Friday, September 30, 2011

安定ヨウ素配布記事でウォールストリートジャーナル紙が日本語版から省いた情報

同じ記事を英語ブログに出すために英語記事を斜め読みした結果発見。日本語に出したら都合が悪い、との日本語版の編集者の判断なのでしょうか。結構重大なことです。(もっとも、単に私が知らなかっただけなのかも知れませんが。)

先にブログでご紹介した日本語記事では、この部分です。

原子力安全委員会はもともとスクリーニング基準の引き上げには慎重だった。同委員会は3月14日、福島県に対し1万3000cpmに据え置くよう助言する声明を発表した。

ところが、ウォールストリートジャーナルの英語記事ではこの後にしっかり続きがあったのです。赤字強調部分です。

The NSC was initially cautious about allowing the higher screening benchmark. On March 14, it issued a statement advising Fukushima to stick to the current level of 13,000 cpm, noting that level is equivalent to a thyroid-gland exposure level at which the International Atomic Energy Agency recommends disbursing KI. The World Health Organization advocates one-tenth of that level for giving the medication to children.

この部分を訳すと、とんでもないことが書いてあります。

この1万3000cpmというレベルは甲状腺の等価線量で国際原子力機関(IAEA)が安定ヨウ素剤の配布を勧めるレベルである。世界保健機構(WHO)は、その10分の1のレベルを、安定ヨウ素剤を子供に投与する目安としている。


世界保健機構の目安を採用したら、子供には1300cpmの放射能で安定ヨウ素剤を服用させるべきだった、ということになります。

この部分の正誤の確認はとっていません。ウォールストリートジャーナルの記者が誤謬を記載するとも思えませんが、その可能性も無いとは言えません。

とはいえ、福島原発事故から6ヶ月以上も経ってなお、日本語では書かない情報が英語では発信されている、という状態が続いているのも、正常ではありません。

3 comments:

  1. EX-SKF様

    いつもありがとうございます。

    ・ヨウ素剤配布のスクリーニングレベルについての時間的なまとめのようなものがこちらにあります。
    http://blog.goo.ne.jp/neetpf/e/6121d4ef0c246300ee524d164e9e1fcb

    ・3/19に原子力安全委員会から13000CPMから10万CPMに変更するという旨の助言が出ているようです。
    http://www.nsc.go.jp/ad/pdf/20110319_4.pdf

    ・安定ヨウ素剤の配布についての一般的な介入レベルについてはここに書いてあります。
    5-1 国際機関における安定ヨウ素剤の服用に係る介入レベル等
    http://www.remnet.jp/lecture/b03_03/4-5.html
    100mSvとなっています。WHOが1/10を推奨している点も記載があります。

    ・こちらにも10万CPM引上げの経緯のようなまとめがあります。
    http://togetter.com/li/180824

    上記より安定ヨウ素剤配布の介入レベルは100mSvであり、それを与える体表面汚染密度のスクリーニングレベルは13000CPMである(しかしそれはその後10万CPMに引き上げられた)。WHOの子どもへの推奨はその1/10である。
    ということで記事内容は正しいと言えるように思います。

    ご参考まで。

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  2. Nguyen_ducThuanさま、いつも貴重な情報ありがとうございます。記事は正しかったわけですね。

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  3. NSCが誤解しているのかWSJが勘違いしているのか分かりませんが13,000cpm、100,000cpmというスクリーニングレベルは内部被ばくとは何の関係もありません。あくまでも表面の汚染のレベルで、超えていたら除染(洗浄)しましょう、というものです。
    汚染スクリーニングではガイガーミュラー計数管を使って検出部を対象から数cm離した状態でサーベイし、計数値(単位はcpm)を記録します。高い値が出やすいのは手のひらや靴の裏です。一方、甲状腺被曝の検査ではNaIシンチレーション式線量計を使い、検出部を喉に押し当てて計測、バックグランドを差し引くという手順で行います。検出値はcpmでも表示できるものもありますが、日本では一般にμSv/hで管理します。
    つまり、汚染サーベイでは甲状腺被ばくは検査できず、13kcpmが甲状腺等価線量100mSvにequivalentというのは明らかな誤りです。
    尚、ヨウ素剤を使用するレベルはIAEAとWHOで10倍の開きがあることからも分かるとおり、国によっても基準はバラバラです。日本では100mSvと比較的高めの値を採用していますが、これは日本の食文化が海草類などからのヨウ素摂取が多いことによります。ヨーロッパ内陸国とは大きく事情が異なるのです。

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