ミリじゃないですよ、みなさん。1.2シーベルト(1200ミリシーベルト、1200000マイクロシーベルト)の被曝でもまったく大丈夫、とおっしゃるのは、オクスフォード大学名誉教授(粒子物理学専門)のウェード・アリソン博士。
先日(10月3日)東京の日本外国特派員協会での教授の講演資料が、米国商工会議所のサイトに上がっています。ざっと翻訳してみましたのでご参考になさってください。厚生労働省放射線審議会の年間人工被曝許容量20ミリシーベルトに引き上げ勧告、なんて目じゃありません。アリソン教授の提案で行くと、6日で20ミリシーベルトの被曝をしてもまったくOK、と言うことになります。
教授は福島でチェルノブイリの教訓が生かされていない、とし、その例として、次のようにおっしゃっています。(スライド12ページ):
『避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。』
しかしなんといっても驚くのは17ページ目。博士が提案するのは、「比較的安全な最大レベル」の被曝量の設定。その数字は、
1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV
これに続けて、年間で現行の1ミリシーベルトの1000倍以上(1200倍ですね)の緩和を提案。月100ミリシーベルトx12で1200ミリシーベルト、つまり1.2シーベルトとなります。生涯で5シーベルト、とおっしゃっていますから、この1.2ミリシーベルト年間被曝はおそらく緊急の数字だとはお考えなのだと思います。
また、放射線審議会が例に出した「ノルウェーのトナカイの肉」を教授も例に出して、食品基準を大幅に引き上げることを勧めています。教授の講演(10月3日)は、放射線審議会が被曝許容量の見直しを言い出した日に先立つことわずか3日。
教授の主張は、ガンの治療などで使われる大量の放射線をベースにしているようです。あれだけ浴びても大丈夫なのだから、と言うことらしいですが、茶とらさんも私も、読んでいて脳細胞が機能停止したため間違いがあるかもしれませんので、コメント欄でご指摘ください。
元の英語のプレゼン資料はこちら。http://www.radiationandreason.com/uploads/FCCJ_ALLISON_100311_FINAL.pdf
以下、プレゼン資料全ページ日本語私訳。(H/T東京茶とら猫)
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p.1
放射能と理性
福島とその後
2011年10月3日
日本外国特派員協会(東京)にて
講演者:
オックスフォード大学 ウェード・アリソン教授
アイダホ大学 徳弘明教授
p.2
ウェード・アリソン
英国オックスフォード大学、物理学名誉教授
核物理学者および医学物理学者(原子力産業との関係はなし)
http://en.wikipedia.org/wiki/Wade_Allison
ウェブサイト: http://www.radiationandreason.com
メールアドレス: w.allison@physics.ox.ac.uk
p.3
説明項目
1.低線量から中線量の放射線には害がない。
2.放射能を恐れることが個人にはストレスを、社会には損害をもたらし、そのことが大きな弊害を生む。
3.現行の食品基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。
4.現行の避難基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。
5.達成可能なレベルまで被ばく量を低減するという考え方に基づく国際「安全」基準は、大幅に緩和する必要がある。
6.放射能にまつわる誤解が生じたのは、冷戦時代に世間が騒ぎ立てたことに原因がある。
詳細は右サイト参照:http://www.radiationandreason.com
p.4
放射能への恐怖
根拠:
1.核兵器による大破壊、ホロコーストが起きたあとを恐れる気持ち。この冷戦時代のメッセージはまんまと当時の人々を震え上がらせた。
2.我々は放射線を感じることはできない。だが体の細胞は放射線を感じることができ、そのダメージを修復することもできる。
3.様々な規制によって放射能の危険が叫ばれている。こうした誤解が生じたのはある程度はわれわれ全員に責任がある。
p.5
放射線は生物にとってどれだけ危険なのか? そこがすべての出発点
第一
放射線は生物にどんな影響を及ぼすか。
