量が高くなるぞと思ったものです。

ガ:2号機はこれ以上悪くなりようがないところまできています。燃料が格納容器の底に落ちていて、その格納容器には穴があいているからです。悪い状況であることに変わりはありませんが、これ以上は悪くなりようがないのです。目下の懸念は、原子炉を冷やすのに使われている毎時何十トンという大量の水です。当初の計画では、熱交換器を取り付けて水を冷却しながら、原子炉内の水を循環させるはずでした。こういうやり方なら新たな水が発生することはありません。ところが実際は、放射能に汚染された水が何十万トンと発生してしまいました。低濃度の放射能ならいいのですが、そうではないのが問題です。

汚染水の脱塩やろ過をしようとすると、フィルターや脱塩装置の放射能濃度が高くなりすぎて、フィルターが溶けるおそれがあります。フィルターはプラスチック素材でできていますし、フィルターを交換したくても人が近づけないからです。ですからこれは非常に難しい問題です。高度に汚染された水が大量にあるために、水を除去する作業が非常に困難なものになっています。

マ:作業上のほかの難題についても考えてみたいと思います。その大量の水を彼らがどうするつもりなのかはわかりませんし、たぶん彼ら自身にもわからないんじゃないかと思うんですが、ともあれ今は水を巨大な貯蔵タンクに移しています。最近読んだ記事によると、そのタンクが漏れているか、少なくとも水の一部がタンクの外に出たとか。[これは、集中廃棄物処理施設に移送していた水が建屋内の通路に漏れ出した話の誤認でしょう。]だとしたら水漏れしているんでしょうね。技術者や除染作業員はこれからどんな難題に直面するのでしょう。今、作業環境はどういう状態なのでしょうか。

ガ:どうみても、危機を脱したとはとうてい言えません。屋外で作業をする人は、完全に密閉された防護服を着ています。顔のところに隙間ができないようにテープでふさぎ、ガスマスクを装着します。ガスマスクには活性炭フィルターがついていますが、そうはいってもガスマスク越しに外の空気を吸って肺に取り込むわけです。防護服を着ていると暑く、汗でベタベタします。しかも絶えず放射線計に目を配ってなければなりません。でもこれは、不快ではありますが命にかかわるものではありません。建屋の中で作業をする人には別の問題が生じます。中に入るとき、作業員は基本的にバブルスーツを着て、消火作業中の消防士のように酸素ボンベを背負います。スコット・エアパックと呼ばれるものです。酸素ボンベを背負って真っ暗闇の中に入っていきます。至る所に水がたまっていて。黒々と瓦礫が散らばっています。何より放射線量が非常に高いうえ、たぶん15kg前後の装備で作業をしなければならない。放射能で汚染されていなくても、そのような環境の中で時間を過ごすのは厳しいものです。暑く、湿気が多く、1時間かそこら作業をしたらいやになってしまうでしょう。でも放射線レベルが非常に高いので、作業員はおよそ15分で外に出されます。たったそれだけでも、アメリカ人の作業員が5年間で浴びる最悪の放射能と同程度の被曝をしてしまうのです。今では彼らは作業を急いで10分以内で切り上げるようにしています。[アメリカの放射線作業員の年間被曝許容量は、50ミリシーベルトです。]

マ:日本は作業員の年間被曝許容量を250mSvに引き上げたんですよね。では、その上限に達した労働者はどうなるんでしょうか。

ガ:希望的には、いかなる理由があっても彼らはそれ以上の被曝を許されない。1ヶ月や1年間隔をあけるだけではなく、それ以上は絶対に被曝させるべきではありません。これは経験則ですが、250レムを浴びたら人は死にます。10人の人が25レムの被曝をすれば、そのうち1人はがんを発症します。100人の人が2.5レムを浴びたら、そのうち1人ががんになります。ですから、被曝量が少なくても絶対にがんにならないわけではないのです。今作業員がやっていることは、がんになる確率を高めているのと同じことです。ちなみに250ミリシーベルトは25レムです。がんになる確率を10%高めているわけです。

