Tuesday, April 12, 2011

中部大学武田邦彦教授:低線量率は安全なのか、安全でないのか?

武田教授の4月11日のブログポストです。教授は以前にも、線量率は確率の問題だ、と言っています。

長期にわたる低放射能が安全なのか、そうでないのか、実際そんなことを研究できた事例が無いにもかかわらず、ひたすら安全だと言うのは学者の言論の自由ではありましょうが、その先生の個人的ご意見として聞いておくほうが安全だと思います。

原発 緊急情報(52) 低線量率の危険性(どうして違うのか?)


原発が少し落ちついてきて、政府の方も原発近くの待避範囲を「半径20キロ圏内」のようにあまり意味のない範囲ではなく、風向きも考慮して具体的なことを決め始めました。

しかし、先日、年間1ミリ(シーベルト)の限度を20ミリに緩めていますので、やや警戒が必要です。

ところで今回は、そのような状態でもあり、「低い線量」を浴びた時の健康に対する問題点を少し整理してみたいと思います

というのは、「低い線量はとても怖い」という先生と「低い線量など問題がない」という専門家がおられ、これでは、どっちが本当かと迷うのは当然だからです。

そして東京や、さらに関西の方にお住まいの人は大量の放射線を浴びるわけではなく低い放射線の被曝なので、この問題を一度考えておく必要があると思います。

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読者の方から「低い放射線は問題では無い」と言っておられる数名の先生方を紹介していただきましたので、その先生方のビデオや書かれたものを見てみました。

二つのグループに分かれます.

一つは、「本当の意味で低い放射線は全く問題がない」と考えておられる研究者の方.もう一つは「1万人に50人ぐらいのガン患者はでるが、それは問題では無い」と評価している先生です。

1万人に50人ぐらいのガンは仕方が無いというのはその人の感覚ですから、データそのものの違いではありません。わたくしは、1万人に50人の患者さんといいますと、日本人1億人ではガンの発生が50万人になるので、交通事故死の100倍になり、これでは危険という感覚です。

ICRPも1億人に5000人を基準にしていますので、わたくしもそれを使っています(1年1ミリ)。

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一方、もともと低い放射線はまったく問題がないという考えの方がおられ、その論拠を整理してみます。

1) 世界で日本よりもずっと自然放射線の高い地域があり、そこはガンの発生量も低い、

2) 今までの広島、長崎やチェルノブイリ原発事故の被曝は、被曝線量が高く、今回のような場合と比較できない。

確かにその通りです。これもほぼ同意できます。

世界には日本に比べて非常に放射線の強い地域があり、そこで住んでいる人が特別にガンが多いということはありません。地域によってはむしろ日本よりガンが少ないところがあります。

また、広島・長崎やチェルノブイリで障害が観測されている人は、かなり激しい被爆をされた場合です。

これもその先生が言っておられることが、わたくしの考えと特に違うことはありません。

私は次のように考えています(データは同じ)。

自然放射線の強いところにガンが多いというわけではありませんが、ただ、自然放射線が強いところは、日本のように平均寿命が長いというわけでもありません。

日本でもかつてはガンが少なかったのですが、平均寿命が延びるにつれてガンが増えてきたという事情があります。従って、自然放射線が強いところはガンが少ないというだけでは、低い放射線が安全だということは言えません。

また、人間には「人種」があり、南の方に住んでおられる人は肌が黒いのですが、これは紫外線が強いので、紫外線によって皮膚ガンにならないように皮膚が黒くなっているのです(メラニン色素の沈着で紫外線を防御。おそらくその他の修復力も高い。)

このように人間はその環境にあった体になりますので、基本的には放射線が強い地域にお住みの人は、放射線に対して体が防御する力も強いということが言えます。

だから、日本人が赤道直下に住む時には、若干注意が必要ということになります。

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また広島・長崎やチェルノブイリとの比較ですが、広島・長崎の時代は戦争でしたので、人の命に対する考え方は今と随分違っていました。

現在のデータでは、原爆が投下された後に広島・長崎に立ち入って放射線で障害を受けた人が10万人程度おられるというデータもあります。

また、戦争の後、広島・長崎に入ってデータを採ったのはアメリカでした。それもあって、なかなか真実が求められないという事情もあります。

チェルノブイリでは、何しろ言論統制をしていたソ連時代のことで、はっきりとしたデータはありません。

これについては、二つの見解があり、一つは予想外に被爆の影響が少なかったという整理と、時間がたつにつれて被爆の影響が出てきたというデータがあります。

いずれにしても、学問の前に思想的な差があって、現在のところどちらが学問的に正しいかわからないというべきでしょう。

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また、低い放射線は大丈夫だと言っておられる先生がたのお話しにやや問題点もあります。

その一つが、ICRPやヨーロッパの研究者が言っていること・・・低い放射線量でも集団で被爆すればかなりのガンが出る・・・というデータについて具体的に反論されてないことです。

(もしビデオをみる機会があれば、「普通のデータ」がなぜ否定されるのかを言っておられるかどうかに注意してください)

ICRPも荒唐無稽なデータを使ったり、思想的な背景があるわけではありません。低い放射線の場合は、Aさんが被爆したからといって必ずしもAさんに障害が出るというわけではなく、1000人の人が被曝すると5人ぐらいにガンが発生するということを言っています.

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参考までにICRPが「標準データ」として使っている「低い放射線での10万人あたりの過剰死亡率」の表を示しておきます.データそのものよりも、このように公開されているデータのどこが間違っているのかをお話しするべきと思います.

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長くなりましたが、低い放射線と体の関係は原理的に次のように考えられます。

放射線はわたくしたちの体の中を通過していきます。細胞の中に放射線が通過したからといって、その細胞の中にある遺伝子が必ず傷つくということはありません。

ただ何回か通過していると、そのうちに遺伝子が損傷する場合があるのです(学問的には短波長でエネルギーの高い電磁波が、高分子(DNA)の一部を励起させて、そこが切断されたり反応したりする。確率的に起きる)。

また人間には回復力がありますから、遺伝子が損傷したからと言って直ちにガンになるのではなく、それを直してくれるのも確かです。

でも、1000人ぐらいのグループに繰り返し放射線があたりますと、そのうちどこかの細胞にガンができて、それが量的にも時間的にも回復できないという状態が生じると考えられているのです。

その点から言って、「低い放射線は人体に影響がない」というのは、集団の人の場合、断言できないと考えられます

今回の場合、私たちの知見はわずかで、しかも「もし障害がでたら1万円払えば元に戻る」というものではなく、その人の一生に影響がありますので、やはり今までのデータを尊重するのが良いと思っています。

2 comments:

  1. 遺伝子に関する説明の部分がおかしいような気がするのですが。

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  2. どこがおかしいのか、具体的に武田先生におっしゃったらいかがでしょう?

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