データと理解
第二
リスク評価。
世間の受容。
安全規制。
労働慣行。
廃棄物。コスト。
最終
テロリスト。
ならず者国家
汚い爆弾(核汚染をひき起こす爆弾)の脅威。
核兵器による脅し
p.6
放射線の影響は量と期間しだい
・例:パラセタモール(解熱鎮痛薬)の場合、量と期間が両方重要(1人が一度に100錠飲んだら致命的だが、数週間かけて定期的に服用していれば頭痛が治る。)
・放射線の場合、量はミリシーベルト(mSv)であり、期間は月当たりのmSv。
医療で使われる放射線量は信頼できる
・今日では、放射性物質を使った画像診断によって大勢の人が利益を受けており、がんの治療に放射線が用いられる場合もある。
・CTスキャンを1回受ければ5-10mSvの外部被ばくをする。
・PETスキャンやSPECTスキャンでは、放射性物質を体内に注入することにより同程度の被ばくをする。
・CT-PETスキャンを1回受けたら全身が15mSvの被ばくをする。
・医療で使われる放射線や放射能は外部被曝、内部被曝とも福島で放出されているものと本質的には同じ種類である。
p.7
誤った食品基準(牛肉に含まれるセシウムの場合)
「牛肉の安全を確保するため、放射性セシウムの暫定基準値を超える牛肉を規制する対策を政府が講じる」2011年7月27日発表
・基準値上限の500Bq/kgの牛肉を1kg食べると0.008mSvの被ばく[12ページ第4項。この数字はチェック済み]
・被ばくが続くのは、セシウムの排出に要する4ヶ月
・放射性セシウムは、PETスキャンで使用される放射性フッ素と同様に体内で均一に拡散する。PETの放射性フッ素の場合、2、3時間で15mSvの被ばくをする。
・したがって、1人が汚染牛肉を4ヶ月で2000kg食べるだけの被ばくをスキャン1回でする。この食品基準値は非合理的である。
・チェルノブイリ後、ノルウェーとスウェーデンはこの過ちを認めた。
・こうした規制の根拠となる国際安全基準(ICRP)は大幅な改正が必要だ。
・15mSvは危険な線量ではない。
p.8
チェルノブイリ後のノルウェー
1986年、ノルウェー保健局はセシウム137とセシウム134の放射線レベルの介入基準値を定めた。介入基準値は牛乳と乳児の食物が370Bq/kg、それ以外の食品はすべて600Bq/kgだった。ノルウェーにおけるトナカイ飼育の伝統を維持し、サーメ
(ラップ人)のトナカイ飼育者への社会的影響を低減するためには、トナカイ肉の介入基準値を引き上げる検討が必要だった。1986年11月、トナカイ肉の介入基準値は6000Bq/kgに引き上げられ、1987年7月には野生の淡水魚と野生の鳥獣肉の
介入基準値も6000Bq/kgに引き上げられた。Harbitz, Skuterud and Strand, Norwegian Rad Prot Auth (1998)
肉やその他の食品が6000Bq/kg
-つまりノルウェーでは福島の基準値の12倍に引き上げた。
-この数値では、汚染肉を170kg食べてようやくCT/PETスキャン1回分の被ばく量になる。
-このレベルなら農家も飼育者も肉を売ることができ、誰も困らない。
-なぜ福島でこれができないのか。
p.9
スウェーデン放射線防護局
[記事要約]
もともとの記事は2002年4月24日にストックホルムの主要朝刊紙『Dagens Nyheter』に掲載された。この記事の目的は、チェルノブイリ事故に対する科学者の評価が1986年に比べてどれくらい進歩したかを世間に説明することにある。記事は国内外からの大きな注目を集め、この問題に関する新たな議論に火をつけた。そこで、スウェーデン放射線防護局は、世界の人々に自らの結論を知らしめるために英語の翻訳の提供を求められた。
チェルノブイリ事故から16年、スウェーデン放射線防護局が認めた
「われわれは何トンもの肉を不必要に汚染肉にしてしまった」
1986年4月26日のチェルノブイリ原発の事故を受け、スウェーデンは最高水準のトナカイとヘラジカの肉を何トンも不必要に処分した。当局が定めた肉に対するセシウムの介入基準値が低すぎたためである。同年のと畜場ではトナカイ肉全体の78パーセントが廃棄され、納税者に多大な負担を負わせるとともにトナカイ飼育者を一時的に困窮させた。この介入基準値を設定した背景には、個人が被るリスクを非常に低くすることで消費者が何を買えばいいかを迷わないようにする、という考え方があった。
「もしかしたらわれわれは消費者に対して責任を負いすぎたのかもしれない」と放射線防護局長の幹部たちは書いている。
[署名]