マ:そうなんですか。私が見た数値は恐ろしいレベルで、一部のエリアでは1Sv台に達していたり、それよりさらに高いところがあったり。壊れた建屋の中に人々を送り込んでいる。私が気になっているのは、ああいう特殊な施設で作業する訓練を受けている人は数にかぎりがありますよね。作業員は施設についても、システムや部品についても熟知していなければならないし、それこそ廊下をどう進んでいけばいいかということもわかっていないといけません。でも、彼らに割り当てられた被曝許容量を使い切ってしまったら、彼らはもう働けないわけですよね?また中で作業できる人を新たに訓練するんでしょうか。チェルノブイリの事故のとき、ロシアは何十万人もの作業員を投入して、一人当たり少しずつの時間で除染作業に当たらせました。今回の日本の対応はそれとはまったく違っています。もっと慎重で、作業チームの人数もかなり少ないように私には思えます。衛星写真を見ても、何十万人もの作業員が群がっている様子は確認できません。ターゲットを絞った対応をしているように思えます。そうしたやり方で仕事を終えるには、どれくらいの期間かかると思われますか?

ガ:ロシアが大人数を動員しなければなかったのは、周辺の農地に核燃料の大きな破片が飛び散ったからです。作業員は文字通り破片を拾って手押し車に乗せ、原子炉があった場所に走って戻り、原子炉ピットに破片を捨てたらお役御免です。それでも一生分の放射能を浴びました。福島の場合、放射能は封じ込められてはいないのですが、拾えるような固形の破片から出ているわけではありません。放射能は汚染水から出ています。ウッズホール海洋生物学研究所によれば、福島の海はチェルノブイリ事故時の黒海の10倍も放射能に汚染されています。チェルノブイリの事故で人海戦術を取ったのは原子炉が爆発して飛び散ったからであり、福島の場合は爆発が起きたのはたしかですが、放射能の大部分は下に行き[建屋地下の汚染水など]、その処理に手をつけ始めたばかりという状況です。すでに福島ではアメリカからの作業員受け入れていますし、この先もまた受け入れるんじゃないかと思います。私はとある会社の副社長としてそういう仕事にかかわったことがあります。放射能レベルが非常に高いエリアで働く作業員を雇い、実物大の模型を使って2、3週間かけて訓練します。作業員は高レベルエリアで3分間の作業を行なって、1年分の被曝を受けます。私たちは彼らに報酬を支払い、どうもありがとう、来年また会いましょう、と言います。福島でもそういう状況になるでしょう。

マ:現実的な話をすると、この先何ヶ月か何年かはわかりませんが、とにかく長い時間がかかるということですよね。福島では今何が行なわれているんでしょうか。これからまわりを何かで覆って封じ込めるのか、原子炉が最終的に冷却されるまで注水を続けながら、その過程で発生した水を回収していくのか。それとも、もうお手上げだと諦めて、ただ大量のコンクリートを流し込んで作業を終えるのか。

ガ:最終的には諦めてコンクリートを流し込むときが来るかもしれません。でも今はまだできません。炉心の温度が高すぎるからです。ですからあと1年くらいして炉心が冷えるまでは、今と同じ様な作業が続くでしょう。炉心が冷えれば、現時点とは比べ物にならないくらいわずかな崩壊熱しか出ませんので、コンクリートで固めてそのまま放置するという選択肢を検討できるようになります。チェルノブイリのときのように巨大な墓をつくるわけです。1号機、2号機、3号機はこれでうまくいきます。ですが、4号機には問題が残ります。使用済み燃料プールが建屋の最上部にあるからです。最上部にコンクリートを流したら建屋は崩壊します。しかも放射能レベルが非常に高いので、核燃料を取り出すこともできません。私は昔、こういうことをして暮らしを立てていたわけですが、この4号機にはお手上げです。

マ:では彼らはどうすると思いますか?

