何時の頃からか、多分福島第1原発から「低濃度」汚染水(ちっとも低濃度じゃなかったんですが)を排出しだした頃から、年間自然放射線量が「2.4ミリシーベルト」と報道されるのがもっぱらとなっているようです。汚染水垂れ流しを発表した東電、また、枝野官房長官の言にも、「汚染された魚、海草を1年間食べ続けても600マイクロシーベルト、年間自然放射線量の4分の1にしかならない」、つまり、年間自然放射線量は2.4ミリシーベルトということになります。
ちょっと待て。確か日本の年間自然放射線量はもっと低かったはず。でも、現在、テレビ、新聞のニュースでは年間2.4シーベルトを普通でも浴びる、と当たり前のように言っています。
ところが、よくよく見ると、これは「世界平均」なのです。
そこで、日本の年間自然放射線量を探してネットをさまよったところ、中部大学武田先生の言で1.5ミリシーベルト、更に検索で、茨城県つくば市の放射線科学センターにたどり着きました。
結論から言うと、日本平均年間自然放射線量は1.4ミリシーベルト。
センターの出している、「暮らしの中の放射線」41ページには、こうあります:
「自然放射線の量
「人間が一年間に被ばくする自然放射の量はどのくらいでしょうか。1988年国連科学委員会の報告では全世界で人類が平均的に被ばくしている自然放射線は下の図のように推定されています。全世界平均では年間2.4ミリシーベルトですが、日本における値は1.4ミリシーベルト(1988年10月推定値)となっています。」
日本の年間自然放射線量は1.4ミリシーベルト、世界平均のわずか58パーセントの放射線量なのです。センターによると、
「大地からのガンマ線が高いところとして、外国ではインドのケララ地方やブラジルの一部が知られています。この地域では年間数十ミリシーベルト程度と、なんと日本の数十倍もの値が報告されています。」
日本がこのような地域を含む世界各国の値と合算されて平均値にすると、世界平均で年間2.4ミリシーベルトとなる、というわけです。
日本平均の1.4ミリシーベルトという値は、宇宙線を含む外部被曝と食物、空気などから体内摂取する内部被曝の両方を含みます。内部被曝が全体の3分の2、外部被曝が3分の1という内訳のようです。放射能(ラドンなど)を吸い込むことによる内部被曝が全体の5割強を占めています。
世界平均ではなくて日本平均でみると、600マイクロシーベルト相当の放射線を福島第1原発で汚染された魚、海草で取り込んだとすると、年間自然放射線量の4分の1、25パーセントではなく、43パーセントです。
ところが、この1.4ミリシーベルトですら、東北、関東の地域にとっては多分高すぎるのです。センターによると:
「自然放射線の量は地域によってどのくらい差があるのでしょう。日本各地の宇宙線と大地からの放射線の量を下の図で見てみましょう。これには、ラドンなどの内部被ばくは含まれていません。関西や中国地方は放射性同位元素を多く含む花崗岩地帯が多いので大地からのガンマ線の量が多く、逆に、関東平野は火山灰地のためガンマ線の量は少なくなって
います。」
あああまったく。どうせここまでやるんだったらラドンも含めてよ!0.99ミリシーベルト以下、と言うのも、どれくらい以下なのか、分からないじゃないですか、まったく。
そこで、もう一箇所チェック。各都道府県別の自然外部被曝の数字を見つけて、それを3倍して全体の数字を比べて見ようという試みですが、果たして。
「文部科学省/放射線計測協会が簡易放射線測定装置「はかるくん」を貸し出して全国の自然放射線の計測を行い都道府県別の平均値が公表されている」、というリンクは日本地質学会からです。
放射線計測協会「はかるくん」の測定結果は、
福島県を見ると、0.037マイクロシーベルト/時です。一年で、0.037x24x365で、324.12マイクロシーベルトになります。これを自然外部被曝として、全体の年間自然放射線量はこれの3倍とすると、972.36マイクロシーベルト、または0.972ミリシーベルトとなります。
高いのは岐阜県、0.055マイクロシーベルト/時。同じように年間自然外部被曝量を計算すると、0.055x24x365で、481.8マイクロシーベルト、これを3倍して、1.45ミリシーベルト。
更に、日本地質学会の計算した日本の自然放射線量(地上1メートルとあるので、自然外部被曝分の放射線量だと思われます)は「はかるくん」の実測より更にばらつきは大きく、少ないところで0.00581マイクログレイ時(マイクロシーベルトと同等、との但し書き)、これは年間相当でわずか50.9マイクログレイ(マイクロシーベルト)の自然外部被曝量。多いところは0.127マイクログレイ時、年間相当で1.113ミリグレイ(ミリシーベルト)の自然外部被曝。つまり、外部被曝だけでも日本の中で20倍以上も差が出るのです。
全体の年間自然放射線量をここでも単純に自然外部被曝量の3倍とすると、少ないところで年間152.7マイクロシーベルトまたは0.153ミリシーベルト、多いところで3.339ミリシーベルトとなります。
概して東日本、東北は低めの値、関西四国九州は高めの値です。
これをひとくくりにして、日本の平均自然放射線量はは1.4ミリシーベルトとしているわけです。
ただでさえはるかに日本より高い世界の平均年間自然放射線量を基にして、現在の日本での許容量を推し量ろうとするのは、多分間違いでしょう。日本の自然放射線量はもともと世界平均の6割以下、日本の中でも地域差が激しいのです。
放射線を浴びると放射線への耐性が付く(Hormesis、ホルミシス効果)という考えを提唱する研究者もいますが、多くの研究者に指示されている学説とは言い難いようです。
まあ、こんな「学説」もあるようですから、ホルミシス効果もあるに違いありません。(皮肉です、念のため。)
「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。これは明確な動物実験でわかっています。酒飲みの方が幸か不幸か、放射線の影響少ないんですね。決して飲めということではありませんよ。笑いが皆様方の放射線恐怖症を取り除きます。(長崎大学大学院医歯薬学科薬学総合研究科長山下俊一、福島市2011年3月21日14時- 山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」講演会)」
世界平均とか日本平均とかなんだろうが、そもそも世界でも、日本でも地域差が激しくて、世界で最も線量が高いところでもがん発症の有意な証拠が見つからないから、あまり神経質になる必要はない、っていう話ではなかったでしたっけ?
ReplyDelete政府に加担する気はさらさらないですが、私は、枝野さんの説明は納得のいく説明だと思いますよ。
もちろん被ばく量は低いに越したことはないですけどね。
茶々入れてすみませんm(_ _)m
まあねえ、世界の地域差と日本の地域差の大きさは格段に違いますが、もともと線量の少ない日本に住んでいる住人は高い放射線(外部)の耐性があるとはいえないようです。線量の高い世界の地域はいつでも線量が高いわけで、日本(特に福島)のように今まで1ミリシーベルト程度だったのがいきなり20ミリシーベルトになる地域が出てきてしまった、というのとは状況が違うと思います。
ReplyDelete事故のために放射線が格段に高くなってしまったチェルノブイリ周辺ではやっぱりがんが発症しました。
それに、政府も最初はちゃんと日本の平均は1.4ミリシーベルトだ、と言っていたのを記憶しています。
専門外の私が言うのもなんですので、ここは専門家の中部大武田さん:
http://takedanet.com/2011/04/61_161b.html
もし日本にいらっしゃるのなら、くれぐれもお気をつけになってください。低いに越したことはなく、内部摂取しないに越したことはありません。
中部大の武田さんって、専門家なの?工学博士じゃないの?
ReplyDelete最近は低線量放射線はカラダに良いなんて言っているけど。