局長
Lars-Erik Holm
部門長
Ulf Baverstam
主任科学者
Leif Moberg
p.10
放射線の本当の危険レベル
十字マークはチェルノブイリ事故時の消防士の死者数(曲線はラット)。
数字はそれぞれの線量域での死者数/全体数。
(グラフ左)
チェルノブイリ作業員の死亡率
(グラフ右下)
線量/mSv
4000mSvより高線量の被ばくで42人中27人が急性放射線症候群(ARS)で死亡。がん死ではない。
4000mSv以下では195人中1人が死亡。
p.11
チェルノブイリの作業員
-被ばく量2,000mSv未満の作業員が急性放射線症候群(ARS)で死亡した例はない。
福島の作業員
-事故後6週間で被ばく量100-250mSvの作業員が30人。
-したがって福島ではARSによる死者は出ない。
がん治療のための放射線療法
ー放射線療法を受けるがん患者は、がん細胞を破壊するために6週間にわたって毎日2,000mSvの放射線を腫瘍に照射される。
ー患者は同時に、健康な臓器や組織の多くにも毎日1,000mSvの放射線を照射されている。一か月では20,000mSv以上になる。
-これは急性致死線量(4,000mSv)の5倍以上に相当する。
-信頼できるデータか?たいていの人には、この種の治療の恩恵を受けた知人がいる。
-どうやって放射線傷害から回復するのか。日々の治療を受けたあと、健康な臓器には放射線障害を修復する時間がある。腫
瘍細胞にはそれがない。
p.12
福島での住民避難
-避難基準は年間20mSvに設定されている。
-放射線療法の例から、人間は毎月20,000mSv以上の線量に耐えられることがわかっている。
-これは現行の避難基準の1,000年分に相当する。したがって避難基準は非合理的である。
-一般に、避難をすれば放射線療法による障害と少なくとも同等の害を受ける。
-現行の避難基準は、個人の健康と社会・経済的な健康をまったく考慮していない。
-心の健康とコミュニティの健全性をないがしろにして放射線の安全を考えるのは正当とは認められない。
福島で無視されているチェルノブイリの経験
-避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。
-福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。
p.13
放射線による発がん
・人体には免疫を含む何重もの修復機能が備わっている。
・免疫系がうまく働かないと(たいていは高齢になって健康状態が悪くなるため)がんになる可能性がある。
・普通は放射線によるがんとそうでないがんを区別することはできない。
・大勢の人々を対象に、かなり被ばくした人と被ばくしていない人の生涯の健康状態を比較して初めて放射線による発がんだったかどうかがわかる。
・たとえば、広島と長崎の被爆者のうち、1950-2000年のあいだにがんで亡くなった人がどれくらいいたか。
・平均被ばく量160mSvで、発がんリスクは平均して15人につき1人の割合で増えた。
・浴びた放射線量が大きいほど発がんリスクの増加が明確に見られるが、100mSv未満については明確なリスクの増加が見られない。
p.14 [グラフは原文のPDFをご覧ください。]
広島と長崎から何がわかっているか
総人口 429,000人 100.00%
1945-1950年の死者数 103,000人 24.01%
1945-1950年の行方不明者(死者)数 43,000人 10.02%
1950年まで生きた人の数 283,000人 65.97%
被ばく量がわかっている人の数 86,955人
1950-2000年のがん死者数 32,057人 7.47%
1950-2000年の放射線によるがん死者数 1,865人 0.44%
(円グラフ左)
1950-2000年の間がんで死ななかった
(円グラフ右)
早期死
行方不明
1950-2000年のがん死者数
1950-2000年の放射線によるがん死者数
p.15 [表のフォーマットはしておりませんので、数字は恐れ入りますが原文をご覧ください。]
広島・長崎被爆者のうち、1950-2000年の間に確実にがんで死亡した人の被ばく
線量別内訳(Preston et al., 2004)
被ばく量 生存者数 1950-2000年に確実にがんで死亡した人数 余分なリスク
実際 予想
0- 5 38507 4270 4282 -2.0- 1.4
5- 100 29960 3387 3313 0.0- 3.5