ガ:4号機の建屋を囲むようにもうひとつ建屋を立てるしかないと思います。そして、150トンの重量を吊り上げることのできる巨大なクレーンを使用して、使用済み核燃料をキャニスタ[使用済み核燃料を封入する容器]に入れるのです。スリーマイル島では似たようなことが行なわれました。スリーマイルの場合、核燃料は圧力容器の底に溜まっていたわけですが。ともあれスリーマイルでは3年、いや4年かけて溶けた燃料を取り出しました。ただ福島の場合の問題は、その作業ができる巨大クレーンがすべて破壊されてしまったことです。少なくとも1号機、3号機、4号機のクレーンは破壊されています。しかもその作業は空気中では行なえません。水中でする必要があります。ですから、たぶん彼らは建屋のまわりに建屋を立てて、遮蔽と水を十分に供給し、それから中に入って重いキャニスタに燃料を入れるのではないかと思います。

マ:なるほどそれは思いつきませんした。素晴らしいアイデアですね。

では、ここまでのところをまとめてみましょう。4基の原子炉があって、うち3基は溶けて穴が開いている。うち1基、つまり4号機は、まわりに新たな建屋をつくるのに何年もかかることから考えて、たぶん危険性がほかの原子炉より高い。事態が本当の意味で収束するにはこれから何年もかかる。しかも4号機の場合は、新たな建屋をつくっているあいだに余震に襲われるかもしれない。また3号機では、余震が来たときに圧力容器に水が満たされていたら、また爆発が起きるおそれがある。まだまだ予期せぬ出来事が起きそうだと思うと、現状が安定しているとはいえませんね。意外な場所から水が出てきたり。ほかにも建屋やどうなるか、システムがどうなるか、予断を許しません。あと何か付け足す点はありますか?

ガ:地下水です。私は非常に心配しています。地下水の汚染レベルを測定したという話をまったく聞きません。海の状態はわかっています。汚染水が海に漏れています。建物の構造に亀裂が生じて、高汚染水が地下水に入り込んでいない保証はどこにもありません。私は日本の人たちにも話をしてきたのですが、原子炉のまわりに堀を巡らせるのがいいと考えています。岩盤に達するまで20mくらいの深さに掘り、幅は1.5m程度。そして堀をゼオライトという物質で満たします。ゼオライトは放射性物質を吸着する能力が高いので、放射線が外部に放出されるのを防いでくれます。なぜまだそうしないのか、理解に苦しみます。

建屋の問題、冷却の問題、放射能の大気放出を止める問題を見てきましたが、問題はこれだけではありません。今現在、土壌には膨大な量の放射性物質が含まれています。福島に近い県では、下水の汚泥から放射能が検出されました。ある下水会社の重役が私たちのサイトを見て教えてくれたのですが、地震のあとで地下水が下水システムに入り込むのは珍しくないそうです。それを聞いて私はとても怖くなりました。もしも周辺の県の地下水がすでに汚染されているとしたら、深刻な問題だからです。それなのに今は誰も注意を向けていません。

マ:一般に、地下水というのはどれくらいの速度で移動するものなのでしょう。たとえば原発から3マイル[約4.8km]離れたところまで行くのに10年かかるのか、10週間なのか。地下水の汚染がただちにどの程度の大問題につながるのでしょうか。

ガ:ただちにどうこうという問題ではないと思います。ですが、早く手を打たないと、切迫した問題に発展しかねません。地下水はゆっくり動きますが、すでに原発から出ているとなると厄介です。より離れたところにより大掛かりな堀を掘らなくてはならなくなります。私が目指しているのは、できるだけ発生源の近くで放射能をつかまえることです。

マ:どうもありがとうございました。では次に、今回の事故によって住民が具体的にどんな影響を受けるかを考えていきたいと思います。

Sunday, June 5, 2011

フェアウィンズアソシエーツのアーニー・ガンダーセンインタビュー:「福島原発事故はわれわれが考えるよりはるかに危険」パート1

パート2パート3パート4出ました。)