100- 200 5949 732 691 3.5-12.5
200- 500 6380 815 736 9-18
500-1000 3426 483 378 25-37
1000-2000 1764 326 191 63-83
2000- 625 114 56 72-108
合計 86611 10127 9647 5.0-5.2
「予想」とは他の都市で予想される死者数
-緑色の被ばく量[0-5、5-100]では、右端の列のリスクがほぼゼロ。
p.16
なぜ規制が間違っているのか。誰の責任か。
・各国の規制は国際的な委員会(ICRP)の勧告に従っている。
ICRPの勧告は、放射線以外のリスクを無視して「合理的に達成可能なレベルまで被ばく量を低減」(As Low As Reasonably Achievable, ALARAの原則)し、自然のレベルに近づけることを目的としている。安全上の理由ではなく社会的な理由を考慮したものである。
・ALARAの原則は、放射線恐怖症となった国際社会が冷戦時代に要求したものである。われわれはこの過ちを正すべき。
・安全なレベルは「比較的安全な最大レベル」(As High As Relatively Safe、AHARSの原則)とすべきである。
「比較的」とは、ほかのリスクと比べて、という意味である。
・AHARSのレベルは、放射線療法の成功によって示された放射線障害からの修復能力を考慮して設定すべきである。
・AHARSの原則に基づくレベルはどれくらいか。
p.17
ALARAの原則とAHARSの原則による月間被ばく量の比較
腫瘍への放射線照射
>40,000mSv/月
細胞死
健康な組織への放射線照射
>20,000mSv/月
許容線量!
新しい安全レベル案
100mSv/月[大事をとって上記許容線量の200分の1]
現行の避難基準2mSv/月[20mSv/年]の50倍
ALARAの原則によるICRPの公衆被ばく限度
0.1mSv/月[1mSv/年]
AHARSの原則に基づく新しい安全レベル案:
1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV
ALARAの原則に基づく現行の公衆被ばく限度の1mSv/年を約1,000倍緩和
p.18
福島では放射線によってどれくらいの人ががんになるか
今後50年というスパンで見ても、放射線による死者が出るとはまず考えられない。理由は以下の通り。
事故後6週間で100-250mSvの被ばくをした作業員は30人。チェルノブイリでは、被ばく量2,000mSv未満の作業員が140人いたが、急性放射線症候群(ARS)で死亡したのは1人もいない。
広島と長崎では、それと同程度の被ばくをした市民5,949人のうち、50年以内に放射線によるがんで死亡したのは150人に1人の割合。
福島の作業員が1人でも放射線によるがんで死亡する確率は25%未満。市民の被ばく量は作業員よりはるかに小さいのでリスクはない。
日本では海草を食べる習慣があるうえ、子どもたちはヨウ素剤を支給されている。どちらも小児甲状腺がんの予防になる。
チェルノブイリはヨウ素が不足乏している地域なので6,000人の子どもが甲状腺がんにかかったが、死者は15人だけである。
福島では放射線による予想死者数がゼロである。
p.19
結論
-福島では、食品の厳しい規制と避難規制により、何十万人もの人々の心の健康と自信と生計が危機に瀕している。
-チェルノブイリのときと同様に、厳しい規制によって放射線への不安を緩和しようとすることがむしろ裏目に出ている。
-放射線と放射能は毎年何千件ものがんを治療し、低線量であれば無害である。
-地質学[?地殻変動のことか?]、気候変動、社会経済の安定、人口、水と食料の供給といった問題とは違って、放射線は人類にとっての大きな脅威ではない。
-放射線の汚名をそそぐために、わかりやすい言葉でより多くの人に放射線を説明するためのまったく新しい教育があらゆる地域で必要とされている。
-私たちは健康になるためにすでに放射線を利用している。そのときと同じ配慮と敬意をもって、あらゆる地域で放射線を社会のために役立てていくべきである。
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年間1.2シーベルト。これはもう国民全員で福島第1原発でフルタイムで働けるレベルでしょうね。特に最後のスライドなどは文科省の放射線副読本がそのまま引用したような文章です。
(多くのこどもがヨウ素剤を配布された、というのはいったいどこの話なのでしょう?)