6月3日付けのクリス・マーテンソン(Chris Martenson)氏の独占インタビューで、このブログでもおなじみのフェアウィンズ・アソシエーツのアーニー・ガンダーセン氏が福島第1原発の現状を解説、放射能が今後健康に及ぼす危険性などについて、詳しく語っています。インタビューは非常に長く、日本語訳も何回かに分けてお出しします。

クリス・マーテンソン氏のサイトは以前から見ていましたが、経済、金融を中心にした分析がメーンです。いわゆるMainstream(主流)ではないことは、同じくMainstreamではないやはり経済、金融がメーンのゼロヘッジなどのサイトに頻繁にリンクされることでも明らかですが、3月11日の福島の事故以来、何度か福島関係のポストを出しています。

以下、インタビュー日本語訳パート1。最初の10分ほどです。ガンダーセン氏は、福島の3号機が原子炉内の燃料の10分の1ほどが、再臨界を起こしては止まる、ということを繰り返しているのではないか、と考えているようです。

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クリス・マーテンソンによるアーニー・ガンデーセン独占インタビュー:「福島はわれわれが考えるよりはるかに危険であり、その危険ははるかに長く続く」

クリス・マーテンソン(司会、以下「マ」):
今日のゲストはフェアウィンズ・アソシエーツのアーニー・ガンダーセンさんです。ガンダーセンさんは原子力工学界の生きた伝説というべき方です。39年以上にわたって原子力産業とその監視に携わり、原子力の安全性に関する問題で連邦政府や民間企業からたびたび専門家証人として発言を求められてきました。

福島での事故が起きた直後から、アーニーとフェアウィンズのスタッフは徹底した、扇情的でない正確な状況分析を行なってきましたた。東電、日本政府、メディアからの情報が十分に得られなかっただけに、さぞ困難な作業だったことでしょう。今日は福島第一原発の最新状況についてお話を伺います。事故は収束とは程遠く、非常に厳しい状況が続いています。私たちも目を離してはいけないのです。しかも今日は、私たちが知っておくべき重要なポイントや、原子力発電所の近くに住む、あるいは原子力発電所をもつ国に住む住民にとっての具体的なアドバイスもしていただく予定です。ということでアーニー、出演していただいて光栄です。

アーニー・ガンダーセン(以下「ガ」):
ありがとう。あなたのサイトの読者が大勢私たちのサイトにも来てくれています。感謝しています。

マ:私の読者は意見と切り離した事実、真実を知りたがっています。この機会に、複数ある原子炉の現状がどうなっているのかを教えていただきたいと思います。まずお聞きしたいのは、福島で何がどのように起きたのか。設計上のミスなのか、単に津波に襲われて運が悪かっただけなのか。そもそも絶対に起きないと繰り返し聞かされてきたことが実際に起きるなんて、どうしてそんな事態に至ったのでしょうか。

ガ:ちょっと物理学の話になりますが、原子炉が停止しても、熱は出続けます。当初もっていた熱量のわずか5%ではありますが、もともとの熱量が何百万馬力もあるわけですから、5%でも大変な量です。だから停止したあとも原子炉を冷却し続けなければなりません。福島では「全交流電源喪失」と呼ばれる事態が起きました。それは想定されていたことです。全交流電源喪失とは、非常用蓄電池以外のいっさいの電源が失われることです。蓄電池だけでは原子炉冷却のための巨大なモーターを回すことができません。それでも、全交流電源喪失が起きても4、5時間でどうにか電源を回復できるというのが当初の想定でした。ところが福島では津波の規模があまりに大きく、ディーゼル発電機が壊れ、「原子炉補機冷却海水設備2」と呼ばれるものも壊れてしまった。要するに大きなポンプに電力をまったく送れなくなったということです。

では、このような事態は予想できたのでしょうか。福島第一原発は7mの津波を想定してつくられていました。実際の津波は10m以上。おそらく15mを超えていたと見られています。設計上の津波の想定が甘すぎるという指摘は以前からありました。少なくとも10年前からはそう指摘されていましたし、それ以前にも警鐘を鳴らす人たちはいたはずです。かりに想定していたとしても、ここまでの大きさのものが予想できたでしょうか。はっきりしたことはわかりませんが、もっと小規模な津波であっても備えが十分でなかったのは確かです。

マ:つまり津波に襲われて装置類が水浸しになってしまった。ほかにも設計上の問題があったと聞いていますが。たとえば、発電機の設置場所に安全上の問題があったとか、予備電源設備がたまたまぜんぶ地下にあったために全滅してしまったとか。ところが事故当初の彼らの発表は「心配いらない、原子炉はすべて緊急停止(スクラム)したから」というものでした。ところが、24時間も経たないうちに今度は「海水を注入している」という。海水の注入を始めた時点で、誰が見ても深刻な状況になっている、ということは明らかだったと思うのですが?

ガ:その通りです。海に船を浮かべたことのある人なら誰でも知っていることですが、海水は塩水ですからステンレススチールとはあまり相性がよくありません。500度(260℃)の高温状態でのステンレススチールと塩水の相性は最悪です。おっしゃる通り、福島原発には弱点がありました。鎧にあいた穴のようなもので、ディーゼル発電機はそのひとつです。ですが、たとえディーゼル発電機が高い位置に設置されていたとしても、先ほどお話した「原子炉補機冷却海水設備」のポンプが壊れてしまったのですから、やはりトラブルは発生したでしょう。このポンプはディーゼル発電機を冷やすためのポンプです。ですから、仮にディーゼルが故障していなくても、津波のせいでディーゼルの冷却水は止まってしまっていたわけです。ですから、ディーゼル発電機のせいにするのはお門違いです。

マ:では順番に見ていきましょう。1号機については、つい1週間ほど前に彼らはついに認めましたね。こちらではすでに一部から指摘されていたことですが。つまり、1号機の燃料は部分的損傷以上の状態、もしかすると完全なメルトダウンかもしれないということです。あなたは1号機をどう見ていますか? そして1号機の現状は?

ガ:水素爆発が起きるとき、燃料の外側は華氏2200度(1200℃)以上、内側は華氏3500度(1900℃)をはるかに超えています。燃料はもろくなり、燃え、融けて溶岩の塊のようになって原子炉の底に落ちます。1号機がそういう状態になっていることは多くの人にとって明らかでしたし、米原子力規制委員会(NRC)も把握していたはずですが、3月の時点でNRCはそのことを言いませんでした。ともあれ原子炉の底に溶岩の塊が落ちているも同然だったわけです。ここで指摘しておきたいのは、原子炉の外側には格納容器があるということです。つまり守ってくれるバリアがもう一重あるわけです。ところが、原子炉内が高温になって水分が蒸発したため、消防車のポンプを海につないで海水を原子炉内に注入した。燃料がそれぞれ管状の構造を保っていたのであれば、水がウランを覆って十分に冷却することができたでしょう。しかし、塊になって原子炉の底に落ちている状態では、水は塊の上表面にしか当たらないため、融けた塊はさらに下に落ち始めます。1号機のような沸騰水型原子炉の場合、原子炉の底に制御棒を貫通させるための穴が70個くらいあいています。私はこの穴が弱点になったのではないかと考えています。融けた燃料の塊は中心部が華氏5000度(2760℃)です。たとえ外側は水に触れていても、内部は華氏5000度(2760℃)なのです。ですから穴を通って溶け出して格納容器の底に落ちます。

それが今現在の状況です。原子炉はないも同然で、ただ大きな圧力釜があるだけです。融けたウランは格納容器の底に落ちています。格納容器の底は平たいので、落ちたら広がります。この先、コンクリートの床まで融かして進んでいくとは私は思いません。長い時間をかけて少しずつそうなる可能性はありますが。ですが、すでに損傷は起きてしまいました。格納容器に亀裂が入り、そこから水が漏れているのは明らかだからです。>水を上から注入していますが、水を上から入れて底から出るに任せる、と言うのは、事故に遭った原子炉を冷やす方法として最適なものとはいえません。上から水を入れ、水は原子炉の底から出て行き、さらに格納容器の亀裂から漏れ出て行きます。その水は、ウラン、プルトニウム、セシウム、ストロンチウムにじかに触れた水です。その水がそうした放射性同位体をすべて含んだまま、液体として、あるいは気体となって周辺に拡散したわけです。

マ:では、燃料が融けたとき、それは単なる崩壊熱によるものだったのでしょうか。再臨界であるとか、核反応と呼べるような何らかの事象が起きたわけではなく、原子炉が運転されていたときに存在した同位体の崩壊熱だけが原因で? それだけで華氏5,000度(2760℃)に達するには十分だと?

ガ:そうです。4~5%という富化度[含有度]の低いウランが融けても、再臨界は起こせません。福島第一原発で臨界が起きているとすれば-そしてヨウ素131が依然として検出されているのでその可能性は十分にあるのですが-それは1号機の炉心からでも2号機の炉心からでもありません。どちらも塊になって格納容器の底に落ちているからです。

マ:なるほど、つまり燃料の塊は、一番内側にあるスチール製の大きな圧力容器から出て、今は格納容器の平たい底に落ちている。この底はコンクリートでできている。そして1号機と2号機はだいたい同じ状況にある。では、3号機はどうなっているのでしょうか。

ガ:3号機の場合は燃料が圧力容器から融け出ていない可能性があります。一部が底に落ちているのは確かですが、圧力容器の外には出ておらず、一部の燃料は依然として燃料らしい姿を保っている可能性があります。もろくなっているのは間違いないでしょうが。じつは、燃料がそのような状態になっているときには再臨界が起こりえます。それだけではありません。1号機から4号機までのどの燃料プールでも、臨界が起きる可能性があるのです。高濃度の放射性ヨウ素がたびたび検出されていることから考えて、4つの燃料プールのどれか、または3号機の原子炉が、ときおりひとりでに燃え始め、高温になりすぎると自動的に停止するというサイクルを繰り返しているのではないかと私は考えています。いうなれば呼吸をしているのです。

マ:なるほど。つまりその呼吸をしているときには、核分裂反応が起きて多量の熱が生まれ、そしてもちろん多量の同位体が発生するのでその崩壊熱がまた発生する。そういう呼吸が起きているとしたら、いずれかの構造内の小さな一部分で核分裂が維持されているのか、それともその状態はかなりの規模で起きているのか。どちらだとお考えですか?

ガ:かなり多量の核燃料でその状態が起きていると思います。たぶん原子炉の炉心の10分の1くらいが核分裂を始めたり止まったり、始めたり止まったりを繰り返しているのではないでしょうか。そのせいで余計に熱が発生します。上から水を注いだくらいでは、原子炉の10分の1の熱を除去することはできません。

しかも3号機にはもうひとつ問題があって、NRCも昨日初めてそれに言及したのですが、先ほどもお話しした海水と鉄の相性の問題です。NRCは原子炉の底が割れるおそれがあると、文字通りに割れて中身を全部ぶちまけてしまうおそれがあると考えています。というのも、高温の鉄が塩に触れたら、腐食するのにおあつらえむきの状況ができてしまうからです。ですから3号機で非常に恐ろしいのは、原子炉の底が割れて、中に残っているものがすべて、それが炉心全部であれ何であれ、何もかもが一気に落ちるかもしれないということです。そうなったら「水蒸気爆発」が起きる可能性があります。確率は100分の1くらいでしょうか。明日そうなると言っているわけではありませんが、もしも炉心が壊れたら水蒸気爆発が起きます。ただし、炉心が壊れるかどうかはわかりません。水蒸気爆発が起きたら、すでに起きた水素爆発のような激しい爆発になるでしょう。